落花生の最新生産量ランキング! 生産&消費拡大をめざす産地の取り組みとは?
落花生は千葉県が産地として有名ですが、千葉県内の特定の産地や千葉県以外の産地を知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、落花生の最新生産量ランキングと消費拡大の取り組みなどを紹介します。
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目次
この記事では落花生の最新の生産量ランキングをはじめ、産地などについても詳しく紹介します。
ゴン太 / PIXTA(ピクスタ)
日本一の落花生産地は? 2021年版、最新生産量ランキング
まずは日本における落花生の産地や、その生産量についてランキングで紹介します。また市町村別の収量なども紹介しているので、そちらも併せて参考にしてください。
収穫量、都道府県首位は不動の千葉県
出典:農林水産省「令和2年産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)」よりminorasu編集部作成
画像出典:masa / PIXTA(ピクスタ)
農林水産省の令和2年作物統計において、落花生の作付面積・収穫量の数値が記録されている都道府県は、千葉県と茨城県の2県のみです。
1位の千葉県の作付面積は4,980ha、収穫量は1万1,000t、2位の茨城県の作付面積は515ha、収穫量は1,270tで、この2県で作付面積の88%、収穫量の93%を占めています。
このように、落花生においては作付面積、収穫量のどちらを見ても千葉県が圧倒的であり、不動の1位としての地位を築いています。
市町村別では、特に八街市で生産が盛ん
千葉県内の市町村別では生産量にどのような違いがあるのでしょうか? こちらは調べてみたところ、近年の統計が存在しなかったため、平成18年産(2006年産)の作物統計を参考にします。
出典:農林水産省「作物統計調査 平成18年産市町村別データ」よりminorasu編集部作成
画像出典:rio / PIXTA(ピクスタ)
資料によれば、千葉県の中でもっとも収量が多いのは八街市の2,120tです。2位は千葉市の1,880tであり、佐倉市の1,210tが3位、袖ケ浦市の1,110tが4位、5位に富里市の972tと続いていきます。千葉県は一部の地域を除き、全体でまんべんなく栽培されているのが特徴です。
Caito / PIXTA(ピクスタ)
実は9割が外国産! 生産量の減少が続く国産落花生
前述したように国内の落花生の収穫量は全国で1万3,200tにとどまり、流通量の9割は外国産が占めています。そこで次に日本国内での作付面積の推移や、国産落花生の生産量が減少している原因について紹介します。
日本における落花生の作付面積推移
出典:「令和2年産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)全国累年統計表」よりminorasu編集部作成
日本国内における落花生の作付面積は、ピークであった昭和40年には6万6,500haありましたが、輸入の影響などにより徐々に減少していき、平成30年には6,370haになりました。現在国内の落花生の流通量は全体の9割が外国産であり、国内産は約1割程度に留まっています。
千葉県内においては、戦後昭和21年から栽培が解禁され、栄養価の高さが注目されたことから売れ行きが伸びました。昭和23~24年頃の販売価格は60キログラム当たり2万円以上になり、八街市を中心に栽培する農家が急増しました。
出典:農林水産省「作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)長期累年統計表」よりminorasu編集部作成
その後、品種改良などによって比較的栽培が容易になり、収量も高い水準で安定したことから県内で広く栽培されるようになります。昭和36年(1961年)には作付面積が2万6,400ha、収穫量は6万1,000tに達し、落花生は県内で生産される作物の中でも重要な存在となりました。
しかし、昭和40年以降に日本が高度経済成長期に入ったことで、農業でも所得の高さが求められ、別の野菜類への転換や農地の改廃などが起こり、千葉県内での作付面積が大幅に減少していきました。
落花生はブランディングや省力化により収益を高められる
freeangle / PIXTA(ピクスタ)
今後、国内産の落花生を安い輸入の落花生に負けないように売り込んでいくためには、品質向上による差別化などが必要です。現在の日本において輸入品は殻を取ったピーナッツ、国内産は殻付きの落花生として棲み分けが行われており、国内産はより高い価格で取引されています。
輸入品の価格は関税分を含めても生で1kg128円、揚げたものは164円である一方で、国内産はむきみで1kg1,009円、殻付きで421円と約8倍の価格差があります。
また国内産は輸入品に比べ鮮度や安全性、味が高く評価されていることから、生産量の減少は逆に希少価値にもつながります。贈答用としても使われることが多くなっていることから、差別化を行っていくことで販路拡大にも期待できるでしょう。
ただし、最大の輸入元である中国でも品質向上に向けた取り組みが行われる可能性もあります。そのため国内産の落花生が生き残るには、特に若い世代などに向けた消費拡大のためのマーケティング、コストや労働時間を削減するために機械化などの工夫が必要になってくるでしょう。
※落花生の6次産業化やマーケティングへの取り組みについては、ファームいしばし 石橋正枝さんのインタビュー記事を是非ご覧ください。
生産量&消費量拡大をめざす、産地の取り組み事例
最後に、日本国内の産地で行われている、生産量や消費量を拡大するための取り組み事例について紹介します。千葉県内での取り組みはもちろん、茨城県内での事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
合言葉は「WE LOVE RAKKASEI」! 生産量トップを争う千葉市の事例
千葉県千葉市は八街市に次ぐ全国2位の収量を誇る生産地ですが、2013年には一度全国1位を獲得したものの、2014年以降はトップの座を奪われています。そこで、千葉市では首位奪還をめざしてキャンペーンを実施したのです。
通常の2倍の大きさがあるジャンボ落花生「おおまさり」を収穫し、その場でゆで落花生を食べられる収穫体験や、プロ野球である千葉ロッテマリーンズの公式戦でゆで落花生の販売などを行っています。
また千葉市の公式ホームページでは「WE LOVE RAKKASEI(落花生)」を合言葉に、キャンペーンを展開しました。落花生の基本的な知識の紹介はもちろん、生落花生の販売場所や、イベント情報の提供、ゆで落花生の作り方、アレンジレシピなどを公開することで、千葉市が落花生の名産地であることをアピールしています。
千葉市公式ホームページ内「千葉市の秋の味覚といえば、WE LOVE RAKKASEI(落花生)!」
「おおまさり」ゆで落花生
知名度の低さを克服。産地維持に注力する茨城県の事例
茨城県は千葉県に次ぐ全国2位の収量を誇りますが、千葉県とは圧倒的な差があることから知名度が低いのが現状です。そこで茨城県産落花生の統一ブランド「筑波落花生」を中心としたイメージアップと、品質や生産量の向上を図る取り組みを行っています。
品質や収量向上のための具体的な取り組みとしては、過熟対策、品質向上、機械化・省力化の推進などが挙げられます。茨城県産の落花生は、過熟による品質低下が問題視されているため、過熟の原因となる掘り取りの遅れを防ぐことを目的とした掘り取り適期の周知徹底を実施しています。
また輪作や土作りで収量のアップや乾燥・調製の改善による品質向上にも取り組んでおり、得られた結果は農家の技術指導にも活用されています。さらに、播種から加工までの機械化体系の確立を進めることで、高い品質の落花生を安定的に大量生産できる体制づくりも推進しています。
知名度の向上に関しては、マークやロゴを使用した販路拡大や、各種イベントを通じた試食用落花生の配布、マスメディアやインターネットを通じた消費者への情報提供によるPRなどを実施しているのです。
筑波山麓の竜ヶ崎市「ピーナッツカンパニー」のピーナツクリーム
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ラテラル ニュースリリース 2018年11月17日)
今回は、国内の落花生の生産量や産地などを紹介するとともに、生産量や消費量を拡大するための地域の取り組みについて紹介しました。落花生は国内生産量の少ない作物ですが、その分品質を高めることで希少性を生み出すことが可能です。
また、作業の機械化・省力化による安定した生産と品質の維持などもできるため、ぜひ今回の記事を参考に収益アップをめざしてみてはいかがでしょうか。
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百田胡桃
県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。