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【カメムシ類対策】大豆に使える農薬は? 防除適期を見極めて減収を防ぐコツ

【カメムシ類対策】大豆に使える農薬は? 防除適期を見極めて減収を防ぐコツ
出典 : gobou3/PIXTA(ピクスタ)

カメムシ類は、大豆をはじめとした豆類の主要な害虫です。種類が多く、作物以外の雑草や雑木にも広く発生してほ場に飛来し、茎葉や子実を吸汁することで収量や品質を低下させます。被害を防ぐには、発生状況を的確に把握し、密度を低く保つための防除対策が不可欠です。

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地域や年によって発生するカメムシの種類は多少異なりますが、大豆栽培において注意すべきカメムシ類は数種類に限られます。この記事ではアオクサカメムシやイチモンジカメムシなどの主要な5種について、生態や特徴を写真付きで解説し、効果的な防除対策を説明します。

カメムシ類による大豆被害の特徴

生育期の大豆と収獲期の水稲

yoshi / PIXTA(ピクスタ)

カメムシ類は代表的な吸汁性害虫で、幼虫・成虫ともに茎葉や莢、子実を吸汁します。食害痕が目立たないため発覚が遅れやすく、気付かないうちに被害が大きくなっているケースも少なくありません。

どの種類のカメムシも、成虫は民家の隙間や雑木、草むらなどに潜んで越冬し、開花期から着莢し始める頃に、周囲の雑草地から大豆のほ場に飛来して吸汁加害します。さらに葉や莢に産卵して繁殖し、幼虫・成虫ともに収穫期まで吸汁加害を続けます。

産卵期が長く、種類によって年に2~3回発生するため、発生したカメムシの世代サイクルごとに幼虫が多く発生する時期が異なります。ほ場に幼虫が目立つようになったら、被害が大きくなる前に早めの防除を行うことが重要です。

子実肥大期の大豆

kiki / PIXTA(ピクスタ)

大豆栽培においては、茎葉の吸汁は基本的にそれほど大きな問題にはなりません。しかし、莢や子実を吸汁されると被害が大きくなるので要注意です。莢の伸長期に吸汁されると生育が止まり、黄色に変色して落莢します。

また、子実の肥大初期に吸汁されると、不稔となって板莢になったり、子実が変形して商品価値がなくなったりするなどの被害をもたらします。

肥大中期以降に吸汁された子実の変形はそれほど酷くならないものの、吸汁痕が褐変することもあり、収量や品質の低下を招くため注意が必要です。

見分け方は? 大豆に寄生する主なカメムシの種類と生態

アオクサカメムシ 成虫

いってき/PIXTA(ピクスタ)

大豆に発生するカメムシ類は30種類以上にも及ぶといわれますが、全国的に問題となる種は数種類に限られます。いずれのカメムシ類も発生期間は共通していますが、発生サイクルが異なります。

ここでは、大豆栽培において重要な5種のカメムシ類について、それぞれ見た目の特徴とその生態を解説します。

【茎葉吸汁型】 マルカメムシ

マルカメムシ 卵

マルカメムシ 卵
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

マルカメムシ 幼虫(3齢)

マルカメムシ 幼虫(3齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

マルカメムシ 成虫

マルカメムシ 成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

大豆に寄生するカメムシ類のほとんどは子実を吸汁しますが、マルカメムシは茎葉を吸汁します。成虫の体長は5mm程度で丸っこく、暗褐色をしていて表面に小さな黒い点刻があるのが特徴です。

北海道の北部を除く日本全土に分布し、主にクズやハギなどのマメ科植物に寄生します。小豆や大豆などの農作物に付くこともあり、幼虫・成虫が集団で茎葉から吸汁します。

4~6月にかけてほ場に飛来し、雌成虫は葉や茎に20~28粒の卵を2列に産み付けます。吸汁加害は収穫期頃まで続きますが、主に茎葉を吸汁するため、ほかのカメムシ類に比べて被害はそこまで大きくありません。

【子実吸汁型】 アオクサカメムシ

アオクサカメムシ 卵

アオクサカメムシ 卵
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

アオクサカメムシ 幼虫(3齢)

アオクサカメムシ 幼虫(3齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

アオクサカメムシ 成虫

アオクサカメムシ 成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

アオクサカメムシは全国に分布し、広食性でマメ科植物のほかにも多くの植物の種子を吸汁します。雌成虫は60~70粒の卵を六角形状の卵塊に産み付けます。

幼虫は終齢幼虫で体長9mm程度、黒または緑の体色に白や赤の斑があり、とてもカラフルです。成虫の体長は13mm程度で、体色は緑色をしていますが、まれに黄色の個体も見られます。年に2世代経過します。

近年、大豆や水稲をはじめとする多くの作物で被害が拡大しているミナミアオカメムシとは、幼虫・成虫とも見た目がそっくりなので注意しましょう。よく観察して種類を見極め、適切な防除を行う必要があります。

【子実吸汁型】 イチモンジカメムシ

イチモンジカメムシ 卵

イチモンジカメムシ 卵
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

イチモンジカメムシ 幼虫(3齢)

イチモンジカメムシ 幼虫(3齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

イチモンジカメムシ 成虫(雌)

イチモンジカメムシ 成虫(雌)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

イチモンジカメムシは、日本では本州・四国・九州・西南諸島など比較的暖かい地域に生息し、主にマメ科植物を好みます。雌成虫は12粒ほどの卵を2列、計24粒ほどの卵塊に産み付けます。

幼虫は、幼齢では小さく丸形をしていますが、終齢までに7mm程度で成虫に近い体形へと成長し、暗褐色で腹部の背に小さな斑紋が並びます。

成虫は体長10mm程度で薄い黄緑色をしており、前胸の背に雄は白色、雌は赤色の線が横一文字に引かれているのが特徴です。暖地では年3世代を経過します。

【子実吸汁型】 ホソヘリカメムシ

ホソヘリカメムシ 卵

ホソヘリカメムシ 卵
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

アリにそっくりなホソヘリカメムシの幼虫(3齢)

アリにそっくりなホソヘリカメムシの幼虫(3齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ホソヘリカメムシ 幼虫(5齢)

ホソヘリカメムシ 幼虫(5齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ホソヘリカメムシ 成虫

ホソヘリカメムシ 成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ホソヘリカメムシは全国に分布し、マメ科植物の子実を吸汁します。本記事で紹介するカメムシ類の中では唯一、単粒産卵をします。

若齢幼虫の頃はアリにそっくりで、終齢幼虫では成虫に近い形になります。成虫は体長17mm程度、暗褐色や赤褐色で、ほかのカメムシ類とは異なる細長い体をしています。雄成虫は頭部と胸部の側面に黄色い不連続紋が見られるのが特徴です。暖地では年3世代を経過します。

【子実吸汁型】 ブチヒゲカメムシ

ブチヒゲカメムシ 卵

ブチヒゲカメムシ 卵
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブチヒゲカメムシ 幼虫(3齢)

ブチヒゲカメムシ 幼虫(3齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブチヒゲカメムシ 幼虫(3齢)

ブチヒゲカメムシ 幼虫(3齢)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブチヒゲカメムシは北海道から九州にかけて分布し、マメ科・キク科の植物や水稲の穂を吸汁します。雌成虫は俵型の卵を20粒ほどの卵塊に産み付けます。

幼虫は丸形で、若齢幼虫はほかのカメムシ類の幼虫と似ていますが、成虫になると赤褐色~黄褐色となり、背中の中央に特徴的な三角の白斑が目立つようになります。触角は白と黒のブチ模様です。年に2世代経過します。

適期防除で大豆の収量を守ろう! カメムシ類に効果的な対策手順

カメムシ類には農薬による防除が有効です。ただし、カメムシ類は加害期間が莢伸長期から収穫期までと長期にわたるうえ、移動性が高く大豆以外の植物からも飛来します。そのため、防除の効果を高めて収量減を防ぐには、ポイントを押さえた対策を講じることが重要です。

ここでは、カメムシ類に効果的な防除対策を講じるうえで押さえておきたいポイントを3点紹介します。

1. 発生状況により、防除の要否とタイミングを見極める

大豆のフェロモントラップ調査

photoTNB - photo-ac.com

農薬の効果をできるだけ高め、効率的にカメムシ類の密度を下げるためには、農薬を施用するタイミングの見極めが重要です。

ほ場近隣の地域で発行される病害虫発生予報は必ず確認し、自身のほ場も定期的に観察しながら発生状況を常に把握しましょう。都道府県ごとにホームページなどで公表している予察灯やフェロモントラップの調査結果も参考になります。

なお、カメムシ類は、日中は葉や茎の陰に隠れているので、上から見るだけではなかなか見つかりません。観察時には着莢部や葉裏、葉陰を注意深く確認する必要があります。

ほ場内で繁殖すると被害が大きくなるため、産卵や幼虫の発生を発見したら速やかに除去するとともに、農薬による防除を行いましょう。

しかし、大規模栽培においては、ほ場全体を一株ずつ観察して回るのは困難です。その場合は予察灯や誘引剤を使ったボックストラップを設置して、発生を予測できます。

また、ほ場の要所要所で2~3茎を手で数回叩いて虫を払い落とし、防虫ネットなどの上に集めて数を確認する調査方法も有効です。目安としては、ほ場侵入期には約50株(100茎)当たり0.2頭、発生最盛期には4頭の発生が認められたら、農薬による防除を行うとよいでしょう。

農薬の散布は一般的に、大きな被害が予想される場合には、落花後の幼莢期~子実肥大期に1週間から10日の間隔で2回散布すると効果的です。子実肥大初期の吸汁被害が最も大きくなるため、その時期は特に発生に注意しましょう。

2. 発生しているカメムシ類に有効な農薬を散布する

2022年6月11日現在、大豆にはカメムシ類に登録のある農薬が多数ありますが、ミナミアオカメムシ以外、個別のカメムシは登録されていません。

同じ農薬で複数の種類のカメムシを防除できるということになりますが、ミナミアオカメムシに対しては、ピレスロイド系の農薬は効果が期待できないという報告があるので、それ以外の農薬を使いましょう。

散布に当たっては、幼虫が潜んでいる葉裏や莢によくかかるように、まんべんなく吹き付けるのがポイントです。また、カメムシ類が薬剤抵抗性を獲得しないように、同じ系統の農薬を連続して使わず、異なる系統の農薬をローテーションで使用しましょう。

1回目と2回目の散布の間を10日ほど開けるため、十分な持続期間のある農薬を使うと効果が上がります。

大豆ほ場 農薬散布

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

カメムシ類に効果のある主な農薬としては、ネオニコチノイド系の「ダントツフロアブル」や「スタークル液剤10」、フェニルピラゾール系の「キラップフロアブル」、有機リン系の「スミチオン乳剤」、ピレスロイド系の「トレボン乳剤」、IGR(キチン合成阻害)系で天敵や訪花昆虫への影響が少なくIPM(総合的害虫防除)に適した「カスケード乳剤」などが挙げられます。

なお、ここで紹介する農薬は2022年6月11日現在、登録のあるものです。実際の使用に当たっては、使用時点での登録があることを確認し、ラベルをよく読んで用量・用法を守ってください。

地域に農薬の使用について決まりがある場合は、それにも従いましょう。登録農薬については、以下のサイトで確認できます。

農薬登録情報提供システム

3. 次作に備えて、被害の出にくい品種選定や作付け計画も検討する

農薬による防除以外にも、いくつか実施できる防除対策があります。

例えば、カメムシ類の発生源となる周辺の雑草などをこまめに防除し、繁殖を抑制することが挙げられます。

▼大豆の雑草防除についてはこちらの記事をご覧ください。

また、ほ場への飛来数を減らすために、被害の出にくい品種選定や作付け計画を立てることも、有効な防除対策の1つです。

開花期が早いほど大豆のカメムシ類による被害は大きくなる傾向があります。そのため、開花が遅い品種を導入したり播種を遅らせたりすることで、カメムシの発生時期と開花時期の重なりが最小限に抑えられ、被害の軽減が期待できます。

ただし、播種時期が遅くなりすぎると全体の収量が減少してしまうので、地域の気候に合わせて適切なタイミングを見極めましょう。

また、小粒多莢の品種なら粒や莢の数が増えるため、相対的な被害粒率を減らすことが可能です。次作の品種選定や作付け計画の際に検討してみてはいかがでしょうか。

出典:農研機構 九州沖縄農業研究センター 成果情報 平成15年度「小粒多莢大豆系統九州143号を遅植栽培してカメムシ類の被害を回避する」

開花期の大豆

ふうび / PIXTA(ピクスタ)

カメムシ類は大豆の開花後から収穫期まで周囲から飛来し、吸汁を続けるやっかいな害虫です。完全に防ぐことは困難ですが、適切な農薬散布によってほ場内の発生密度を低く保ち、繁殖を防ぐことは可能です。

本記事で解説した内容を踏まえ、防除の適期をしっかりと見極めて、収量・品質の低下の防止に努めましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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