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トマトの育苗は“温度管理”が決め手! 失敗しない育苗管理のやり方を大公開

トマトの育苗は“温度管理”が決め手! 失敗しない育苗管理のやり方を大公開
出典 : liaison / PIXTA(ピクスタ)

トマトの自家育苗が成功するか失敗するかは、温度管理にかかっています。本記事では、生育ステージごとに温度管理や育苗のコツを解説します。よくある失敗と、失敗を回避する具体策も紹介しますので、育苗管理の参考にしてください。

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トマトの自家育苗を成功させるためには、生育ステージに合わせた温度管理が大事です。そこで本記事では、トマトの育苗について詳しくまとめました。まずは、育苗における温度管理の重要性から解説します。

トマトの育苗を成功させるには、温度管理が何よりも重要!

トマト ポット鉢上げ後 本葉が展開

iro-iro / PIXTA(ピクスタ)

トマト栽培を成功させるには、育苗時の温度管理が重要です。育苗時の温度管理によって花房の着生位置が変わり、果実そのものの生育にも影響を与えてしまうからです。

例えば、1段目の花房は、本葉の7~8枚目の位置につくと管理しやすく、果実を大きく育生しやすいといわれています。育苗中の最低温度が15℃以上になると、1段目の花房は本葉の7枚目から上につきやすく、14℃以下になると7枚目より下につきやすくなります。そのため、15℃よりも高くしつつ、高くなりすぎないように管理することが大事になります。

このように、最低気温が1℃違うだけでもトマトの育苗は大きな影響を受けます。また、温度以外にも日長時間や肥料濃度によって着生位置が変わります。そのため、温度管理を実施したうえで、育苗に影響を与えるそのほかの要素も管理する必要があるのです。

【プロ向け】 具体的なやり方は? トマトの育苗管理手順

トマトのセルトレイ育苗

Olena Lesen / shutterstock

セルトレイを用いたトマトの育苗管理の手順は、以下のとおりです。

1. 育苗ハウスの準備
2. セルトレイ、培土の準備
3. 播種~灌水管理
4. 生育ステージに合わせた温度調整
5. 育苗後半期の追肥
6. 接ぎ木の実施

各段階でどのようなポイントに注意する必要があるのか詳しく解説します。

1. 育苗ハウスの準備

防虫ネットを張ったトマト育苗ハウス

防虫ネットを張ったトマト育苗ハウス
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

トマトの育苗は、ビニールハウスを使って実施します。育苗期間は台風のシーズンと重なるので、浸水リスクがない場所に育苗ハウスを設置し、周囲に排水溝を作っておきましょう。また強風で倒れないよう、補強を十分にしておくことも大切です。

苗は害虫が寄生しやすいので、育苗ハウス全体に防虫ネットをかけ、アブラムシ類やコナジラミ類などが侵入しないように工夫します。また、育苗ハウス内が高温になると、苗の着生位置に影響を与えるので、換気できる構造のビニールハウスを選ぶようにしましょう。

10a当たり200平方mの育苗ハウスが目安とされています。育苗ハウスを設置したあと、内部の床面を平坦にしたうえで畔波シートを敷いて育苗床を作ります。

2. セルトレイ・培土の準備

セルトレイ

YUMIK / PIXTA(ピクスタ)

台木用として50穴もしくは72穴のセルトレイ、穂木用として128穴のセルトレイを準備します。培土は搬送時の負担を減らすためにも、重量が重くならないように注意して配合することが大切です。育苗用の培土とピートモスを1:1の割合で混ぜると、軽さと生育しやすさを両立できます。混ぜたあとに重量の10%程度の水を灌水し、さらに混ぜて培土を完成させます。

コストカットを図るのであれば、ほ場の土とピートモスを1:1の割合で混ぜ合わせる方法もあります。石灰でpH値を調整し、土壌消毒剤の処理を行った手作りの育苗培土を使います。育苗用の培土を購入する場合と比べると負担がかかりますが、軽さと生育しやすさを低価格で実現できます。

3. 播種~灌水管理

トマトのセルトレイ播種

Ilike- adobe.stock.com

セルトレイの穴ごとに1粒ずつ播種を実施します。播種後は、培土を種子が隠れる程度に5~6mm被せて灌水しましょう。このとき勢いよく潅水すると覆土が流れ、種子が外に出てしまいます。時間をかけて静かに灌水し、種子が土に覆われた状態を維持できるようにしましょう。

なお、台木用のセルトレイには、穂木用のセルトレイよりも1~2日早く播種します。台木の発育はやや遅れることがあるので、播種のタイミングをずらして最初に調整をしておきましょう。

4. 生育ステージに合わせた温度調整

播種と灌水が終了したセルトレイは、時間をおかず、すぐに28~30℃に管理した発芽室に搬入します。トマトの播種から発芽までの期間は4~5日かかるので、しばらく待ちます。

発芽したときも時間をおかず、すぐに育苗室に搬入しましょう。育苗室の気温は夜間で13~14℃、昼間は27~28℃を目安とします。夜間の地温は20~23℃が適切なので、こまめに管理しておきましょう。また、培土が乾いたときは、適時灌水することが必要ですが、この際、冷たい水を与えると地温が低下し、育苗がうまくいかないことがあります。水温も20℃程度になるように調整しておきましょう。

5. 育苗後半期の追肥

育苗の後半期は、肥料が切れやすくなる時期です。肥料が切れると2~3段目の花房に影響を及ぼすことがあるので、こまめに500~800倍の液肥を追加します。肥料が切れているかどうかは、苗全体が黄色っぽくなっていることで判断できます。黄色っぽくなる前に追肥を適時実施しましょう。

6. 接ぎ木の実施

トマトの幼苗接ぎ木

satyrenko - stock.adobe.com

子葉と第1本葉の間が10mm程度まで生長すると、接ぎ木に適した時期と判断できます。このとき草丈はおおよそ40~50mm、茎径は1.8mm程度です。以下の手順で接ぎ木作業を実施します。

1. 台木の切断
2. 支持チューブの差し込み
3. 穂木の切断
4. 穂木の差し込み

台木の子葉7~8mm上の部分を30度程度の角度をつけて切り下げ、内径が茎径よりも小さい支持チューブを選んで差し込みます。1~3号の支持チューブからサイズが合うものを選びましょう。

次は穂木の切断です。台木と同じく子葉の7~8mm上の部分を、30度程度の角度をつけて切り下げます。穂木がしおれてしまうと差し込みにくくなるので、容器の底に水で湿らせた布などを敷いて、そこに切断した部分を置きましょう。

台木の支持チューブを差し込んだあたりを手で固定し、支持チューブと穂木の傾斜面を合わせるように差し込んでいきます。このとき、あまり力を加えないで差し込むと活着しづらく、接ぎ木を失敗する恐れがあります。

接ぎ木後は極力動かさないようにして、チューブが外れないようにします。接ぎ木をして5~6日間は外れやすいので注意しましょう。また、接ぎ木をした部分に1週間程度は水をかけないようにします。

トマトの接ぎ木作業

Burapa Nammulsint - stock.adobe.com

トマト育苗のよくある失敗と、その回避策

トマトの育苗では、発芽不良や定植後の連作障害に悩まされることがあります。それぞれの状況において、考えられる原因を解説し、回避策を紹介します。

発芽しない、発芽不良が多発する

トマトの発芽に適した温度は25~28℃、育苗に適した温度は15~25℃程度です。発芽しないときや発芽不良が多発するときは、発芽や育苗の各段階で、適した温度にあるのかどうかを確認してみましょう。

温度に問題がないときは、湿度が発芽や生育を妨げているのかもしれません。播種後にたっぷりと水をやり、その後は湿った新聞紙をかけて、培土が適度に湿り気を保つようにしておきましょう。発芽後は新聞紙を外し、芽が生長しやすい状態にしておきます。

なお、灌水は晴れた日の午前中が適しています。特に本葉が4~5枚になるまでは培土の乾燥に注意が必要です。本葉が4~5枚生え出たあとは、徐々に潅水量を減らしていきましょう。

▼トマトの発芽温度管理・水管理についてはこちらの記事をご覧ください。

定植後、連作障害の症状がひどい

ハウス栽培では、土壌消毒を実施したうえでやむを得ず連作を行うケースも多くあります。土壌側に十分な対策を行っても、自家育苗した苗の定植後に連作障害の症状が発生することもあります。

連作を避けるのが基本ですが、やむを得ず連作をするときは、土壌消毒や耐病性の台木に接ぎ木をするなどの対策を講じましょう。

ビニールハウスの太陽熱消毒

ビニールハウスの太陽熱消毒
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

大量の苗を安定的に生産できる、最新技術の導入も検討を

安定したトマトの育苗をめざすためにも、最新技術の導入を検討してみてはいかがでしょうか。例えば、トマト育苗を大規模に実施する施設では、人工光・閉鎖型苗生産システムの導入も行われています。

人工光・閉鎖型苗生産システムとは、育苗に適した環境を自動的にコントロールするシステムのことです。気温や天候に左右されずに、温度や電照、湿度、炭酸ガスを調整するので、予定した日数で育苗でき、定植に適した苗として完成します。

また、操作の簡便さも人工光・閉鎖型苗生産システムの特徴です。パネルで温度や電照などを簡単にコントロールできるので、コンピュータ機器の操作に慣れていない方でもスムーズに操作できます。また、温度などの設定を自由に変更できるため、トマトの育苗だけではなく、ほかの野菜類の育苗や発芽にも活用できます。

導入コストが1,000万円程度と非常に高額ではあるものの、より効率的で無駄のない育苗が可能になります。大規模にトマトの育苗を実施している場合は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

植物工場型ビニールハウス

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

トマトの育苗は、生育ステージに合わせて細かく温度管理することが必要です。また温度だけではなく、湿度や日照などにも左右されるので、こまめに観察して適切な管理を行いましょう。

▼トマトの播種から接ぎ木までの栽培管理についてはこちらの記事もご覧ください。

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林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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