【2021最新】新規就農者支援の制度一覧!農業経営に補助金を活用しよう
農業は手をかけただけ作物が実りとなって応えてくれる、やりがいのある職業である一方、天候や市場の影響を受けるリスクを抱えています。それらのリスクから新規就農者を守り、前向きな取り組みを支援するための助成金や税制措置、支援制度を一覧にしました。
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目次
担い手不足に悩む農業にとって、意欲ある新規就農者は守り育てていきたい大切な存在です。そのため、国や各自治体はさまざまな支援事業を行っています。新規就農者のめざす農業経営を実現するために、効果的に活用できる主な支援を紹介します。
新規就農者支援を受けるなら、まずは「青年等就農計画制度」をチェック!
新規に農業経営を始めるなら、国や自治体の補助金や支援制度を活用するため、まずは「青年等就農計画制度」について知りましょう。
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
目指せ認定新規就農者! 農林水産省管轄の「青年等就農計画制度」とは?
青年等就農計画制度は、新たに農業を始める青年などが作成する「青年等就農計画」を各市町村が認定し、認定した新規就農者を重点的・集中的に支援する制度です。
対象となる新規就農者は、原則18歳以上45歳未満の青年または知識・技能を有する65歳未満の者、そしてこれに該当する人が役員の半数以上を占める法人で、農業経営を始めてから5年以内の者も含みます。
この制度の目的は、これからの農業を支える有望な新規就農者を増やし、安定的な地域農業の担い手として育成することです。審査するのは市町村ですが、都道府県が基本方針を定めます。
提出された計画は、市町村の基本構想に沿ったもので、適切で達成される見込みが確実であれば、認定されます。
制度を利用する場合は、農水省のホームページから様式を入手し計画書を作成、管轄の市町村に提出します。それを市町村が審査し、認定すると、計画内容達成のためのさまざまなフォローが実施されます。
農林水産省「青年等就農計画制度について」
青年等就農計画制度における、認定新規就農者の認定状況
農林水産省がまとめた資料によると、2020年3月末現在の認定新規就農者数は11,397経営体で、うち青年は80.9%に当たる9,225人です。
共同申請・法人以外の年齢構成をみると、35~39歳が全体の22.2%で最も多いですが、おおむねバランスよく認定されていることがわかります。
出典:農林水産省「青年等就農計画の営農類型別等の認定状況について(令和2年3月末現在)」よりminorasu編集部作成
また、営農累計別にみると82%が単一経営で、そのうち施設野菜が33%、露地野菜31%、次いで果樹が約17%、水稲が約4%と続きます。
出典:農林水産省「青年等就農計画の営農類型別等の認定状況について(令和2年3月末現在)」よりminorasu編集部作成
出典:農林水産省「青年等就農計画の営農類型別等の認定状況について(令和2年3月末現在)」
具体的な支援内容は? 認定新規就農者が活用できる補助金・支援事業の一覧
次に、認定新規就農者となった場合に活用できる制度を紹介します。
就農後、最長5年間の定額交付を行う「農業次世代人材投資事業(経営開始型)」
cba / PIXTA(ピクスタ)
この制度では、農業を始めてから5年以内の経営が不安定な時期に、規定の要件をすべて満たす認定新規就農者に対し、所得を確保するための給付金が支払われます。経営開始から3年目までは年間150万円、開始4~5年目では年間120万円の給付となっています。
要件には、独立・自営就農であることや、就農時点で原則50歳未満であり次世代を担うという強い意欲を持つこと、就農後5年以内には農業およびその関連事業で生計を立てる実現可能な計画が立てられていることなど7項目あり、すべてを満たせば適正額が給付されます。
出典:農林水産省「農業次世代人材投資資金」
農業用機械や施設の導入を支援する「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」
ライダー写真家はじめ / PIXTA(ピクスタ)
この支援事業の目標は、産地の収益力強化と地域農業の活性化、意欲ある担い手の確保・育成です。そのために必要な農業用機械・施設の導入や、地域の生産事業モデルや農業支援サービス事業の育成を支援しています。
事業には、次の2つのタイプがあります。
地域担い手育成支援タイプ
地域農業の担い手として経営の強化・発展に取り組む農業者に対する支援です。農業用機械や施設を導入する際に受けた融資残に対して助成金を交付する「融資主体型補助事業」と、小規模・零細農家の多い地域で共同利用機械の導入を支援する「条件不利地域型補助事業」の2事業があります。
先進的農業経営確立支援タイプ
地域との相乗的発展をめざす取り組みや、さらなる規模拡大を図る取り組みを主体的に行う農家に対する支援で、「融資主体型補助事業」があります。
事業の対象は、地域内でアンケートや調査、話し合いを経て立てられた「実質化された人・農地プラン」を作成している地域、または農地中間管理機構から賃借権の設定などを受けた者が営農する範囲で、中心経営体に位置付けられている農家です。
融資主体型補助事業の助成金上限額は「地域担い手育成支援タイプ」で300万円、「先進的農業経営確立支援タイプ」で法人1,500万円、個人1,000万円、条件不利地域型補助事業の助成金は、4,000万円を上限に、整備内容ごとに1/2(農業用機械は1/3)を乗じた額の合計額です。
出典:農林水産省「令和3年度 強い農業・担い手づくり総合支援交付金」
問い合わせ先
この事業の詳細については、市町村または都道府県の農政担当部局に問い合わせてください。
地域別の問い合わせ先は、農林水産省「強い農業・担い手づくり総合支援交付金(先進的農業経営確立支援タイプ・地域担い手育成支援タイプ)(令和3年度)」のページにあります。
米・麦・大豆などの生産農家の安定経営を助ける「経営所得安定対策」
takashi355 / PIXTA(ピクスタ) takagix / PIXTA(ピクスタ) PHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)
国による農業者の経営安定のための諸対策で、主なものは以下の2つです。いずれも交付対象者は認定農業者、集落営農、認定新規就農者で、規模要件などの制限はありません。
直接支払交付金(ゲタ対策)
輸入品との価格差から生じる不利を補正する交付金です。麦類、大豆、てん菜などの畑作物を対象とし、生産量と品質に応じて交付する「数量払」と、作付面積に応じ数量払の先払いとして交付する「面積払」があります。
米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)
対象作物である米、麦、大豆などにおいて、当年産収入額が標準的収入額を下回った場合に、差額の9割を補てんします。補てん財源は、農業者と国が1:3の割合で拠出し、農業者の負担分は積立金で賄われます。
近年、これらに加え、すべての農産物を対象として収入減少を補償する「収入保険制度」や、水田をフル活用して飼料用米、麦、大豆などの戦略作物を生産する農業者に交付する「水田活用の直接支払交付金」も行われています。
経営開始に必要な資金を無利子で借りられる「新規就農者に対する無利子資金制度(青年等就農資金)」
天空のジュピター / PIXTA(ピクスタ)
市町村から認定を受けた認定新規就農者(認定農業者を除く)を対象に、限度額3,700万円(特任限度額1億円)までを無利子、実質無担保、無保証人で貸し付けます。償還期限は17年以内、うち5年は据え置き期間です。
資金の使途は、農地などの改良・造成・賃借、果樹などの植栽・育成、家畜の購入・育成、農機具などの賃借権の取得などに要するさまざまな用途が含まれます。
以下の農林水産省のHPで申請様式を入手できますが、要件などの確認があるため、事前に都道府県の普及指導センターや市町村、日本政策金融公庫などに相談しましょう。
出典:農林水産省「新規就農者向けの無利子資金制度について」
交付金活用時の税負担を減らせる「農業経営基盤強化準備金制度」
dr30 / PIXTA(ピクスタ)
この制度は、計画的に農業経営の基盤強化を図る取り組みを支援するための税制上の特例措置です。
農業者が経営所得安定対策などの交付金を受けている場合、農業経営改善計画などに従って交付金を農業経営基盤強化準備金として積立てれば、その額を個人は必要経費に、法人は損金に計上することができます。
また、交付金をそのまま農用地・農業用の建物・機械などの取得に使用したり、交付金を積立てた準備金を農業経営改善計画などに従って取り崩したりした場合は、その金額は圧縮記帳できます。
農業経営基盤強化準備金制度の適用には、確定申告の際に農林水産大臣の証明書の添付が必要です。申請様式などは、以下のサイトから入手できます。
農林水産省「農業経営基盤強化準備金」
準備に使える制度はある? これから新規就農を考える人へ向けた補助金・支援事業
次に、青年等就農計画制度によらない、これから新規就農を考える人が使える制度を紹介します。
就農前、研修期間中の所得を確保できる「農業次世代人材投資事業(準備型)」
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
次世代を担う農業者となることに強い意欲を持つ者を対象に、就農前の研修を支援する資金を交付する制度です。
準備型は、次世代の農業者となることに意欲があることと、就農予定時に49歳以下であることなどの7項目をすべて満たす対象者に、最長2年間、年間最大150万円を交付します。前述の「経営開始型」と同じ制度の「準備型」です。
就農に不安があるなら、「農業インターンシップ事業」の制度をまず使ってみよう
農業インターンシップは、公益社団法人日本農業法人協会が農林水産省の補助事業として運用する事業です。受け入れ先の農業法人などに2日~6週間の期間、基本的に住み込みで農作業を体験できます。
参加費は無料で、交通費のみ自己負担です。農作業の体験だけでなく、食事や農作業後の生活を通して農業経営者や従事者の話を聞き、日本の農業のすばらしさや課題も含め、本来の姿を知ってもらうことも目的の1つです。
「農業をはじめる.JP」のインターンシップのページ
「農業をはじめる.JP」のホームぺージ
出典:株式会社PR TIMES(農林水産省 ニュースリリース 2020年12月7日)
技術研修でノウハウを習得!JAや自治体が独自で実施する支援事業も要チェック
全国新規就農相談センターの2016年度実態調査結果によると、新規就農時に栽培技術や経営に関するノウハウの習得で苦労した人の割合は約70%にも上ります。
つまり、新規就農者にとっては金銭面だけでなく知識面での支援も重要です。例えばJAグループでは、新規就農者へ向けた技術研修などを積極的に行っています。
JAは地域によってさまざまな新規就農者の支援活動をしており、ベテランの営農指導員も在籍しています。まずは、参入を希望する地域を管轄するJAに問い合わせてみましょう。
他にも支援事業はある? 新規就農者支援の制度をさらに調べる方法
こぷ / PIXTA(ピクスタ)
次世代につながる農業政策は、国だけでなく各都道府県でも積極的に推進されており、全国にはさまざまな支援制度があります。
ここで紹介しきれなかったその他の補助金・支援金制度を探すには、農林水産省がインターネット上で提供している「逆引き辞典」を活用しましょう。農業の補助事業、融資、出資、税制の特例などの情報や優良事例について、確実なソースの情報を検索できます。
新規就農者は、助成金や経営支援など国や自治体から多くの支援を受けられます。それだけ、未来の農業を担う新規就農者には、大きな期待が寄せられているということです。助成金などを活用しながら確固たる基盤を作り、農業の未来を背負う一人として大きな一歩を踏み出しましょう。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。