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農地トラブルを回避!農地を円滑に貸し借りする方法とは?
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  • 農業経営

農地トラブルを回避!農地を円滑に貸し借りする方法とは?

農業を安心して行うために、農地の貸し借りは円滑に話を進めていきたいものです。ところが、貸し手と借り手の思いが食い違って、トラブルになるというケースも珍しくありません。この記事では、円滑に農地を貸し借りするための方法を解説します。

各市町村に設置されている農業委員会は、「農地の貸し借りは、農業委員が立ち会いのもと、書面で正式な手続きをするように」と地域の農家に求めています。

口約束だけで貸し借りすると、どのような問題が起きるのでしょうか。

口約束での農地の貸し借りはトラブルのもと

農地賃借の約束 イメージ

Ushico / PIXTA(ピクスタ)

農地法に定められていること

農地の賃借を含む権利の移動について農地法は次のように定めています。

農地法の第三条第一項「農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。」

出典:農地法第三条

そのあと、例外などの条件についての詳しい条文が続き、第六項で「第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。」としています。

農地を貸し借りする場合、基本的には口約束での契約は効力がないということになります。

民法上は口約束で貸し借りの契約は成立しますが、農地の賃貸契約に関しては、農地法の制約により異なる扱いになります。

ヤミ耕作とは?

「農業委員会に正式な手続きをせず、知人・親戚に口約束で農地を貸して(借りて)いる」
「農業委員会に更新などの手続きをせずにそのまま貸して(借りて)いる」

このように農業委員会への手続きを行わず農地を貸し借りすることを「ヤミ耕作」「ヤミ小作」といいます。

農地法に違反していることはもちろんですが、貸し手・借り手間のトラブルのもとになることがあります。

ヤミ耕作を続けるとどうなる? 

手続きをしないままヤミ耕作を続けることで、貸し手・借り手に起こり得る主な問題を挙げます。

貸し手(地主)

・農地返却時に借り手の同意が必要。離作料を請求される場合がある。
・農地を20年以上貸している場合、民法第百六十三条により、借り手に農地の所有権がわたってしまう(農地の賃借権の時効取得)。
・相続が発生した際、農地の賃貸契約が無効になることがある
・相続が発生した際、農地を誰に貸しているのか不明になる場合がある。

出典:「民法」

借り手

・突然、農地の返却を求められる可能性がある。
・相続が発生した際に、農地を誰から借りているのか不明になる場合がある。

【農地の貸借方法 その1】農地法第三条の許可を得る

契約書 イメージ

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耕作する目的で農地の貸し借りをするための「賃借権」を取得する方法は2つあります。

1つ目は農業委員会への手続きを行い、「農地法第三条」の許可を得る方法。
2つ目は「農業経営基盤強化促進法」に基づき、市町村が定める「農用地利用集積計画」により、利用権を設定・移転する方法です。

農地法の場合は契約期限になっても、両者による解約の合意がない限り、原則として貸借は解約されません。権利取得の要件は下記のとおりです。

個人の権利取得の要件

1. 農地のすべてを効率的に利用すること

2. 必要な農作業に常時従事(原則、年間150日以上)すること

3. 一定の面積を経営すること(農地取得後の農地面積の合計が原則50a。北海道は2ha以上(※))
(※)面積は地域の実情に応じて農業委員会が引き下げることが可能でなので、各市町村の農業委員会に問い合わせてください。

4. 周辺の農地利用に支障がないこと(水利調整に参加しない、無農薬栽培が行われている地域で農薬を使用するなど、周辺の農地利用に支障をきたす行為を行わないこと)

出典:農林水産省ホームページ「農地の売買・貸借・相続に関する制度について」所収の「個人が農業に参入する場合の要件」

法人の権利取得の要件

基本的な要件は個人と同じです。ただし、個人の要件の2「必要な農作業に常時従事(原則、年間150日以上)すること」については法人には該当しません。

「農地所有適格法人の要件」を満たしていれば、農地の所有も、借りることも可能です。

農地の貸し借りのみ行い実際の農作業は委託するなどの場合は、適格法人の要件を満たす必要はありません。

農地所有適格法人の要件

1. 法人形態:株式会社(公開会社でないもの)、農事組合法人、持分会社
2. 事業内容:主たる事業が農業(自ら生産した農産物の加工・販売等の関連事業を含む)[売上高の過半]
3. 議決権:農業関係者が総議決権の過半を占めること
4. 役員:役員の過半が農業に常時従事する構成員であること。役員又は重要な使用人が1人以上農作業に従事すること

一般法人の要件

1. 貸借契約に解除条件が付されていること
 (農地を適切に利用しない場合に契約を解除すること)

2. 地域における適切な役割分担のもとに農業を行うこと
 (集落での話し合いへの参加、農道や水路の維持活動への参画など )

3. 業務執行役員又は重要な使用人が1人以上農業に常時従事すること
 (農作業に限らず、マーケティング等経営や企画に関するものであっても可)

出典:農林水産省ホームページ「農地の売買・貸借・相続に関する制度について」所収の「法人が農業に参入する場合の要件」

【農地の貸借方法 その2】「農用地利用集積計画」の利用権を設定する

農地集積のイメージ

まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

続いて、市町村が定める「農用地利用集積計画」により、賃借の利用権を設定・移転する「農業経営基盤強化促進法」について解説します。

農用地利用集積計画とは

農用地利用集積計画とは、農地の貸し借りの個々の権利移動を1つの計画にまとめて、集団的に行うものです。

市町村が農業委員会の決定を経たうえで計画を立て、公告することによって、利用権が設定されます。

契約期間が終了すれば、貸し手に農地が自動的に返還されるため、借り手から離作料を請求されることもありません。再度計画を作成・公告することで利用権の再設定もできます。

利用権設定の要件

利⽤権の設定等を受ける場合は、下記の要件すべてに該当することが必要です。

1. 農⽤地の全てを効率的に耕作すること

2. 農作業に常時従事すること

3. 農作業に常時従事しないと認められる者については 1のほか次の要件の全てを満たすこと
(ア)地域の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を⾏うと⾒込まれること
(イ)その者が法⼈である場合は、業務執⾏役員等のうち⼀⼈以上の者が耕作の事業に常時従事すること


※ 農⽤地利⽤集積計画に、農⽤地を適正に利⽤していない場合には貸借を解除する旨の条件が定められている必要がある。

出典:農林水産省ホームページ「農地の売買・貸借・相続に関する制度について」所収の「利⽤権設定等促進事業(農⽤地利⽤集積計画)の概要」

【農地の貸借方法 その3】農地中間管理機構(農地バンク)の活用

農地についての交渉 イメージ

YUMIK / PIXTA(ピクスタ)

農地法や農業経営基盤強化促進法による方法のほかに、「農地中間管理機構(農地バンク)」を活用するという選択肢もあります。

農地中間管理機構とは、2014年度に全都道府県に設置された、農地の仲介役を担う公的組織です。機構が農地を借り上げ、借りたい人に貸す仕組みで、賃料や条件の交渉なども担います。

農地バンクでの農地貸し借りの流れ

1. 農地を貸したい場合は農地バンクの担当者に申し出て、必要書類を提出します。機構が農地を判定し、貸出期間や賃料を相談します。

2. 毎年6月頃(地域によって異なる)に、市町村のサイトなどで借り手を公募します。応募があれば借り手の希望条件を聞き、条件が合えば契約完了です。合わない場合は機構が再度交渉します。

3. 契約が決まれば機構が農地を借り上げ、利用権は機構に移ります。貸出期間は10年以上を設定し、必要に応じて農地を整備します。

4. 機構から農地を借り手に貸し出します。

5. 借り手は賃料を機構に支払い、貸し手は機構から賃料を受け取ります。

農地バンク活用のメリット

最大のメリットは休耕地を活用できることです。水路などは一度ふさぐと、農業を再開した時に多額の費用と労力がかかるため、維持している場合が多く、コストがかかります。

農地を貸し出せば収益となり、「協力金」が交付される場合もあります。

公的機関の信頼度の高さも魅力です。貸付期間終了後に農地は返還されるので、貸し手も安心です。農地を借りたい人は集約化した農地を借りることができ、長期的に安定した営農が可能です。

参考:2014年の農地バンク発足以降、担い手への農地集積は進展しており、令和元年度(2019年度)の担い手への農地集積率は57.1%に達しています。

担い手への農地利用集積の実績推移

出典:農林水産省「耕地及び作付面積統計」、農林水産省ホームページ「農地集積の促進について」所収「担い手の農地利用集積面積の推移について(平成8年3月末~令和2年3月末)」、農林水産省報道資料2020年6月26日「農地バンクによる農地の集積・集約化(2019年度)」よりminorasu編集部作成

農業を続けることが困難になったとき、耕作放棄地にせず農地として活かしてくれる担い手に貸し出したい。就農したとき、農地を購入するのではなく、今まで維持されてきた農地を借りたい。

そうしたときに、口約束ではなく正式な手続きを済ませておくことで、貸し手も借り手も安心でき、地域の農業の持続にも貢献できます。

貸し借りの際は、まず地域の農業委員会や農地バンクに相談し正しい手続きについて確認して進めましょう。

上澤明子

上澤明子

ブドウ・梨生産を営む農家に生まれ、幼少から農業に親しむ。大学卒業後は求人広告代理店、広告制作会社での制作経験を経て、現在フリーランスのコピーライターとして活動中。広告・販促ツールの企画立案からコピーライティング、取材原稿の執筆などを行う。農業専門誌の制作経験があり、6次産業化や農商工連携を推進する、全国の先進農家・農業法人、食品会社の経営者の取材から原稿執筆、校正まで携わったことから農業分野のライティングを得意とする。そのほか、食育、子育て、介護、健康、美容、ファッションなど執筆ジャンルは多岐にわたる。

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