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花農家って儲かるの?花き栽培を始めるなら知っておきたいデータと成功事例

花農家って儲かるの?花き栽培を始めるなら知っておきたいデータと成功事例
出典 : Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

花農家をめざすために知っておきたい「花き栽培を収益化するビジネスモデル」や「平均収益などのデータ」を紹介します。また、収益において、新型コロナウイルス感染症の影響をどの程度受けたのか、どのような支援制度を利用できるのかについても見ていきましょう。

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花農家は新規就農者にも人気です。花き栽培を始める前に知っておきたい収益化のモデルや平均収益、新型コロナウイルスによる収益への影響などについてまとめました。また、花農家が活用できる支援制度についても紹介するので、お役立てください。

新規就農者にも人気! “花農家”の魅力

菊栽培農家 新規就農者の研修

cba: / PIXTA(ピクスタ)

花農家は、具体的にはどのような花きを栽培するのか、なぜ新規就農者にも始めやすいのかを解説します。

花農家とは、観賞用の「花き」を栽培・販売する農家のこと

花農家とは、観賞用の「花き」を栽培して販売する農家のことです。観賞用の花きとは、切り花や鉢花、観葉植物、盆栽などの食用ではない植物などが含まれます。主な種類は以下のとおりです。

花き・花木の種類

花き・花木の種類具体例
切り花類菊やバラ、カーネーションなどの「切り花」
ヤシの葉などの「切り葉」
桜などの「切り枝」
鉢もの類シクラメンやランなど、観葉植物、盆栽など
花木類ツツジなどの庭木として利用される木本性の植物
球根類チューリップやユリなどの球根で、食用のものを除く
花壇用苗おの類パンジーやペチュニアなど花壇で栽培するための苗
造園用などのために養成された芝
地被植物類ササや蔓類など、地面や壁面の被覆に用いる植物

出典:農林水産省「花き振興コーナー」所収「花きの現状について(令和3年9月)」よりminorasu編集部まとめ

施設栽培のカーネーション、露地栽培の小菊、鉢花のシクラメン

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)・cba / PIXTA(ピクスタ)・ tarousite / PIXTA(ピクスタ)

いずれも生活に密着した用途ではなく、プレゼントや装飾用、冠婚葬祭用など、嗜好性が高い使われ方をすることが特徴といえます。

なお、農林水産省のデータによれば、国内の花き・花木の算出額は3,484億円で、そのうちの1,971億円を切り花が占めています。また日本の2019年の農業総産出額8兆8,938億円のうち、畜産が36%、野菜が24%、米が20%を占める中、花き・花木は約4%を占めています。生活必需品ではありませんが、一定のニーズはあるといえるでしょう。

出典:農林水産省「花き振興コーナー」所収「花きの現状について(令和3年9月)」

花き・花木の産出額

出典:農林水産省「花き振興コーナー」所収「花きの現状について(令和3年9月)」よりminorasu編集部作成

比較的小規模から収益化をめざせるビジネスモデル

花き栽培は品目にもよりますが、20~30a程度の比較的小規模の土地で始められることが特徴です。施設栽培がメインとなる場合は、天候や気温の影響を受けにくく、安定した生産量が見込めます。

大規模なほ場や高額な施設導入費の確保が難しい新規就農者にとっては、始めやすい作物といえるでしょう。

その一方で、技術力によって花きの質が大きく左右されるため、常に新技術についての知識を取りいれることが必要とされます。寒さに弱い品種も多いので、燃料費がかかることにも注意しましょう。近年では燃料費が高騰しているため、花き生産にかかる費用も高額化しています。

そのほか、作業時間が長くなりがちなことが、花農家になるに当たって考慮すべき点です。

参考:一般社団法人 全国農業会議所「農業を始めるJP」内「作物ごとの違い 花き」

花農家は儲かる? 収入の目安とコロナ禍における現状

花農家は比較的広くないほ場で始められますが、設備などにも資金がかかります。そのため、設備費用を借入した場合には、計画的に返済するためにも、おおよその年収目安を知っておくことが大切です。そこで、花き栽培における農業所得やコロナ禍の影響について解説します。

花き栽培で期待できる年収(農業所得)の目安

花き栽培の平均所得は以下のとおりです。露地花き作経営は、施設花き作経営と比べると、農業所得が75万円ほど減ります。しかし、農業所得率は27.8%と高く効率のよい生産ができているといえるでしょう。

2020年 個人経営 野菜作・果樹作・花き作の農業所得・農業所得率

出典:農林水産省「令和2年農業経営体の経営収支」よりminorasu編集部作成

加えて、2007年(平成19年)で調査が終了しているため少々古いデータではあるものの、農林水産省の品目別経営統計も紹介します。品目によって、同じ作付面積でも農業所得に大きな違いがあることがわかるでしょう。

なお、この数字には兼業農家も含まれているので、専業農家の農業所得はさらに高くなると予想されます。

2007年 花き作経営の品目別10当たり農業所得・農業所得率

出典:農林水産省「平成19年 農業経営統計調査 品目別経営統計」よりminorasu編集部作成

現在は、コロナ禍で苦戦を強いられている品目も

花きの産出額推移

出典:農林水産省「生産農業所得統計 2020年 長期累年」よりminorasu編集部作成

花きの産出額は1998年をピークに減少を続けており、近年では新型コロナウイルスの影響によるイベントの自粛や冠婚葬祭の簡素化などで、産出額のうち最も多くを占める切り花の需要が特に低下しています。

出典:農林水産省「花きの需要・供給の将来予測による総合的対策のとりまとめ」

一方で、生産者は売れ残りリスクを避けるため、播種から出荷までの期間が短い草花系へシフトする傾向がみられます。例えば、ヒマワリは生花全体の流通が縮小する中、流通量・取引単価とも上がったそうです。

出典:第一園芸株式会社 ニュースレター(2020年12月14日)「~コロナ禍における 2020 年の生花業界の変化~店頭では明るく元気な色合いの花が人気に 明るい花の代表「ヒマワリ」は取引単価が約 10%上昇」

また、青山フラワーマーケットを運営する株式会社パーク・コーポレーション代表取締役の井上英明氏は、Forbes Japanの2020年7月の記事において鉢物と花瓶が伸びていると述べています。

出典:Forbes Japan  2020年7月4日「コロナを経て花の需要に変化 「鉢物」の人気が高まる理由(井上井上英明)」

これから花き栽培で高収益をめざすのならば、時勢を考慮した品目選定が重要になってくるといえるでしょう。

ヒマワリと観葉植物のアレンジメント

Limesoda / PIXTA(ピクスタ)

花農家になるために必要な準備と、活用できる支援制度

カーネーションの大型ハウス

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

花農家になるために必要な準備や開業資金の目安、開業時に活用できる支援制度の例を説明します。

花農家になるためには、施設園芸用のビニールハウスを用意したり、栽培技術を習得したりなどの準備が必要です。自治体やJAでは農業研修を行っていることがあるので、参加することで技術を習得できるでしょう。研修中に農業関係者を含めた人的繋がりを築けることも参加のメリットです。

トルコギキョウ栽培 ビニールハウス

otamoto17 / PIXTA(ピクスタ)

開業資金の準備も必要です。例えば、簡易なビニールハウスでも1坪当たり約1万円の設置費用がかかります。めざす花き栽培の規模に合わせて、資金を準備しておきましょう。

出典:香川県 農業経営課「週末農業で高収益を目指す」

就農にかかる費用は、国の農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)や青年等就農資金などの利用も検討できます。農業次世代人材投資資金には、準備型と経営開始型の2種類があり、研修段階から活用できます。

農林水産省「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」
日本政策金融公庫「青年等就農資金」

具体的な経営モデルは? 参考にしたい、花き栽培農家の成功事例

これから花農家になろうと考える人の参考になる具体的な経営例として、花き栽培で生計を立てている農家の事例を2つ紹介します。

品種の組み合わせは? 米麦と花きを栽培する専業農家の事例

ブプレウラム 切り花

ブプレウラム 切り花
chikaphotograph / PIXTA(ピクスタ)

米麦と花きの専業農家として農業経営を行う、JA岡山 長船花卉部会 大森茂利部会長の事例を紹介します。

大森氏の実家は元々米麦農家で、最初は両親の手伝いから始まりました。その後、コギク農家の方と知り合って栽培に誘われたことと、ちょうどその時期に、行政が地域の農家に花き栽培を奨励していたことなどにより、米麦と花きを同時に経営するようになりました。

花き栽培の基礎は農業大学校の社会人研修で学び、その後JAなどの研修を通して習得しました。ほ場で花の状態を観察することや、県内外の花き栽培農家の見学に行くことも大きな学びとなったようです。

就農23年目で、ハウス8棟と露地15aのほ場を保有し、ブプレウラムやスターチスなどの4品種の花を栽培しています。

大森氏は、これから花き栽培に挑戦する人々のために農業塾を開催しました。実際に大森氏の農業塾から6人の花農家が輩出されています。今後も培った技術を惜しみなく教え、賑やかな花づくりをめざしているそうです。

出典:
JA岡山「岡山の農業人紹介」「大森 茂利さん~花の魅力を多くの人に伝え、花づくりの仲間を増やしたい」
JA岡山 広報誌「パレット vol.251(2021年7月)」内「農を担う vol.251 花の魅力を多くの人に伝え花づくりの仲間を増やしたい 大森茂利さん」

安定経営が実現?! 「露地とハウスの併用」で計画栽培を行う事例

福島県相馬市『陽光園』の代表 高玉恵治さんは、露地栽培と施設栽培を併用し、開花時期をずらす工夫を行っています。もともとは父親が米農家で、経営安定のために菊の露地栽培を始めたことが、高玉さんの花き栽培の始まりでした。

現在では700坪のハウスと100坪の露地をほ場とし、クレマチスやシクラメンなどの鉢花を中心に、花き栽培に取り組んでいます。品種開発にも取り組み、2015年には新種のクレマチスの開発に成功して『エール フクシマ』と名付けました。

出典:相馬市「花で稼ぐ仕組みを大解剖! 計画生産で安定経営を実現する花き農家の戦略とは?」(マイナビ農業掲載)

高玉恵治さんが栽培しているクレマチスの品種の1つ「プリンセスダイアナ」

高玉恵治さんが栽培しているクレマチスの品種の1つ「プリンセスダイアナ」
mayu-dama / PIXTA(ピクスタ)

ほかの農産物と比べると小規模の作付面積から始めることができる花き栽培は、新規就農者にも取り組みやすいといえるでしょう。しかし、新しい技術を積極的に取り入れることや、栽培の基本や応用をしっかりと学ぶことなど、高い学習意欲が求められる分野ともいえます。

また、生活必需品ではないため、世の中の動きに敏感になり、品目の選択などにも反映させていくことが必要です。紹介した事例を参考に、将来を見据えた花き栽培を実現してください。

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林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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