【トマトのカメムシ対策】害虫の見分け方と防除方法(写真付き)

カメムシはトマトにも発生し、果実を吸汁して商品価値を下げる厄介な害虫です。雑草や周辺環境が発生源となるため、栽培初期からの予防とネットによる対策が効果的です。本記事では、農薬を含む防除方法や被害を防ぐ工夫について、具体的に解説します。
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目次
トマトのカメムシ被害による症状とは?

fox☆fox/PIXTA(ピクスタ)
カメムシは、周辺の大豆や麦類のほ場、雑草地などで繁殖し、成虫になるとトマトに飛来して被害を与えます。トマトに直接産卵することもありますが、主な被害は周囲で繁殖した成虫が飛来するケースです。幼虫も成虫も吸汁性の害虫で、茎や葉、果実の表面を歩き回りながら次々に食害します。
茎や葉に対する吸汁では、明確な変化が出にくく、初期段階では被害を見逃しやすい点に注意が必要です。ただし、大発生すると萎れたり、茎が湾曲するなど、生育不良が目立つようになります。
果実への吸汁では、吸汁時は小さな針で刺したような跡ができる程度ですが、時間の経過とともに症状が深刻化していきます。具体的には、若い果実を吸汁されると、吸われた部分がくぼんで奇形になったり、落下したりします。熟した果実では、腐敗や異臭の症状が見られます。
また、被害部の周囲が白く退色し、着色ムラとなって出荷基準を満たさなくなることもあります。特に未熟果での吸汁被害は、生育の途中で変形が進むため、収穫時に形状不良や着色不良となって発見される場合が多くあります。
被害が広範囲に及ぶと、トマトの株全体に元気がなくなり、花芽形成や果実肥大にも悪影響を及ぼします。放置すると収量の減少だけでなく、収穫物の品質も大きく落ち込むため、早期発見と対策が極めて重要です。
トマトにカメムシが発生しやすい時期・条件

CHAI / PIXTA(ピクスタ)
トマトにカメムシが発生する時期は、露地栽培では8月から10月、ハウス栽培では9月から10月と言われています。カメムシ類の多くは温暖な気候を好み、高温で乾燥する夏の気象条件下では発生が急増します。
また、周囲に雑草が多かったり、豆類や麦類などの作物が近くで栽培されている場合、それらが発生源となって飛来するリスクが高まります。カメムシが大量発生する条件を踏まえ、早めの対策を講じることが重要です。
【画像付き】トマトの害虫カメムシの種類と見分け方

ホオズキカメムシ成虫(体長13mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
トマトを食害するカメムシ類は数種類いますが、中でも「ホオズキカメムシ」「ミナミアオカメムシ」「アオクサカメムシ」の3種による被害が多く見られます。
ミナミアオカメムシとアオクサカメムシは幼虫・成虫とも見た目が非常に似ており、両者は成虫になると比較的見分けやすくなります。ミナミアオカメムシは翅をめくった腹部背面が緑色で、アオクサカメムシの場合は黒色です。
また、触角は緑と暗色が交互に配色されていますが、この暗色部がミナミアオカメムシは茶褐色、アオクサカメムシは暗黒色です。
ただし、防除方法や農薬は共通しているため、区別して対応する必要はありません。

ミナミアオカメムシ(Nezara viridula)成虫
Wirestock - stock.adobe.com

アオクサカメムシ(Nezara antennata Scott)成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ホオズキカメムシとミナミアオカメムシは、以前は温暖な本州の西側や四国、九州、沖縄で見られましたが、温暖化が進むにつれて分布域が北に広がっています。アオクサカメムシは北海道から沖縄まで広く生息する、最も一般的な種です。
いずれも越冬は成虫体で、落ち葉の下やシュロなどの常緑樹の葉鞘の内側などに集まって越冬します。4月に入ると活動をはじめ、アブラナ科やタデ科、イネ科の植物などに産卵します。
ミナミアオカメムシとアオクサカメムシは80〜150粒ほどからなる卵塊を作り、ホオズキカメムシは葉裏に10〜30粒ほどまとまって産卵します。

アオクサカメムシの卵塊は六角形に並ぶ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ホオズキカメムシの卵(長径1mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
いずれも5齢幼虫を経過して成虫となり、ミナミアオカメムシ、アオクサカメムシは年間4〜5世代、ホオズキカメムシは2世代程度経過するといわれます。

アオクサカメムシ 4齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

脱皮直後のアオクサカメムシ5齢幼虫(体長9mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
トマトにカメムシが寄生したときの防除方法
トマトにカメムシが寄生した場合、初期の防除としては物理的な防除が有効です。発見したカメムシは、手袋を着用したうえでピンセットなどで取り除き、食器用洗剤が入った容器に落として防除します。
また、粘着テープを設置することで、飛来してくる成虫の捕獲が期待できます。
ただし、このような方法は小規模栽培では現実的ですが、ほ場が広くなると対応しきれない場合があります。ほ場の広さや発生状況に応じて農薬を活用すると、より効率的な防除を行いましょう。
トマトのカメムシ防除に使える農薬一覧
2025年7月3日現在、トマト・ミニトマトとカメムシ類に適用がある主な農薬として、スタークル顆粒水溶剤・アルバリン顆粒水溶剤・オールスタースプレーが挙げられます。
いずれも農薬もジノテフラン性で、速効性と持続性に優れた浸透移行性を発揮する殺虫剤です。オールスタースプレーは、希釈せずそのまま使用します。また、トマト・ミニトマトの育苗期間中の株元散布、定植時の土壌混和、定植後の散布といった複数のタイミングで散布可能です。
マラソン粉剤3は、カメムシ類を含む多くの害虫に効果を発揮します。
実際に農薬を使用する際は、使用時点での登録状況を必ず確認し、ラベルの用量・用法に従って正しく使用しましょう。地域によって使用制限が設けられている場合もあるため、地元の指導機関の指示にも従ってください。
農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。
農薬登録情報提供システム
トマトにカメムシを寄せ付けないための予防方法
カメムシによる被害を未然に防ぐには、発生源となる環境を整えることが第一です。特に雑草はカメムシの繁殖場所や隠れ場所になりやすいため、ほ場周辺の草刈りをこまめに行い、風通しのよい環境を保つことが効果的です。
近隣で麦類・大豆を栽培している場合は、収穫後にトマトほ場へカメムシが飛来するリスクがあるため、発生状況の早期把握が重要になります。
また、施設栽培では、外部からの飛来を物理的に防ぐ「防虫ネット」を活用する方法が有効です。
施設栽培の場合は「防虫ネット」の活用を

mamime / PIXTA(ピクスタ)
カメムシ類の予防には、成虫の飛来を防ぐことが最も重要です。特に施設栽培では、換気口や出入り口などの開口部に防虫ネットを張りましょう。
カメムシ類だけであれば、目合は3mm程度で十分ですが、アブラムシ類対策も兼ねるなら0.8mm以下程度、アザミウマ類も防除するなら0.4mm以下が適しています。あまり細かいと通気が悪くなって施設内が高温になりやすいので、温度調整なども考慮して最適なものを選びましょう。

ノブモ / PIXTA(ピクスタ)
トマト栽培において、カメムシ類は少数であればそれほど深刻な被害にならないかもしれません。しかし、夏場に増殖すると株を弱らせたり、果実の商品価値を損なわせたりするので、発見したら放置せず、早めに有効な農薬を散布するなどの防除対策が必要です。
特に大規模なほ場では、気づくのが遅れて大発生しないように日頃から観察し、早期発見・防除対策に努めましょう。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。