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水稲の追肥時期は? 収量・品質を上げるやり方&プロ農家向け省力化技術kmc/PIXTA(ピクスタ)

水稲の追肥時期は? 収量・品質を上げるやり方&プロ農家向け省力化技術

水稲栽培において、追肥は品質や収量の向上を左右する重要なポイントです。しかし、時期や施肥量を適切に行わないと、株の生育をかえって妨げて収量や品質が落ち、逆効果になることもあります。そこで本記事では、適切な追肥の方法について詳しく解説します。

目次

水稲栽培の追肥は時期や量の判断が難しく、気候や土壌、栽培品種などによっても適した方法が異なります。本記事では、栽培環境における追肥の適期・適量を見極めるための基礎知識を解説するとともに、大規模農家向けに省力化・効率化できる追肥の方法を紹介します。

水稲栽培における追肥の重要性と、過不足による影響

水稲 出穂takagix/PIXTA(ピクスタ)

水稲栽培において、追肥は分げつ期や幼穂形成期など、重要な生育の時期に土壌の養分を補うために欠かせない作業です。即効性が求められるため、硫安やNK肥などの化学肥料が多く使われます。

追肥には、一穂当たりの籾数を増加させ、登熟も向上させる効果があります。そのため、適切に行うことで米の食味・品質や収量が向上し、収入増加が期待できます。

その反面、タイミングや量の見極めが難しく、正しく行わないと効果がないどころか株の生育に悪影響をもたらし、かえって収量・品質の低下につながりかねません。

例えば、時期が早すぎたり施用量が多かったりすると、徒長し倒伏しやすくなってしまいます。反対に、時期が遅れたり量が足りなかったりすると、生育が悪くなり穂が小さくなってしまうこともあります。

適切な追肥時期ややり方は? 生育ステージ別の施肥管理

追肥の効果を高めるためには、追肥の目的を正しく理解し、適切なタイミングや量を守ることが大切です。そこで次の項では、水稲栽培における2回の追肥について、それぞれの適期や適切な施肥量の見極め方について解説します。

水稲の追肥タイミングは「分げつ期」と「幼穂形成期」の2回

動噴による穂肥散布Photo753 / PIXTA(ピクスタ)

そもそも水稲栽培における追肥とは、主に幼穂形成期に1回ないし2回行う「穂肥」のことを指します。一般的にこの頃になると基肥の効果が薄れるため、少なくなった土壌の養分を補い、穂を大きくして籾数を増やす目的で行われます。

ほとんどの水稲栽培暦では、追肥は穂肥のみ行われます。ただし、砂壌土など保肥力が弱く養分が溶脱しやすい水田などでは、分げつ期に1度追肥を行います。これを「分げつ肥」や「つなぎ肥」といいます。

分げつ期に行う“分げつ肥”の追肥量と考え方

分げつ期の水稲
分げつ期の水稲
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

一般化成肥料を基肥に使った場合などには、穂肥までにまだ日があるにもかかわらず生育が悪かったり、葉色が抜けて田んぼに色ムラが見られたりすることがあります。

このような肥料不足の症状が出た場合には、分げつ肥を施用しましょう。ただし、分げつ肥は必要性や適量の判断が難しく、施用に際してはいくつかの注意点があります。

まず、基肥に緩効性肥料や有機質肥料を施用している場合、気温の低い年には効果が出るのが遅れ、分げつ期のあとから急に肥効が見られることがあります。そのため、施用は急がず、控えめかつ慎重に行いましょう。

基肥を十分に施用したにもかかわらず生育がよくない場合には、根腐れしている可能性も考えられます。稲を抜いて根の状態を確認したうえで、追肥の判断をしましょう。根腐れをしていた場合は、必要茎数を確保したらすぐに中干しを行うなどして、根腐れの解消を行います。

水稲 根腐れの初期症状
水稲 根腐れの初期症状
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

また、「コシヒカリ」などの倒伏しやすい品種は徒長が促進されてしまうので、基本的に分げつ期の追肥は行わないほうがよいでしょう。

さらに、施用時期にも注意する必要があります。基本的には分げつ期の間で、肥効に不足を感じたときに施用すればよいのですが、施用時期が遅すぎると幼穂形成期に窒素の効果が表れてしまい、穂肥ができなくなったり、倒伏や籾数過多を引き起こしたりします。

分げつ肥は施用を急がず、田んぼや株の様子をよく観察しながら、肥効が明らかに落ちていて穂肥までまだ時間があると判断した場合にのみ行います。穂肥までの「つなぎ」として施用するとよいでしょう。

幼穂形成期に行う“穂肥”の追肥量と考え方

穂肥は食味や品質、収量の向上などを目的として幼穂形成期に行われるものです。穂肥の施用は、化学肥料の場合は2回に分けて行い、基肥として二発タイプの緩効性肥料を使った場合は1回だけ行います。基肥に一発タイプの緩効性肥料を使った場合は、基本的に穂肥は不要です。

また、環境保全米づくりのため穂肥に有機質肥料を使う場合には、肥効が表れるまでに時間がかかるので、化学肥料の施用時期よりも早めに施用するとよいでしょう。

幼穂の長さを測るPhoto753 / PIXTA(ピクスタ)

穂肥の適期は、基本的に幼穂の長さを測定して判断しますが、葉色診断を加味して判断する場合もあります。幼穂の長さを確認するには、太い茎を根元から1本抜き、カッターなどで茎の根元の辺りを縦に切り開いて、中にある幼穂の長さを測ります。

施肥量については、10a当たり2~3kgくらいが一般的です。品種や気候などによって差があるため、地域情報を参考にしつつ、実際の成長具合や葉色を見ながら施用量を調整しましょう。

このように穂肥の適期や適量は、土壌や水稲の品種、栽培地域の気候、基肥の種類、その年の天候など、さまざまな条件によって異なります。そのため、ほとんどの地域では自治体やJAが毎年詳しく施肥基準や施用の目安などを提供しています。

それらの営農情報には地域で多く栽培されている品種や、その年の天候の特徴などを考慮した、施肥の時期や量の目安が提示されています。それらを確認しながら、自身の水田や作物の状況をよく観察し、葉色診断や土壌診断結果なども踏まえて判断しましょう。

例を挙げると、岡山県の管理指導によれば、「朝日」「コシヒカリ」など倒伏しやすい品種は出穂期前19~16日頃、目安として幼穂の長さ3~10mmほどの時期に施用し、そのほかの品種は出穂期前25~20日頃、幼穂の長さ1~2mmほどの時期に施用することとしています。

出典:岡山県「備南広域農業普及指導センター発! 営農技術情報(作物編)」所収「水稲中後期の管理(肥培管理・水管理)」

また、神奈川県では、「キヌヒカリ」は出穂期前15日頃、「さとじまん」は出穂期前12日頃としており、目安としてはいずれも幼穂の長さ10mmほどとしています。

出典:NOSAI神奈川「NOSAIの技術情報 No.2 平成18年7月10日 追肥時期は自分の目で確かめてから」

これらの情報はインターネットで公開されていることが多いので、自身の水田の環境や品種が地域情報に合わなければ、気候や地形の似た地域の情報も参考にしてみるとよいでしょう。

なお、いずれの場合も出穂前10日以降に追肥すると、玄米中のタンパク質含有量が高くなり、食味の低下につながるため注意が必要です。出穂前10日までには穂肥を終わらせましょう。

窒素過剰時の対策には「出穂35日前のカリ単独追肥」が効果的

追肥の目的は窒素を主とした肥効の減少を補うことですが、逆に出穂前30~40日頃に窒素過剰の症状が見られる場合があります。土壌診断を行い、肥料成分が過剰であれば追肥を控え、地域の「減肥基準」に基づいて施肥量や肥料の種類を見直しましょう。

窒素過剰の状態で普通に追肥してしまうと、過繁茂や倒伏を引き起こしたり、青枯病などの原因となったりする危険性があります。その場合の対策として、カリを単独施用するとよいでしょう。

追肥の負担を軽減! 大規模農家が導入すべき3つの最新省力化技術

水稲栽培での追肥には、品質や収量の向上という大きなメリットがありますが、大規模経営であれば作業にかなりの労力と時間を要します。そこで以下では、大規模農家で比較的容易に導入できる省力化の技術を3つ紹介します。

追肥作業を省略する 「水稲育苗箱全量施肥法」

水稲 育苗箱kikisorasido/PIXTA(ピクスタ)

水稲育苗箱全量施肥法とは、JAグループが推奨する省力・低コスト施肥技術です。

ジェイカムアグリ株式会社が開発した専用肥効調節型肥料「苗箱まかせ」には、基肥と追肥を併せた窒素の必要量が全量入っており、効果が少しずつ表れます。これを育苗箱の床土の上に入れ、播種・覆土して育苗すれば、基肥と追肥の作業が不要となります。

追肥に要した労働負荷や人員を削減できるほか、肥料の持ち込みがない分、田植え作業も軽減できます。また、田植え時の施肥がないため雨の日でも作業でき、天候を気にせず計画的に田植えを進められるのも大きなメリットです。

育苗箱の大きさに合わせた肥料で苗の根に接しているため、肥料の利用率が非常に高く、無駄がありません。ジェイカムアグリ株式会社によれば、窒素成分で約10~40%の大幅な減肥が可能とのことで、肥料のコスト削減や環境負荷の軽減にも大きな効果が見込めます。

ただし、苗箱まかせの効果を発揮するためには、水田のリン酸・カリが十分であることが必要で、不足する場合は別途土作り肥料などを散布しなければなりません。また、一発肥料は通常の肥料に比べて高額な点も課題となるでしょう。

出典:
ジェイカムアグリ株式会社「苗箱まかせ」
JA全農「おすすめする省力低コスト・生産性向上メニュー」所収「(2)水稲育苗箱全量施肥法」

灌漑水に肥料を混ぜる 「流し込み施肥法」

水田の取水口やえざくら / PIXTA(ピクスタ)

苗箱まかせと同様に、JAグループが勧める省力・低コスト施肥技術の1つです。液体肥料や粒状肥料を灌漑水と一緒に水田に流し込む方法で、天候に左右されず、真夏でも労力や時間をかけずに追肥作業を行える点が大きなメリットです。

もともと追肥に活用されていましたが、専用の液体肥料を開発したことで、基肥にも使えるようになりました。特別な施設や設備を整える必要がなく、基肥と追肥の労力を大幅に軽減できます。

ただし、均平化され、灌漑設備が整備された水田である必要があり、施肥の際には「水尻や暗渠(あんきょ)の排水口を締めること」「あらかじめ作土を飽水状態にし、肥料が均一に広がるようにすること」などの注意点もあります。

出典:JA全農「肥料事業」所収「省力低コスト施肥技術ガイド2021」内「流し込み施肥法」

既存の機体を流用 「農薬散布用ドローンの追肥利用」

大規模経営のほ場でさまざまな活躍をするドローン技術を、追肥の散布にも活用する方法です。すでに農薬散布用やほ場の管理用としてドローンを使用している場合は、導入費用を大幅に抑えられ、技術上の問題もないため導入しやすいでしょう。

従来どおりの基肥+追肥2回で行う施肥管理のまま、作業そのものを省力化できるため、高価な一発肥料を購入する必要がありません。基肥全量施肥法を採用していたものの、生育状況により追肥が必要になった、といった場合も柔軟に対応できる点もメリットです。

ただし、ドローン散布に適した肥料を用意しなければならず、ドローンを新たに導入する場合は、操作技術の習得も必要となる点には注意が必要です。

出典:JA全農「肥料事業」所収「省力低コスト施肥技術ガイド2021」内「ドローンを活用した施肥」
ドローンによる散布作業の目印himawari / PIXTA(ピクスタ)

水稲栽培において、品質や収量の向上・安定のためには追肥作業が欠かせません。追肥には、水田や稲株を日頃から観察し、適期を見逃さないなどの細やかな管理が必要です。

地域の情報もこまめにチェックし、気候の特徴や水田環境、作付品種の特徴などを把握できれば、適期や適量を見極め、効果的な追肥が可能になるでしょう。

なお、水稲の倒伏を防ぎ収量を増やすための栽培管理の方法については、下記記事にて詳しく解説していますので、こちらも併せてご参照ください。

▼米(稲)の収量を増やす方法は? 倒伏を防ぐ栽培のコツと、技術開発の最新動向

米(稲)の収量を増やす方法は? 倒伏を防ぐ栽培のコツと、技術開発の最新動向