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農業所得の減価償却とは? 確定申告前に確認すべきポイントを解説
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  • 農業経営

農業所得の減価償却とは? 確定申告前に確認すべきポイントを解説

農業経営者の方に向け、農業所得の減価償却について解説しています。個人事業主にとって、減価償却は避けて通れないものです。減価償却費の経理処理は少々面倒ではありますが、毎年の利益を正しく押さえておく上で、減価償却には重要な役割があります。

個人事業主であれば、減価償却を避けて通ることはできません。そこで本記事では、農業所得における減価償却について解説します。

減価償却の対象になる機械や設備、計算方法などもまとめているので、確定申告の際の参考にしてください。

※本記事は2020年12月時点、国税庁の「令和2年分の確定申告に関する手引き等」を基本に、同庁ホームページに掲載されている情報に基づいて執筆しております。詳細はお近くの税務署や公認会計士・税理士にご確認ください。

そもそも減価償却とは?

確定申告 決算書

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減価償却財産

農機や倉庫などの固定資産は何年にもわたって利用するものであり、使用年月が長くなるほど劣化が進んで価値が減っていきます。

このような固定資産を「減価償却財産」といい、減価償却財産を購入した際、耐用年数に従って毎年一定額を経費計上することを「減価償却」といいます。

なお、耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」によって固定資産ごとに細かく定められています。確定申告や決算書の作成の際に必要な場合は、国税庁や東京主税局のホームページで確認してください。

東京都主税局「償却資産の評価に用いる耐用年数

国税庁「タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし

減価償却の算出方法

減価償却費の算出方法には、毎年一定額を経費計上する「定額法」と、毎年一定の割合で経費計上する「定率法」の2種類があります。

個人事業主が減価償却費を求める際は、定額法を用いることが原則です。機械装置などは定率法での償却も認められていますが、その場合は確定申告の期限までに税務署に届出書を提出しなければなりません。

定額法では、例えば軽トラックを80万円で購入した場合、1年目に20万円、2年目も20万円というように、毎年一定額を経費として計上していきます。

減価償却をどのタイミングで始めるかについては、「その固定資産を事業のために使ったときから始める」と定められています。

その年の7月から利用している場合、6ヶ月分の10万円のみを計上し、翌年から20万円ずつ計上してください。もし納品が遅れるなどで当期中に稼働しなかった場合は次期から計上していきます。

減価償却は損?

減価償却では、支払いのタイミングと経費を計上するタイミングがずれているので、一見すると損をしているように思えるかもしれません。

しかし、減価償却は本来コストを平準化し、毎年の利益変動を少なくするために行うものです。翌年以降は出費がないにもかかわらず経費を計上することになるため、実質的には損でも得でもありません。

仮に300万円の資材を購入してそれを減価償却せずに一度に経費計上すると、それまでは黒字だった経営が赤字に転落してしまい、結果として銀行からの融資が受けられなくなる可能性もあります。こうした理由から、減価償却は毎年の利益を正確に把握する上でも欠かせない処理といえるでしょう。

なお、法人は減価償却をするかしないかを任意で決めることができますが、個人事業主は必ず減価償却を行わなければなりません。利益が少ないから減価償却をせず翌年以降に費用を回す、というようなことはできないため注意しましょう。

農家の場合

農業用の機械や施設は、取得価額が10万円以上であれば減価償却が必要ですが、取得価額が10万円未満であれば全額を経費として計上可能です。

通常、減価償却費は4ページある決算書のうちの3ページ目に記入しますが、10万円未満の場合は減価償却費ではなく1ページ目にある「経費」の項目に記入します。

耐用年数の前に農機具などを廃棄した場合、未償却残高については廃棄した年に計上してください。

農業で減価償却の対象となる施設・機材

果樹もトラックも減価償却資産

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減価償却資産は、建物や構造物、機械・設備、車両・運搬具といった「有形減価償却資産」、権利やソフトウェアなどの「無形減価償却資産」、果樹や家畜などの「生物」という3種類に分類されます。

農業に使う施設としては、用水路や貯水槽、農用井戸、灌水用や散水用の配管、暗渠、牧柵、肥料だめなどがあります。果樹はかんきつ樹やりんご樹、ぶどう樹、なし樹など、家畜には牛や馬、豚、やぎなどが該当します。

ただし、食肉用など販売を目的として育成もしくは所有している家畜は「棚卸資産」に分類されるので減価償却は行いません。

耐用年数は、例えば果樹の場合、かんきつ樹は30年ですが温州みかんは28年、なし樹は26年、桃樹は15年、りんご樹は10年など、細かく分類されています。

出典:国税庁 「平成30年分 よくある質問 主な減価償却資産の耐用年数(構築物/生物)」

また、減価償却資産には、業務で使用している資産かつ時間が経つにつれて劣化する資産のみが該当し、時間が経っても劣化しない土地や借地権、稼働を休止している資産は減価償却の対象にはならないので注意しましょう。

農業用設備は改正後一律7年

平成20年度の租税改正によって減価償却資産の区分の見直しと耐用年数の変更が行われ、農業用の機械や設備の耐用年数についても一律7年に統一されました。

例えば、電動機の耐用年数は10年から7年、歩行型トラクターは5年から7年、自脱型コンバインは5年から7年と大幅に簡素化されています。

改正前から所有している資産に関しても、改正後の耐用年数が適用されます。

出典:国税庁「耐用年数等の見直し(平成20年度税制改正)に関するQ&A」

減価償却の計算方法

農業に使用する資産(トラック、トラクターなど)

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平成19年(2007年)4月1日以降に取得したものについては減価償却の計算方法が変更されています。改正前の方法は「旧定額法」、改正後の方法は「新定額法」と呼び、改正の前後を跨いで使用している場合は、計算式を使い分けて減価償却費を算出します。

また平成20年(2008年)分以降、取得価格の95%まで償却している資産、つまり耐用年数を経過している資産については、その年の翌年以降5年間で未償却額が1円になるまで均等に償却することになりました。

今回は定額法の計算式をご紹介します。

平成19年(2007年)4月1日以降に購入したもの

平成19年(2007年)4月1日以降に購入したものの減価償却費の計算式は以下の通りです。

取得価格×償却率×その年に使用した月数÷12×事業専有割合(%)=その年の減価償却費

事業専有割合とは、資産を農業だけでなく自家用としても使っている場合に、農業用に使用している割合のことです。

償却率は、資産の耐用年数によってそれぞれ定められているため、国税庁のホームページから「主な減価償却資産の耐用年数表(2020年8月19日)」及び「減価償却資産の償却率等表(2020年8月19日)」を参照してください。

平成19年(2007年)3月31日以前に購入したもの

平成19年(2007年)3月31日以前に購入したものの減価償却費の計算方法(旧定額法)は以下の通りです。

<償却可能限度額95%まで>
償却の基礎となる金額×償却率×その年に使用した月数÷12×事業専有割合=その年の減価償却費
なお償却の基礎となる金額とは、取得価額から取得価額の10%を差し引いた金額のことです。

<均等償却>
減価償却費の累積額が取得価額の95%に達した場合、その年の翌年から5年間は以下の計算方法を用います。
(取得価額-取得価額の95%-1円)÷5=減価償却費

減価償却の計算例

今回は、平成21年(2009年)7月1日にトラクターを購入した場合の減価償却費の計算例をご紹介します。

品目:トラクター
耐用年数:7年
取得年月:平成21年(2009年)7月
取得価格:700万円
事業占有割合:100%

<1年目>
計算式:700万円×0.143×6/12=500,500円 
未償却残高:6,499,500円

<2年目>
計算式:700万×0.143×12/12=1,001,000円
未償却残高:5,498,500円

<3年目>
計算式:700万×0.143×12/12=1,001,000円
未償却残高:4,497,500円

<4年目>
計算式:700万×0.143×12/12=1,001,000円
未償却残高:3,496,500円

<5年目>
計算式:700万×0.143×12/12=1,001,000円
未償却残高:2,495,500円

<6年目>
計算式:700万×0.143×12/12=1,001,000円
未償却残高:1,494,500円

<7年目>
計算式:700万×0.143×12/12=1,001,000円
未償却残高:493,500円

<8年目>
計算式:493,500-1=492,499円
未償却残高:1円

トラクター

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農業用の機械や施設の取得価額が10万円以上であれば、減価償却費として計上する必要があります。減価償却はすべての個人事業主が行うべき重要な経理処理です。

国税庁のホームページなどで資産ごとの耐用年数を確認し、毎年きちんと計上するようにしましょう。

日野澤きこ

日野澤きこ

大学卒業後3年間、小売系専門誌で新聞・雑誌の編集記者を経験。紙媒体における一連の編集業務を学ぶ。その後Webに転身し、フリーでライティング、校正、リライトなどを手掛ける。趣味は観葉植物の栽培。

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