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米の買取価格の動向と今後の予測|農家が取るべき対応とは?

米の買取価格の動向と今後の予測|農家が取るべき対応とは?
出典 : Rhetorica / PIXTA(ピクスタ)

米の買取価格は水稲農家の所得に直接影響を与える重要な指標であるため、なぜ下落傾向にあるか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、今回は米価が下落している要因と今後の相場予想を説明した上で、米の販売価格を安定させる取り組みを紹介します。

玄米

プロモリンク / PIXTA(ピクスタ)

農林水産省が2021年(令和3年)9月に出した速報によると、令和3年産の米の相対取引価格は前年に比べて下落傾向にあります。

水稲農家の中には、今後の米価がどのように推移していくか心配な方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では米の買取価格の予測や販売価格を安定させるために必要な取り組みについて紹介します。

令和2年産米・令和3年産米の相対取引価格

米の相対取引価格(通年平均)の推移

出典:農林水産省「過去に公表した米の相対取引価格・数量」所収の「年産別平均価格」、農林水産省「米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫の推移等」所収の「令和3年産米の相対取引価格・数量(速報)(令和3年10月)」「令和2年産米の相対取引価格・数量(令和2年10月)(速報)」よりminorasu編集部作成
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農林水産省が公表している米の相対取引価格(通年平均・主食用1等玄米60kg当たり)をみると、2017年産~2019年産の3年間15,000円台後半を維持していたものが、2020年産(令和2年産)は14,522円、2021年産(9月・10月)が13,144円と大きく下落しているのがわかります。

米の相対取引価格(速報ベース)月次推移

出典:農林水産省「過去に公表した米の相対取引価格・数量」所収の「月別価格一覧」、農林水産省「米の相対取引価格・数量、契約・販売状況、民間在庫の推移等」 所収の「令和3年産米の相対取引価格・数量(速報)(令和3年9月)」「令和3年産米の相対取引価格・数量(速報)(令和3年10月)」よりminorasu編集部作成

さらに月次でみると、2019年12月に15,000円を割って以来、下がり続けていることがわかります。

共働き世帯増加などの生活習慣の変化による消費者の米離れなどの傾向に、新型コロナウイルス感染症の影響による外食産業でのニーズ低下が加わって、大きく下落したと考えられています。

このままの状況が続くと、ただでさえ離農が進んでいる水稲農家にとって大きなダメージとなりかねません。しかし、残念ながら来年産の米価も下落する可能性が高いと予測されています。

米価は今後も下落することが予測されている

しばらくの間米価はさらに下落すると予想されていますが、その根拠となっているのが米の民間在庫量の増加です。

米に限らず作物の価格は需要と供給のバランスで決まります。米に関してはコロナ禍による外食産業の落ち込みによって消費が大きく減少し、在庫が余っている状況です。

農林水産省によると、令和2/3年の需要量は716万tと推計されていますが、令和3年6月末の段階で民間在庫量はそのうちのおよそ30%にあたる207~210万tに上ると試算されています。

1年後の令和4年6月末時点の民間在庫量について、国では、令和3年6月末より約10万t少ない、195~200万トンと予想しています。しかし、JA全中では同時期にそれを上回る量の在庫が出る(220~253万トン)と予想するなど、まだ予断を許さない状況です。

今後は民間での米の消費量減少に伴っていわゆる「米あまり」が起き、米価の下落傾向が続く可能性は高いと指摘されています。

出典:
農林水産省「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針(令和3年2月)」
JAcom 農業協同組合新聞「来年6月末に米在庫大幅増 250万t超も-JA全中試算」

近年の米の価格の推移・動向

米の相対取引価格の長期推移

出典:農林水産省「過去に公表した米の相対取引価格・数量」所収の「年産別平均価格」、農林水産省「米をめぐる関係資料(平成29年11月)」内で旧・財団法人 全国米穀取引・価格形成センターの資料を農林水産省がまとめた資料よりminorasu編集部作成
画像出典:freeangle / PIXTA(ピクスタ)

もともと米の相対取引価格は日本人の食生活の変化に伴って1990年代半ば以降は下落傾向にありました。

その理由は、共働き世帯や単身世帯が増加した影響で手軽に食べられるパンなどの需要が増える一方、米の消費が減ったからです。

そうした状況を食い止めようと、政府もかねてから実施していた減反や転作といった生産調整をさらに強化して、飼料用米への転作など主食用米の生産量削減取り組みました。

2015年以降はこれらの政策が功を奏し、主食用米の生産は減少し、結果として米価は上昇に転じます。

しかし、その上昇傾向を止めたのが、この度の新型コロナウイルスや豪雨などの異常災害です。

それらの影響によって2020年の米価は6年ぶりの下落に転じてしまい、平成30年産からは減反が廃止されたことも相まって今後の相場の不安定性が懸念されています。

米の販売価格を安定化させるための方策

米あまりや減反廃止の影響で、今後の米価を心配している方も多いでしょう。しかし、そうした心配を解消するために、新しい方策を実行して成果を出している事例もあります。

具体的にどのような対策をとればいいのか悩んでいる方のために、実例を紹介するので参考にしてください。

市場ニーズに応じた生産・販売

高価格帯の米の販売例:5つ星お米マイスターが全国から選んだこだわりのお米を販売する米処 結米屋(ゆめや)

高価格帯の米の販売例:5つ星お米マイスターが全国から選んだこだわりのお米を販売する米処 結米屋(ゆめや)
出典:株式会社PR TIMES(株式会社アーキセプトシティ ニュースリリース 2019年7月10日)

米価安定のためには、需要と供給のギャップをなくすことが重要です。

日本の米市場では業務用を中心として低価格帯のニーズが一定量ありますが、米産地の農家は自らの収益を優先して高価格帯の品種を多く生産する傾向にあります。

いくら高価格帯の品種を生産しても、そればかりになってしまうと供給過多で米価が下落するリスクは高くなるでしょう。

どのような品種を栽培するかは地域性などの観点から各農家で異なりますが、安定した収益を期待するなら市場ニーズを意識した作付けをしなくてはいけません。

減反廃止の影響で生産量の増加が心配される今後は特に、一般家庭用や業務用など各々の需要に応じた生産や販売に取り組む姿勢が大切になります。

さまざまな銘柄米が並ぶ米穀店

一般家庭向け:さまざまな銘柄米が並ぶ米穀店
まりも / PIXTA(ピクスタ)

実需者にフォーカスした生産・販売

コンビニのお弁当は米の中食ニーズの1つ

中食・外食向け:コンビニのお弁当は米の中食ニーズの1つ
syogo / PIXTA(ピクスタ)

水稲農家の収益性アップに貢献する取り組みとして、JAでは外食産業などへの直接販売を推進しています。

農家が実需者と直接やりとりをすることでニーズを正確に把握することが可能になり、安定した取引へと結びつきやすくなり、水稲農家の所得向上に貢献しています。海外への輸出拡大につながった事例もあります。

また、自治体が音頭を取って実施した対策として、県再生協議会や全農県本部といった関係機関と連携し、高付加価値米の生産や低コストな生産体制の整備に取り組んだ秋田県の事例が挙げられます。

県が定める多収性品種へ作付けを変更する際の種子購入経費や、それによって生じた余剰種子の処理経費などを支援するといった内容です。

そのほかにも、実需者のニーズをよく把握している卸売業者が農家やJAとの仲介役を担い、推奨銘柄を栽培してもらうことで安定供給につながった事例もあります。

実需者と農家の双方と取引を行っている卸売業者であるからこそスムーズに交渉が進み、価格の安定化に貢献しているようです。

※秋田県の中食・外食ニーズへの販売拡大戦略についてはこちらの記事もご覧ください。

このように、各地域のJAや自治体、卸売業者が一体となって米価の安定化に取り組んでいる事例もあります。

今後も米あまりなどの要因によって相場が下落する局面はあるかもしれませんが、的確にニーズをとらえ、それに対応して乗り切る力が農家に求められているといえるでしょう。

安定した収益を上げるためには、近隣のJAや自治体、日ごろから取引のある卸売業者との連携を密にし、情報収集に励む姿勢がポイントになります。

出典:農林水産省「米をめぐる関係資料(平成29年11月)」

JA全農 2021年10月27日「死ぬほどうまいぜ。DEATH丼誕生記念発表会」

2021年10月27日「死ぬほどうまいぜ。DEATH丼誕生記念発表会」
JA全農では、米の消費拡大に向けイベントやキャンペーンを実施し、さらにそれを飲食店メニューに展開するなど業務用の販路開拓を行っている。
出典:株式会社PR TIMES(全国農業協同組合連合会 ニュースリリース 2021年10月28日)

米の買取価格は補助金政策の恩恵もあって2015年以降は上昇傾向にありましたが、新型コロナウイルスなどの影響によって令和2年産米は下落傾向が続きました。
外食産業停滞のあおりを受けて、民間の在庫量も増加しており、令和3年産の価格も苦戦することが予想されているのが実情です。

このような状況で水稲農家が安定した収益を出すために必要なことは的確にニーズをつかみ、それに応えることです。そのための取り組みとして各地域のJAや自治体、卸売業者が対策に乗り出している事例もあるので、まずは情報収集することから始めてみましょう。

中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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