トラクターのオイル交換頻度はどのくらい? メンテナンス方法を解説
農家にとってトラクターは、まさに愛車と呼ぶべき存在です。トラクターを安全に長く使い続けるには、使用者自身による日常的な手入れや定期的な点検・整備が必要です。この記事では、その中でも特に注意が必要なオイル交換を中心に、トラクターのメンテナンス方法を解説します。
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2018年の農作業中の死亡事故のうち乗用トラクターによるものが27%と最も多く、その内訳をみるとトラクターの転落・転倒よる事故が約6割を占めます。
こうした事故から身を守るためには、事故が起きたときのために安全装置を備えることはもちろんですが、事故を未然に防ぐための日常的な手入れと定期的なメンテナンスが重要です。
トラクターのオイル交換頻度
ZenGO/PIXTA(ピクスタ)
トラクターのエンジンは、ほとんどが水冷式のディーゼルエンジンです。自家用車と比較すると、出力の割に大排気量で、2,000回転前後の低回転で高い出力を発揮するという特徴があります。
そのため、自家用車よりもオイル交換の頻度が高く、新車で購入した場合には、初回は50時間前後の運転でオイル交換を行い、2回目以降は基本的に100~200時間ごとに交換します。ただし、各メーカーの型式によっても異なるので、詳細は取扱説明書で確認したほうがよいでしょう。
出典:株式会社クボタ「トラクタのセルフメンテナンス」
また、トラクターを使用しない間もオイルは酸化するので、使用時間に関わらず6ヵ月経過したら、性能維持のためにオイル交換することをおすすめします。
トラクターを使い始める前の春先と、繁忙期を終えてトラクターを使わなくなる秋口の年2回を定期のオイル交換時期として決めておくとよいでしょう。
トラクターの点検は重要な仕事の1つ
農作業中の死亡事故の件数は、農業就業人口の減少を背景に減少を続けています。しかし、2018年の10万人当たりの事故死亡者数は15.6人で、全産業の1.4人はもとより、建設業の6.1人をも上回っています。
出典:農林水産省「令和元年度 食料・農業・農村白書」第2章 強い農業の創造>第6節 生産現場の競争力強化等の推進>(4)農作業安全対策の推進
内訳をみると乗用トラクターによる事故が最も多く、2018年の農作業中の死亡事故274件のうち、73件が乗用トラクターでの作業中の事故です。
出典:農林水産省「平成 30 年に発生した農作業死亡事故の概要」よりminorasu編集部作成
狭く入り組んだ形状のほ場が多い日本では、トラクター使用者の操作ミスが起きやすいといわれています。
こうした環境で少しでも事故を未然に防止するために重要なのが、定期的な点検です。タイヤの摩耗や部品の故障などをそのままにしておくと、うまく操作できず事故の原因になることもあります。定期的な点検にはトラクターの寿命を延ばす効果も期待できます。
トラクターのオイル交換の方法
sabelskaya/PIXTA(ピクスタ)
トラクターの性能を維持するためには、定期的なオイル交換が必要不可欠です。中でも、使用するにつれて劣化が進む2種類のオイルについて、交換のポイントと方法を詳しく解説します。
エンジンオイル交換
エンジン内部をクリーンに保ち、動作をスムーズにするために欠かせないのがエンジンオイルです。交換せずに使い続けると、エンジンのパワー不足や、オーバーヒートの原因になることがあります。
点検は水平な場所にトラクターを置き、エンジンが冷えた状態で行います。
まず、検油ゲージを探します。検油ゲージを抜き取り、一度、ウェスなどできれいにしてから再度差し込み抜き取ってオイルの量と汚れ具合を確認します。量が少ない場合は補充しますが、汚れがひどいときには抜き取って交換したほうがよいでしょう。
エンジンオイルの交換方法は、基本的に自家用車などと同じで、以下の手順で行います。
1)エンジン下部のドレンプラグを外して、エンジンオイルを完全に抜き取る。
2)再びドレンプラグを取り付ける。
3)オイル給油口から、純正のエンジンオイルを注入する。
4)検油ゲージにより、規定量給油できたことを確認して完了。
交換するときの注意点として、「10W-30」といったオイルの粘度表示を確認しましょう。「10W」が低温環境下、「30」が高温環境下での性能(粘度)を示しています。タイプが適合していないと、エンジントラブルの原因になる場合があります。また、エンジンオイル交換時には、オイルフィルタも交換することをおすすめします。
ミッションオイル交換
トラクターのミッションは、非常に複雑な構造をしています。ミッションの切り替えを通して、トラクターはさまざまな異なる作業を行います。
ミッションオイルが劣化すると、油圧系の作動不良の原因になり、トラクターの寿命を縮める可能性もあるので注意しましょう。
点検はエンジンオイルと同様に、検油ゲージを使ってオイルの状態をチェックします。交換時期は新車の場合、運転してから50時間前後で1回目の交換を行い、それ以降は400時間ごとを目安に行います。ただし、各メーカーの型式によっても異なるので、詳細は取扱説明書で確認してください。
出典:株式会社クボタ「トラクタのセルフメンテナンス」
ミッションオイルの交換方法は、以下の手順で行います。
1)エンジン下部のドレンプラグを外して、ミッションオイルを完全に抜き取る。
2)再びドレンプラグを取り付ける。
3)オイル給油口から、純正のミッションオイルを注入する。
4)2~3分エンジンをかけてから止め、規定量給油できたかどうか確認する。
ドレンプラグの位置は、ホイル仕様やパワクロ仕様によって異なる場合があるので、取扱説明書で確認するとよいでしょう。ミッションオイルの場合も、同時にミッションオイルフィルタの交換をおすすめします。
その他トラクターの主なメンテナンス方法
Diziano/PIXTA(ピクスタ)
ここからは、オイル以外にも日ごろから点検しておくべきポイントについて解説します。トラクターの性能維持と長寿命化にもつながるので、定期的な作業として予定に組み入れるとよいでしょう。
中には自分で交換するには難しい部品もありますが、常にチェックを欠かさないことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
バッテリーの点検と交換
バッテリーは定期的な交換が必要な部品で、性能が落ちるとエンジンの始動性が低下し、エンジンがかからなくなることもあります。そのほか、電力を必要とする自動化システムも正常に作動しなくなります。
バッテリーの点検は、まず外観から汚れやサビをチェックしてから、内部の液量が十分に保たれているかをを確認します。インジケータがついているタイプは、それを見て状態を把握します。
点検の目安はおよそ100時間ごとです。新しいうちは充電すれば性能が回復しますが、古くなると充電しても必要な電力を得られなくなるので、その場合は交換が必要です。
タイヤの点検と交換
a3701027/PIXTA(ピクスタ)
タイヤの点検項目は、空気圧と傷、ボルトやナットのゆるみです。これらが適切でないと、操舵性の低下や牽引力不足を招き、事故につながる危険性もあります。摩耗や傷が目立つ場合には、早めの交換を検討してください。
ラジエータの点検
ラジエータはエンジンを冷却する重要な装置で、劣化が進むとオーバーヒートの原因になったり、エンジントラブルにつながったりすることもあります。点検時には汚れや冷却水の漏れを確認し、必要に応じて冷却水を補充するとよいでしょう。
燃料フィルタの点検と交換
Remboman/PIXTA(ピクスタ)
燃料に混入した不純物を取り除く燃料フィルタは、交換を怠るとエンジンの始動性低下や、出力低下の原因になります。外観からは交換のタイミングがわからないので、400時間の運転時間を目安に交換します。交換方法は、オイルフィルタとほとんど同じです。
ファンベルトの点検
ファンベルトは、冷却水の循環ポンプと発電装置を駆動する部品です。整備を怠るとオーバーヒートの原因になるほか、バッテリーへの正常な充電ができなくなります。
点検時には摩耗やヒビ割れに注意し、中央のたわみ量が10~15mmであることを確認します。点検の目安は運転100時間ごとで、交換が必要な場合は取扱店に依頼したほうがよいでしょう。
出典:ヤンマーホールディングス株式会社「トラクターの点検交換のしかた」
トラクターの耐用年数を伸ばすコツ
トラクターの耐用年数は6~10年で、耐用時間は最大で5,000時間程度といわれています。もちろん使い方によっては、この耐用年数と耐用時間を伸ばすことも可能です。
トラクターの性能を維持しながら寿命を伸ばすためには、これまで紹介してきたように、定期的なメンテナンスを心がけることが重要です。エンジンオイルのような消耗品は交換時期を守り、それ以外の部品類は一定期間ごとに点検と整備を行いましょう。
作業中でも異音がしたり、液体が漏れたりしていたら、トラブルを疑ったほうがよいでしょう。細かなことですが、日常的にトラクターを清掃することで異常の早期発見につながり、トラブルを予防することができます。
Scharfsinn/PIXTA(ピクスタ)
トラクターは農作業には欠かせないパートナーといっても過言ではありません。ふだんの清掃の際によく観察し、オイル交換などの定期的なメンテナンスを行うことが安全につながります。結果的にトラクターの寿命も長くなりますから、是非、点検の予定をたててみてください。
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