新規会員登録
BASF We create chemistry

土壌改良資材の特性を知って土づくりに役立てよう!

土壌改良資材の特性を知って土づくりに役立てよう!
出典 : まさ / PIXTA(ピクスタ)

作物の健全な生育には土づくりが欠かせません。肥料が作物の生長に必要な養分を土壌に供給するのに対し、土壌改良資材は土壌の通気性、排水力、透水力などを改良し、作物の生長を促すために用いられます。この記事では土壌改良の目的別に適した土壌改良資材の種類と特性を紹介します。

  • 公開日:

記事をお気に入り登録する

品質の高い野菜や果実を生産するためには、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)に代表される養分を適切に与えることのほかに、土壌改良が重要なことはよく知られています。

しかし、土壌改良に用いる資材の種類、特性と選び方について明確にご存じの方は、意外に少ないのではないのでしょうか。

この記事では、土壌改良資材の種類とその特性、目的に応じた資材を紹介します。

土壌改良資材とは?肥料との違いは?

肥料散布するトラクター

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

土壌改良資材と肥料の違い

肥料の目的が作物に養分を与えることであるのに対し、土壌改良資材は、耕作に適した土壌をつくるために、土壌の性質を変える目的で用いられる資材です。

土壌改良資材の目的

土壌改良資材によって土壌の性質を変える目的を整理すると、大きくは3つに分けられます。

1. 生物性の改良

土壌中の微生物のバランスを整え、作物の生育に有用な微生物を増やし、病害虫の原因となる有害微生物を抑制する。

2. 化学性の改良

作物が養分を吸収しやすくするため、土壌自体の保肥力を向上し、栽培する作物に適した養分バランス、土壌酸性度になるよう導く。

3. 物理性の改良

土壌の通気性・保水性・透水性を高めるために、土壌の構造の膨軟化・団粒化を促し、作物が養分を吸収しやすくする。

土壌改良資材の範囲

前述で、肥料は作物に養分を与える目的で用いる資材、土壌改良資材は、耕作に適した土壌をつくるために、土壌の性質を変える目的で用いられる資材、と定義しました。

しかし、肥料の中には、養分を補給するだけではなく、土壌改良効果を期待できるものもあります。

例えば、生物性を改良する代表的な資材である堆肥は、肥料取締法の上では「特殊肥料」に分類されます。また、酸性土壌を改良するために用いられる石灰資材は、同様に「普通肥料」に含まれます。

この記事では、こうした肥料の一部も土壌改良資材として紹介します。

土壌改良資材の種類

土壌改良資材は、主に有機質資材、無機質資材、普通肥料、高分子化合物の4つに分かれます。

有機質資材

土壌の通気性、透水性など物理性の改良に加え、保肥力の向上効果、微生物を活性化・多様化させる効果がみられ、土壌改良の基本となる資材です。

代表的なものとして、堆肥全般、ピートモスなどの草炭類、油粕などの有機質肥料、もみ殻くん炭などの炭化資材が挙げられます。

無機質資材

主に土壌の保肥力と通気性・透水性を高めるための資材と、アルカリ性に傾いた土壌の改良のための資材に分かれます。

保肥力、通気性、透水性を高めるための代表的な資材としては、ゼオライト、 ベントナイトなどの鉱物や粘土系の資材、バーミキュライト、パーライトなど鉱物を高温で焼成した資材が挙げられます。

アルカリ性に傾いた土壌の改良に用いる資材としては、リン酸石こうが代表的です。

普通肥料

普通肥料に分類される石灰肥料は、アルカリ性に傾いた土壌の改良に用いるため、土壌改良資材の1つといえます。

高分子化合物

主に、土壌の団粒化を促すために用いられます。

代表的な資材としては、ポリエチレンイミン系資材、ポリビニルアルコール系資材などが挙げられます。

目的別・土壌改良資材の選び方

土壌の状態が良くトラクターの轍が美しい畑

keiphoto / PIXTA(ピクスタ)

【生物性の改良】土壌によい微生物を増やす

生物性に優れた土壌は、土壌内の微生物、虫や小動物などの数や種類のバランスがとれており、病害虫被害の原因となる有害微生物の数が抑えられ、作物の生育が促されます。

また、土壌中の微生物によって、投入された有機質肥料の分解・腐熟が進みやすいこともメリットです。

土壌の微生物の活性が低下している主な原因としては、連作や土壌中の有機物含量の低下が考えられます。

土壌改良資材としては、落ち葉堆肥やバーク堆肥など植物残さを材料とする各種の堆肥、もみ殻くん炭などがよいでしょう。

ただし、投入量には気を付けてください。過剰に使うと、土壌中の微生物が増えすぎ窒素が消費され、作物に必要な窒素が届かなくなる「窒素飢餓」を起こすことがあります。

バーク堆肥

針葉樹や広葉樹のバーク(樹皮)を発酵させたもので堆肥の一種です。肥料取締法が定める特殊肥料にあたります。

分解されにくい有機物リグニンを分解しようとさまざまな微生物が集まり、ゆっくりと土壌を活性化していきます。

多孔質で重量に対し2~3倍の水分を保持できるため、土壌の保水性を高め、分解が進むにつれて保肥力も高まっていきます。土壌改良効果が安定し、長時間続くことが特徴です。

もみ殻くん炭

もみ殻くん炭

エジ / PIXTA(ピクスタ)

もみ殻をできるだけ無酸素の状態で炭化させたものです。

主成分はケイ酸と炭素で、カリウム、カルシウムなどの多量要素、マンガン、鉄、亜鉛などの微量要素も含みます。㏗8~9のアルカリ性で、酸性に傾いた土壌を中和する作用があります。

土壌が中和されると、土壌内の微生物が活性化し、有害菌の活動を抑えてくれます。

また、透水性・通気性・保水性・保肥力の向上、作物の根張りの向上、アブラムシなどの害虫忌避の効果があります。

【化学性の改良】土壌のpHを上げたい

土壌pHの測定

deyangeorgiev / PIXTA(ピクスタ)

化学性に優れた土壌とは、土壌の酸性度が適切に保たれ、保肥力や養分供給力が高い土壌をいいます。

土壌pHが低い場合、作物による吸収、降雨などによる流亡などが考えられます。日本の雨はpH4.6〜4.7と酸性度が高めで、土壌が酸性に傾きやすいのです。

するとカルシウムやマグネシウム、リン酸も失われていき、作物の根が傷むことがあります。酸性に傾いた土壌のpHを上げるには、石灰資材が有効です。

石灰資材は、肥料の中では比較的安価で簡単に扱えるため、過剰施用になりがちです。施用前に土壌pHを測定し、栽培する作物に適した土壌pHにあわせて、施用量を決めましょう。

また、施用後1週間は、播種・定植などはできないので、余裕をみて日程を組んでください。

苦土石灰

ドロマイトという鉱物を焼成したもので、酸性土壌を改良するとともに、カルシウム分、マグネシウム分を補給する役割があります。

消石灰

石灰岩からつくられる生石灰に、水を加えて化合させ粉状にしたもので、主成分は水酸化カルシウムです。

アルカリ分60~70%以上、pH12.0と、石灰資材の中でも強いアルカリ性の資材で、酸度調整に速効性があります。

【化学性の改良】土壌pHを上げないで石灰分を投入したい

ジャガイモ(馬鈴薯)栽培におけるそうか病の予防や、トマトなどの果菜類の栽培では「土壌にカルシウムを補給したいが土壌pHは上げたくない」という場合があります。

このような場合に土壌pHを上げないで石灰分を補給する資材としてリン酸石こうが注目されています。

リン酸石こう

リン鉱石からリン酸液を製造する過程で副産物として産出される、水に溶けやすい硫酸カルシウムを主な成分とした粒状肥料です。

カルシウム分が土壌溶液によく溶け、カルシウム欠乏対策に高い効果を得られますが、
弱酸性で土壌のpHを大きく変化させません。

【物理性の改良】保水性・透水性を高めたい

団粒構造が発達している土壌は通気性・保水性・透水性がよい

ヒトネコデザイン研究所 / PIXTA(ピクスタ)

物理性にすぐれた土壌は、土が軟らかくフカフカしており(膨軟)、団粒構造が発達しているため通気性・保水性・透水性がよく、農作物の根が張りやすいのが特徴です。

通気性・保水性・透水性の低下は、団粒構造になっておらず、隙間のない単粒の状態で、本来、団粒の隙間に存在する水分や養分を保てなくなっていることが主な原因です。

土壌を膨軟にする各種の土壌改良資材がおすすめです。

バーミキュライト

バーミキュライト

エジ / PIXTA(ピクスタ)

苦土蛭石(くどひるいし)という鉱物を焼成して砕いた土壌改良資材です。

多孔質の多層構造をしていることから、空気や水分、肥料を溜めることができ、保水性と保肥力を改良する効果があります。

また、土壌中の微生物のすみかとなるため、生物性の改良にも寄与します。

パーライト

バーライト

ERI / PIXTA(ピクスタ)

真珠岩や黒曜石を高温処理し、粉状にした資材です。

多孔質で軽量、保水性に優れているのが特徴です。保水性や通気性のバランス調整に使われます。

保水性の改良には細かい粒のもの、透水性や通気性の改良には大きな粒のものと、使い分けるとよいでしょう。

ピートモス

ピートモス

エジ / PIXTA(ピクスタ)

ミズゴケやスゲといった水生植物が何年も掛けて堆積腐熟し、泥炭化したものです。土壌の乾燥を防ぎ、保水力を高め、土壌を膨軟にする効果があります。

本来は強い酸性ですが、市販のものの多くはph6.0程度の微酸性に調整されています。

ポリビニルアルコール系資材

ポバールまたはPVAともいわれる非イオン系資材です。

土壌中の粘土や砂の粒子を凝集させると同時に接着させる役割を担い、団粒構造を促進する効果があります。

施用時は、ほ場の全面に散布してから、直ちに耕うんして土壌に混ぜこみます。

この記事では、土壌改良資材の種類と特性を目的別に整理しました。

土壌改良にあたっては、土壌の性質の何を改良するのか、まず目的を特定し、これに応じた土壌改良資材を選択することが大切です。まずは、ご自身のほ場の土壌診断から始めてみてはいかがでしょうか。

記事をお気に入り登録する

minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

上澤明子

上澤明子

ブドウ・梨生産を営む農家に生まれ、幼少から農業に親しむ。大学卒業後は求人広告代理店、広告制作会社での制作経験を経て、現在フリーランスのコピーライターとして活動中。広告・販促ツールの企画立案からコピーライティング、取材原稿の執筆などを行う。農業専門誌の制作経験があり、6次産業化や農商工連携を推進する、全国の先進農家・農業法人、食品会社の経営者の取材から原稿執筆、校正まで携わったことから農業分野のライティングを得意とする。そのほか、食育、子育て、介護、健康、美容、ファッションなど執筆ジャンルは多岐にわたる。

おすすめ