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稲刈りに最適な時期はいつ? 適期収穫を実践するためのポイントと最新技術
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  • 生産技術

稲刈りに最適な時期はいつ? 適期収穫を実践するためのポイントと最新技術

丹精込めて育てた水稲を良質米として収穫するために、稲刈りの適切な時期を確認しておきましょう。収穫の遅れや早刈りは、胴割米や未熟米などの品質低下を招く恐れがあります。収穫シーズンを迎える前に、本記事で収穫適期の正しい予測方法をおさらいしておきましょう。

稲刈り時期の見誤りは、米の品質低下や収量減につながるリスクとなります。近年は猛暑などの異常気象の影響もあり、収穫適期の判断に悩む農家は多いでしょう。収穫のベストタイミングを逃さないためのポイントを解説します。

早い or 遅いとどうなる? 稲刈りの時期が品質に与える影響

収穫時期は米の出来栄えに影響する

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良質な米を収穫するためには、稲刈りの適期をしっかり見極めることが大切です。収穫が早すぎたり遅すぎたりすると、米の出来栄えや収穫量に大きく影響します。

早刈り・刈遅れで未熟米が多くなる

収穫が適期より早すぎた場合や、逆に早生品種などで刈遅れた場合に、未熟米の割合が多くなります。未熟米は、成熟しきっていない粒のことで、緑色が残っているものは青米とも呼ばれます。

未熟米が多くなると、籾すりの際に出るくず米の量が増え、最終的な収量が少なくなる恐れがあります。また、米の水分量が多いため、乾燥作業に手間や時間がかかることも考慮に入れなければなりません。

高温障害による白未熟粒

高温障害による白未熟粒
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

収穫が遅いと胴割れ米に

収穫が適期より遅すぎると、米の色艶が悪くなり、亀裂が入る胴割れ米が発生しやすくなります。胴割れは、水分量が減り乾燥することで起きる現象で、精米時に米粒が割れやすくなり仕上がりや食味が悪くなります。

稲刈りの適期を見極める方法

籾の色づき度合いは収穫適期を見極める手掛かり

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水稲は、生育状況を分析することで、大体の収穫適期を予想することができます。具体的な予測方法とポイントを確認しましょう。

収穫適期の予測は、出穂期からの積算温度が基本

水稲の収穫適期は、出穂期からの積算温度を目安に予測するのが基本です。積算温度とは、平均気温を加算した値のことです。出穂とは穂から1粒以上の籾が確認できる状態のことで、40~50%の水稲で出穂が見られたら出穂期と見なします。

一般的に、水稲は出穂から45日経過し、積算温度が1,000℃に到達したタイミングが刈り取り時期とされます。実際の適期は品種によって異なるため、栽培している品種の積算温度を確認しておきましょう。

こしいぶきなどの早生品種なら、出穂から35日頃、積算温度は950~1,000℃を目安とします。

コシヒカリなどの中生品種は、出穂からおよそ40日後頃、積算温度が1,000~1,050℃になる頃が適期です。

晩生品種の新之助などは、出穂から50日頃、積算温度が1,050~1,100℃に達した段階で収穫を行います。

品種ごとの刈取時期目安

品種ごとの刈取時期目安
出典: 新潟地域振興局農林振興部 「 【新潟地域】 稲作技術情報 No.5」、岡山県備南広域農業普及指導センター「営農技術情報(作物編)適期収穫で、良質米の生産を! 」よりminorasu編集部作成

出穂した水稲が成長する登熟期に、気温が高温傾向だった場合は、積算温度を50℃程度低めに設定し、早めの収穫予定を立てるようにしましょう。

都道府県によっては、地域のアメダスのデータなどをもとに積算温度の到達日を計算し、その年の収穫適期の目安を発表しています。参考データとして利用するのもいいでしょう。

「籾の黄化」を基準に判断する方法は、気候の影響を受けにくく精度が高い

黄化率は緑色の部分がない籾の割合を目視で確認する

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近年は、登熟期に当たる夏が猛暑になることが多くなり、積算温度による予測だけでは正確な収穫適期が判断しにくくなっています。そこで用いられているのが、黄化した籾の割合を調べる方法です。黄化した籾が85~90%になった状態が、刈り取り始めの目安になります。

黄化率は、目視で確認します。穂軸から枝が9本ほど生えているものを10本用意し、上位3~4本目の枝の籾が全て黄化しているかを見ます。10本中8本がその基準をクリアできていれば、刈り取り始めのサインです。

反対に、まだ黄化していない緑色の籾の割合(帯緑色籾歩合)から、収穫適期を調べることもできます。収穫適期となる帯緑色籾歩合は、籾全体の15%が目安です。

籾の水分率・玄米の整粒歩合でさらに予測精度を上げる

米の整粒歩合検査

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上記の予測方法に加え、籾の水分率や玄米の整粒歩合を確認することで、適期予測の精度を上げることができます。

収穫に適した籾の水分は、25%前後です。籾水分は、積算温度50℃で約1%低下することがわかっています。出穂期が曖昧な場合でも、その時点での籾水分がわかれば、25%に到達する積算温度を計算して収穫日を予測することもできます。

玄米による判定は、試し刈りして適期を確認する方法です。収穫した水稲を乾燥させた上で、脱穀・籾すりを行い、整粒歩合を調べます。整粒歩合70%が収穫のタイミングの目安です。(地域、品種などによって異なります。ご自分の地域の基準をご確認ください。)

収穫期を早めた場合における乾燥調整作業のコツ

籾乾燥機

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収穫した水稲は速やかに乾燥作業を済ませるのが鉄則です。特に台風など天候不良の影響でやむを得ず早刈りした場合や、極端な高温下で早生品種を収穫した場合は、収穫後の乾燥作業を丁寧に行いましょう。

早刈りの米は水分量が多いため、カビなどが発生しやすく、放置すると品質低下を招きます。水分量25%の籾は6時間程度(籾温度25℃)で、変質や変色を起こしたヤケ米になりやすくなることがわかっています。

水分量が30%以上の高水分籾を乾燥する場合は、乾燥ムラが出ないようにあらかじめ5~6時間の送風を行いましょう。乾燥機への張り込み量は6~7割にしておくと、さらにムラを起こしにくくなります。籾の水分量が19%以下になるまでは、送風温度は40℃以下に設定しておきます。

また、早刈りの水稲は収穫作業にも注意が必要です。コンバインで収穫する場合、水分が多い籾は損傷を受けやすいため、エンジンの回転数は低く設定します。刈り取り条数は小さくして、穀物流量が増えすぎないようにしましょう。

コンバインによる脱穀

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全国の稲刈り最盛期【2020年実績】

2021年の稲刈り時期を検討する前に、昨年2020年の収穫時期を振り返っておきましょう。

2020年の収穫期は全国的に平年よりやや早めの傾向でした。2020年の夏は、7月に日照不足などの天候不良がありましたが、8月以降は猛暑に見舞われた地域もありました。夏の高温傾向により収穫期が早まったと考えられます。

出典:農林水産省「作物統計調査 作況調査」

地方別の最盛期の傾向をまとめましたので、収穫時期の検討の参考にしてください。

沖縄地方

沖縄地方の水稲収穫の最盛期

日本で最も早く稲刈りの時期を迎える地域です。6月前後に収穫する米は、「超早場米」として出荷されています。秋にも収穫を行う二期作が盛んです。

九州地方

九州地方の水稲収穫の最盛期

宮崎県、鹿児島県では8月頃に収穫を始める早期栽培が実施されています。それ以外の地域では、おおむね10月に収穫シーズンを迎えるようです。

中国・四国地方

中国・四国地方の水稲収穫の最盛期

徳島県と高知県では早期栽培の収穫を8月に行っています。そのほかの県は9月が最盛期となる地域が多いようです。

近畿・中部・関東地方

近畿・中部・関東地方の水稲収穫の最盛期

ほとんどの地域が9月上旬から10月上旬に最盛期を迎えます。2020年のデータでは、3地方の中で最も稲刈りが早かったのは9月1日の千葉県、最も遅かったのは10月20日の群馬県でした。

北海道・東北地方

北海道・東北地方 水稲収穫の最盛期

9月末から10月上旬が最盛期に当たります。

最新技術を利用した効率的な収穫期予測

アプリによる稲の収穫適期診断 イメージ

Yoshi / PIXTA(ピクスタ)

収穫適期を見極めるには、水稲の生育状況を的確に判断できる経験や技術が必要です。目視による細かい確認作業も多く、労力や時間もかかります。こうした農家の負担を減らすため、最新技術を活用した適期の予測方法が開発されています。

黄化籾率を自動判定できる! 山田錦の刈取り適期診断アプリ

兵庫県では、スマホの写真撮影で黄化籾率を自動判定するアプリが開発されました。アプリは、兵庫県立農林水産技術総合センターと京都大学が、県内で生産が盛んな酒米「山田錦」の栽培のために企画しました。

専用トレーに乗せた籾をアプリで撮影すると、黄化籾率と刈り取り適期が表示されるしくみになっています。

出典:兵庫県立農林水産技術総合センター
「「山田錦」の黄化籾率と刈取り適期を推定するスマートフォン向けアプリ「Grains Cam」」
「酒米「山田錦」の刈取り適期診断アプリの開発」

黄化籾率の確認は、従来の目視でのやり方だと誤差や個人差が生じてしまいがちです。こうしたアプリが他品種用にも開発されれば、判定の精度が上がり、農家の労力も軽減されるでしょう。

山田錦 玄米と精米後の酒米

山田錦 玄米と精米後の酒米
出典:株式会社 PR TIMES(天山酒造株式会社 ニュースリリース  2020年10月30日)

ドローンを活用! 稲刈り適期の見極めをさらに容易に

水稲の収穫適期の正確な判断には、生育状況の観察が欠かせません。九州沖縄農業研究センターでは、ドローンを活用したより効率的な生育診断方法を研究しています。

研究では、赤外線などを感知するマルチスペクトルカメラを搭載したドローンを活用しています。水稲のほ場を撮影し、撮影データをもとに水稲の植生を可視化した「NDVI指数」(注)マップを作成しました。

(注)NDVI指数=正規化植生指数(Normalized Difference Vegetation Index)

出典:
農研機構 九州沖縄農業研究センター 2019年の成果情報「圃場単位の生育診断を効率的に行うためのドローンを利用した広域リモートセンシング技術」
農林水産省 スマート農業推進フォーラム2020「ほ場単位の生育診断が可能な汎用型ドローンを利用した広域リモートセンシング」

農林水産省 youtubeチャンネル「スマート農業推進フォーラム2020(ほ場単位の生育診断が可能な汎用型ドローンを利用した広域リモートセンシング)」

こうしたドローンの技術はリモートセンシングと呼ばれ、他地域でも実証実験が行われています。今後、実用化がさらに進めば、収穫適期の判定のほか、追肥の判断や収量の予想などにも活用できるでしょう。

衛星データを活用した収穫適期デジタルマップ

青森県のブランド米「青天の霹靂」

青森県のブランド米「青天の霹靂」
出典:株式会社 PR TIMES(青森県 ニュースリリース 2017年10月27日)

青森県のブランド米「青天の霹靂」の収穫には、衛星データをもとに収穫適期を視覚化したデジタルマップが活用されています。

これは、青森県産業技術センターが開発したもので、マップ上の水田を収穫までの生育段階ごとに色分けし、適期が一目でわかるようになっています。マップはスマホアプリでいつでもどこでも確認することができ、多くの地元農家が活用しているそうです。

出典:青森県産業技術センター 農業ICT開発部「衛星画像を利用したブランド米の適期収穫」

生育状況を視覚化するという目的は、ドローンとあまり変わりませんが、衛生データならドローンより広範囲のデータを取得しやすくなります。特に大規模な稲作を行っている農家での活用が期待できるでしょう。

衛星データによる水田デジタルマップのイメージ

Scharfsinn / PIXTA(ピクスタ)

稲刈りは、収穫適期を必ず確認して計画するようにしましょう。収穫適期の判断には生育状況の丁寧な観察が不可欠です。本記事で紹介した判断方法も参考に、水稲の現状を多角的に分析し、稲刈りに最適な時期を的確に見極めてください。

西岡日花李

西岡日花李

大学在学中より東京・多摩地域の特産・伝統文化などを取材し、街のローカルな魅力を発信するテレビ番組制作・記事を執筆。卒業後は大学院でジャーナリズムを学び、神奈川県のミニコミ紙記者として勤務。マスメディアでは取り上げない地域の課題を幅広く取り上げ、経験を積む。現在はフリーライターとして主に農業をテーマにした記事を執筆。農業の様々な話題を通して、地方都市の抱える問題や活性化への手立てを日々考察している。

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