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二酸化炭素発生装置でハウス栽培の収量不足を解消! CO2発生装置の方式や効果、導入方法を解説
出典 : nobmin / PIXTA(ピクスタ) やえざくら / PIXTA(ピクスタ)
  • 農業経営

二酸化炭素発生装置でハウス栽培の収量不足を解消! CO2発生装置の方式や効果、導入方法を解説

イチゴを始め、ピーマンやナスなどのハウス栽培で、二酸化炭素発生装置(CO2発生装置)を導入する農家が増えています。この記事では、ハウス内の二酸化炭素濃度を適切に保ち、光合成を促す二酸化炭素発生装置の種類や導入する際のポイントを解説します。

二酸化炭素(CO2)は、植物の光合成にとって必要不可欠な存在です。特に閉鎖されたハウス栽培(施設栽培)では二酸化炭素が少なくなると光合成が十分にできず、生育不良の原因となることもあります。

この記事では、ハウス栽培(施設栽培)で有効な二酸化炭素発生装置(CO2発生装置)の種類や、導入する際のポイントについて解説します。

植物の光合成・呼吸と二酸化炭素の関係

iimages / PIXTA(ピクスタ)

ハウス栽培(施設栽培)の生育不良を解消する二酸化炭素発生装置とは?

二酸化炭素発生装置(CO2発生装置)とは、作物の生産性向上をめざすために、植物の生長にとって欠かせない二酸化炭素を人工的に作り出す装置です。炭酸ガス発生装置、CO2施用機、あるいは光合成促進機と呼ばれることもあります。

ハウス栽培(施設栽培)では、害虫予防や温度・湿度を管理する目的で外気の出入りをコントロールしていますが、露地栽培と比べると二酸化炭素が不足しやすい環境だといえます。

冬はハウスを締め切ることが多い

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

光合成によって作物から吐き出される酸素が多くなりハウス内の酸素量が増えても、外気から取り込む二酸化炭素を急には増やせないためです。

特に、ハウスを締め切ることが多い冬場には、二酸化炭素不足の傾向が顕著に現れます。二酸化炭素の量が不足すると植物が十分に生長できず、作物の収量が少なくなり農業経営にも影響が及んでしまいます。

ハウス内の二酸化炭素の量を適切に保ち、生産性を高めるのに有効とされるのが二酸化炭素発生装置です。

二酸化炭素と光合成の関係についてはこちらの記事もご覧ください。

ハウス栽培(施設栽培)における適切な二酸化炭素濃度とは?

二酸化炭素濃度 温度 湿度

あんころもち / PIXTA(ピクスタ)

ハウス栽培(施設栽培)での二酸化炭素の濃度は、外気の二酸化炭素の濃度(400ppm)より多少高めにしておくのが適切だといわれています。

植物の光合成速度が最も高まる二酸化炭素濃度は1000~1500ppmといわれており、濃度を高くしすぎても生長率は大きく変化しません。一方、二酸化炭素の濃度が400ppm前後では、二酸化炭素濃度が少し下がるだけで大幅に生長量がダウンしてしまいます。

二酸化炭素の濃度を外気より少し高めに管理できれば、効率的に生長量を増やすことができるのです。

二酸化炭素発生装置の種類

イチゴ栽培ハウスの二酸化炭素発生装置

nobmin / PIXTA(ピクスタ) やえざくら / PIXTA(ピクスタ)

二酸化炭素発生装置(CO2発生装置)は、主に灯油燃焼式・LPG(LPガス)燃焼式・液化炭酸ガス式が販売されています。費用対効果を検討しながら、栽培する作物に適した装置を選ぶようにしましょう。それぞれの特徴・コストやメリットについて解説します。

灯油燃焼式

灯油燃焼式の二酸化炭素発生装置は、灯油を燃やして発生させた排気ガスを、ファンなどを用いてハウス内に拡散させるしくみです。

石油ファンヒーターとほぼ同様の装置なので、ハウス内の補助暖房としても活用できます。機種によっては日の出・日没に合わせて電源操作が自動化されていたり、二酸化炭素の濃度を管理しながら運転したりするものもあります。

灯油の燃焼によって発生する臭いが作物に付着する可能性があるので、二酸化炭素の濃度の変化に注意しながら換気が必要です。

また、不完全燃焼が発生すると一酸化炭素が発生して中毒事故を招く恐れがあるため、定期的なメンテナンスも欠かせません。

導入コストは装置購入代金と工事費用を合わせて20~40万円程度、ランニングコストも二酸化炭素1kgあたり30円前後と比較的安く抑えることができます。

また、据え置き型の灯油タンクから二酸化炭素発生装置へ灯油を供給するため、金属配管やゴムホースによる配線工事が必要となります。

加えて、200L以上1,000L未満の灯油タンクを設置する場合は、コンクリート製の排油桝などの工事と、ほ場を管轄する消防署へ少量危険物貯蔵取扱所の設置届出が必要です。

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ビニールハウスの灯油タンク

LPG燃焼式

LPG(LPガス)燃焼式の二酸化炭素発生装置では、LPガスを燃焼させた排気ガスを送風機やダクトを使ってハウス内に拡散させます。

未燃焼ガスが発生しないため、灯油燃焼式より燃焼効率が高く、排気ガスもきれいです。そのため、最小限のメンテナンスで長期間使用でき、作物に排気ガスの臭いが付く心配がありません。灯油と比べて点火・消化が速いのも特徴です。

導入コストは灯油燃焼式と同等ですが、ランニングコストは灯油より高めで二酸化炭素1kgあたり40円前後です。ただし、LPガスのボンベは定期配送されるため、残量チェックの手間が省けるのはメリットといえます。

二酸化炭素発生装置の使用を開始する前に、LPガス設備の設置工事が必須です。また、50kgタイプのLPガスボンベを6本以上設置するなど、LPガスの貯蔵量が300kg以上になる場合は、ほ場を管轄する消防署に圧縮アセチレンガス等の貯蔵または取扱いの開始届出も義務づけられています。

LPガスボンベ設置設備

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液化炭酸ガス式

液化炭酸ガス式の二酸化炭素発生装置は、液化炭酸ガスが入ったボンベから高純度の二酸化炭素を直接放出するしくみです。灯油燃焼式やLPG燃焼式と異なり二酸化炭素の発生時に熱が加わらないため、ハウス内の温度は上昇しません。

ハウス全体を二酸化炭素で満たさず、植物の周りにピンポイントで二酸化炭素を送り込めるので局所施用を効率的に進められます。

しかも、日射量やハウス内の環境に合わせて二酸化炭素の濃度をきめ細かくコントロール可能です。そのため、ほ場での栽培はもちろん植物工場などを拠点とした次世代農業に向いている装置として注目されています。

ボンベから作物の株元へチューブを使って二酸化炭素を供給するため、敷設作業は繁雑になるものの、仕組み自体はシンプルで初期費用は安く済みます。しかし、ランニングコストは高く、二酸化炭素1kg当たりあたりのランニングコストは150円前後です。

液化炭酸ガス式には、液化炭酸ガスのボンベ収納ユニットと濃度調整・ハウス内への拡散機能を一体化したものもあります。

二酸化炭素発生装置を導入する際のポイント

施設栽培の細微管理

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

二酸化炭素発生装置を導入する際は、ハウスの広さに合った十分な量の二酸化炭素を作り出し、拡散できるかどうかを確認する必要があります。二酸化炭素濃度が増すと同時に収量も多くなるため、栽培管理方法と収穫時の労力確保への取り組みも重要です。

ハウス内の二酸化炭素濃度を把握する

二酸化炭素発生装置の導入を検討するにあたって、現状のハウス内の二酸化炭素濃度を把握しておきましょう。その際、土壌から二酸化炭素が供給される点も考慮する必要があります。

現状の二酸化炭素濃度の推移や収量向上の可能性を分析したうえで、装置導入の可否を検討するようにします。まずは、二酸化炭素の濃度を外気と同等の400ppmに維持できる前提で管理していくとよいでしょう。

なお、二酸化炭素測定センサーの測定結果に誤差があると施用量の過不足が生じて生産性にも影響が及びます。定期的にセンサーの校正・補正を行いましょう。

栽培管理方法を見直す

光合成の量や速度が高まることで作物の生産性も増えるので、施肥量や灌水量の見直しも必要になります。二酸化炭素だけ多くても、植物の生長に見合う肥料や水・日射量がなければ意味がありません。

二酸化炭素発生装置導入後の収量をシミュレーションし、収穫のための労働力確保も検討しておく必要があります。

二酸化炭素発生装置導入後の収量増を見越して収穫のための労働力を確保する

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

ハウス栽培(施設栽培)は二酸化炭素が不足しやすい環境ですが、二酸化炭素の濃度によっては植物の生長量が大幅に増減することも考えられます。

作物の収量を最大化するには、ハウス内の作物が効率よく光合成を行えるように適切に二酸化炭素の濃度を管理することが大切です。作物の特性やハウスの規模に合った二酸化炭素発生装置の導入を検討しましょう。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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