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【令和3年度版】農業経営基盤強化準備金とは? 制度のメリットや限度額、注意点を一挙解説
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【令和3年度版】農業経営基盤強化準備金とは? 制度のメリットや限度額、注意点を一挙解説

この記事では農家が経営拡大を図るうえで、農地取得や農機購入に充てられ、税負担の軽減も見込める「農業経営基盤強化準備金制度」について解説します。概要とともに、申請の条件、メリットとデメリット、注意点、この制度を利用することでどのくらい税負担を軽減できるのか、また具体的な金額例やよくある疑問などを詳しく解説します。

農家の税負担を軽減! 税法上の特例「農業経営基盤強化準備金制度」について

「農業経営基盤強化準備金制度」は農林水産省から受けた交付金を有効活用できる制度です。農業者が農用地の取得や農業機械・設備への投資などのタイミングで利用すれば、大きな税負担の軽減メリットを得られます。

ここでは農業経営基盤強化準備金制度の概要や利用するメリット、対象となる条件などについて紹介します。

農業経営基盤強化準備金制度とは? 活用するメリット

準備金の積立イメージ

takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)

農業経営基盤強化準備金制度とは、農林水産省から受けた交付金を活用し、農業経営に必要となる農地や農業用の建物、機械などの取得によって経営基盤の強化を図るための支援を行う制度です。

交付金は、利益として計上されるため、本来は課税対象です。しかしこの農業経営基盤強化準備金制度には必要経費として算入できる特例措置が設けられており、各市町村へ事前申請をしたうえで農業経営基盤強化準備金として積み立てれば「個人事業主は必要経費」、「法人は損金」として算入可能です。

5年間までは交付金を積み立てることができ、農地取得や設備導入などの大きな資金を必要とするタイミングでそれを取り崩す形で購入費に充てられます。また準備金を使って購入した資産は、本来は課税所得となる利益を将来に繰り延べる「圧縮記帳」による課税所得の減額も可能です。

この制度を利用するデメリットとして特筆すべき点はなく、農家の税負担の軽減対策としてぜひ利用したい制度の1つといえます。

特例の対象として認められる農業者の条件

農業所得用 確定申告の収支内訳書

artswai / PIXTA(ピクスタ)

本特例の対象として認められる農業者の条件は、青色申告により確定申告をする以下の農業者である必要があります。

● 認定新規就農者(個人)

● 認定農業者(個人・農地所有適格法人)

● 人・農地プランの中心経営体であること(令和3年度からの追加要件)

ただし各農業者が作成する農業経営改善計画などに、この特例を活用して取得する農業用固定資産の記載があることが要件です。新たに農業用の固定資産を取得する場合は、事前に計画への記載や承認が必要となるため注意しましょう。

実際どのくらいお得? 課税額シミュレーション

課税額の試算

hiroshi / PIXTA(ピクスタ)

農業経営基盤強化準備金を活用するうえでは、実際にどのくらいの税制メリットがあるのかを理解しておく必要があります。そこで交付金を準備金として積み立てた場合とそうしなかった場合の税金額について、計算式を理解するとともにシミュレーションしておきましょう。

農産物販売額を700万円・農業経費等600万円・交付金500万円を受け取るとした場合のシミュレーション

・交付金を準備金として積み立てていたケース

収入:1,200万円 (農産物販売額700万円+交付金額500万円)
経費:1,100万円 (農業経費等600万円+準備金繰入500万円)
課税対象所得:100万円

税額(所得税率12%):12万円(税率は総合課税を勘案し12%。農外所得、各種控除はないものとする)

・交付金を準備金として積み立てていないケース

収入:1,200万円 (農産物販売額700万円+交付金額500万円)
経費:600万円 (農業経費等600万円)
課税対象所得:600万円

税額(所得税率12%):72万円(税率は総合課税を勘案し12%。農外所得、各種控除はないものとする)

交付金を準備金として積み立てた場合と積み立てていなかった場合とでは、年間60万円もの違いが現れます。農業経営の安定化にも欠かせない制度です。

ただし、控除には限度額があるので注意

積み立て時の損金算入には限度額があり、その年(事業年度)の所得額以上の金額は積み立てできません。積み立てたい金額と所得額を比較し、どちらか少ないほうを準備金として算入可能です。

また圧縮記帳にも限度額があり、準備金を取り崩した額とその年(事業年度)に受領した交付金額のうち、農業用固定資産の取得にあてた金額の合計額とその年の所得額を比較し、少ないほうを準備金にできます。

ただしいずれも農業経営改善計画に記載する期限を過ぎると、積み立てた準備金は一括収入に組み込まれるため注意が必要です。購入が未達の場合は計画自体を更新しましょう。

また農地の購入予定として積み立てた準備金で農機具を購入するなど、本来の計画とは異なるものを購入した場合も適用されません。

詳細は、農林水産省「農業経営基盤強化準備金」のページ 所収の「農業経営基盤強化準備金制度パンフレット(令和3年度版)」を確認してください。

農業経営基盤強化準備金に関するよくある疑問

農業経営基盤強化準備金のQ&A

mits / PIXTA(ピクスタ)

農業経営基盤強化準備金に関するよくある疑問に「積み立てられる交付金の種類とは?」、「準備金の対象となる資産とは?」、「農業用機械をリースで取得した場合の扱いとは?」などが挙げられます。

税負担の軽減にもつながる農業経営基盤強化準備金制度ですが、積立金で購入できるのは農業に関する資産のみです。ここでは3つのよくある疑問について詳しく解説していきます。

積み立てられる交付金の種類は?

農業経営基盤強化準備金として積み立てられる交付金は、2020年10月現在以下の通りです。

● 畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)
● 米・畑作物の収入減少影響緩和対策交付金(ナラシ対策)
● 水田活用直接支払交付金

予算年度によって変更がありますので、必ず、農林水産省「農業経営基盤強化準備金」のページ や、このページに記載されている問合せ先(農政事務所・農政局)でご確認ください。

準備金の対象となる資産にはどんなものが含まれる?

農業経営基盤強化準備金制度の対象となるのは、農業機械や出荷調整施設など農業に関する資産に限られる

kazu / PIXTA(ピクスタ)

農業経営基盤強化準備金制度の対象となるのは、農業に関する資産に限られます。対象となる資産と適用品目の例は次のとおりです。

● 農用地(田、ほ場、樹園地、採草放牧地など)
● 機械及び装置(電動機、トラクター、耕うん整地用機具、防除用機具、栽培用機具、飼養管理用機具など)
器具及び備品(構築物でないビニールハウス、農作業管理等用電子計算機、農業用測定機器、低温貯蔵庫など)
● 建物及び附属設備(農産物集出荷調整施設、電気・照明設備、給排水設備、ガス設備、消火設備など)
● 構築物(温室、果樹棚、用水路、農用井戸、野生動物用防御柵など)
● ソフトウエア(農作業管理ソフト、残留農薬測定用解析ソフト、ほ場管理用システムなど)

また令和2年10月5日以降からは、農業用に使用するパワーショベルなどの自走式作業用機械についても農業経営基盤強化準備金制度の対象資産となりました。ただし農業で使用するトラックやフォークリフトなどの車両は、対象外であるため注意が必要です。

出典:農林水産省「農業経営基盤強化準備金」のページ 所収
 「農業経営基盤強化準備金制度パンフレット(令和3年度版)」
 「農業経営基盤強化準備金制度の対象資産例」

農業用機械をリースで取得した場合の扱いはどうなる?

農業経営基盤強化準備金制度は、取引の契約内容によって対象可否が変わります。

農業用機械をリースにより取得した場合、対象となるのは「所有権移転ファイナンスリース」のみです。取得額は契約時の総額となり、取得のための国庫補助金などがある場合は、その分を控除した額で取得額とみなされます。

一方、賃貸借契約の扱いとなる「オペレーティングリース」や「所有権移転外ファイナンスリース」は、資産を取得したことにはならないため対象外です。

リース用のトラクター

tsukat / PIXTA(ピクスタ)

農業経営を取り巻く市場環境や制度、政策は常に変化しており、計画的な農業経営の基盤強化は急務です。そのような状況下で農業の効率化や収入拡大につながるのが農業経営基盤強化準備金制度といえます。

特例の対象として認められる農業者の条件や準備金の対象となる資産に限定はあるものの、正しくそのしくみを理解して活用できれば、税負担の大幅な軽減につながるでしょう。

農業経営基盤強化準備金制度を利用したことがない方は、農林水産省「農業経営基盤強化準備金」のページ や当記事などを参考にしながらぜひ活用してみてはいかがでしょうか。

光田直史

光田直史

高校時代は化学を専攻し、農業に関する内容についても学んでいたことから、かねてより農業や地球環境に強い関心を持っていた。 卒業後は地元の運送業界や不動産業界に従事し、以後8年をIT企業の製造部門で勤務。事業部長と内部監査室長も兼任した。その経験を活かし、2020年よりライターとして活動開始。 ビジネス、金融、IT、マーケティング、不動産、農業など複数ジャンルでの記事執筆を手がけている。

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