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石灰窒素は土壌消毒にも|農薬効果・肥料効果と上手な使い方
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  • 生産技術

石灰窒素は土壌消毒にも|農薬効果・肥料効果と上手な使い方

この記事では、石灰窒素の農薬効果・肥料効果と上手な使い方、散布する際の注意点などを解説します。併せて、「太陽熱・石灰窒素法」や「土壌還元消毒法」といった土壌消毒で石灰窒素を用いる方法も紹介します。

石灰窒素は100年以上の歴史を持ち、環境にやさしい農業資材といわれています。肥料としての効果だけでなく、土作りや農薬としても利用できるのが特徴です。(肥料としても農薬としても登録があります)

一方、物質そのものが植物や動物・人に対する毒性もあるため、効果と使用上の注意を十分に理解したうえで取り扱う必要があります。

石灰窒素とは?

石灰窒素とはカルシウムシアナミドを主成分とする、肥料・農薬・土作りの3つの機能を持つ化合物です。1901年にドイツのアルバート・フランク博士によって発明され、戦後は国内での食糧増産に大きな役割を果たしました。

石灰窒素を土壌に混ぜると、土壌の水分・温度と微生物の作用でシアナミドと水酸化カルシウムに加水分解されます。一度散布すると、農薬と肥料双方の効果を発揮するのが特徴です。

シアナミドには殺虫・殺菌・除草効果があるため、施用当初は農薬として作用します。1週間ほど経過すると尿素に変化し、最終的には無機態窒素(アンモニア態窒素・硝酸態窒素)となって肥料成分としての作用に変わります。

また、石灰窒素には石灰が約60%含まれており、消石灰(水酸化カルシウム)と同等の含有量です。土壌内を中和する作用だけでなく、有機物の分解を促進する作用やリン酸の肥効を高める効果も発揮します。

防除後に毒性が残らずに肥効に変わる点と、石灰窒素の窒素成分は土壌に保持されやすく肥効が長続きする点が石灰窒素のメリットです。

石灰窒素の形状には 粉状と飛散しにくくした防散、粒状の3種類があり、粉状と防散は基本的に手撒きになりますが、粒状は機械散布での省力化が可能です。

肥料の機械散布

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石灰窒素がもたらす3つの効果と使い方

石灰窒素は農薬としての効果だけでなく、窒素肥料としての効果も発揮します。さらには、土作りの資材として用いられるのも特徴的です。石灰窒素がもたらす3つの効果と、それぞれの使い方を紹介します。

石灰窒素の農薬効果

石灰窒素を散布するとシアナミドに分解され、病害虫・雑草を防除する効果を発揮します。

※石灰窒素は農薬として登録されています。使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、作物ごとの、適用病害虫・適用雑草の種類と使用方法を守って正しく散布してください。

水稲

植代(うえしろ)

pixelcat / PIXTA(ピクスタ)

ユリミミズを防除する場合は、播種前または植付け前に10a当たり40~60kgを散布した後、土壌混和します。

ザリガニ・スクミリンゴガイを防除する場合は、10a当たり20~30kgを散布してから荒代(あらしろ)を行い、深さ3~4cmに湛水して3~4日後に散布します。さらに3~4日放置してから植代(うえしろ)を行いますが、農薬効果がある状態なので漏水を防止する処置が必須です。

ノビエを防除したい場合は、水稲の刈り取り後1週間以内に10a当たり40~50kgを全面散布すると種子が休眠覚醒して発芽、その後枯死します。

野菜類・いも類

センチュウ類の防除では、播種前または植付け前に10a当たり50~100kgを散布して土壌混和します。

カイガラムシ類の防除に有効です。10a当たり400~800gを60~70℃の温湯10Lに溶かして、上澄み液を株または枝条の基部に散布します。施用時期は7月下旬~10月上旬です。

石灰窒素の肥料効果

石灰窒素を土壌に散布すると、シアナミドと水酸化カルシウムに分解されたのち、アンモニア態窒素や硝酸態窒素に変化して肥料としての効果を発揮します。

施用時期・施用量の目安

夏の暑い時期は播種や植え付けの3~5日前、春・秋・冬は7~10日前に散布するようにします。

それより前に播種や定植を行うと、生育障害が発生するため注意が必要です。以下の量を目安に施肥するようにしましょう。

作物10a当たりの施肥量の目安
葉菜類(ほうれん草・ネギ・キャベツなど)60~100kg
果菜類(ナス・ピーマン・きゅうりなど)60~100kg
豆類(大豆・いんげんなど)10~30kg

肥料としての特徴

石灰窒素に由来するアンモニアは、弱酸性である炭酸アンモニウムや重炭酸アンモニウムの形になっているため、土壌コロイドとの吸着力が強いのが特徴です。

硝酸態窒素に変わるスピードが遅いので肥料の効果が持続する期間が長く、窒素の流亡も抑えられます。さらに、堆肥や有機肥料の無機化を促進して肥料の効果を引き出す効果も持っています。

ほかの肥料との併用について

配合する肥料にアンモニア性の窒素が含まれているとアンモニアが気化するなど、肥料ごとの特性があるため、配合前に使用上の注意をよく確認してください。なお、石灰窒素との配合可否は以下のとおりです。

石灰窒素と配合してよい肥料
ようりん、骨粉、ケイカル、炭カル、肥料用消石灰、硫酸加里、塩化加里、けい酸加里、草木灰、魚かす、植物油かすなど有機質肥料
石灰窒素と配合したらすぐに施用する肥料
過リン酸石灰など水溶性のリン酸質肥料、尿素
石灰窒素と配合できない肥料
硫安、アンモニアを含む複合肥料

出典:日本石灰窒素工業会 技術情報 Q&A「散布するとき、他の肥料と混ぜてもかまいませんか?」

石灰窒素の土作り効果

石灰窒素には有機物の腐熟を促進する効果があるため、速成堆肥を作る際に石灰窒素が散布あるいは混ぜ込まれています。有機物の繊維をほぐし、水はけや通気性のよい土作りにも効果的です。稲わらや収穫残さなどを有効活用した土作りの方法も紹介します。

稲わらのすき込み

稲刈り後、切りわらに覆われた水田

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コンバインでの収穫後、切りわらで覆われた水田に石灰窒素を散布してからすき込むと、稲わらの繊維が柔らかくなり、微生物の活性化につながります。翌シーズンの生育初期の窒素不足を防げるだけでなく、代かきなどの作業性の向上も期待できます。10a当たり石灰窒素10〜20kgが施用の目安です。

収穫残さのすき込み

収穫後残さと一緒に石灰窒素をすき込むことで、残さの腐植が促進され土中堆肥となって地力が向上します。

有用微生物の増殖などで土壌微生物層が改善され、病害虫発生の軽減も期待できます。野菜類の残さをすき込む場合は、10a当たり石灰窒素10〜30kgが目安です。

緑肥すき込み

青刈りの緑肥によって土作りを行う場合、フレールモアで緑肥作物を細断したあと、石灰窒素を散布しプラウですき込み、3〜4週間ほど腐熟期間を置いたあとに後作を作付けします。

緑肥作物の中にはセンチュウ類を減らす効果がある作物や土壌の硬盤層を壊す効果がある作物もあるため、求める効果に応じて緑肥作物を選ぶとよいでしょう。

10a当たり石灰窒素20〜60kgが施用量の目安です。

石灰窒素を使用する際の注意点

石灰窒素を使用する際は防護を万全に

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石灰窒素の保管場所

まず、誤飲・誤食などが起こらないよう保管場所に注意します。

吸湿性が高いので、保管が不適切だと本来の効果を発揮できないだけでなく、保管中に水に溶けてしまうと動植物や環境に影響を及ぼす恐れもあります。

雨漏りや浸水が起こりづらい場所を選んだうえで子供の手が届かない場所に置き、保管場所は施錠しておきましょう。

石灰窒素を使用する際は防護を万全に

刺激性が強いため、皮膚に触れると化学やけどを起こしたり、眼に入ると失明に至ったりする危険性があります。石灰窒素を取り扱う時は皮膚が露出しないよう保護メガネや防護マスクはもちろん、不浸透性の手袋と防除衣・ゴム長靴の着用が必須です。

汗を通じて石灰窒素が人体に触れることも考えられるため、夏など気温が高い時は使用を避けるようにします。かぶれやすい体質の人は石灰窒素を取り扱う作業に従事しない・させないようにしましょう。

また、シアナミドには肝臓でのアルコール代謝を妨げる作用があるため、石灰窒素の散布作業後に飲酒すると急性アルコール中毒を起こす恐れもあります。散布後、最低でも24時間はお酒を飲まないようにしてください。

※石灰窒素は農薬として登録されています。使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

土壌消毒の方法いろいろ

太陽熱による土壌消毒

太陽熱による土壌消毒
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

土壌中の病原菌や害虫が原因の連作障害を避けるには、土壌消毒が効果的です。土壌還元消毒法では石灰窒素が用いられますが、他の土壌消毒方法についても確認しておきましょう。

太陽熱消毒

太陽光により土壌の温度を上昇させて、病原菌やセンチュウ類などを防除する方法です。

7~8月の晴天が4日以上続く日をめがけて土壌を灌水したうえで、マルチ被膜を行います。畝上から30cm深の温度が40℃の状態が10日以上続けば、消毒成功です。

畝上から30cm深の温度×日数で積算温度を計算し、800℃以上であれば終了して数日~数週間土壌を乾燥させます。

土壌還元消毒法・太陽熱石灰窒素法

消毒方法自体は太陽熱消毒と同様ですが、土壌に切りわらなど分解されやすい有機物を混ぜて病原菌を窒息死させるのが特徴です。低温でも効果が出るため、夏場の日射量が少ない地域でも活用できます。

石灰窒素を使用する場合は「太陽熱石灰窒素法」と呼ばれています。

石灰窒素を使用することで、有機物の分解が促進されるだけでなく土壌の化学性の向上も期待できるでしょう。

「太陽熱石灰窒素法」についてはこちらの記事をご覧ください。

蒸気・熱水消毒

ボイラーなどで80〜95℃に加熱した熱水をほ場に注入して、土壌を加熱する消毒方法です。熱水の代わりに、水蒸気を土壌に送り込む方法が取られる場合もあります。

防除効果が高いとされており、灌水チューブを使う方法を用いることで、透水性の劣るほ場や傾斜したほ場でも土壌消毒処理が可能です。ただし、蒸気や熱水を作るためのエネルギーコストが高額になる点に留意が必要です。

土壌消毒剤による消毒

かつては臭化メチルが土壌消毒剤として用いられていましたが、2005年に全廃されてからは農薬が用いられるようになりました。低コストで安定した効果が得られることから、最も一般的な消毒方法とされています。

土壌消毒剤には「クロルピクリンくん蒸剤」「D-D剤」「クロルピクリン・D-Dくん蒸剤」「ダゾメット粉粒剤」などの種類があり、それぞれ複数の農薬が登録されています。

農薬ごとに、適用作物や適用病害虫、使用方法、ガス抜きに必要な期間が異なるので、よく調べて選択してください。また、使用の際はラベルをよく読み、正しく使用してください。

土壌消毒後のガス抜き耕転

hamayakko / PIXTA(ピクスタ)

石灰窒素は、農薬として効果を発揮したあと、無機態窒素に変化して肥料としても作物の生育に役立ちます。また、有機物の分解を促進する土壌改良資材の側面もあります。

一度の使用で複数の効果が得られるため、コストパフォーマンスの高い農業資材といえるでしょう。

ただし、使用には万全の注意を払って危険のないようにしてください。また、石灰窒素による土壌消毒をしたあとは、肥効の残留を考慮した施肥設計にも留意してください。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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