【2023】米の価格動向と今後の予測|農家が取るべき対応とは?
2022年産の米の相対取引価格は13,851円で、前年より1,000円強上がったもの、2019年までの15,000円台にはまだ遠い状況です。今回は、米価の動向と2023年産の予測とともに、米の販売価格を安定させるために産地や農家が出来ることを紹介します。
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プロモリンク / PIXTA(ピクスタ)
農林水産省が2023年(令和5年)8月に出した速報によると、2022年産の米の相対取引価格は、2021年産と比べると上がっているものの、コロナ前までの価格とはまだまだ低い状況です。稲作農家の方は、2023年産はもちろん、今後の米価がどのように推移していくか気になっているのではないでしょうか。
2022年産(令和4年産)米の相対取引価格
出典:農林水産省「過去に公表した米の相対取引価格・数量」所収の「年産別平均価格」。
「米の相対取引価格・数量」所収の「令和4年産米の相対取引価格・数量(令和5年8月)(速報)」よりminorasu編集部作成
画像出典:interemit / PIXTA(ピクスタ)
農林水産省が公表している米の相対取引価格(主食用1等玄米60kg当たり)をみると、2017年産~2019年産の3年間15,000円台後半を維持していたものが、2020年産は14,529円(前年比▲1,187円)、2021年産は12,804円(前年比▲1,725円)と大きく下落しました。
2022年産は速報値で、13,851円で前年より1,047円高くなったものの、2019年までの水準には戻っていないのが現状です。
出典:農林水産省「過去に公表した米の相対取引価格・数量」所収の「年産別平均価格」。
「米の相対取引価格・数量」所収の「令和4年産米の相対取引価格・数量(令和5年8月)(速報)」よりminorasu編集部作成
さらに月次でみると、2020年12月に15,000円を割って以来、下がり続け、2021年12月には、13,000円を下回りました。
この時の大きな下落は、新型コロナウイルス感染症の影響による外食産業でのニーズ低下が加わったためだと考えられています。
2021年10月以降、新型コロナウイルス感染症に係る規制は徐々に緩和されましたが、米価はすぐには戻らず、2022年産米が出回り始めてからは13,000円台の後半の水準に回復しました。
2023年産(令和5年産)の米価はどうなる?
2023年産については、需給バランスが均衡に向かい、米価は回復すると予測されています。
2023/2024年 主食用米等の需給見通し
数量 | |
---|---|
2023年6月末 民間在庫量 | 197万t |
2023年産 生産量 | 669万t |
2023/2024年 供給量 | 866万t |
2023/2024年 需要量 | 681万t |
2024年6月末 民間在庫量 | 184万t |
出典:農林水産省「農産|穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」所収「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(令和5年7月)」
農林水産省が、2023年7月に公表した「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」によると、2023/2024年の主食用米の需要量は、866万t、対して供給量は669tと試算されています。結果として、民間在庫量は前年より13万t減少する見込みです。
もともと、消費者の生活スタイルの変化に伴い、米の需要量は年10万t単位で減少し、それに沿って米の価格も低くなってきました。
出典:農林水産省の下記資料よりminorasu編集部作成
「農産|米(稲)・麦・大豆|米をめぐる参考資料」所収「最近の米をめぐる状況について(令和5年9月)」
「過去に公表した米の相対取引価格・数量」所収「月別価格一覧」
「米の相対取引価格・数量」所収の「令和4年産米の相対取引価格・数量(令和5年8月)(速報)」
そのため「水田活用」が推進され、2015年ごろから価格は上昇に転じます。ところが、豪雨や新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な下落となったのです。
今後も、社会情勢の急変によって、需給バランスが変わることもあります。また、肥料や資材の高騰によるコスト高は、米価にすぐに反映されるわけではありません、稲作農家にとっては米価の動向を楽観できる状況ではないといえるでしょう。
米の販売価格を安定させるために産地や農家ができること
低くなっている米の価格ですが、産地として、農家としてとれる方法はないのでしょうか。
市場ニーズに応じた生産・販売
高価格帯の米の販売例:5つ星お米マイスターが全国から選んだこだわりのお米を販売する米処 結米屋(ゆめや)
出典:株式会社PR TIMES(株式会社アーキセプトシティ ニュースリリース 2019年7月10日)
米価安定のためには、需要と供給のギャップをなくすことが重要です。
日本の米市場では業務用を中心として低価格帯のニーズが一定量ありますが、米産地の農家は自らの収益を優先して高価格帯の品種を多く生産する傾向にあります。
いくら高価格帯の品種を生産しても、そればかりになってしまうと供給過多で米価が下落するリスクは高くなるでしょう。
どのような品種を栽培するかは地域性などの観点から各農家で異なりますが、安定した収益を期待するなら市場ニーズを意識した作付けをしなくてはいけません。
減反廃止の影響で生産量の増加が心配される今後は特に、一般家庭用や業務用など各々の需要に応じた生産や販売に取り組む姿勢が大切になります。
一般家庭向け:さまざまな銘柄米が並ぶ米穀店
まりも / PIXTA(ピクスタ)
実需者にフォーカスした生産・販売
中食・外食向け:コンビニのお弁当は米の中食ニーズの1つ
syogo / PIXTA(ピクスタ)
稲作農家の収益性アップに貢献する取り組みとして、JAでは外食産業などへの直接販売を推進しています。
農家が実需者と直接やりとりをすることでニーズを正確に把握することが可能になり、安定した取引へと結びつきやすくなり、稲作農家の所得向上に貢献しています。海外への輸出拡大につながった事例もあります。
また、自治体が音頭を取って実施した対策として、県再生協議会や全農県本部といった関係機関と連携し、高付加価値米の生産や低コストな生産体制の整備に取り組んだ秋田県の事例が挙げられます。
県が定める多収性品種へ作付けを変更する際の種子購入経費や、それによって生じた余剰種子の処理経費などを支援するといった内容です。
そのほかにも、実需者のニーズをよく把握している卸売業者が農家やJAとの仲介役を担い、推奨銘柄を栽培してもらうことで安定供給につながった事例もあります。
実需者と農家の双方と取引を行っている卸売業者であるからこそスムーズに交渉が進み、価格の安定化に貢献しているようです。
▼秋田県では、中食・外食ニーズへの販売拡大戦略を立案しています。こちらの記事もご覧ください。
このように、各地域のJAや自治体、卸売業者が一体となって米価の安定化に取り組んでいる事例もあります。
今後も需給変動によって価格が下落する局面はあるかもしれませんが、日ごろから、JAや自治体、取引のある卸売業者との連携を密にし、実需を積極的に捉えていく姿勢が求められているといえるでしょう。
2021年10月27日「死ぬほどうまいぜ。DEATH丼誕生記念発表会」
JA全農では、米の消費拡大に向けイベントやキャンペーンを実施し、さらにそれを飲食店メニューに展開するなど業務用の販路開拓を行っている。
出典:株式会社PR TIMES(全国農業協同組合連合会 ニュースリリース 2021年10月28日)
米価が低くなり、生産コストが上昇している今、稲作農家が安定した収益を出すために必要なことは的確にニーズをつかみ、それに応えることです。そのための取り組みとして各地域のJAや自治体、卸売業者が対策に乗り出してます。まずは情報収集することから始めてみましょう。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。