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水田雑草「クサネム」対策!種子混入を防ぐ、効果的な防除体系

水田雑草「クサネム」対策!種子混入を防ぐ、効果的な防除体系
出典 : hiro/ PIXTA(ピクスタ)

「クサネム」は、古くから日本各地の水田や湿地、河川敷などにごく普通に見られる大型の一年生雑草です。水稲栽培においては、米粒とよく似た形・大きさになるクサネムの種子が玄米に混入することで、米の品質・等級を著しく低下させるため、非常に厄介な害草です。

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「クサネム」は、もともと大豆作の難防除雑草でしたが、近年は輪作などを通して水稲栽培と共通の雑草となっています。本記事では、水稲栽培におけるクサネムの生態や特徴を画像付きで詳しく解説するとともに、効果的な防除方法について、おすすめの農薬も含めて紹介します。

水田の難防除雑草「クサネム」対策の基礎知識

クサネム 莢

hiro/ PIXTA(ピクスタ)

近年、関東以西の水田で被害が増えている「クサネム」は、古くから日本に自生している雑草で、水稲栽培では、種子の混入や収穫に支障が出るため問題となっています。

また、大豆作においても、収量が減ったり、収穫の妨げになったりするなどの被害をもたらすため、難防除雑草とされています。特に大豆と水稲の輪作や転作を行う農家にとっては厄介な雑草で、大豆作・水稲作それぞれに対して防除対策の構築が重要です。

ここでは、水稲栽培におけるクサネムの防除に絞り、防除対策の構築にあたって知っておきたい生態や被害の特徴について詳しく解説します。

クサネムの生態と発芽時期

水田に繁茂するクサネム

水田に繁茂するクサネム
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

クサネムの葉と花

クサネムの葉と花
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

クサネムの莢と種子

クサネムの莢と種子
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

クサネムは、湿度の高い畑地や水田に繁殖するマメ科クサネム属の大型一年生雑草で、学名は「Aeschynomene indica L.」です。種子で繁殖し、生長すると水稲よりも高くなるため、水田内でもよく目立ちます。

細い葉が並び、ネムノキに似た形をしており、夜間は葉を閉じる習性もネムノキに似ていることから、クサネムと呼ばれます。

7~10月頃に黄色い花を咲かせ、9~11月に棒状の莢が成熟します。莢には節があり、成熟するとポキポキと折れて地面に落ちます。

種子は黒色に近く、大きさや形が玄米と似ています。土壌中にある種子については、湛水条件下では腐敗や芽の伸長が抑制され、発芽しても土壌への定着は起きにくいとされています。

しかし、湿潤な土壌条件では地表から8cmの土中からでも発生します。そのため水稲栽培では、深水管理下では発生数が少なく、浅水管理の場合や中干し期間などに田面が露出した際には発生数が多くなります。

また、湛水状態であっても、畦畔に繁茂した株から莢が落ち、その中の種子が水田内の水面に浮かんで発芽し、定着することもあります。

クサネムの種子は、好条件であれば5月頃から発芽し始めます。ただし、硬い莢に包まれた種子もあり、出芽は不斉一で長期間にわたって発生するため、一度で防除するのは困難です。

福島県農業試験場会津地域研究支場が2005年に行った試験の結果によると、クサネムの種子は6月までの発芽率は10%未満ですが、7月以降は約15%まで上昇し、8~9月には約40%、10月には44%になると報告しています。

出典:福島県「平成10年度から平成17年度の成果」「水田雑草クサネムの発芽特性」

クサネム被害の特徴

クサネム被害では、ほかの雑草と同様に多発して作物の収量に影響する、といったことが間々あります。しかし、より深刻なのは、コンバインによる収穫の妨げとなることです。

クサネムは大型かつ茎が太く硬いため、収穫作業の際にコンバインに詰まったり、刃などを傷付けたりして、作業に支障をきたします。それを避けるために、収穫前に手作業でクサネムを刈り取る農家もありますが、労力や時間的な負担がかかります。

さらに、水稲栽培においては、収穫時にクサネムを一緒に刈り取ってしまうことで、種子が籾に混ざるリスクもあります。玄米とクサネムの種子は形と大きさが似ているため、籾摺りや選別で排出されにくく、玄米に種子が混入します。

そして黒い種子が混ざることで、米の見た目が悪くなり、等級が低下します。結果、収益の減少につながるおそれがあります。

クサネム対策の適期は「移植前後」と「開花前」

クサネム防除の時期

クサネム防除の時期
出典:全国農業協同組合連合会(JA全農)「農業技術情報(2021年3月24日)よりminorasu編集部作成

クサネムの種子は一斉に発芽するわけではなく、5~10月の長期にわたって次々と発生し、収穫の時期に問題となります。その中でも特に被害が大きいのは、栽培初期に発生するクサネムです。

早期に出芽したクサネムほど生育旺盛で大型となり、莢や種子の数も多く、玄米に近い2mm程度の種子割合も増えます。そのため、早期に発生を抑えることが重要です。

一方で、栽培の早期に湛水状態であった水田では、土壌中にあるクサネムの種子が腐敗したり、発芽が抑えられたりするため、その後、中干しの時期などに発芽しても生育が抑えられ、玄米に混入する種子は少なくなります。

こうしたことから、水稲栽培でクサネムの被害を減らすためには、「移植前後の防除で初期の発生を抑えること」と「開花前の防除で種子の結実を防ぐこと」が重要です。

除草剤と湛水管理で体系防除! 効果的な3つのクサネム対策

水田 畦畔 除草剤散布

天空のジュピター/ PIXTA(ピクスタ)

上記の防除適期を踏まえ、クサネムを効果的に防除する方法としては、次の3つが挙げられます。

1.ピラクロニルを含む除草剤による水田の除草
2.グルホシネートを含むバスタ液剤による水田畦畔の除草
3.湛水管理による種子の発芽と生育の抑制

以下、それぞれ詳しく解説します。

1.ピラクロニルを含む除草剤による水田の除草

除草剤を用いたクサネム対策の基本は、水稲移植時〜移植後に行う、発生前の初期剤・初中期一発処理除草剤の体系処理です。

この処理を行ったあとは、残ったクサネムが開花する前に中後期剤で防除します。こうすることで開花や結実を防ぎ、玄米への種子の混入や、土中に種子が残存することを防ぎます。

具体的な除草剤については、移植時に「ピラクロニル」成分を含む初期剤や一発処理除草剤を使用すると、高い効果を発揮します。

初期剤を散布したあとに初中期一発処理除草剤を体系処理するとさらに効果的で、7月上旬までのクサネム発生・生育の抑制や、8月下旬までの開花・結実の防止効果が期待できます。

初期剤や初期一発処理除草剤には、以下のものがあります。

<初期剤>
・ピラクロニルを主成分とする「ピラクロン1キロ粒剤」

<初期一発処理除草剤>
・ピラクロニル、テフリルトリオンを含む「ゲットスター 1キロ粒剤」
・ピラクロニル、ベンゾビシクロン・ベンゾフェナップを含む「ピラクロエースフロアブル」
・ピラクロニル、イマゾスルフロン、ブロモブチドの3種の成分を含む「バッチリ1キロ粒剤」


これらの多くは、スルホニルウレア(SU)抵抗性雑草に対しても効果があり、ほかの雑草との同時防除が可能です。


ただし、クサネムやそのほかの雑草が特定の成分に対して抵抗性を持たないよう、連用は避けることが大切です。異なる系統の除草剤を複数用意し、ローテーション散布するとよいでしょう。

初期防除のあとに残ったり、新たに発生したクサネムについては、収穫時に種子を残さないように、必要に応じて中後期剤を使用します。中後期剤としては、以下のような除草剤があります。

<中後期剤>
■湛水で使用する場合
・ジメタメトリン、ダイムロン、テフリルトリオン、メタゾスルフロンの4つの成分を含み、さまざまな種類の雑草に効果がある「レブラス1キロ粒剤」
■落水で使用する場合
・ビスピリバックナトリウム塩液剤の「ノミニー液剤」

これらは、生育の進んだクサネムに対し高い効果を発揮します。クサネムが開花する前に処理しましょう。

※なお、ここで紹介した除草剤は2023年5月27日現在、水稲と水田一年生雑草またはクサネムに登録のあるものです。実際の使用にあたっては、必ず使用時点の農薬登録情報を確認し、ラベルをよく読み用量・用法を守ってください。

2.グルホシネートを含むバスタ液剤による水田畦畔の除草

BASF Agricultural Solutions YouTube公式サイト「畦畔でのバスタ®液剤の散布方法」

クサネムは、畦畔に繁茂した株から種子が水田内に落ちて、水に浮かんだ種子が発芽し、根を伸ばして定着するケースも少なくありません。種子が水田内に侵入するのを防ぐためには、畦畔の除草も重要です。

畦畔の除草では、刈払機を使うこともできますが、畦畔を崩さず除草できる方法として、除草剤の活用をおすすめします。例えば、グルホシネートを含む除草剤「バスタ液剤」を使用すれば、除草効率を大幅に改善できます。

バスタ液剤は、水田畦畔に登録があり、収穫の7日前までに、草丈30cm以内のクサネムに対して散布します。

ただし、水稲の生育期間に散布する場合は、飛散防止カバーなどを使用して、水稲に直接かからないように注意してください。また、ドリフトが気になる場合は、手動噴霧器を利用してもよいでしょう。

▼使用方法の詳細はこちらをご覧ください
BASFジャパン株式会社「BASF除草剤 バスタ |作物まわりの散布方法 |水田畦畔での使用法」

3.湛水管理による種子の発芽と生育の抑制

クサネムは落水時の水田や、湿潤条件の畑地や畦畔を好む一方で、湛水条件では土壌中にある種子は発芽しにくくなります。そのまま腐敗するか、発芽率が低下したり、発芽しても生育が抑制されます。そのため、移植後に深水管理をすることで、初期の発生を抑えられます。

そして、中干しまでの間は田面が露出しないよう、湛水管理をしっかり行うことが重要です。特に、田面に凹凸があり、水面から出ているところがあると、クサネムの好む湿潤条件となるため、土中に生存するクサネムの種子が発芽しやすくなるので注意しましょう。

水稲栽培においては、初期の湛水管理をできるだけ深水条件に保つことと、田面をなるべく平らにならし、土壌が水面から出ないようにすることが重要です。

中干しまでの湛水管理

Kaiware / PIXTA(ピクスタ)

クサネムは、古くから日本各地に広くに自生する雑草です。しかし、水稲栽培や大豆栽培においては、収穫作業の妨げとなり、コンバインを傷付けたり故障の原因となったりする厄介な難防除雑草です。

さらに水稲栽培においては、種子が玄米に混入することで品質が低下し、等級が下がってしまうこともあります。そうした被害を防ぐためには、効果的な一発処理除草剤を用いた早期防除対策が重要です。

特に大豆との輪作を行っている農家では、両方のほ場に発生して被害が拡大しないように、水稲・大豆それぞれに適切な防除体系を構築し、被害を最小限に抑えましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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