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【特A米】食味ランキングから見る、今注目の銘柄一覧

【特A米】食味ランキングから見る、今注目の銘柄一覧
出典 : BOY / PIXTA(ピクスタ)

米の価格が低迷する中、水稲農家が収益を向上させるには、栽培方法を工夫して付加価値を付けたり、加工用米品種を導入したりするなど、思い切った経営の見直しが必要です。食味ランキングで特A米となるような人気品種を導入することも、収益アップに効果的です。

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全国で米の品種開発がしのぎを削り、各産地から続々と新品種が生まれる昨今、主食用米の作付けは、地域に適した「売れる米」を見極めて品種を選ぶことが重要です。そこで本記事では、品種選びの参考として、最新の食味ランキングをもとに注目の銘柄と産地を紹介します。

【2023年最新】 令和4年産米の食味ランキング

炊きたての新米

プラナ / PIXTA(ピクスタ)

米の食味ランキングはどのように決まり、どの産地のどのような品種が高い評価を獲得したのでしょうか。米の食味ランキングと最も高い評価「特A」を獲得した産地品種をお伝えします。

米の食味ランキングの説明

米の食味ランキングは、食味官能試験に基づき、一般財団法人 日本穀物検定協会が毎年発表しています。食味試験の結果は、5段階でランク分けされ、「特A」が最も食味が優れた評価です。

食味官能試験は、専門の食味評価エキスパートパネルが、「外観」「香り」「味」「粘り」「硬さ」「総合評価」の6項目について、基準米(複数産地のコシヒカリのブレンド米)と試験対象米を比較・評価します。

食味試験の結果は、「特A」「A」「A’」「B」「B’」の5段階にランクされ、基準米よりも特に食味に優れたものに「特A」が与えられます。

道府県の推奨品種や作付面積が一定の基準を満たすものが、食味ランキングの対象産地品種となります。

米の食味ランキング 特A A A’ 産地品種数

出典:一般財団法人 日本穀物検定協会「食味試験|ランキング試験」所収「米の食味ランキングの概要」よりminorasu編集部作成

現時点で最新となる令和4年(2022年)産米では、東京都・大阪府・沖縄県を除く全国44道府県の152産地品種がランキング対象でした。そのうち、特Aの評価を受けたのは40産地品種で、令和3年(2021年)産の42産地品種に比べて減少しました。

特Aが減った原因としては、8月から9月にかけての登熟期に台風や線状降水帯の発生などの天候不順による被害を全国的に受けたことが考えられます。

「特A」を獲得した米銘柄・産地一覧

令和4年(2022年)産の米の食味ランキングで特Aを獲得した40産地品種は、以下の通りです。

米の食味ランキング 特A 産地品種一覧

出典:一般財団法人 日本穀物検定協会「食味試験|ランキング試験」 所収「ランク別表」よりminorasu編集部作成

令和4年(2022年)産の米の食味ランキングでは、「ゆめぴりか(北海道)」「彩のきずな(埼玉県)」「さがびより(佐賀県)」など20産地品種が、3年連続で特Aを獲得しています。産地が一丸となって品質向上の努力を続けていることがこの結果につながったと考えられます。

品種別の動向を見てみましょう。

米の食味ランキング 特A 品種別の増減 2021年産 vs. 2022年産

出典:一般財団法人 日本穀物検定協会「食味試験|ランキング試験」 所収「米の食味ランキングの概要」よりminorasu編集部作成

最も多く特Aを獲得したのは、8産地品種の「コシヒカリ」ですが、前年の13産地品種から減少しました。また、「きぬむすめ」「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」が前年よりも特Aを獲得した産地品種数を減らす結果となりました。

その中で、「にこまる」は特Aを獲得した産地品種数を3から6に増加させる結果となりました。これは、「にこまる」が高温に強い品種であることと、導入する産地が増えていること、そして各産地の努力が影響していると考えられます。

食味ランキングで特Aを獲得! いま注目の品種5選

令和4年(2022年)産の食味ランキングで特Aを獲得した品種のうち、おすすめしたい以下の5品種について解説します。

  • にこまる
  • つや姫
  • はれわたり(参考品種)
  • サキホコレ(参考品種)
  • なつほのか(参考品種)

「参考品種」とは、米の食味ランキング試験の対象条件(作付面積1,000ha以上、または生産量5,000t以上)を満たさないものの、主力品種としての今後の普及が見込まれ、食味試験結果が公表される産地品種です。

にこまる

収穫期を迎えた「にこまる」

収穫期を迎えた「にこまる」
Matuyan / PIXTA(ピクスタ)

「にこまる」は、農研機構九州沖縄農業研究センターが育成し、2008年に品種登録された暖地向きの品種です。西日本の暖地一帯が栽培適地で、令和5年(2023年)時点では、静岡県や長崎県など、中部地方から九州地方まで幅広い地域で奨励品種として採用されています。

西日本の主力品種は「ヒノヒカリ」ですが、近年の温暖化の影響を受け、品質低下などの問題に直面しています。「にこまる」は「ヒノヒカリ」と同レベルの良食味、高温環境下での高品質の保持、そして多収性を兼ね備えており、「ヒノヒカリ」に代わりうる可能性を秘める品種です。

「にこまる」は「ヒノヒカリ」と比較した場合、出穂期・成熟期は「ヒノヒカリ」と同程度かやや遅く、光沢が良く粘りが強い食味は「ヒノヒカリ」と同等かそれ以上です。

さらに、収量は「にこまる」のほうが「ヒノヒカリ」よりも5~10%以上多収で、高温年でも安定した品質を得られる特性を持っています。

「にこまる」の栽培法は基本的に「ヒノヒカリ」に準じますが、苗の伸長が早いので、育苗時には徒長しないように細心の注意が必要です。

「にこまる」の概要

  • 栽培適地:九州平坦地域(普通期栽培)および温暖地の「ヒノヒカリ」作付け地域
  • 早晩性:九州北部の普通期栽培では「中生の中~中生の晩」
  • 耐性・抵抗性など:耐倒伏性「中」、葉いもち・穂いもち圃場抵抗性「やや弱」、白葉枯病抵抗性「中」

出典:農研機構
九州農業研究センター「「にこまる」の育成」
「刊行物詳細技術紹介パンフレット|良質・良食味・多収水稲品種 「にこまる」栽培マニュアル」所収「良質・良食味・多収水稲品種 「にこまる」栽培マニュアル(2015年版)」

つや姫

山形県は「つや姫」のPRを積極的に展開している

山形県は「つや姫」のPRを積極的に展開している
出典:株式会社PR TIMES(山形「つや姫」「雪若丸」ブランド化戦略推進本部 プレスリリース 2023年11月1日)

「つや姫」は、山形県農業総合研究センターが育成し2011年に品種登録されました。

粒の大きさ・つや・白さといった特徴的な見た目に加えて、食味にも優れ、初めて米の食味ランキングに登場した2010年産から現時点で最新の2022年産まで13年連続で特Aを獲得し続けています。

現在では、育成された山形県に加えて、宮城県・大分県・島根県など10県で栽培されています。

令和4年(2022年)産の米の食味ランキングでは、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」などが、令和3年(2021年)産よりも品種別にみた特Aランクの産地品種数を減らす中、「つや姫」の特Aランクの産地品種数は、令和3年(2021年)産と同数の3産地品種でした。

「つや姫」は「コシヒカリ」と比較した場合、出穂期・成熟期は「コシヒカリ」と同程度で、光沢・外観が良く食味は優れています。

さらに、収量性は「つや姫」のほうが「コシヒカリ」「はえぬき」よりも高く、白未熟粒の発生が少なく玄米品質は「コシヒカリ」を上回り「はえぬき」並に高品質です。

「つや姫」の概要

  • 栽培適地:山形県における適応地帯は、山形県平坦地域及び南東北地域以南
  • 早晩性:育成地では「晩生」
  • 耐性・抵抗性など:耐倒伏性「やや強」、障害型耐冷性「中」、葉いもち圃場抵抗性「強」、穂いもち圃場抵抗性「不明」、白葉枯病抵抗性「やや強」、縞葉枯病抵抗性「罹病性」

出典: 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター 運営「AgriKnowledge」内「山形県農業研究報告2号」所収「水稲新品種「つや姫」(山形97号)の育成」

はれわたり(参考品種)

JA全農の産直通販JAタウン内の「JA青森ショップ」では、新品種「はれわたり」をりんご「サンふじ」とともに特集

JA全農の産直通販JAタウン内の「JA青森ショップ」では、新品種「はれわたり」をりんご「サンふじ」とともに特集
出典:株式会社PR TIMES(JA全農の産直通販JAタウン プレスリリース 2023年11月1日2023年11月14日)

「はれわたり」は、青森県産業技術センター農林総合研究所が育成し、2021年に品種登録出願・2023年に全国デビューを迎えた新品種です。

青森県で広く栽培されてきた「つがるロマン」の作付面積減少に伴う「まっしぐら」への作付偏重の改善や、県南地方でも栽培可能な良食味・高品質米を求める現場の要望を叶える品種として育成されました。食味は良好で、胴割粒の発生が少なく、栽培特性に優れた品種です。

「はれわたり」は、比較品種「まっしぐら」「つるがロマン」と比較した場合、出穂期・成熟期は「まっしぐら」と同程度で、柔らかく粘りがある炊飯米の食味は良好です。

玄米収量は「まっしぐら」「つるがロマン」と同程度かやや少ないですが、玄米品質は「まっしぐら」を上回り「つるがロマン」と同程度であり、胴割粒の発生は「はれわたり」のほうが「まっしぐら」「つるがロマン」よりも明確に少ない特長があります。

「はれわたり」の概要

  • 栽培適地:青森県内全域(県南地域北東部・津軽半島北部を除く)
  • 早晩性:「中生の早」
  • 耐性・抵抗性など:耐倒伏性「やや強」、障害型耐冷性「強」、葉いもち圃場抵抗性「強」、穂いもち圃場抵抗性「極強」

出典:青森県|普及に移す研究成果・参考となる研究成果(水稲) 所収「水稲新品種「はれわたり」の特性」
東北農業試験研究協議会|東北農業研究 第75号 令和4年12月 所収「水稲新品種「はれわたり」の特性」

サキホコレ(参考品種)

秋田県は「さきほこれ」のPRに壇蜜さんを起用し、キャンペーンを実施

秋田県は「さきほこれ」のPRに壇蜜さんを起用し、キャンペーンを実施
出典:株式会社PR TIMES(秋田県 プレスリリース 2023年10月19日)

「サキホコレ」は、秋田県農業試験場が育成し、2020年に品種登録出願されました。「サキホコレ」は、「コシヒカリを超える極良食味品種」 をコンセプトに開発された品種で、「あきたこまち」に代わって秋田県の新たな主力品種となることが期待されています。

米の食味ランキングでは、参考品種として令和3年(2021年)産・令和4年(2022年)産が2年連続で特Aを獲得しました。

「サキホコレ」は、秋田県の主力品種「あきたこまち」よりも晩生で、出穂期は6日程度・成熟期は9日程度遅くなります。外観と味に優れ、粘りが強く柔らかい食味は、食味官能試験でも高評価を獲得しています。

玄米収量・玄米品質は「あきたこまち」と同程度で、高温登熟性は「あきたこまち」よりも優れています。

「サキホコレ」の概要

  • 栽培適地:秋田県内の作付推奨地域(秋田市・由利本荘市・大仙市など)
  • 早晩性:「やや晩」
  • 耐性・抵抗性など:耐倒伏性「やや弱」、障害型耐冷性「やや強」、葉いもち圃場抵抗性「中」、穂いもち圃場抵抗性「強」

出典:秋田県「美の国あきたネット|令和5年度版稲作指導指針について」所収「令和5年度稲作指導指針」

なつほのか(参考品種)

「なつほのか」は、鹿児島県農業開発総合センターが育成し、2016年に品種登録された早期栽培用晩生の多収良食味品種です。鹿児島県と長崎県で奨励品種に、大分県では認定品種に採用されています。

令和4年(2022年)産の米の食味ランキングでは、大分県産の「なつほのか」が参考品種として特Aを獲得しました。


鹿児島県の早期栽培地帯では、「コシヒカリ」と「イクヒカリ」が主に栽培されてきましたが、それぞれ倒伏しやすく収量性が悪い、高温登熟性に劣り玄米品質が低下する、という問題がありました。この問題を解決する目的で育成されたのが「なつほのか」です。

「なつほのか」は「コシヒカリ」と比較した場合、出穂期は10日、成熟期は12日遅いので、収穫時期をずらすことが可能になります。「なつほのか」は光沢が良く粘りは強く、「コシヒカリ」と同程度の良食味が特長です。

さらに、「なつほのか」は「コシヒカリ」よりも倒伏耐性に優れた多収品種であり、高温登熟性が高いことから玄米の外観品質は「コシヒカリ」「イクヒカリ」を上回ります。

▼「なつほのか」の特性については、下記記事もご覧ください。

「なつほのか」の概要

  • 栽培適地:鹿児島県早期栽培地帯
  • 早晩性:「早生の晩(早期栽培の晩生)」
  • 耐性・抵抗性など:耐倒伏性「強」、葉いもち・穂いもち圃場抵抗性「やや弱」、白葉枯病抵抗性「やや弱」

出典:農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター 運営「AgriKnowledge」内「鹿児島県農業開発総合センター研究報告 10号」所収「水稲新品種‘なつほのか’の育成とその特性」

特A獲得には地域ぐるみの取り組みが重要に

スーパーマーケットで米を選んでいる消費者

sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)

米の食味ランキングで特Aを獲得することで、消費者や外食産業など幅広い層から注目を集め、売り上げ増加・イメージアップにつながることが期待できます。しかし、近年は気候変動などによって、人気産地品種であっても、特Aを獲得し続けるのは簡単ではない状況になっています。

2017年産を対象とした米の食味ランキングでは、代表的なブランド米である魚沼産「コシヒカリ」が特Aを獲得できなかったことが大きなニュースとなりました。

この事態を受け、魚沼市を中心に地域ぐるみで品質向上に取り組んだ結果、翌年には魚沼産「コシヒカリ」は特Aに返り咲き、2022年産まで特Aを獲得し続けています。

魚沼産「コシヒカリ」に加えて、「ななつぼし(北海道)」「青天の霹靂(青森県)」「銀河のしずく(岩手県)」のように、地域ぐるみで品質向上に取り組んでいる地域の産地品種が特Aを獲得している例が複数見られます。

このことからもわかる通り、特A獲得には品種育成から栽培方法まで、地域一丸となった取り組みが必要となるでしょう。

出典:
株式会社トプコン「 | Through the LENS by TOPCON(スルー・ザ・レンズ)|特A評価の米は、本当においしい?「食味の評価」とは」

一般社団法人農協協会 農業協同組合新聞「「特A」は40点で2つ減 令和4年産米の食味ランキング 品種別で「にこまる」が健闘」(2023年2月28日)
株式会社毎日新聞社「毎日新聞 地方版 2019年2月28日|魚沼産コシヒカリ:魚沼米、特A返り咲く 18年食味ランキング 地元、安堵と歓喜の声/新潟」
株式会社新潟日報社「新潟日報 2018年3月15日 朝刊|魚沼コシ特A落ち 低温、収穫遅れ影響か 県など対策会議」

収穫を迎えた魚沼コシヒカリ(新潟県南魚沼市)

収穫を迎えた魚沼コシヒカリ(新潟県南魚沼市)
zun / PIXTA(ピクスタ)

米の食味ランキングは、消費者にとっておいしいお米を選択する指標となり、高い評価を獲得できた産地の農家にとっては収益向上につながることが期待できます。また、対外的な高い評価は産地農家の耕作意欲を高め、将来的にはブランド米としての地位獲得につながることが期待できます。

近年は、気候変動などによる食味の低下が頻繁に起こり、特Aの獲得は容易ではありません。このような状況でも安定的に特Aを獲得するためには、地域一丸となって取り組むことが重要です。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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