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千葉県の農業の特徴は? 現状・課題と、農家へ向けた支援制度

千葉県の農業の特徴は? 現状・課題と、農家へ向けた支援制度
出典 : nijimi / PIXTA(ピクスタ)

千葉県は温暖な気候と首都圏に位置する特性を活かした全国有数の農業県です。この記事では、千葉県での就農を検討している方に向けて、千葉県の農業の特徴をはじめ、農業産出額、特産品、課題、取り組み、新規就農者が活用できる支援制度について紹介します。

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【千葉県】農業の特徴

千葉県は、野菜や米、花きなどの生産が盛んな、日本有数の生産地です。

三方を海に囲まれた半島状の地形を持ち、冬は温かく夏は比較的涼しい海洋性の温暖な気候が特徴です。千葉県はこの気候条件と自然環境を活かし、豊かな農産物を誇る農業県になりました。

大消費地である首都圏に位置するという地理的優位性もあり、生産性の高い農業を展開しています。

農林水産省が発表した「農林水産省 令和4年(2022年)度6次産業化総合調査」によると、県内の農産物直売所の数は1,360事業体であり、全国1位を誇ります。

また、イチゴ狩りなどを通じた都市と農村の交流活動も盛んに行われています。

出典:農林水産省「農林水産省令和4年(2022年)度6次産業化総合調査」

【千葉県】農業産出額と特産品一覧

落花生

土の中から掘り出されたばかりの落花生
ゴン太 / PIXTA(ピクスタ)

農業産出額は全国4位!上位常連の生産県

千葉県の2022年度の農業産出額は3,676億円で、全国第4位です。
主要な農産物の産出額は以下のとおりです。

  • 豆類 全国2位(103 億円・シェア14.1%)
  • 花き 全国2位(198億円・シェア5.7%)
  • 野菜 全国3位(1,335億円・シェア6.0%)
  • いも類 全国4位(215億円・シェア10.1%)
  • 米 全国8位(472億円・シェア3.4%)

出典:
農林水産省「令和4年(2022年)農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」
千葉県「千葉県農林水産業の動向 令和6年(2024年)度版」

全国1位の特産品が多数あり。ブランド化にも意欲

千葉県は落花生(からつき)の産地として全国的に知られていますが、ほかにも農業産出額で全国1位の特産品を数多く有しています。

千葉県の全国1位の特産品は、以下のとおりです。

  • 落花生(からつき) (102億円・シェア86%)
  • 梨 (65億円・シェア10%)
  • 枝豆(未成熟) (47億円・シェア12%)
  • さやいんげん(未成熟) (45億円・シェア18%)
  • カブ (27億円・シェア26%)
  • マッシュルーム (25億円・シェア38%)
  • 春菊 (15億円・シェア11%)
  • ミツバ (13億円・シェア18%)

出典:全農 千葉県本部「ランキング等(統計資料)」

特に、梨は栽培面積、収量(生産量)、産出額全てにおいて全国順位で第1位を誇り、主力品種は「幸水」や「豊水」です。

また、千葉県は、積極的に県独自の品種の育成を行っており、代表的な例として、梨の「秋満月(あきみつき)」や米の「粒すけ」などが挙げられます。

また、さまざまな農作物を地域団体商標へ登録し、ブランド化にも意欲的に取り組んでいます。

地域団体商標の登録は、類似品との差別化や信用力、ブランド力の向上に寄与し、地域ブランドの権利が保護されることや、差別化によって付加価値の向上が図れることなどがメリットとして得られます。

現在は「市川のなし」や「房州びわ」、「船橋にんじん」など、10件以上の千葉県の農産物が地域団体商標に登録されています。

出典:農林水産省「令和4年(2022年)農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」

【千葉県】農業の課題と自治体の取り組み

千葉県は、現在全国有数の農業生産地として安定した農業産出額を誇っていますが、千葉県での就農を検討しているのであれば、現状だけでなくこれからの県内の農業の変化や将来の見通しも考慮することが重要です。

ここでは、現在千葉県の農業が抱えている課題と、その解決へ向けた自治体の取り組みから今後の展望を予測します。

担い手不足:農業者を積極的に支援

千葉県の農業従事者数は減少傾向にあり、かつ高齢化も進んでいるのが現状です。

千葉県が発表した「千葉県農林水産業の動向 令和6年(2024年)度版」によると、千葉県の農業従事者は年々減少傾向にあり、2020年の農業従事者は83,894人でした。

このうち実質的な農業の担い手である基幹的農業従事者は、農業従事者の60.0%を占める50,328人と報告しています。一方で、65歳以上の割合は増加の一途を辿っています。

出典:千葉県「千葉県農林水産業の動向 令和6年(2024年)度版」

千葉県では農業の担い手不足の対策として以下のような取り組みを行い、農業者への支援や労働力の確保を図っています。

・総合的な相談窓口「千葉県農業者総合支援センター」の設立
2018年に千葉県、(公社)千葉県園芸協会、(一社)千葉県農業会議、JAグループ千葉の相互連携により、「千葉県農業者総合支援センター」を設立しました。

生産技術、機械・施設導入、農地集積、販路拡大、経営管理、雇用支援、法人化、新規就農など、農業従事者の多様な相談に電話やメール、直接の窓口で対応しています。

・機械・施設やスマート農業をはじめとする新しい農業技術の導入を支援
2020年には「千葉県スマート農業推進方針」を策定。ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用し、生産性向上と担い手不足対策を目指しています。

「一人でも多くの農業者がスマート農業を実践する」ことを目標に掲げ、新技術の開発・実用化、技術実証、導入支援、農業者の理解促進という4つの方向性に基づいて施策を展開しています。

出典:千葉県「千葉県スマート農業推進方針」

・独自の農業求人WEBサイトの開設
2020年に千葉県農業者総合支援センターが運営する農業求人サイト「ちばの農業で働こう!」が開設されました。

県内のJAなどが実施している職業紹介所に登録された求人情報が掲載されており、農業法人や農家での就労を希望する求職者と人材を募集する農業者をマッチングします。

出典:千葉県の農業求人サイト「ちばの農業で働こう!

設備などの老朽化:順次改修・整備を実施

千葉県に限らず、農業の持続的な発展や農産物の安定供給には、水利機能の確保が重要です。

現在、日本では戦後整備した基幹的農業水利施設の老朽化が進み、今後も耐用年数を越えた施設が増加していくことが予測されています。

例えば、豊かな自然と温暖な気候のもと、花きやびわなどの多彩な特産品が生産されている安房地域の基幹水利施設は、大半が造成後30~50年経過しており、老朽化が進んでいます。

県では、詳細な機能診断を実施し、老朽化状況を把握したうえで、計画的更新整備を行うだけでなく、日常から施設を適正に管理することによって長寿命化を図っています。

また、基幹水利施設の対策だけでなく、農地の保全と災害の防止の対策も行なっています。

安房地域は48区域3,277haが「地すべり防止区域」に指定されています。

地すべり防止区域とは、地すべりによる崩壊を防止するため排水施設や擁壁などの必要な施設を設置し、一定の行為を制限する必要がある土地を、国土交通大臣もしくは農林水産大臣が指定した区域を指します。

県は農地を保全するために、地すべり防止区域内の変異を早期に把握し、計画的かつ効率的な対策工事に取り組んでいます。

安房地域では200箇所以上のため池が存在していますが、その大半が昭和初期以前に築造されたもので老朽化が進んでいます。千葉県は、老朽化によって危険性が高くなったため池を計画的に順次改修、整備することで災害の防止対策にも取り組んでいます。

出典:千葉県「安房地域の基盤整備事業」内「これからの重点課題」

耕作放棄地の増加:区画整理で農地集積を促進

農業従事者の高齢化に伴い、耕作が行われなくなり放置された農地「耕作放棄地」が増えています。

千葉県も例外ではなく、安房地域では農業従事者の減少や少子高齢化による後継者不足などによる耕作放棄地が年々増加傾向にあります。

特に、作業条件が厳しい急傾斜の水田に耕作放棄地が多く見られ、地域全体の農地面積のうち18%が耕作放棄地となっているのが現状です。

千葉県は耕作放棄地解消に向けて、「耕作放棄地解消取組事例集」を作成し、優良事例の周知・啓発を行っています。

具体的には、木更津市でのイノシシ被害地でのにんにく・生姜栽培、旭市での規模拡大、勝浦市での新規就農者による解消など、地域の特性に応じた取り組みを推進しています。

また、農地の貸借・売買推進や鳥獣被害対策強化などの支援策も検討しています。

出典:千葉県所収「千葉県 耕作放棄地 解消取組 事例集」

千葉県で就農時に活用できる、農家向けの補助金・支援制度

ドローンを活用したスマート農業

ドローンを活用したスマート農業の風景
wazamai / PIXTA(ピクスタ)

新規就農を支援する補助金や支援制度には、国が実施している「青年等就農資金」や「就農準備資金・経営開始資金」などがありますが、それ以外に千葉県が独自に実施している補助金や支援の制度として、以下の3つが挙げられます。

  • 千葉県経営体育成支援事業
  • 「輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業
  • 農業経営体育成セミナー

千葉県経営体育成支援事業

千葉県経営体育成支援事業は、農業従事者が農業での生産の効率化に取り組むなどの場合に、必要な農業用機械や施設などの導入を支援してくれる事業です。

対象者や補助率などの詳細は以下の表のとおりです。

千葉県経営体育成支援事業の詳細

項目詳細
実施地区地域計画が策定されている地域
対象者地域計画のうち目標地図に位置付けられた者
補助率融資残額の範囲内で事業費の10分の3以内
補助金の上限融資主体支援タイプ:法人・個人問わず300万円※
先進的農業経営確立支援タイプ:法人1,500万円・個人1,000万円

※目標地図に位置付けられる者で、目標年度の経営面積が一定の基準以上となる場合の上限額は600万円

出典:千葉県「担い手支援課の補助事業」

「輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業

「輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業は、園芸産地の生産力を強化・拡大するのに必要な省力化機械などの導入や、高収量・高品質を実現するための施設化や環境整備、既存施設のリフォーム、スマート農業機器などの経費の一部を補助してくれる事業です。

対象者や補助率などの詳細は以下の表のとおりです。

「輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業の詳細

項目詳細
対象者農協、営農集団、認定農業者、認定新規就農者など
補助率【生産力強化支援型】
通常枠:
農協、営農集団など:3分の1以内
認定農業者、認定新規就農者など:4分の1以内

強化枠:
認定農業者:3分の1以内

【園芸施設リフォーム型】
4分の1以内

【スマート農業推進型】
認定農業者、認定新規就農者:3分の1以内
補助対象事業費の上限建築面積などにより異なる

出典:千葉県「産振興課の主な補助事業|輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業所収「「輝け!ちばの園芸」次世代産地整備支援事業実施要領」

農業経営体育成セミナー

農業経営体育成セミナーとは、千葉県が就農直後の方を対象に開催している、農業経営に必要な知識や技術の習得を図ることを目的としたセミナーです。対象者は、新規に就農した原則45歳未満の方です。

セミナー期間は3年間で、地域農業や農業生産の基礎知識をはじめ、プロジェクト活動や生産技術、経営技術の習得、農業経営計画の策定、リーダーとしての資質向上などについて学習します。

農業経営体育成セミナーの修了者を対象とし、青年農業者などスキルアップ研修も開催されており、手厚いサポートを受けることができます。

出典:千葉県「ちばの大地で農業を始めたい人の手引書」


千葉県は全国第4位の農業産出額を誇り、数多くの特産品を有する農業が盛んな地域です。独自の補助金やセミナーなどの支援制度があり、新規で就農する方へのサポートに積極的に取り組んでいます。

千葉県で新規就農を検討している方は、ここで紹介している情報をさらに深く調べてみてはいかがでしょうか。

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