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北海道の若手農家が新しく産地化をめざすのは落花生!

北海道の若手農家が新しく産地化をめざすのは落花生!
出典 : 画像提供 メムロピーナッツ株式会社Instagram

落花生の国内生産量の8割は千葉県が占めています。乾燥に強く暖かい気候を好む落花生ですが、寒冷地の北海道で落花生の栽培に挑戦する農家集団がいます。北海道・芽室町を落花生の新たな産地にするために試行錯誤を続けるメムロピーナッツの取り組みと、超えるべき課題を伺いました。

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メムロピーナッツ株式会社 代表取締役 藤井信二(ふじい しんじ)さんプロフィール

ジャガイモ(馬鈴薯)などの主要作物の栽培の傍ら、地元若手農家とともに北海道における落花生栽培の方法を確立し、メムロピーナッツ株式会社を設立。代表を務める。

芽室を落花生の新たな産地にすることを目標に、栽培だけでなくブランディングや営業活動、YouTubeなどの広報活動にも精力的に取り組んでいる。

メムロピーナッツ株式会社 代表取締役 藤井信二さん(写真下段左から3番目)

メムロピーナッツ株式会社 代表取締役 藤井信二さん(写真下段左から3番目)
画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

芽室町に新しい作物を! 若手農家が選んだのは「落花生」

十勝平野の中央に位置する芽室町では、町内の42%を農地が占め、ジャガイモや小麦、てん菜を中心に穀物や野菜類の生産が盛んに行われています。

町を挙げて農業に力を入れている芽室町で、新たな栽培作物の可能性を見出し、産地化しようと声を上げたのがメムロピーナッツです。

南米原産の落花生を、北海道で栽培しようと考えた理由

企業名にもあるように、メムロピーナッツでは落花生の栽培を行っています。しかし、落花生は南米原産で温かく水はけのよい環境を好むため、北海道で落花生を栽培するのは簡単なことではありません。

メムロピーナッツ株式会社 代表取締役 藤井信二さん(以下 役職・敬称略) JAめむろの青年部で、畑作4品(てん菜、ジャガイモ、小麦、豆類)や長芋などの根菜類以外に、新たな作物の栽培に挑戦しようとしたことが、落花生栽培をはじめたきっかけです。

こんにゃく芋やサツマイモなどの選択肢もありましたが、道内での落花生栽培の事例は少なく「挑戦してみる価値がある」と感じました。

また、てん菜の育苗ハウスが空いている時期に落花生が栽培できるようになれば、空いているハウスを有効活用できます。さらに、北海道には食品メーカーの加工場も多くあるため、生産が安定すれば出荷先も獲得できる見込みはあると考えました。

落花生栽培への挑戦からメムロピーナッツが誕生

JAめむろの青年部としての栽培研究期間は2016年で終了しました。しかし2016年の時点では、まだ落花生の栽培方法を試行錯誤している途中だったといいます。

藤井さんは、青年部での栽培研究が終わったあとも落花生の栽培を続けるべく、同じように落花生栽培に魅力を感じた青年部の農家に声をかけ、本格栽培に挑戦する生産グループを結成しました。

そして、2017年には、株式会社NTTデータ経営研究所と帯広信用金庫、帯広畜産大学、生産者グループの産学が連携したプロジェクトがスタートしました。

このとき集まった農家で立ち上げたのが、メムロピーナッツです。

落花生での産地化を実現するための3つのハードル

国産落花生の生産量は、約8割が千葉県、残り2割のうち約1割を茨城県が占めています。落花生栽培が困難な北海道を、落花生の産地とするためには、3つのハードルを超える必要があると藤井さんは語ります。

藤井 家庭菜園レベルや農家個人で落花生栽培を実践している方は道内にもいらっしゃいますが、地域規模で栽培しているところはありません。

芽室町を落花生の産地にすることをめざすのであれば「北海道における落花生の栽培方法の確立」「農機を活用した効率的な栽培」「収益性の向上」の3つが必要となります。

第一のハードルは北海道での落花生栽培。5年にわたる試行錯誤で方法を確立

前述の通り、落花生は寒冷地での栽培が困難な作物です。品種にもよりますが、落花生の発芽に適した地温は20℃、外気温は25℃とされています。25℃以下の温度で落花生を栽培する場合は、農業用マルチフィルムを使用する必要があります。

メムロピーナッツでは、寒冷地での落花生栽培をどのような手法で成功させたのでしょうか。

落花生のハウス栽培に挑戦したが、結果につながらなかった

藤井 芽室町では小豆や大豆といった豆類の栽培も盛んですが、同じ豆類でも落花生栽培はまったく勝手が違います。落花生の中でも寒さに強い品種を選び、ハウスを活用した栽培方法を模索しましたが、始めはなかなかいい結果を出すことはできませんでした。

十勝地方の農業の特徴として輪作農業が挙げられます。同じほ場で同一の作物を連作すると、土壌の養分が奪われ、病害や虫害の原因となります。

芽室町をはじめとした十勝地域では、畑作4品目や根菜類を輪作することで、土壌の質を守りながら作物を栽培してきた歴史があります。

しかし、ハウスで落花生を栽培するとなると、輪作のローテーションに組み込むことはできなくなるため、この地域の農家には根付かないと、藤井さんは考えたそうです。

露地での栽培に切り替え、栽培方法を確立

輪作のローテーションに落花生栽培を組み込むためには、ハウスではなく露地で栽培する必要があります。

メムロピーナッツ株式会社  生長した落花生

生長した落花生
画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

藤井 ハウス栽培から露地での栽培に切り替えて試してみたところ、手応えを感じる結果が出ました。とはいえ、国産落花生の一大産地である千葉県の栽培環境とは違うため、一般的な栽培方法をなぞるだけでは成功しません。

北海道での栽培に最適な播種深度や農業用マルチフィルムの重ねがけなど、試行錯誤を繰り返し、5年の歳月をかけて栽培方法を確立することができました。

栽培方法の確立により、完熟した落花生の収穫が可能に

栽培方法が確立するまでは、収穫までに落花生を完熟させることができませんでした。そのため完熟前の柔らかな状態で収穫し、茹で落花生として加工して販売していたそうです。

しかし、北海道の気候に合わせた栽培方法を確立することで、完熟した落花生の収穫ができるようになり、茹で落花生以外の販売も可能になりました。

メムロピーナッツ株式会社 マルチフィルムで覆うことで温度を調整する


画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

第二のハードルは出荷調整の方法。メーカーと協力して実現した機械化

栽培方法が確立したあとに課題となるのは収量の確保です。落花生栽培を始めた当初のメムロピーナッツのほ場の広さは0.8ha、収量はおよそ2tでした。しかし、4年後にはほ場の広さは8ha、収量はおよそ36tまで増加しました。

藤井 栽培を始めた当初から比べると、収量は格段に増えています。しかし、この地域で栽培するほかの作物と比較すると、落花生栽培はまだまだ小規模です。

北海道では、広いほ場を活用した大区画化ほ場での営農が中心となっており、多くの農家が農機を使った大規模農業を行っています。

落花生のさらなる収量アップのためには、農機を活用した栽培方法を改善していく必要があります。

北海道の土壌に合わせて収穫機を改良

落花生は乾燥した土壌を好む作物であるため、一般的には水はけのいいほ場で栽培します。

藤井 長い年月をかけて改良されてきた北海道の土壌ですが、本州の乾燥しているほ場と比較すると湿度が高く、収穫した落花生にたくさんの土がついている状態になります。

収穫には中国から輸入した大規模農業用の収穫機を活用しているのですが、乾燥したほ場での利用を想定して作られているため、収穫後の株の土を払いきれず、故障の原因となってしまいます。そこで、土の巻き込みによる故障を防ぐため、農機を輸入した企業と協力して改良しました。

メムロピーナッツ株式会社  芽室町の土質では収穫時に土が落としきれず詰まりの原因となってしまう

芽室町の土質では収穫時に土が落としきれず詰まりの原因となってしまう

収穫・乾燥工程の負担軽減が収量アップのための課題

一般的に、落花生は収穫後に、吊るして天日干しにする「地干し」や、収穫した落花生の株を円筒状に積み上げて乾燥させる「野積み」を行い、時間をかけて乾燥させます。

しかし、北海道で栽培された落花生は、本州で栽培されるものと比較しても水分を多く含んでいるため、地干しと野積みだけでは乾燥しきれず、カビが発生してしまいます。

そのため、メムロピーナッツでは、大型の乾燥機を使用して落花生の乾燥を行っています。


収穫から乾燥の工程だけでも、本州での栽培以上に作業負担とコストがかかるため、どうしても栽培に挑戦するハードルは高くなります。

コスト以上の収益を上げることができれば、困難な栽培に挑戦するメリットが生まれます。しかし、北海道で落花生栽培を行う農家が少ない以上、一農家にかかる収穫機の仕入れ・改良、大型乾燥機の使用、乾燥作業にかかるコストを抑えることは困難です。

そして、農機具にかかるコストや乾燥にかかる工程を省力化できなければ、少ないリソースで落花生の栽培を行わなければなりません。そのため、収量アップのハードルも高くなってしまうのです。

藤井 北海道で落花生を栽培する農家がもっと増えれば、農機や乾燥機にかかるコストを分担したり、共同で使い回したりなど、コスト削減が可能になります。地域全体での落花生の収穫量が増えれば、JAと協力して乾燥施設を作ることも可能かもしれません。

機械化による栽培の省力化と出荷量の増加は、落花生の産地化を実現するためにクリアしなければならない重大な課題です。

メムロピーナッツYoutube公式チャンネル「【PEANUTS】ピーナッツハーベスター 落花生収穫機 収穫機 メムピー試運転開始」

メムロピーナッツ株式会社 選別・出荷調整作業は、就労継続支援B型事業所に発注している

選別・出荷調整作業は、就労継続支援B型事業所に発注している
画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

第三のハードルはマネタイズ。儲からなければ栽培農家は増えない

本州での落花生栽培以上に作業負担とコストがかかる北海道での落花生栽培を、ビジネスとして成立させるためには、コスト以上に利益が出るしくみが必要です。

藤井 栽培にコストがかかる分、どうしても千葉や外国産の落花生よりも売値は高くなります。また、ジャガイモや小豆などの主要な栽培作物と比較すると、落花生の収量は多くありません。

収量が少ないうちは、年間を通して安定して出荷することができず、出荷にかかる費用は割高になってしまいます。費用対効果を考えると、まだまだ課題が多いのが現実です。

しかし、地元北海道で栽培された落花生という付加価値は、地元の飲食店や食品メーカーにアピールできるポイントでもあります。

飲食店・菓子店を開拓し、新規顧客を獲得

収益性の向上を目標に、藤井さんは、芽室町や帯広市の飲食店を中心に営業活動を行っています。

藤井 栽培コストが高い作物なので、どうしても販売価格も高くなってしまいます。売値の高さから取引を断られることもありましたが「北海道で落花生栽培をしていること」に価値を見出して応援してくださるお客さまもおり、少しずつ販路を獲得することができました。

また、北海道の寒暖差によって、特有の濃厚さと甘みが生まれる北海道産落花生は、スイーツとの相性がいいことがわかってきました。

取引先の1つである、芽室町の老舗菓子店「お菓子のまさおか」では、メムロピーナッツから仕入れた落花生を活用したお菓子を複数販売しています。2022年2月には、地元の中高生と共に考案した芽室町産落花生を使用した新商品「ドラピー」の販売を始めました。

メムロピーナッツ株式会社 地元の中高生、お菓子のまさおかと共に開発した「ドラピー」

地元の中高生、お菓子のまさおかと共に開発した「ドラピー」
画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

いずれは落花生の一大産地となり、地元経済の活性化が期待できることもあり、地元に根付いた飲食店などの潜在的な顧客には、効果的なアピールができていると藤井さんはいいます。

地元企業とのコラボでメムロピーナッツを地元の新名産品に育てる

メムロピーナッツは、地元企業と協力して加工品の開発も行っています。その1つが、札幌市で豆やナッツ、小麦粉を原料とした食品加工や販売を行っている池田食品株式会社とのコラボ商品「メムピーキーマカレー」です。

メムロピーナッツの落花生を使ったキーマカレー

メムロピーナッツの落花生を使ったキーマカレー
画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

藤井 落花生栽培の方法を確立したとはいえ、北海道での落花生栽培は、本州での栽培と同じようにはいきません。落花生としてそのまま販売できる品質のものもあれば、いわゆるB品となるものも収穫されます。

B品の落花生も決して食べられないわけではありませんので、加工品の原料として活用し6次産業商品として販売しています。

池田食品とコラボした「メムピーキーマカレー」は、北海道内のスーパーやオンラインショップで販売されています。さらに、メムロピーナッツは、JAめむろの直売所で販売される落花生ジェラートなどの開発、販売も行っており、落花生の6次産業化を進めています。

このように、芽室町産落花生の地元消費を少しずつ拡大していくことで、同じ地域の農家に落花生栽培の魅力をアピールする効果も期待できるでしょう。

落花生の一大産地になるために

北海道内には、多くの食品メーカーが工場やオフィスを構えており、道内の農家の多くが食品原料作物の販売先として、作物を出荷しています。

藤井 国産の、しかも北海道産の落花生を地元の食品メーカーに安定供給できるようになれば、国産落花生という付加価値だけでなく、出荷にかかるコスト削減も可能になります。食品メーカー側としても、悪い条件ではないはずです。

食品メーカーとの契約獲得は、栽培効率化に向けた農機の改良や開発、落花生を乾燥させる施設の増設、新たに落花生栽培に取り組む農家の増加など、産地化に向けた課題解決につながります。

より多くの方に芽室町の落花生を知っていただき、より多くの農家に落花生栽培の面白さを知ってもらえるよう、これからも挑戦し続けたいと思います。

店頭で販売されているメムロピーナッツの落花生

店頭で販売されているメムロピーナッツの落花生
画像提供:メムロピーナッツ株式会社Instagram

藤井さんは、不利な環境での栽培だからこそ生まれる特別感や、地元栽培ならではのメリットを見つけ出すことで、北海道での落花生栽培に産地化の希望を感じているといいます。超えるべき課題が明確になったことで、さらなる躍進につなげていけるのではないでしょうか。

▼メムロピーナッツ株式会社のホームページ、Instagramも是非ご覧ください。
 ホームぺージ:MEMURO PEANUTS | 北海道芽室町の落花生生産グループ
 Instagram:memuro_peanuts

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福馬ネキ

福馬ネキ

株式会社ジオコス所属。「人の心を動かす情報発信」という理念のもと、採用広告を中心にさまざまな媒体で情報発信を手がける株式会社ジオコスにてライターを務める。

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