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農業用ドローン|導入メリットや課題、価格相場を解説

農業用ドローン|導入メリットや課題、価格相場を解説
出典 : amosfal / PIXTA(ピクスタ)

農業用ドローンの活用は、作業効率の向上やコスト削減を可能にし、特に広範囲の農薬散布やデータ管理に効果的です。一方で、初期費用や申請の必要性といった課題もあります。農業経営の新たな選択肢として、導入のメリット・デメリットをご紹介します。

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近年、注目が高まる「農業用ドローン」は、作業の効率化やコスト削減を実現する施策として大きな期待が寄せられています。2019年には農林水産省が「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」を立ち上げ、一般化に向けた取り組みが始まっています。

では、農業用ドローンとは一体どのようなものなのでしょうか?本記事では、農業用ドローンを取り入れることのメリットやデメリット、価格などについてご紹介します。

農業用ドローンとは

ドローンとは、細かな定義が定められてはいますが、簡単にいうと「無人の航空機」のことを指します。

それを農業に応用したものが、「農業用ドローン」です。一般的なドローンは、多くの場合、撮影や観察などに利用されていますが、農業用ドローンでは主に農薬や肥料の散布、ほ場撮影に利用されています。

農業用ドローンが注目される背景には、「スマート農業」の活用が近年推奨されるようになったことが挙げられます。「スマート農業」とは、ドローンをはじめとするロボットやAI技術を駆使した新しい農業スタイルのことで、高齢化や人手不足が問題視される農業の改革につながると考えられています。

農業用ドローンのメリット

ドローン 操縦

maroke/PIXTA(ピクスタ)

農業用ドローンを利用するメリットは、大きく分けて4つあります。

・作業の効率化
・重機では難しい作業ができる
・データ管理が可能
・コストの抑制ができる

1つずつ詳しく説明します。

農薬・肥料の散布作業を効率化できる

農業用ドローンを利用する最大のメリットとして、農薬・肥料の散布作業の効率化が挙げられます。

今までは、農薬や肥料の散布などを人力に頼って作業する農家がほとんどでした。しかし、農業用ドローンを活用することで、上空から広範囲にわたって作業ができ るため、散布効率が上がります。散布にかかる時間は、人力で散布する場合の5分の1といわれています。

さらに、人力で行っていた時には難しかった夜間の作業も行うことができます。自動でルートを設定して飛ばすことも可能なので、ルート設定だけ行ってしまえばあとはドローンが勝手に作業をしてくれます。作業効率をもっと高めたい方にとっては、大きなメリットです。

重機では難しい作業を実施できる

農業用ドローンを利用することで、重機が通ることができない狭い場所でも作業が可能となります。農業用ドローンの大きさは、物によって多少異なりますが、一般的なサイズとしては、重量が12kg程度、全長約1.2m程度のものです。

特に、重くて機械を使わないと運べないような作業や、身体的な問題から機械に頼らざるを得ない方にとって、重機が使えない立地というのは致命的です。しかし、ドローンであればその問題を解決できることがあります。

データを管理できる

農業用ドローンを利用することで、作物や作業データを管理することも可能になります。ドローンにカメラをつけて飛行させて、作物の生育状況や病害虫の有無などを確認するという利用法です。それらをデータ化することで、今後の栽培に役立てることができます。

また、目視だと確認できない部分や、夜間などの人力では難しい部分まで正確に管理できるようになります。そのため、ほ場の規模が大きければ大きいほど高い効果が得られます。ほ場全体を目視しきれないという大規模経営の農家には、特におすすめです。

コストを抑制できる

これまでの作業方法によっては、農業用ドローンを利用することでコストの削減にもつながります。

例えば、農薬の散布や播種などの際に、無人または有人ヘリコプターを利用していた方が該当します。ヘリコプターの購入は相場で1,000万円以上かかり、農協へ委託する場合でも約50ha当たり年間150万円ほどの費用負担が発生します。

一方、農業用ドローンを利用すれば初期費用は多少かかりますが(後述)、長期的に考えればヘリコプター使用よりも格段にコストを抑えられます。さらに、ヘリコプターよりも至近距離で散布でき、少ない農薬で高い効果を得ることもできます。

コストに関しては、使用するほ場の面積も関係してきますので、詳しくは後述します。

農業用ドローンのデメリット

ドローン ほ場 畑

kazuki/PIXTA(ピクスタ)

ここまで農業用ドローンを利用するメリットを紹介しましたが、デメリットも存在します。デメリットは大きく分けて、2つあります。

・コスト がかかる
・利用するには許可申請が必要

こちらも同様に、1つずつ解説します。

コストがかかる

前述では、ヘリコプターを利用していた場合を例にあげ コストが抑えられる、と説明しましたが、これまでの作業状況や使用するほ場の面積によってはコストがかえって増加する可能性もあります。

まず農業用ドローンの利用には、初期費用として購入費がかかります。機体購入費は100万〜300万円が一般的です。100万円を下回る機体も存在しますが、技術や安全性を考慮するとやはり100万円以上のものが妥当といえるでしょう。

また、維持費や修理費、保険代なども必要になります。定期的な点検(注)を整備事業所などに依頼する場合は、1〜10万円ほどかかるようです。

(注)以前は「農林水産省の「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」により指定整備事業所による定期点検が定めてられていましたが、この指針は2019年7月30日に廃止されました。新たに制定された「無人マルチローターによる農薬の空中散布に係る安全ガイドライン」では、定期点検については定めておらず、使用者の自律的判断に任されることになりました。

ほ場の面積に関しては、7ha以上だとドローンを活用したほうがコストを抑えられることが多く、7ha以下の場合は業者に依頼したほうが安くなる可能性が高いとされています。

農業用ドローンの購入を考えているなら、購入前にコストを削減できるかどうか、十分に比較検討してから購入しましょう。

利用するには許可申請が必要

ドローン 飛行禁止 看板

TK Kurikawa/PIXTA(ピクスタ)

農薬や肥料のドローンによる散布については、家屋の密集している地域の上空を飛行する場合があることや、航空法の規定で禁止事項となっている「物件の投下」などにあたることから、国土交通大臣への許可・承認の申請が必要です。

申請にあたっては、規程時間以上の飛行実績や、ドローンに関する知識が必要な場合がほとんどのため、あらかじめしっかりと調べておきましょう。

農林水産省では「無人航空機(無人ヘリコプター等)による農薬等の空中散布に関する情報」のページで航空法の規定や申請の手続き、登録代行機関、農薬の空中散布ガイドラインなどを詳しく案内しています。

農林水産省「無人航空機(無人ヘリコプター等)による農薬等の空中散布に関する情報」

無人飛行機の飛行ルールや、飛行ルールに関する航空法の規定、飛行申請手続きについては国土交通省のホームページを参照してください。

国土交通省「航空法における無人航空機の一般的な飛行ルールについて」
国土交通省「無人航空機の飛行に関する許可・承認の申請手続きについて」

ドローンの飛行に必要な知識や技術を教える農業用ドローンの専門スクールなどもあり、そうしたところで基礎知識や操作技術を会得するといいでしょう。

農業用ドローンの価格

農業 資金

ilixe48/PIXTA(ピクスタ)

農業用ドローンの販売価格は、前述のとおり一般的に100万〜300万円ほどです。機種によってさまざまですが、価格と安全性、技術面を鑑みてドローンを購入するのが望ましいでしょう。

個人購入が難しい場合は、周囲の農家と共同購入するなど、共有して使うことを検討してみるといいでしょう。共有することで、初期費用 を大幅に削減することができます。

農業用ドローンの普及について

さまざまな産業で徐々にドローンの必要性が高まる中、農業においては今後どのような普及が見込まれているのでしょうか。

水稲・大豆・麦類での普及

農業用ドローンによる農薬散布は2016年頃から普及の兆しを見せ、2016年の散布実績(散布延べ面積)は684ha、翌2017年はその14倍の9,690haと飛躍的に拡大しています。

作物別に実績をみると、水稲での ドローン利用が散布実績の9割、麦類・大豆を加えた土地利用型作物でほぼ全てを占めています。今後もこうした土地利用型作物(米、小麦、大豆のような栽培に広い土地が必要な作物)でのドローン利用は拡大する傾向にあるといえるでしょう。

一方、露地野菜や果樹、茶畑などでのドローン利用は、まだまだ普及しているといえる段階にはありません。これは、ドローン散布に適した農薬の登録がまだ少ないことや、果樹園などの傾斜角度の強い土地では高い操作技術が必要なことなどが挙げられます。

ドローン台数の推移

農業用ドローンへの期待の高まりは、ドローン台数の増加からも見受けられます。

出典:農林水産省「農業用ドローンの普及に向けて(平成31年3月)」

農業用ドローンの機体登録数は、平成28年6月(2016年)にはほぼ0台だったものが、平成30年12月(2018年)には1,000台を超えるまでに増加し、農林水産省が指定した認定機関で技能認定されたオペレーターの数も5,000人近くまで増加しています。

また、農業用ドローンの販売メーカーも平成29年3月には6メーカー8機種だったものが、1年半後の平成30年9月には11メーカー16機種と約2倍に増えています。

このことからも、農業用ドローンへの期待と需要は急激に高まっていると考えられます。

普及拡大計画

農業用ドローンは国からも利用が推奨されています。農林水産省は普及のために官民協議会を設立し、「2022年までに水田など土地利用型農業の作付面積の半分以上において、農業用ドローンが利用されること」を目標としています。

また、首相官邸にて開催され、産学の有識者が参加した「未来投資会議」(2018年)でも、 「2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践すること」を目標としており、やはりドローンの普及が未来の農業に必要不可欠であることがわかります。

このような国の後押しもあり、農業におけるドローン需要は今後より一層高まっていくと考えられています。

今回は、農業用ドローンを導入するメリット・デメリットから、農業用ドローンの今後の普及状況について詳しくご紹介しました。導入を考えている農家 の方は、本記事を参考に検討してみてください。

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鎌上織愛(かまがみおりえ)

鎌上織愛(かまがみおりえ)

北海道出身。両親は北海道で農業を営む現役の農業者で、自身も幼少期より農作業を行う。農作物はもち米・人参・アスパラガス・とうもろこしを中心に、ハウス一棟を自家菜園として様々な種類の野菜を育成する。現在は食生活アドバイザーとして、ライターなどの執筆活動の傍ら、こどもの食育などに力を入れている。

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