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ビニールハウスの価格の目安は? スペックによる違いとコスパのよい購入方法を紹介

ビニールハウスの価格の目安は? スペックによる違いとコスパのよい購入方法を紹介
出典 : Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスの価格は、栽培する作物や求める機能(スペック)によって大きく変動します。農家にとっては大きな買い物なので、価格構成や目安を知り、無駄のない買い方のポイントを押さえておきましょう。

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施設栽培に欠かせないのがビニールハウスです。新たに購入する際、または建て替えるときに、最も気になることの一つが価格ではないでしょうか。

ビニールハウスの価格は目的に応じた広さや強度、形状によって大きく変わるため、無駄なコストを使わずに購入するためのポイントをぜひ押さえておきたいところです。

そこで、この記事ではビニールハウスの価格構成、スペック、価格の目安を確認しながら、コストを抑えつつ目的に見合ったビニールハウスを購入する方法をまとめました。

農業用ビニールハウスとは

きゅうりの施設栽培

Carbondale / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスの目的

農業経営におけるビニールハウスの目的は、主に以下のようなことです。

・雨風を防ぐ(悪天候でも作業ができる)
・栽培環境(水、光、温度、鳥害被害など)をコントロールし、生産性や収量を上げる
・栽培時期をずらし、作物が品薄の時期に高値で出荷する

求める機能により、形や広さ、使う骨材や被覆資材を決定します。

なお、ビニールハウスのメリットを活かして行う作物栽培(施設園芸)は、果菜類ではミニトマトやきゅうり、果実的野菜類ではイチゴ、ブドウ、メロン、葉菜類ではほうれんそう、レタスなどで行われています。

家庭菜園用と農業用

minorasu(ミノラス)の画像

家庭菜園用ビニールハウス 農業用ビニールハウス
Macrovector / PIXTA(ピクスタ) bunbun / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスには、大きく分けて家庭菜園用と農業用があります。簡易なものはホームセンターや通販でも購入可能ですが、本格的な農業用は目的にあわせて業者に発注するのが一般的です。

ガラスハウスとプラスチックハウス(ビニールハウス)

フェンロー型のガラスハウスで栽培される温室メロン プラスチックハウスでのトマト栽培

フェンロー型のガラスハウスで栽培される温室メロン
プラスチックハウスでのトマト栽培
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ) Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

農業用ビニールハウスには「ガラスハウス」と「プラスチックハウス」の2種類があります。

ガラスハウスはガラス板を被覆資材として利用するもので、それ以外のプラスチック製の被覆資材を利用するものをプラスチックハウスといいます。

この記事で取り上げるビニールハウスはプラスチックハウスで、ポリオレフィン系特殊フィルム(農PO)や農業用塩化ビニルフィルム(農ビ)を被覆資材として利用するものを対象とします。

以前は農ビが被覆資材の主流だったため、プラスチックハウスを総称して「ビニールハウス」と呼んでいますが、現在では、耐久性やコスト、軽さに優れたフィルムの被覆資材が複数出ています。

農業用ビニールハウスの価格構成

ビニールハウスの価格を構成する要素は、ハウスの骨格となる骨材、ハウス全体を覆う被覆材、空調や給水設備といった付帯設備と、その量・種類の組み合わせです。

それぞれの要素について見ていきましょう。

骨材

ビニールハウスの骨格をつくる骨材には、鋼管(パイプ)を利用するものと、コンクリートや鉄製の柱を利用するものがあります。ハウスの基礎部分であり価格への影響も最も大きいと言われています。

パイプハウス

パイプハウスの骨材

:austro / PIXTA(ピクスタ)

鋼管(パイプ)を支柱にするものは「パイプハウス」と呼ばれ、つくりがシンプルで建設費が安いのですが、耐久性は弱く台風や大雪などで倒壊するおそれがあります。

鉄骨ハウス

コンクリートや鉄製の柱を使うものは「鉄骨ハウス」と呼ばれ、強固なつくりで台風や大雪にも対応できます。

鉄骨ハウス

Ziyuuichi Tomowo / PIXTA(ピクスタ)

ソーラーパネルや排気ファンを取り付けることもでき、大規模な農業用ハウス建設も可能ですが、頑丈なぶんコストは高くなります。

自然災害による被害リスクや使用年数のことを考えれば当然耐久性がある方が良いのですが、価格も高くなります。

そのため各メーカーからは、パイプハウスに鉄骨材を取り入れて、鉄骨の頑丈さとパイプ資材のコストメリットを活かす中間タイプのハウスも多数出ています。

被覆資材

ビニールハウスの被覆資材

mits / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスの被覆資材には主に、農業用塩化ビニルフィルム(農ビ)、農業用ポリオレフィン系特殊フィルム(農PO)、農業用フッ素フィルムがあります。

ビニールハウスの被覆資材には、保温性、光の透過性、流滴性などの機能が求められますが、その機能には違いがあり、栽培する作物により適した素材を使うことが大切です。

農ビ

農ビは、塩化ビニル樹脂を原料に添加剤を混合することで、復元性、透過性、防塵・防霧性、耐候性を持たせたものです。

柔軟性と保温性に優れ、こすれにも強いものの、重い、破れやすい、汚れがつきやすい、べたつくなどのデメリットもあります。

耐用年数は厚みにもよりますが、1~5年が目安です。

農PO

農ビを改良したものが農POで、保温性や耐久性がありながら、軽い、透明性が維持される、汚れがつきにくい、破れが広がりにくいなどのメリットがあります。

しかし、多層構造など農ビよりも複雑な構造ゆえに、高温、こすれ、硫黄分に弱い点はデメリットになるので、使用条件に注意が必要です。

耐用年数は、農ビと同じく厚みにもよりますが、2~7年です。

農業用フッ素フィルム

農ビ、農POは軟質性のフィルムなのに対し、農業用フッ素フィルムは硬質系のフィルムで、さらに耐久性が高いのが特徴です。

耐用年数は20年前後で、厚みや使用条件によっては25年ほど使用可能なものもあります。価格は高くなりますが、張り替えにかかる手間やコストは大きく軽減されます。

付帯設備(オプション)にかかるもの

ビニールハウスは人為的に栽培環境を管理するためのものなので、そのための設備は必須といえます。ものによって設置時の初期投資に加え、運用費用も収支計算に入れる必要があります。

作物の特性や栽培条件、目的や規模に応じて必要なオプションを選択していきます。

ドアやベンチ

ドアは、人や農機、肥料や資材、苗などを出し入れするために間口幅を確保したいところです。ただし、両側スライドドアは、基本機能に含まれずオプションとして扱われることが多い点に注意します。

また、イチゴの高設栽培、鉢花栽培、育苗ハウスでは、栽培ベンチが必要です。

ビニールハウスの両側スライドドアや栽培ベンチはオプションになる

ビニールハウスの両側スライドドアや栽培ベンチはオプションになる
Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスの温度管理にかかるもの

ビニールハウスは開口部の開閉によって基本的な温度管理を行いますが、そのための各種装置もオプションとなります。

代表的なものとして、換気扇、屋根巻き上げ装置(タニ巻き取り)、天窓、内張りカーテンなどが挙げられます。

ビニールハウスの換気扇と屋根巻き上げ装置

ビニールハウスの換気扇と屋根巻き上げ装置
K&R / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスの天窓

ビニールハウスの天窓
freeangle / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウス 内張りカーテン

ビニールハウス 内張りカーテン
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

環境制御関係

環境制御関係のオプションには、給水設備、空調(冷暖房機)、電照、CO2発生装置、ミスト装置などがあります。

イチゴ栽培ハウス 給水設備、暖房機(ヒートポンプ)と循環扇

イチゴ栽培ハウス 給水設備、暖房機(ヒートポンプ)と循環扇
himamusi / PIXTA(ピクスタ) Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウス 花きの電照栽培

ビニールハウス 花きの電照栽培
Al_K / PIXTA(ピクスタ)

農業用ビニールハウスの価格相場

ビニールハウスの価格構成要素をふまえ、実際にビニールハウスを建てる場合の価格の目安を、タイプ別に紹介します。

実際には目的に応じた資材、設備、ハウスの大きさやつくり(連棟か単棟か)により変動しますが、国内の施設園芸農家では10~30a規模の農家の割合が最も多いため、この記事では10a規模の施設を基準とします。

簡易なつくりのパイプハウスから強固なつくりの屋根型ハウスまでがあり、ハウスのタイプ別に目安となる価格を取り上げるので、参考としてください。

パイプハウス

パイプハウス

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

アーチパイプを天井で接合して組み立てる、丸屋根型のビニールハウスです。被覆資材には主に農ビや農POが使用され、簡易なつくりで最も低コストのタイプです。

標準的なパイプハウスで単棟の場合、本体価格は10a規模で500万円程度、基礎部分や接合部分に鉄柱を入れるなどして強度を高めた場合、600万円程度が目安となります。

丸型ハウス

丸型ハウス

ピカ / PIXTA(ピクスタ)

主骨材にアーチ形状に加工した角パイプを採用した、丸屋根型のハウスです。耐久性に優れパイプハウスより長期間使え、屋根型ハウスよりもコストを抑えられる、強度と経済性を兼ね備えたタイプです。

建設費用は10a規模で約1,000万円が目安となりますが、連棟数が多い場合などは価格が大きく変わります。

屋根型ハウス

屋根型ビニールハウス

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

軽量鉄骨(H型鋼)を主骨材としており、台風や雪害などにも強く、「鉄骨ハウス」とも呼ばれます。栽培条件により間口や柱高、被覆資材などを設計でき、それによりコストが変動します。

単価は高めで、10a規模で1,900万円前後が目安となります。

トータルコストの考え方

初期投資だけでなく、ランニングコスト、減価償却期間も含めてトータルに費用のバランスが合うかを考える必要がある

すってぃ / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウスの購入にあたっては初期投資だけでなく、ランニングコスト、減価償却期間、手がけている作物とその収益も含めてトータルに費用のバランスが合うかを考える必要があります。

初期投資には、骨材、被覆資材(フィルムやビニール)、付帯設備の費用が、ランニングコストには、空調や照明にかかる電気代、暖房費(燃料費)など、設備運用のために月々かかる費用が含まれます。

被覆資材は、耐久性により張り替え費用も考慮する必要があるでしょう。

各要素の組み合わせによってもコストが変わります。例えば暖房機を使う場合、ハウスを覆う被覆資材の価格や耐久性に加えて、フィルムの材質や組み合わせ、気密性によっても暖房コストが変わります。

それぞれの要素を効率よく組み合わせることが、無駄なコストを増やさないことにつながります。

コスパの良い購入方法

ここまで見てきたとおり、本格的な農業用のビニールハウスを購入する場合、1,000万円前後は必要です。出来る限り不要なコストは削り、必要なところに費用をかけ、コストパフォーマンスの良い買い方をしたいところです。

この章では、ビニールハウスを上手に購入するためのポイントを紹介します。

見積もりから関わる

ビニールハウスを構成する様々な資材

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

ビニールハウス建設を検討する際は、JAや施工会社に依頼して進めるケースがほとんどでしょう。経験豊富なプロにすべて任せたくなりますが、特に施工の見積もり内容は自分でも確認することをおすすめします。

求める機能がカバーされているか、必要以上の構成になっていないかなど、不明点があればそこで確認するようにします。

同じ部品や構成でも会社によって価格が違うこともあるので、複数社から見積もりを取るのもおすすめです。あらかじめ、比較や確認したい項目を整理しておくとよいでしょう。

資材を流用

費用を大きく抑えたい場合、インターネット通販などで購入できる中古品の活用も選択肢にあげられます。

間口7.2m・幅50mクラスのビニールハウスの場合、資材だけでもおよそ200万円の費用が必要というデータ(注)もありますが、中古品はかなり割安に、新品の1割程度の費用で手に入ることもあります。

(注)参考サイト:施設園芸.com「ビニールハウスの中古購入ってあり?価格相場やメリット・デメリットを調査!」

ただし、業者や出品者によって資材にばらつきがあり、中古品の数も少ない点はデメリットです。

資材はビニールハウスの質を左右するので、基礎部分に関わらないもの(ベンチなど)から試す、購入前にできる限り資材の状態を確認する、知り合いや評判の良い業者など信頼できるルートがあれば活用するなどし、慎重に選ぶことをおすすめします。

補助金を活用

資金は一般的に銀行などからの融資で賄う場合が多いようですが、新規就農者の場合はまだ経営が安定せず、購入や返済に苦労することもあるでしょう。

そこで、公的資金や補助金を活用を考えてみましょう。新規就農者や事業拡大に意欲的な農家に向けた公的資金の中でビニールハウス購入に活用できるものには、以下があります。

1.青年等就農資金(無利子の資金貸付制度)

18歳以上45歳未満の新規就農者が、農地の造成、農機購入、施設の取得等のために「長期間、無利子」で借り入れできる資金。限度額3,700万円で、償還期限は17年以内です。

詳細は、農林水産省「新規就農者向けの無利子資金制度について」のページ株式会社日本政策金融公庫「青年等就農資金」のページを確認してください。

制度の概要はこちらの記事でも解説しています。

2.農業次世代人材投資資金(経営開始型)

独立・自営の49歳以下の新規就農者に対し、1年あたり最大150万円(最長5年間)の資金が交付され、返還する必要はありません。

独立に向けた事業計画、中間評価などの支給条件があります。

詳細は、農林水産省「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」のページ を確認してください。

制度の概要はこちらの記事でも解説しています。

3.強い農業・担い手づくり総合支援

上記2つは新規就農者向けの支援制度ですが、地域農業の担い手であれば対象になる以下の支援事業として「強い農業・担い手づくり総合支援事業」があります。

産地の収益力強化と地域農業の活性化、意欲ある担い手の確保・育成を目的とし、そのために必要な農業用機械・施設の導入資金も支援しています。

地域の担い手として意欲的に事業拡大に取り組む農家にはぜひ知っておいてほしい制度です。

詳細は、詳細は、農林水産省の「経営体育成支援」のページを参照し、その年度の要綱を確認してください。

令和3年度の概要については、「強い農業・担い手づくり総合支援交付金(先進的農業経営確立支援タイプ・地域担い手育成支援タイプ)(令和3年度)」で確認できます。

また、制度の概要はこちらの記事でも解説しています。

農業用ビニールハウスの価格要素、目安、経費負担を軽減する購入方法を紹介してきました。

新規就農・新規購入の場合は慣れない点も多いですが、資材の入手や詳細についてはインターネットでも調べられますし、活用できる助成制度もあります。

こうした情報を活用し、大事なポイントは直接確認するようにして、ビニールハウスの購入検討に役立ててください。

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柳澤真木子

柳澤真木子

父の実家が農家で母も生活協同組合を活用していたことから、農業や食料に関心を持ち、 大学卒業後の5年間をJAの広報部門で、以後5年を食品小売会社の広報として働く。 消費者向け農業メディアの企画執筆経験や、JAグループ・農林水産省の広報紙の記事執筆経験がある。 その後、出産・育児を経て、2019年からライターとして活動を開始。 ライフスタイル、ヘアケア、農業など複数ジャンルでの記事執筆を手がけている。

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