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ネコブセンチュウ類の防除に有効な農薬一覧!被害を抑える対策方法とは?

ネコブセンチュウ類の防除に有効な農薬一覧!被害を抑える対策方法とは?
出典 : HP埼玉の農作物病害虫写真集

センチュウ類の仲間は地球上に膨大な種類が生息するといわれます。そのうち土壌中に生息し農作物に被害をもたらすのは主にネコブセンチュウ類、ネグサレセンチュウ類、シストセンチュウ類の3種です。この記事では、その中からネコブセンチュウ類に絞って有効な対策を探ります。

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センチュウ類の中でもネコブセンチュウ類はかなり広範な種類の植物に寄生することができ、多くの作物にとって注意すべき害虫です。その生態を知ったうえで、有効な農薬の使用方法や物理的・耕種的防除方法などについて詳しく説明します。

収量に影響を及ぼす、ネコブセンチュウ類の被害

ネコブセンチュウ 雌成虫(円形部の直径0.5mm)

ネコブセンチュウ 雌成虫(円形部の直径0.5mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ネコブセンチュウ類は成虫でも体長1mm未満程度で無色のため、肉眼で見つけることがほぼ不可能で、気づいたときには被害が深刻になっていることもあります。

そのため、寄生されないための予防が重要です。効果的に予防したり、被害を最小限に抑えたりするためにも、まずはネコブセンチュウ類の生態や被害の特徴を正確に知りましょう。

どんな野菜に寄生する?ネコブセンチュウ類の生態

作物に被害をもたらすネコブセンチュウ類には数種類あり、特に主要なものは、比較的温暖な地域に生息するサツマイモネコブセンチュウ、主に寒冷地に生息し耐寒性が高いキタネコブセンチュウの2種です。

いずれの種も広食性で、ピーマン、きゅうり、トマト、ニンジン、大根、サツマイモ(甘藷)、ジャガイモ(馬鈴薯)、レタス、小松菜、いんげん、大豆など多くの作物に寄生します。

種類によって寄生に特徴があり、サツマイモネコブセンチュウだけが寄生する作物、キタネコブセンチュウだけが寄生する作物もありますが、予防や防除方法、使用する農薬はどのネコブセンチュウ類でも同じです。

きゅうり ネコブセンチュウ被害株 根こぶ

きゅうり ネコブセンチュウ被害株 根こぶ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

オクラ ネコブセンチュウ 根こぶ内の雌成虫(円形部の直径0.5mm)

オクラ ネコブセンチュウ 根こぶ内の雌成虫(円形部の直径0.5mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

センチュウ類は土壌中に卵の状態で、あるいは寄生した植物の根の内部で越冬します。地温が10~15℃ほどでふ化し、土壌中を移動して宿主となる植物が植え付けられると根の先端から内部に侵入し食害します。

一度寄生するとそこに定着し、移動はしません。雄はほとんどおらず、雌のみで繁殖を行うことができ、根の表面に形成した卵のうの中に数百個の卵を産みます。

連作を続けると土壌中のネコブセンチュウ類の密度が高まり、感染しやすくなるだけでなく、連作障害の原因となります。やむを得ず連作をする場合は何らかの対策が必要でしょう。

ネコブセンチュウ類による被害の特徴と見分け方

ネコブセンチュウ類による被害は、主に根に現れます。

ブロッコリー ネコブセンチュウ 被害株  根に小さいコブができ、地上部の生育が悪くなる

ブロッコリー ネコブセンチュウ 被害株  根に小さいコブができ、地上部の生育が悪くなる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

寄生されると宿主の根の細胞組織が巨大化し、コブのようなものが数珠状にできます。このコブに圧迫されて根からの養水分の吸収が阻害され生育が悪くなります。悪化すると葉に萎れや黄化が生じ、枯死に至る場合もあります。

きゅうり ネコブセンチュウ 被害多発生ほ場。根の組織がふくれてコブ状になり、細根がなくなり、株が萎凋・枯死する。

きゅうり ネコブセンチュウ 被害多発生ほ場。根の組織がふくれてコブ状になり、細根がなくなり、株が萎凋・枯死する。
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

作物の地上部に虫の食害や病斑、萎縮などが見られないのに萎れや黄化が見られたら、株を引き抜いて、根を確認しましょう。数珠状にコブが付いていればネコブセンチュウ類の可能性が高いといえます。

同じセンチュウ類でも、ネグサレセンチュウ類の場合は症状が異なります。ネグサレセンチュウ類は1つの宿主に定着せず、作物の根の組織を出入りし移動しながら食害します。寄生された作物の根は褐色に変わり腐ったように見えることが、このセンチュウの名前の由来です。

イチゴ ネグサレセンチュウ被害株 根が褐変している

イチゴ ネグサレセンチュウ被害株 根が褐変している
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ネグサレセンチュウ(体長0.55mm)

ネグサレセンチュウ(体長0.55mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

根からの養水分の吸収を阻害しないので生育不良はそれほど顕著ではなく、それよりも、大根やニンジン、ゴボウ、長芋などの根菜類に感染すると、収穫部位に直接被害が現れ、商品価値が大きく損なわれます。

大根 ネグサレセンチュウ 被害根部(白く盛り上がった斑点)

大根 ネグサレセンチュウ 被害根部(白く盛り上がった斑点)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

センチュウ類が根に付けた食害痕から病原菌が侵入し、青枯病などの土壌病害に感染することもあるため、できるだけ早期に防除することが大切です。

ネコブセンチュウ類に有効な化学的防除方法&適用農薬一覧!

次に、ネコブセンチュウ類の防除方法について詳しく見てみましょう。なお、この記事で扱う農薬はすべて、2021年10月現在、ネコブセンチュウ類に対し登録のあるものです。

使用にあたっては必ずラベルの記載内容をよく読み、決められた使用量・使用法を守ってください。また、地域によって農薬散布に関して決まりがある場合がありますので、その決まりに従ってください。

土壌消毒剤や土壌くん蒸剤を用いた土壌消毒を行う

ネコブセンチュウ類は広食性でさまざまな野菜類に寄生する

t2tatsu / PIXTA(ピクスタ)

ネコブセンチュウ類は土壌中に卵があるため、一度発生したほ場では、土壌中密度を減らす対策として土壌消毒が効果的です。太陽熱による土壌消毒も高い効果がありますが、高温になりにくい時期や地域では行えないため、条件をあまり選ばない農薬による土壌消毒がおすすめです。

有効な農薬には粒剤の「バスアミド微粒剤」や、くん蒸剤の「ダブルストッパー」などがあります。

どちらもかなり多くの作物に適用できます。バスアミド微粒剤は播種または定植の21日前までに土壌へ散布・混和し、ダブルストッパーは作付けの10~15日前までに30×30cmの範囲ごとに深さ15cmの穴を掘って埋めます。散布後、マルチなどで被覆することによって消毒効果を得られます。

播種・定植前に、適用のある殺虫剤を土壌へ混和する

土壌消毒後、播種前には土壌へ殺虫剤を混和するとさらに効果的です。有効な農薬としては「ネマトリンエース粒剤」や「ネマクリーン粒剤」などがあります。いずれも、播種や定植前の作物ごとに決められた時期に、全面土壌散布し混和します。

ネマクリーン粒剤は適用作物が一部の根菜類ときくに限られています。購入前に、栽培する作物に適用登録されているかどうかを確認してください。

併用で効果増! 被害を抑えるその他のネコブセンチュウ類対策

天敵微生物や昔からある農業資材を利用した防除は、効き目は緩やかながら、より多くの作物に適用できます。また、農薬による防除と併用すればより効果を上げることが期待できます。

また、こうした防除対策のほかに、外部から卵を持ち込まないように靴の泥を落としたり農具をこまめに洗浄したりといった、基本的な日々の管理が大切であることも忘れてはいけません。

天敵微生物を主成分とする「微生物農薬」を利用する

生物的防除として、天敵微生物である「パスツーリア・ペネトランス菌」を使った「パストリア水和剤」などを活用するのも効果的です。

パスツーリア・ペネトランス菌はネコブセンチュウ類に寄生し、体内の栄養を奪って増殖します。それによりネコブセンチュウ類の増殖を抑え、世代が進むごとに密度を低減させて被害を抑えます。

野菜類やいも類に広く適用します。ただ、天敵微生物といっても農薬であるので、必ず定められた使用量や使用法を守ってください。

緩効性窒素肥料の「石灰窒素」を施用する

石灰窒素は農薬と肥料両方の作用を持ち、大変有用であることから、昔から農家に愛用されてきました。散布後、土壌混和することで、まず農薬として病害虫や雑草を防除し、10日ほどの間に緩やかにその効果が抜けたあとは、緩効性の窒素肥料として作物の養分となります。

石灰窒素の農薬効果・肥料効果についてはこちらの記事で解説しています。

農薬として各社から複数登録されており、各製品には有効成分の1つであるカルシウムシアナミドの含有濃度によって「石灰窒素40」「石灰窒素55」など数値が明示されています。

例として「軍配印石灰窒素50」の登録情報を見てみると、適用作物は「野菜類」、適用病害虫名は「センチュウ類」となっており、緩やかな効き目で広く適用できることがわかります。そのため、ほかの登録農薬との併用処理も可能です。

効果が緩やかとはいっても農薬なので、使用にあたっては必ず用量・用法を守ってください。

作付けの合間に「対抗植物」を植え付けるのもおすすめ

マリーゴールド(農業用)

PHANTOM / PIXTA(ピクスタ)

ネコブセンチュウ類を減らす効果のある対抗植物も併用すると、防除効果が上がります。

ネコブセンチュウ類に効果を発揮する対抗植物は、イネ科のギニアグラス、ソルゴー、マメ科のサンヘンプ、クロタラリア・スペクタビリス、キク科のマリーゴールドなどがあります。

作物の収穫後、次の作付けまでに植え付けることでネコブセンチュウ類の土壌中密度を下げ、被害を抑えることができます。すき込むことにより緑肥としての効果も期待でき、一石二鳥です。

植物によって生育に適した気候や播種時期があるので、ほ場の環境に最適な対抗植物を選びましょう。

前作の被害が著しい場合、播種前に土壌消毒を行ったり、すき込み時に石灰窒素を併用したりすると効果が上がります。すき込んだあと、分解期間は30~45日程度必要です。生育期間も含め、次の作付けまでに十分な栽培計画を立てましょう。

ソルゴー

kita / PIXTA(ピクスタ)

ネコブセンチュウ類を含むセンチュウ類は土壌中にもともと生息しているものであり、作物にとって有害な種類だけを根絶することは非常に困難です。

しかし、効果のある対策を複数併用することで、被害をかなり軽減することができます。栽培する作物とネコブセンチュウ類の特性を合わせて考えながら、自分のほ場に最適な防除対策を見つけ出しましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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