キウイフルーツの収穫時期はいつ? タイミング・収量の目安と、大玉果実栽培のコツ
キウイフルーツは10月~11月が収穫時期とされていますが、早く収穫して追熟可能であることから、収穫時期の見極めが難しいという特徴があります。品種別に見た収穫時期の目安や、収穫タイミングの見極め方、大玉果実を栽培するコツについても紹介します。
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目次
キウイフルーツは早期に収穫して追熟できるフルーツです。そのため収穫時期や収穫のタイミングを見極めることが難しいとされています。実際にどのように見極めるのか、また品種によってどう異なるのかを解説するので、ぜひご覧ください。また、大玉果実を栽培するコツについても紹介します。
収穫時期の見極めが難しいキウイフルーツ
mao / PIXTA(ピクスタ)
キウイフルーツの収穫時期は、本来10月~11月にかけてとされています。しかし、完熟後に収穫するより、収穫してから追熟するほうが糖度が増しておいしくなる果実であるため、収穫時期がわかりづらいという特徴があります。
また、適切なタイミングで収穫しないと、霜害によって果実が腐敗してしまう恐れもあります。
一般的に、追熟後のキウイフルーツの糖度は、収穫時期が遅いものほど高くなります。反対に収穫を早めてしまうと、追熟しても甘くならないことがあるので注意が必要です。
以下の項では、品種ごとの収穫時期の目安を紹介しています。これを参考に、十分な糖度を得てなおかつ追熟後に十分に甘くなるタイミングで収穫するようにしましょう。
また、霜害による腐敗を回避するためにも、収穫時期が遅い品種であっても、霜が降りる前には収穫を済ませるようにしてください。
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【品種別】収穫時期の目安一覧
キウイフルーツの主な品種と果肉の色、早晩性、収穫時期の目安は以下のとおりです。レインボーレッドを除き、10月と11月が収穫の目安となります。
キウイフルーツの収穫タイミングをより正確に見極めるポイント
キウイフルーツは追熟が可能なフルーツですが、あまり早く収穫してしまうと追熟しても甘みが強くならない可能性があります。適切な収穫タイミングを見極めるためのポイントについて見ていきましょう。
収穫時期の糖度測定
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収穫時期は、品種ごとに屈折糖度計を用いた糖度測定を行い、目標とする追熟前の糖度に達しているかを確認して決めていきます。
追熟後の糖度が14度以上になると良食味であるといわれています。収穫時の糖度と追熟後の糖度の関係は品種によって異なるので、事前に目安となる収穫時糖度を確認しておきましょう。
例えば、緑色果肉の代表的な品種であるヘイワードは、収穫時に6.2度以上の糖度がないと、追熟しても糖度が14度以上になりにくいとされています。
収穫予測にAIを活用する試みも
すでにAI(人工知能)を活用した収穫時期予測の試みが行われています。
香川県農業試験場で長く落葉果樹の研究と栽培指導、後継者育成に従事した末澤克彦さんは、「国内の各農家が一丸になって "世界と戦える日本の農業" をつくっていきたい」という意志を持ち、農家のICT活用とデータ共有を推進するべく、Orchard&Technology株式会社を立ち上げました。
果樹としての国内の歴史が比較的浅く、栽培から流通まで制約が少ないキウイフルーツを選び、収穫予測と収量を最大化させるための作業をリコメンドする機械学習モデルを、パートナー企業であるキーウェアソリューションズ株式会社とともに構築しました。
まず、末澤さんが蓄積してきた栽培データ(開花日、収穫までの果実のサイズ変化、収穫日などの時系列データや収穫・出荷時のサイズと糖度など)と、気象データをAIに学習させました。
そしてAIの構築した学習モデルを農家のニーズにあうように試行錯誤して洗練させていきます。
最終的にこの学習モデルを搭載したソフトウェア「アグリコンシェルジュ」に仕立てることができました。ユーザーである農家は、開花日や果実の大きさなどを定期的に入力するだけで収穫適期と収量増のための作業がわかるのです。
出典:マイクロソフト株式会社 お客様事例「目指すのは国際競争力の強化――AI 技術で栽培ノウハウをシステム化した『アグリコンシェルジュ』が、日本の農業を変える」
収益性は? キウイフルーツの収量や栽培可能年数の目安
mo2 / PIXTA(ピクスタ)
キウイフルーツの栽培を始める前に、収益性についても知っておく必要があります。すでにキウイフルーツの栽培を実施している場合でも、平均的な収益性について理解しておくことが必要です。収益性や平均的な収量、栽培可能な年数について見ていきましょう。
キウイフルーツの目標収量と経営収支の例
山口県の「令和3年度果樹栽培指導指針」によれば、キウイフルーツの代表的な品種であるヘイワードを栽培した場合、10a当たりの収量目安は2,500kgです。精果率は90%以上なので、10a当たりの出荷量は2,250kgと考えることができます。
販売単価は1kg当たり408円なので、10a当たりの粗収益は918,000円と計算できます。この収益から経営費(肥料費、農薬費、光熱動力費、農具費、修理費、販売費用、管理費用、減価償却費など)の399,922円を差し引くと519,078円です。
つまり、10aのキウイフルーツ農園を経営することで、52万円弱の利益を得られると考えられます。
また、キウイフルーツの栽培にかかる時間は月によっても異なりますが、剪定や受粉、収穫のあるときは労働時間が長くなる傾向にあります。
種類によっても異なりますが、ヘイワードでは受粉時期の5月の作業量が最も多く、10a当たり平均48.8時間です。次に多いのは収穫時期の11月で、10a当たり平均37.0時間となっています。
年間の労働時間は197.5時間で、このうち60時間は剪定作業、40時間が受粉作業にかかっています。この2点の効率化を図るだけでもキウイフルーツ栽培の負担は大きく軽減されるでしょう。
出典:山口県 技術・経営情報・技術資料 所収「キウイフルーツ」
着果までにかかる年数と経済樹齢
キウイフルーツを栽培し始めてから、着果して売上が発生するまでには少なくとも4年ほどかかるとされています。経済樹齢(栽培可能な年数)は30年ですが、環境などによっては20~25年で寿命になることもあるようです。
10年や15年の早いタイミングで収量が落ちてきた場合には、樹勢を盛り返すための工夫が必要です。
キウイフルーツの多収化&大玉化をめざす栽培管理のコツ
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キウイフルーツによる収益を増やすためには、単位面積当たりの収量を増やすことを考えるべきです。また、果実の大玉化をめざして果実当たりの単価増を図ることも必要です。多収化や大玉化を実現する栽培管理のコツについて見ていきましょう。
キウイフルーツ栽培に適した土作りと施肥量の目安
キウイフルーツを栽培する土壌は、排水状態に優れていることが好ましいとされています。特に水田からキウイフルーツ園地に転換した場合には、排水に注意して土壌を改良していきましょう。
土壌pHは弱酸性の6.0~6.5が適しています。必要に応じて石灰を施用し、土壌のpHを整えておきます。
肥沃な土壌にするためには、有機物や完熟たい肥を施用することも必要です。10a当たり1t~2tの有機物、完熟堆肥を使って土作りをしていきます。
施肥のタイミングは収穫が終わってすぐの11月中旬ごろ(基肥)と、3月上旬ごろ(春肥)、5月下旬ごろ(夏肥)、9月上旬ごろ(秋肥)の4回です。
肥料全体の量を1とすると、基肥は2/5、春肥と夏肥、秋肥はそれぞれ1/5程度に施肥しましょう。(10aに30本ほどのキウイフルーツの樹を栽培することを想定した場合)。
糖度にも影響する「摘蕾・摘果」
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キウイフルーツの大玉化や高品質化のためには、摘蕾・摘果作業は必須といえます。特にレインボーレッドなどの着蕾数が多い品種では、摘蕾・摘果による着果数の調整によって果実の大きさや糖度が大きく変わってくるためです。
レインボーレッドの結果枝の基部や先端部、側花のない中心花は、果実が小さくなる傾向にあります。大玉化を図るのならば、全体の中段に着生している中心花を3~5個のみ残し、残りの側花はすべて摘蕾することが望ましいでしょう。
また、結果枝当たりの着果数を減らすことで糖度を増し、レインボーレッド特有である中心部の赤みを強くすることができます。結果枝当たりの果実を1個ないしは2個に絞り、葉花比を5以上にするように摘果しましょう。
なお、受粉後10~20日後が摘果に適したタイミングです。この時期に行うことで果実の大きさが揃いやすくなります。
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多大な減収をもたらす病害虫の適期防除
収量確保のためには、病害虫の適期防除も重要です。キウイフルーツの栽培においては、「花腐細菌病」には特に注意しなければなりません。
花腐細菌病とは、花が落ちたり果実が奇形化したりする病気で、開花期に雨がよく降るとかかりやすくなります。以下の方法で防除していきましょう。
・剪定をこまめに行い、過繁茂にならないようにする
・通風や採光を良くする
・適切に施肥をする
・発芽前と生育期(4~5月ごろ)に農薬を散布する
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キウイフルーツ栽培では、大玉化と高糖度化が収益性向上につながります。
追熟後の糖度を見越した収穫時期の見極めとともに、土作りから摘蕾・摘果、剪定、病害虫防除まできめ細かい栽培管理で大玉化・高糖度化をめざしていきましょう。
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林泉
医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。