ナノバブルは農業をどう変える?特徴と効果、発生装置の価格目安を解説

農業におけるナノバブル水は、水中に微細な気泡を発生させる技術で、酸素供給や栄養吸収をサポートし、農作物の栽培効果を高めることが期待されています。この記事では、農家がナノバブル水を導入する際に必要な装置や費用、具体的な効果・事例を解説します。
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農業で注目される「ナノバブル」とは?

Andrey Armyagov / PIXTA(ピクスタ)
農業への最新技術導入に興味をお持ちなら、すでに「ナノバブル」について聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、「具体的にどういうものなのか」までは理解できていない人も多いのではないでしょうか。そこで、まずはナノバブルの概要について解説していきます。
普通の気泡との違いは?ナノバブル(超微細気泡)の定義
ナノバブルとは、簡単にいうと「目に見えないくらい小さな気泡」です。「ウルトラファインバブル」と呼ぶケースもあります(ultra fine=「超微細」の意)。
ナノとは?

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ナノ(nano:n)は10億分の1(10のマイナス9乗)を表す単位ですが、非常に小さいサイズを表現する言葉としても用いられます。
ナノメートル(nm)は、1mの10億分の1、1mmの100万分の1で、髪の毛の太さの約10万分の1といわれています。
ナノバブルとは?
ナノバブルの気泡の大きさについての明確な定義はありませんが、一般的には1ナノメートルの1000倍にあたる1つ上の単位、1マイクロメートル(㎛)以下のナノメートル(nm)単位の気泡を指すことが多いようです。

ナノバブルの大きさ目安
ナノバブルとマイクロバブルの違い
ナノバブルに似た言葉として「マイクロバブル」があります。両者の違いは「気泡のサイズ」です。
どちらも、目に見える通常サイズの気泡である「ミリバブル」や「センチバブル」に比べると非常に微細な泡である点は同じです。
一般的に1マイクロメートル(0.001mm)以下のナノバブルに対して、マイクロバブルはそれよりも少し大きい50マイクロメートル(0.05mm)以下の気泡を指します。
マイクロバブルも非常に小さいため、気泡そのものは視認できませんが、多量のマイクロバブルが含まれた透明な水は白く濁って見えます。
一方、ナノバブルは水に多量に含ませても無色透明のままで、基本的に肉眼では確認できません。
ナノバブル水の農業利用
ナノバブルはさまざまな分野での応用が進んでいますが、最近ではナノバブルを含んだ水を農業に活用する方法が注目されています。ナノバブル水は以下のような特性を持ち、作物の収量増や品質向上につながると期待されています。
- 土壌への浸透性が高くなる
- ナノバブルは水中に長時間とどまる性質があるため、水中の溶存酸素量を増やせる
- マイナス電荷を帯びたナノバブルが、作物の生育に必要なプラス電荷の栄養素を効率的に集積・運搬する
マイクロバブルもナノバブルと同様の性質を持ちますが、ナノバブルのほうがその特性は強く出るため、作物の栽培において享受できるメリットも大きいといえます。
装置メーカーにより異なる気泡の発生方法
ナノバブルを発生させる方法は1つだけではありません。各メーカーが装置の開発に取り組んでおり、水や気体を高速で圧入する旋回流方式やポンプで加圧する加圧融解方式など、これまでにさまざまな方法が模索されてきました。
近年では、株式会社安斉管鉄の超微細孔式や、株式会社ナックのモノトランフィルム装置など、従来よりも大幅な小型化や省エネルギー化を実現した装置が登場しています。技術開発が進んだことで、製品によっては水だけでなく粘性のある液体や空気以外のガスも気泡に混ぜられるようになったことも注目すべきポイントです。
出典:株式会社安斉菅鉄 「ナノバブルとは?」
ナノバブル水の特徴と期待できる効果
ナノバブルにはさまざまな特性がありますが、それが農業においてどのように役立つか具体的にイメージできない人もいるのではないでしょうか。ここからは、ナノバブルを含んだ水が作物にどのような影響を与えるのか詳しく解説します。
硬い土壌にも水が浸透し、健全な根の生育を促す

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ナノバブルのメリットの1つとして、「水の表面張力を小さくする」点が挙げられます。ナノバブルを含んだ水は浸透性が高く、硬い土にも染み込みやすくなり、作物へ効率的に養分や水分を供給できるということです。
また、ナノバブルは水面に上昇する力が働きにくく、水中に長い時間とどまることができます。その結果、水中の溶存酸素量が高くなり、植物の根へ多くの酸素を供給できるため、作物の生育によい影響を与えると考えられています。
特に地下水を灌水に利用することの多い施設栽培では、水中の酸素欠乏によって土壌が硬くなりがちです。ナノバブルならそうした施設栽培のデメリットを補えるうえ、高い浸透性によって健全な根の生育を促せます。
作物の栄養吸収を助け、品質を向上させる

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ナノバブルの表面はマイナスの電荷を帯びているのが特徴です。一方、作物の生育に大切な「Na(ナトリウム)」や「Ca(カルシウム)」「Mg(マグネシウム)」といった栄養素はプラスの電荷を帯びているため、ナノバブルを含んだ水にはこうした栄養素が集積されやすくなります。
前述したようにナノバブル水は高い浸透性によって、作物まで効率的に養液を運搬してくれることもあり、作物が生育しやすい環境を整えることができます。
二酸化炭素の供給にも応用が可能
装置によっては、空気以外の気体をナノバブル化し、養液に混ぜて散布することも可能です。光合成を促進するには施設内での二酸化炭素の散布が効果的ですが、昼間の作業で人の出入りが多く、施設を締め切る時間をなかなか作れない場合もあるでしょう。
CO2ナノバブル水による灌水なら、ガス散布が難しい状況でも普段と変わらない作業をしながら効率的に作物へ二酸化炭素を供給可能です。
また、オゾンの酸化力を応用し農業において病害対策に応用する試験・研究の例があります。オゾンをナノバブル水に溶かしこんで利用する方法などで、新たな病害対策として期待されています。

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農業用ナノバブル発生装置の価格目安と製品事例
農業でナノバブル水を導入する際には、専用の発生装置が必要です。価格帯は装置の出力や処理能力によって幅があり、小規模施設向けでは50万円前後から、大規模施設向けでは100万円を超えるものもあります。
例えば、株式会社ヤザワ環境エンジニアリングが提供するナノバブル水製造装置は、独自の気液二相流旋回方式を採用し、高濃度のナノバブル水を生成可能です。灌水チューブの詰まりを防ぐ効果も期待でき、運用面での負担軽減にもつながります。また、より手軽にナノバブルを利用できる、ナノバブル植物活性水「根活」も販売しています。
また、株式会社ナノバブル研究所の農業用マイクロ・ナノバブル水製造装置は、水耕・露地栽培の両方で活用されており、レタスの重量が従来比300%を超える例も報告されています。電動機出力や圧力仕様の異なるバリエーションが用意されており、現場の規模や用途に応じた選定が可能です。
実際にナノバブル水を活用する際は、発生装置の性能とコストバランスを見極め、施設の規模や作物の種類に合わせて最適な製品を選び、長期的な効果を見込んで検討しましょう。
出典:株式会社ヤザワ環境エンジニアリング
株式会社ナノバブル研究所「農業用ナノバブル水発生装置」
ナノバブルを含んだ水は、「灌水の溶存酸素量を増やせる」「栄養素の集積・運搬効果により作物の栄養吸収を促進させる」といった特性により、作物の収量増や品質向上につながることが期待されています。
導入にそれなりのコストはかかりますが、近年の技術革新によって小型化や低コスト化が進んでいるのも追い風です。
先進的な技術を使った新しい農業にチャレンジすることを考えている人は、ナノバブルの作物への利用を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。