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トマトの高温障害の症状&対策を解説!酷暑でも収量を落とさない対策を
出典 : satoko / PIXTA(ピクスタ)
  • 生産技術

トマトの高温障害の症状&対策を解説!酷暑でも収量を落とさない対策を

近年の酷暑日の増加により、トマトの高温障害による収量の減少や良品率の低下に頭を悩ませる農家も多いことでしょう。この記事では、トマトの高温障害について具体的な症状と対策を解説し、高温障害に強い品種の研究状況にもふれます。酷暑下でも安定した収量を確保するためにお役立てください。

トマトを栽培している農家にとって、「高温障害」は重要な問題です。高い気温、気温の急上昇、強すぎる日射などが高温障害をひきおこします。

高温障害は、葉や枝のほか花に大きな影響を与え、着果率の低下や奇形果の発生をまねき、収量の減少に直接つながります。

特にビニールハウス栽培では温度が上昇しやすいため、適切な対策を練らなくてはなりません

トマトの高温障害のあらまし

ハウス栽培のトマトの収穫作業

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

高温障害とは

高温障害とは、文字通り作物をその作物の生育に適した気温(生育適温)より高温の環境下に置くことによって、作物に生理障害をひきおこすことをいいます。

生育適温を超えると、光合成が阻害される、水分吸収しにくくなる、植物ホルモンのバランスが崩れる、などの状態がひきおこされ、結果として生理障害が起きると考えられています。特に開花や着果への影響が大きく、収量を大きく左右します。

高温障害はトマトや水稲でおきやすく栽培管理上の課題となっています。

トマトの高温障害の発生原因

トマトの高温障害の発生原因は大きく4つに分けられます。

第一に、生育適温を超える高温の日が続くこと。トマトの生育適温は品種によっても異なりますが、一般には昼間25度~30度、夜間10度~15度です。昼夜間の平均気温が25度以上の日が連続すると高温障害が起きやすくなります。

第二は、気温の急上昇。36度以上の高温にさらされると花粉の機能が低下し、40度以上では生育自体が止まります。

第三は果実に強い日光があたること。前述の高温の日の連続や気温の急上昇によって、果実の日よけとして機能していた葉がしおれたり丸まったりし、果実がむきだしになり直射日光があたります。果実が日焼けすると果皮が固くなり裂果が発生しやすくなります。

第四は、育苗時の高温。育苗時に高温にさらされ苗が徒長すると、着果する節の位置が高くなり、生育後、高温や日射の影響をうけやすくなります。育苗時の温度管理には特に留意する必要があります。

トマトの高温障害の症状

トマトの尻腐れ果

佐竹 美幸 / PIXTA(ピクスタ)

トマトの場合、まず果実の異常が代表的な症状としてあげられます。裂果・着色不良・尻腐れ果・空洞果・軟質果などの割合が多くなったら、高温障害を疑います。

トマトの草姿も高温障害のサインになります。上部の葉が小さくまるまり、果実がむきだしになっているのは、高温と水分不足が重なった場合の症状です。果実に直接日があたり、裂果などの異常が発生しやすくなります。

高温障害と間違えやすい生理障害や病害の見分け方

ただし、高温期の果実の異常や葉の萎凋は他の原因でも発生します。

例えば、裂果は、高温が原因とは限りません。乾燥状態を解消しようと急に多量のかん水を行った場合などの水分の急激な吸収によっても起こります。また、過繁茂と日照不足なども関係します。かん水や施肥の状況も考慮に入れて判断しましょう。

葉が萎れる症状は、萎凋病でもあらわれます。高温期に発症しやすいので高温障害と間違える人は少なくありません。ただ、下葉が日中にだけ萎れるなどの特徴があります。黄色い変色が他の葉にも拡大していくようならほぼ萎凋病でしょう。

葉がまるまる症状は、トマト黄化葉巻病などでもみられます。葉が巻いてちりめん状になるのが最大の特徴です。

高温以外の要因で生じる生理障害や病害については、別途対策をとる必要があります。トマトの果実や草姿に異常があったら、高温に由来する障害なのか?別の要因はないか?病害によるものなのか?しっかり確認しましょう。

トマトの高温障害を防ぐ方法

高温障害の対策は、ハウスの温度管理と栽培上の留意ポイントにわけられます。
ハウス内を昼夜とも適切な温度に保つこと、育苗時・生育時とも適正な草勢を維持する栽培管理を行うことが、高温障害の予防になります。

ハウス内の温度管理

農業用ドライミストは高温障害対策になる

ino masa / PIXTA(ピクスタ)

酷暑の多い近年、ハウス内の温度管理を行うことは、作業する方の健康管理にもつながっていくので、栽培規模や品種に応じた温度管理の方法を検討しましょう。

換気をすることで温度を下げる

梅雨の晴れ間や酷暑日などは、ハウス内のこもった空気に日があたることで急激に温度があがりがちです。

まずは、天候の変化に気を配り、ハウスの両サイドの巻き上げ、入り口の開放など、早めに換気を行うのが基本です。

病害の予防対策として、アブラムシなどの侵入を防ぐため、ハウスの入り口を覆う場合は、熱線遮断フィルムを用いましょう。つい手軽な防虫ネットで代用しようと考えてしまいがちですが、ハウス内の通気性が妨げられる原因になってしまいます。

酷暑の中、ハウスの開閉を行うのはかなりの労力です。天窓、妻面に換気扇(ファン)を設備することで、常時換気が可能になり、ハウス換気の作業負担を軽減することができます。換気扇でハウス内の暑い空気を排出し、吸気口から外気をとりこむので、自然にハウス内の気温管理が安定します。

太陽光の量を減らすことで温度を下げる

ハウスのこもりがちの空気に強い日射が重なると、温度が急上昇することがあります。また、果実の日焼けは裂果などの品質低下をまねきます。

強い日光が当たりすぎないよう、日光の強さを和らげる遮光カーテンや遮光ネット、熱線断熱フィルムなどを張ります。

ただし、トマトは特に日照を好む作物なので、生育に必要な光線量を確保できるよう留意します。トマトの場合、一般には、開閉式では遮光率50%程度の製品を、開閉できない場合は遮光率30%程度の製品が適しています。

遮光ネットなどを張ったあとは、実際の光度を光度計で確認することをおすすめします。光度計は近隣の市町村の農政担当部署や地域のJAで貸与してくれる場合もありますので問い合わせてみましょう。

ハウス内を冷却することで温度を下げる

ハウス内の冷却は、冬季の加温にも用いるヒートポンプエアコンで行えますが、酷暑日の昼間に運転するとランニングコストがかかりすぎます。ヒートポンプエアコン導入済の場合は、夜間温を下げるのに用いるのが効果的です。高温障害対策となるとともに、昼夜間の温度差を確保できるため良品率のアップも期待できます。

近年は、気化熱を利用した細霧冷房(ミスト)設備の導入も増えてきました。高圧ポンプを通した水を特殊なノズルによってごく細かい粒にして噴霧し、その気化熱で周囲の温度を下げます。

また、従来のミスト装置はミストの粒が大きく、気化できなかった水滴が葉や茎に付着して、病害の発生をまねきかねないというリスクがありましたが、最近は「ドライミスト」といって超細粒の霧を発生させるシステムが開発され、水滴が付着することを抑えられる装置もでてきました。

夏の昼間のランニングコストはヒートポンプエアコンより低く、かん水を兼ねることができるので初期費用はかかるものの、検討してみてはいかがでしょうか。ハウスの面積、構造などによって費用は大きく異なりますので、導入事例を調べての検討をおすすめします。

栽培上の留意ポイント

トマトの脇芽 脇芽かきや摘果で草勢を適切に保つ

1acre / PIXTA(ピクスタ)

高温時の育苗では徒長に特に気を付ける

高温時の育苗では徒長に特に気をつけましょう。断根や夜間温を低温ぎみで管理する夜冷育苗、成長抑制剤の使用が有効という報告があります。農業試験場などの情報を入手する、近隣の農家仲間と情報交換するなどして、栽培する品種にあった育苗方法を検討してください。

草勢を良好に保つ

栄養成長と生殖成長を同時に行う植物であるトマトでは、草勢を良好に保つことが、高温対策に限らず重要です。適切な追肥、摘果、脇芽かきなどの栽培管理を、夏季には特に細心の注意をはらって行いましょう。

ホルモン処理は涼しいうちに

安定した着果率を得るため、マルハナバチの利用の他、ホルモン処理をしている産地も多いでしょう。
高温下でホルモン処理を行うとホルモンが効きすぎ、空洞果などの異常がおきやすくなります。夏季のホルモン処理は朝の涼しいうちに(25度以下)、希釈濃度を守って行うことが重要です。

高温障害に強いトマト品種がある?

そもそも高温障害そのものへの耐性があるトマトを作れば、農家の負担は減るといえます。

筑波大学の研究では、高温下での着果率の低下に着目し、化学変異剤やガンマー線などを用いて育成した小型トマトの変異体集団のなかから、受粉なしで果実が実る変異体を発見し、その原因となる遺伝子を特定しました。この変異体を夏の暑い時期に栽培したところ、高温下でも一定の収量を維持できると判明しました。

今後は他のトマト品種へこの変異体を導入することで、高温障害に強い実用品種の開発が期待されています。この試みが実用化にいたれば、高温あるいは低温時の着果作業が大幅に軽減され、現在より少ない作業量コストでのトマトの周年栽培が可能になるかもしれません。

出典:筑波大学プレスリリース 平成30年8月10日「暑さに強いトマト品種開発に道~単為結果性がトマト高温耐性獲得に有効であることを証明~」

年々厳しい暑さが増している中、農家にとって作物への酷暑対策は急務です。高温障害の症状と対策をしっかりと把握し、収量を維持できる環境を整えましょう。

石塚就一

石塚就一

1984年京都府生まれ。会社員を経て、フリーライターに。京都府内でイベント運営や執筆活動する一方で、実家の農業にも従事している。主な生産物は米、ナス、京野菜。実践をともなった見地から、リアルな農業事情を伝えている。なお、京都市の町興しにも参加。目標は「全国区の知名度を誇るイベントを立ち上げて、京都の新しい魅力を広めること」。

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