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【オヒシバ対策】除草剤が効かない? 抵抗性イネ科雑草の効果的な除草方法

【オヒシバ対策】除草剤が効かない? 抵抗性イネ科雑草の効果的な除草方法
出典 : kita/ PIXTA(ピクスタ)

「オヒシバ」は、日本全国の道端や庭先、空き地などの至るところで見られる一般的な雑草です。踏みつけに強く、引き抜きにくいうえに繁殖力が旺盛なので、放置しておくと一面に繁茂することもあります。近年はグリホサート剤への抵抗性が報告されており、除草作業が一層困難になっています。

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「オヒシバ」は野菜畑や大豆畑で大量発生することがあり、水田の畦畔に繁茂してカメムシなど害虫のすみかとなることもあるため、早めの防除が重要です。本記事では、グリホサート剤に対する抵抗性が報告されているオヒシバをいかに効率的に防ぐかについて解説します。

除草剤が効かない? 対策が難しい雑草「オヒシバ」

オヒシバ 穂

tamu1500/ PIXTA(ピクスタ)

近年、除草剤が効果を示さないために各地で問題になっている「オヒシバ」について、その生態や、見た目がよく似ている「メヒシバ」との区別方法について解説します。

オヒシバはグリホサート抵抗性個体が確認されたイネ科の一年生雑草

オヒシバ(学名:Eleusine indica)は、イネ科オヒシバ属の一年生雑草で、本州以南では農耕地以外の道端や庭先でも普通に見られます。日当たりのよい場所を好み、ほかの雑草が生えないような、踏み固められて土がむき出しになった地面でもよく発生します。

生育期間は4月頃から10月頃までと長く、その間に何世代もの発生を繰り返します。繁殖力が強く増殖速度も速いため、水稲をはじめ多くの野菜作、大豆作などで問題になります。繁茂するとカメムシなどの害虫のすみかとなり、作物への被害を増長させる要因にもなります。

生育環境により草丈は異なり、短いものでは30cm、長いものでは80cmほどになります。葉は細長くやや硬めで、縁には柔らかい白い毛が生えています。茎が分岐して株立ちし、ひげ根を強く張るため引き抜くのは困難です。

8~9月にかけて、茎の先端に数本の緑色の穂が放射状に出ます。穂の数は1~2本から10本ほどで、軸の長さは5~10cmと、茎によって異なります。小穂が密に並び、穂が見え始めてから2週間ほどで種子が形成されます。

穂が見えたら、種が形成される前に早めの防除対策が重要です。これまではグリホサート系の非選択性除草剤による除草が主流でしたが、近年では抵抗性の獲得が各地で報告されているため、新たな防除のしくみを考える必要があります。

オヒシバとメヒシバの見分け方

メヒシバ

メヒシバ
ひろし58/ PIXTA(ピクスタ)

オヒシバと似た雑草に、イネ科メヒシバ属のメヒシバがあります。漢字で書くとオヒシバは「雄日芝」、メヒシバは「雌日芝」となります。

一般的にオヒシバは株や茎が太く短く、葉は硬く、全体的に頑丈な印象があります。それに対して、メヒシバは草丈が40~80cmと比較的高く、株や茎は細く、全体的に柔らかい印象があります。

最も顕著な違いは穂の形状です。オヒシバは小穂が密に付いた穂が茎の先端から直立して掌状に広がります。一方、メヒシバは細い茎に沿って細長い穂が展開し、先端部はやや下向きに垂れます。

メヒシバにおける除草剤に対する抵抗性の発達は、日本ではまだ報告されていません。ただし、海外では抵抗性を示す系統が確認されているため、注意が必要です。

メヒシバは、穂が出ていない段階ではオヒシバと見分けがつきにくいものの、同じイネ科の雑草であるため、オヒシバと同様の方法で防除できます。また、両者は生育環境が似ており、しばしば同じ場所に発生します。

【農地用】グリホサート抵抗性オヒシバに効く! おすすめ除草剤3選

従来、オヒシバはグリホサート系除草剤で防除できていましたが、抵抗性の獲得が増加しています。一度抵抗性を獲得すると、同系統の除草剤だけでは防除できません。

そこで以下では、グリホサート抵抗性オヒシバでも効果のある除草剤を3つ取り上げ、それぞれの有効成分や製品特性、使用方法などを解説します。

※ここで紹介する農薬は2023年5月10日現在、「一年生雑草」に対して登録されているものです。実際に使用する際には、使用時点で作物に対する農薬登録情報を確認し、ラベルをよく読み、使用方法と使用量を守ってください。

また、使用する際は、オヒシバの繁茂状況や株の大きさに応じて、使用量を調整してください。過剰な散布や高濃度の散布は必ずしも効果を増大させるわけではなく、逆に雑草の抵抗性獲得を助長する可能性があります。

非選択性茎葉処理除草剤 「バスタ液剤(グルホシネート)」

BASF Agricultural Solutions YouTube公式チャンネル「バスタの特長紹介」

「バスタ液剤」は、グルホシネートを主成分とする非選択性茎葉処理除草剤です。水稲をはじめとする穀類、豆類、野菜、果樹など90種類以上の作物に使用可能で、イネ科だけでなく広葉雑草や一年生・多年生といった多様な雑草に効果を発揮します。

さらに、バスタ液剤は、高い速効性と持続性を有しています。散布後2~5日で効果が現れ、7~10日後までに完全に効果が現れます。また、抑草期間は40〜50日あります。

また、人や環境、周囲の作物への影響が少ないため、安心して使用できます。茎葉を枯らすものの根は枯らさない特性から、水田の畦畔では畦崩れを防ぐ効果もあります。

使用方法は作物により異なりますが、例えば水田畦畔に散布する場合は、10a当たり500~1,000mlの薬量を100~150Lの水で希釈し、雑草の茎葉に直接散布します。散布の際、作物には直接かからないよう注意が必要です。

なお、専用のバスタノズルLV35を使用することにより、10a当たり水量30~40Lの少量散布が可能になりました。
BASFジャパン株式会社「高濃度少水量散布について」

水田畦畔以外の作物については、必ず使用前にラベルを確認し、使用量を遵守してください。

オヒシバに対するバスタ液剤の使用方法については、以下の動画も参考になります。

株式会社NewsTV YouTube小袿チャンネル「農家を悩ます問題雑草「オヒシバ」対策にバスタがおすすめ!その理由とは?」

生育期処理除草剤 「ナブ乳剤(セトキシジム)」

「ナブ乳剤」は、セトキシジムを有効成分とするイネ科専用の茎葉処理除草剤です。イネ科植物に対してのみ除草効果を発揮するため、イネ科以外の多くの作物に登録があり、全面散布ができます。

農薬の浸透移行性が高く、散布後の薬剤が乾燥したあとで雨が降っても、その影響をほとんど受けません。さらに、根まで枯らす効果があるため、散布の翌日以降に刈り取ってもほとんど再生しないという特長があります。

イネ科以外の作物であれば、周囲のほ場へのドリフト(散布薬剤の飛散)も心配ありませんが、イネ科の作物(水田作物)には直接かからないよう注意が必要です。水田畦畔での散布はできません。

オヒシバの防除には、オヒシバが3~5葉期に達した時に散布すると効果的です。仮にタイミングが遅れ、穂が出て花が開いてしまった場合でも、散布数日後に刈り取ってほ場外で処分することで再生を防ぎ、新たな種子からの発生を防ぐことができます。

また、オヒシバ以外の一年生イネ科雑草に対しても効果があります(スズメノカタビラを除く)。いずれの雑草も3~5葉期に散布すると効果的です。薬量や希釈倍率は登録作物によって異なるので、必ずラベルを確認し、指示された用量を守ってください。

水田・休耕田に使える 「カソロン粒剤6.7(DBN)」

「カソロン粒剤」は、DBN(ジクロロベンゾニトリル)を主成分とする粒状の除草剤です。DBNの含有率は2.5%、4.5%、6.7%の3種があり、それぞれ登録されている作物や雑草が異なります。

カロソン粒剤6.7は、「りんご」や水田畦畔に登録があり、防除が困難とされるヨモギやスギナに対しても高い効果を示します。

粒剤なので、散布が容易であることも特長の1つです。水田畦畔での除草に使用する場合、収穫後の秋冬期から春期にかけて、オヒシバが発生する前や発生初期に全面土壌散布を行うことで、種子の発芽を抑制できます。散布量の目安は、10a当たり4~6kgです。

より効果的な除草方法は? 畑のオヒシバ対策のポイント

畦畔の除草剤散布

天空のジュピター / PIXTA(ピクスタ)

畑作や水田作を妨げる雑草は、オヒシバ以外にもたくさんあります。これらの雑草も同時に防除したい場合や、除草剤のコストをできるだけ抑えたい場合に役立つポイントを解説します。

広葉雑草との同時処理には、グリホサート系除草剤との併用が効果的

ツユクサ オヒシバ スギナ

ゆず / PIXTA(ピクスタ)・dorry / PIXTA(ピクスタ)・ vremya / PIXTA(ピクスタ)

イネ科の雑草であるオヒシバと広葉雑草は、同じ除草剤では防除できない場合があります。この2つを同時に除草するには、「タッチダウンiQ」や「ラウンドアップマックスロード」などのグリホサート系除草剤と、非グリホサート系除草剤の組み合わせが推奨されます。

グリホサート系の除草剤は、多くの作物に適用可能で、一年生・多年生雑草全般に使用できます。スギナ、ツユクサ、クズ、ササといった難防除雑草も、この除草剤で効果的に枯らすことができます。

しかし、オヒシバやオオアレチノギク、ネズミムギといった雑草では、グリホサート系除草剤に対する抵抗性が確認されています。そのため、同系統の除草剤を連続して使用せず、非グリホサート系除草剤とローテーションして使用することが求められます。

散布用ノズルの選択で除草剤の効果を最大化

BASF Agricultural Solutions YouTube公式チャンネル「バスタでの高濃度少水量散布(短編)」

異なる系統の非選択性除草剤を使用する場合、除草剤の特性に応じた散布ノズルを選ぶことで、その効果を最大限に引き出すことが可能です。

非選択性除草剤は、主に「接触型」と「浸透移行型」の2つに分類されます。

接触型の除草剤にはグルホシネート系(例:バスタ液剤)やパラコート・ジクワット系(例:プリグロックスL)があります。

これらは葉や茎などに直接薬剤が接触した部分だけが枯れ、根は影響を受けません。雑草の葉や茎にしっかりと散布するためには、「多量散布用ノズル」が適しています。

一方、浸透移行型の除草剤は、薬剤が葉から吸収されて植物全体に広がり、根まで枯れる特性があります。除草剤が葉の一部に付着すればよいため、必要以上に周囲に広がらないよう「少量散布用ノズル」が適しています。

状況に合わせて、刈り払い機や耕起による除草も検討を

草刈りや耕起を行うことで、除草剤の使用を抑えるのも有効な手段です。オヒシバは根の張りが強く、大きくなると引き抜くのが困難になりますが、発芽後すぐの若い段階であれば、浅く耕起することで効果的に除草することが可能です。

刈り払い機は、狭いほ場から大規模なほ場まで、面積に応じたさまざまな機種があるので、自身のほ場に適したタイプを選びましょう。

▼刈り払い機を選ぶ際は、以下の記事も参考にしてください。

作物の生育段階や除草剤の使用可能な時期を考慮しながら、除草剤と物理的な除草法を適切に使い分けましょう。作物によっては、中耕も有効な手段となります。

オヒシバは生育力が強く、除草が難しいため、大きな課題となっています。特に近年では、グリホサート系除草剤に対する抵抗性の獲得が報告されており、多くの農家を悩ませています。

グリホサート系の除草剤は、多種多様な雑草に対して高い効果を発揮しますが、そのためには適切な使用が求められます。

また、異なる系統の除草剤とのローテーションを用いたり、耕起などの物理的な除草法とを組み合わせることで、抵抗性の獲得を防止することが重要です。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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