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秋田県のブランド米「ゆめおばこ」とは? 収量性、耐病性など栽培特性とブランド化戦略を解説
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  • 農業経営

秋田県のブランド米「ゆめおばこ」とは? 収量性、耐病性など栽培特性とブランド化戦略を解説

秋田県のブランド米「ゆめおばこ」は秋田県の気候に適応し、良食味と多収性を兼ねそろえた新品種です。「あきたこまち」とは異なるふっくらした食感を持ち、秋田県の良食味品種ラインナップの一翼を担っています。「ゆめおばこ」の特徴や市場評価、収量などを秋田米のブランド化戦略での位置付けと併せて紹介します。

ゆめおばことは?

秋田県仙北平野の水田

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「ゆめおばこ」とは、「あきたこまち」と同等の良食味を持つ秋田県のブランド米の1つです。「あきたこまち」に集中した作付けを是正し、市場のニーズに応じて品種を再構成したうえで、秋田米全体のレベルアップを図る戦略のもとで開発された品種です。

耐倒伏性・耐冷性・耐病性ともに強く、収量性も高いことから、2008年に秋田県の奨励品種に指定されています。

JA秋田おばこ千畑管内の「米の精」減・減栽培部会では独自の取り組みとして、有機質100%のオリジナル肥料「おばこロマン米の精」だけを使用して栽培したゆめおばこを「箱入り娘ゆめおばこ」という名称で生産・販売しています。

また、JA全農あきたでは、慣行栽培と比べて使用農薬成分回数を50%削減した秋田米に「あきたecoらいす」という愛称をつけています。

ゆめおばこの特性|「あきたこまち」「ひとめぼれ」などとの比較

ゆめおばこは、冷めても硬くなりにくい

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「ゆめおばこ」は、「あきたこまち」への作付けが集中している状態を解消するため、栽培しやすく収量性が高い品種を育成するねらいで開発された品種です。「あきたこまち」と「ひとめぼれ」がルーツで、双方のメリットを取り入れた良食味品種として知られています。

詳細は後述しますが 「ごはんのふるさと秋田へ」(秋田県農林水産部 秋田米ブランド推進室運営)品種のページに特徴が端的に紹介されています。

ここからは、秋田県農林水産技術センター農業試験場の試験結果をもとに詳しく特性を紹介します。

育成経過

「ゆめおばこ」は1995年に、「岩南8号」を母・「秋田58号」を父として、1995年に秋田県農業試験場で人工交配されて生まれた品種です。

両者ともに良質・良食味で、母本の「岩南8号」は倒伏といもち病に強く、父本の「秋田58号」は耐冷性が強く多収であるとういう優れた栽培特性を持っていました。しかし、母本は収量性の低さ、父本はいもち病への弱さという弱点がありました。

双方の優良な特性を活かし、欠点を補うべく育種に取り組み、栽培しやすく品質・食味ともに優れた品種「ゆめおばこ」が誕生しました。

秋田県の良食味品種ラインナップの一翼を担う新たなブランドと位置づけられ、2008年4月に秋田県の奨励品種に採用されています。

収量性

「ゆめおばこ」は玄米千粒重が大きい

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「ゆめおばこ」は「あきたこまち」や「ひとめぼれ」と比べて玄米千粒重が大きく、収量性が高くなっています。

出穂期・成熟期ともに「あきたこまち」より遅めですが「ひとめぼれ」と同時期です。

また、同じ施肥量で「あきたこまち」より10a当たり収量が6kgほどが多いため、生産効率も高いといえます。

耐倒伏性・耐冷性・耐病性

「ゆめおばこ」は、耐倒伏性・耐冷性・耐病性とも「あきたこまち」「ひとめぼれ」などのこれまでの代表品種と遜色ない、あるいは、同程度と判定されています。栽培しやく安定した収量を期待できる品種といえるでしょう。

耐倒伏性:「めんこいな」並の「やや強」
障害型耐冷性:「めんこいな」「あきたこまち」より強く「ひとめぼれ」並の「極強」
いもち病ほ場抵抗性:葉いもちについては「中」、穂いもちについては「やや強」で、「あきたこまち」「ひとめぼれ」より強い
白葉枯病耐病性:「ひとめぼれ」「めんこいな」「あきたこまち」よりも強い「やや強」

食味

「ゆめおばこ」の食味は安定しており、「あきたこまち」「ひとめぼれ」と遜色ない良食味と評価されています。

玄米粒が大きく、玄米粗タンパク質含有率は7.2%で「あきたこまち」「ひとめぼれ」より低く、炊き上がりがふっくらしています。

冷めても硬くなりにくいので家庭用はもちろん、外食やテイクアウト(中食)向けなど幅広い市場ニーズに対応可能です。

出典:この項の、育成経過・収量性・耐倒伏性・耐冷性・耐病性・食味については以下の資料を出典としています。
東北農業研究 第61号 所収の「水稲新品種「ゆめおばこ」の主要特性(秋田県農林水産技術センター農業試験場)」
秋田県農林水産技術センター農業試験場研究報告所収の「水稲新品種「ゆめおばこ」の育成」(第52号)

新品種で中食・外食のニーズに対応。秋田県から学ぶ米のブランド化戦略

秋田米

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「あきたこまち」という人気ブランド米があるにもかかわらず、なぜ「ゆめおばこ」という新しい品種が誕生したのでしょうか。秋田米のブランド化戦略の命題を解決するために誕生した「ゆめおばこ」の位置付けと、秋田県が取り組んでいる米の販売戦略について解説します。

「ゆめおばこ」の位置付け

「あきたこまち」は全国的なトップブランドとして秋田米の価値向上に貢献してきましたが、作付けが偏ることによる天候変動リスクや収穫遅れによる品質低下が農業経営の課題とされてきました。

作付け偏重を是正しながら市場ニーズの多様化に応えるべく、品種構成を見直して秋田米全体のレベルアップを図る戦略の中で「ゆめおばこ」が誕生したのです。

販路拡大と安定的な取引の推進

外食・中食業界では米などの産地を囲い込む動きが進んでいる

syogo / PIXTA(ピクスタ)

外食・中食業界では産地を囲い込む動きが活発に進んでいるほか、産地間競争も激化しているのが現状です。

産地間競争に打ち勝つために、購入する外食・中食業界側からの要望に応える生産・供給体制を構築するなど「販売を起点とした米づくり」を県を挙げて推進しています。

併せて、生産者の組織化を図ったり、播種前契約や複数年契約を導入したりするなど、安定した取引体系の導入も始まっています。

また「ゆめおばこ」の場合は、家庭用だけでなく外食・中食業界などの業務用、さらには米専門店・百貨店での販売といった「こだわり層」まで幅広い顧客層をカバーしています。

粒径・食味やプレミアム規格などに基づく区分集荷を推進して、仕向け先にとってわかりやすいメリットをアピールしているのも特徴です。

「ゆめおばこ」は、「あきたこまち」を始め、「ひとめぼれ」「つぶぞろい」「秋のきらめき」と並んで、プレミアム領域からレギュラー領域をカバーする位置づけ

「ゆめおばこ」は、「あきたこまち」を始め、「ひとめぼれ」「つぶぞろい」「秋のきらめき」と並んで、プレミアム領域からレギュラー領域をカバーする位置づけ
出典:秋田県農林水産部「秋田米生産・販売戦略(案)~お米のオールラウンダーをめざして~(平成29年9月)」よりminorasu編集部作成

また、「コシヒカリを超える極良食味米」をコンセプトにした新たな旗艦ブランド「サキホコレ」が、2021年秋の先行販売を経て、2022年に本格デビューする予定です。

「サキホコレ」の詳細はこちらをご覧ください。
「ごはんのふるさと秋田へ」(秋田県農林水産部 秋田米ブランド推進室運営)サキホコレについて」

「ゆめおばこ」は、秋田県の奨励品種で、冷めても硬くなりにくい特性を活かして、中食・外食業界向け需要の獲得も狙っています。

「ゆめおばこ」を含め、品種別に仕向け先を想定した秋田米のブランド化戦略・販売戦略は、他の地域でも参考になるのではないでしょうか。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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