新規会員登録
BASF We create chemistry

日本農業の未来を拓く、白鳥一徳さんの収益性向上と大規模化の挑戦

日本農業の未来を拓く、白鳥一徳さんの収益性向上と大規模化の挑戦
出典 : minorasu編集部撮影

就農時20haの耕作面積を130haにまで拡大した白鳥一徳さん。父から受け継いだ農場を運営し、担い手のいない農家の土地を積極的に受け入れてきました。農業人口減少の課題に直面する中、収益性向上とさらなる大規模化の必要性を感じています。白鳥さんに、これまでの取り組みと今後の展望について伺いました。

  • 公開日:
  • 更新日:

記事をお気に入り登録する

宮城白鳥農場 代表取締役 白鳥 一徳(しらとり かずのり)さん プロフィール

白鳥一徳さんは、宮城県栗原市で130haの広大な農地を経営する農家です。大学卒業後に家業を継ぎ、株式会社宮城白鳥農場2代目の代表取締役として農業経営に従事しています。

白鳥農場は、11代続く歴史を持ち、現在は米と大豆の栽培に注力しています。白鳥さんは、広大な農地を効率的に管理するために、最新のスマート農業技術を積極的に導入し、収益性の向上を図っています。また、地域との連携や、持続可能な農業への取り組みを通じて、現代農業の新しいモデルを築いています。

父が引いた「レール」にうまく乗せられて、農業を始めた

━━━農業を始めたきっかけを教えてください。

家が農業をやっていたことがきっかけです。小さい頃から土を触るのは嫌いではなかったし、農作業の手伝いをしていました。長男ということもあって「お前があとを継ぐんだぞ」と言われて育ちました。

━━━学生時代はどのような進路を選択しましたか?

農業関係の大学に進学しました。就農すれば補助金が出るという制度があって、それにうまく乗せられた感じですね。他の仕事への就職を考えることもありましたが、結局は「実家を継ぐんだろうな」という思いを持ち続けて大学生活を過ごしました。

━━━大学卒業後に実家のある宮城県栗原市へ。就農後の生活はいかがでしたか?

最初は「農閑期には趣味のスノーボードに明け暮れるぞ!」と期待していました。ところが現実は甘くなく、忙しい毎日が始まりましたね。理想と現実のギャップを感じていましたが、次第にこれが農業なのだと受け入れるようになりました。

農業後継者のいない農地を積極的に受け入れるにつれ、次第に耕作面積が大きくなって、忙しさも増していきました。季節に関係なくやるべきことが増えて、休む時間が限られてきます。そのような中でも自分なりのやりがいを見つけて、日々農業に取り組んでいます。

白鳥農場内を案内する白鳥さん

白鳥農場内を案内する白鳥さん
撮影:minorasu編集部

米と大豆の栽培を始めたのは父の代から

白鳥農場では米と大豆の栽培に注力しています。どちらも白鳥さんの父である一彦さんの代から始まり、時代に先駆けて取り組んだことで、農業経営の基盤が築かれたそうです。

━━━米の販路を教えてください。

米の取引は、産直が2割、米穀卸が8割です。産直は精米した特栽米が中心で、1995年の米の自由化時に父が新しい販路として取り組んでテレビで紹介されたこともあり、ファンになってくれたお客さんが、今でもリピーターとして白鳥農場の米を買い続けてくれています。

また、農地が増えるにつれ特栽米以外も作るようになりました。こちらは、大きなロットで販売できる米卸への玄米出荷を販路にしています。

━━━大豆の販路についても教えてください。

大豆は農協に納めています。5月中に田植えを終えて、いかに6月の梅雨入り前に大豆の播種を終わらせられるかが、収量を確保するために重要です。大豆の栽培は天候に左右されることが多いので、いつもハラハラしながら取り組んでいます。

次々に集まってくる農地。受け皿はやがて「限界」へ

130haの広大な農地を有する白鳥農場(乾田直播)

130haの広大な農地を有する白鳥農場(乾田直播)
撮影:minorasu編集部

━━━地域の農業が抱える課題について教えてください。

地域に後継ぎが少ないことです。40代である僕の世代はまだ人材がいるのですが、僕より下の世代は本当に少ないんです。そのため、後継ぎのいない農家の土地が次々に自分のところに集まっています。

就農したばかりの頃の耕作面積は、まだ20haでした。しかし、今では130haもの広大な農地を抱えています。農地が集まることを評価されているという意味では、うれしいことではあるのですが、正直、受け皿としては限界を迎えつつあります。

心苦しいことですが、今後は受け入れる農地を選別しなければいけないと考えています。ただ「地域全体の農地を守る」という意識は変わりません。後継者不在の農地の管理を今後どうすべきか、まさに今、岐路に立たされているのかもしれません。

━━━白鳥農場での課題はありますか?

増大した農地全体でいかに安定した品質を保つかということです。そのために、作業の“量”をいかに効率良くこなせるかが最大の課題です

130haもの広大な農地を管理する中で、均一で高品質な作物を作ることは簡単ではありません。そのための栽培の工夫や技術の導入が求められ、収量を落とさないための”適期作業”を基本になんとかやりくりしています。

適期作業は本当に基本中の基本です。適期を逃してしまうと、収量が急激に落ちてしまいますからね。ただ、毎年天気には左右されるので、作物ごとの適期作業をいかに終えられるかが勝負です。

そして、広大な面積を効率的に管理するためには、スマート農業が必要不可欠だと考えています。

スマート農業で施肥の精度向上と効率化を図る

農地拡大に伴いスマート農業の必要性を感じた白鳥さんは、営農支援アプリ「アグリノート」や栽培管理ツール「xarvio®(ザルビオ)フィールドマネージャー」を導入しました。”ほ場全体が上から見える”地力マップ機能の活用で、追肥に確かな手応えを感じているようです。

━━━スマート農業はどのように取り入れられていますか?

事務所に大型モニターを導入して、アグリノートやザルビオの画面を見ながら必要な作業を確認しています。これらのツールを導入したおかげで、これまでは自分の頭の中で判断していたことを従業員と共有できるようになりました。

PCを使いザルビオを操作する白鳥さん

PCを使いザルビオを操作する白鳥さん
撮影:minorasu編集部

みんなで一緒にデータを見ながら作業の計画を立てるのは、一体感も生まれるし、何より効率がいい。みんなが同じ情報を持っていることで、作業の無駄が減りました。

従業員と足並みを揃えて130haの広大な農地での作業を進めていくために、農地の状態や作業適期を一目で判断できるザルビオは心強い存在です。

━━━ザルビオではどのような機能を活用していますか?

地力マップや可変施肥マップなどの機能を昨年からトライしています。来年はスマート農機の導入を進めることで、さらなる作業効率の向上を目指します。

━━━地力マップの活用で手応えは感じていますか?

追肥で手応えを感じました。今までは追肥を行う場合、担当者が葉色を田の横から見て施肥量を決めていました。けれども、横から田を覗いての判断には限界があり、見る人によってバラツキがでてしまいます

そこで今年はザルビオの地力マップを参考に追肥をしました。ほ場の地力ムラが色でわかり、「上から平面で全体が見える」ので、追肥をこのあたりは多く、このあたりは少なくと的確な判断ができて使用の満足感が大きいです

来年には、可変施肥マップと連携できる最新の田植機とドローンが使えるようになるので、全面的に可変施肥を導入します。基肥も追肥も大幅に精度が上がるので、収量や品質の向上を期待しています。また同時に、作業負担の軽減や効率化もできると思います。

ほ場の地力ムラが色でわかる!ザルビオの機能を見る

「水稲栽培における中干し期間の延長によるJ-クレジットの創出」への手応え

2023年3月、国が運営するJ-クレジット制度運営委員会により「水稲栽培による中干し期間の延長」が新たな方法論として承認されました。これにより、水田で発生するメタンガスの削減でJ-クレジットの創出が可能になります。

しかし、農家個人がJ-クレジットにプロジェクト登録するには、費用や申請手続きの負担が大きいことが課題です。そこでGreen Carbon株式会社は、参加者を募りまとめて申請・登録できるよう「稲作コンソーシアム」を発足しました。カーボンニュートラルの推進をめざす今回のプロジェクトに、宮城白鳥農場は2023年度から参画しています。

━━━中干し期間の延長によるJ-クレジットの創出をめざすプロジェクトに参入した決め手を教えてください。

温室効果ガス排出の削減量に応じて取得できるJ-クレジットによって、年間100万円程度の副収入を得られること、地域の気候条件を踏まえて栽培管理の大きなリスクにはならないと判断したことから参入を決めました。

━━━中干し期間の延長はうまくいきそうですか?

実施初年度である今年は記録的な水不足で降雨が少なくほ場に水が溜まりにくかったので、中干し開始日を前倒ししました。中干し期間を延長することで幼穂形成期に水不足になり収量が落ちたり、品質が低下したりしてしまうのではないかと不安はありますが、水管理が地域的に恵まれているのと、ザルビオを活用して適切に栽培管理しているので、品質低下や収量減のリスクは抑えられると考えています。

━━━J-クレジットの創出に向けて、プロジェクトの手続きはどのように進めていますか?

プロジェクトへの参加には多くの手続きが必要ですが、必要な情報の精査とサポートはザルビオとGreen Carbonが行ってくれます。Green Carbonがフォーマットを準備してくれて、J-クレジットの申請に必要な栽培記録の取得や申請はザルビオがサポートしてくれるので助かります。

農業は総合的なスキルが必要。農家はどんどん外に出かけるべき

快晴の下、白鳥農場を背に語る白鳥さん

快晴の下、白鳥農場を背に語る白鳥さん
撮影:minorasu編集部

広大な農地の効率的な管理を目指して、スマート農業技術の導入や持続可能な農業への取り組みなど、新しい施策にチャレンジする白鳥さん。どのような心がけで日々を送っているのか伺いました。

━━━新しい技術や情報はどのように収集されていますか?

さまざまな人の意見を視察や交流会で積極的に聞くようにしています。 今の時代はインターネットで、興味のある情報は簡単に入手できます。しかし鵜呑みにはせず、詳しい人から聞いた話とネットの情報を照らし合わせて、自分の経営に必要か判断した上で、どんどんトライすべきだと思っています。例えば、スマート農業や大型モニターの導入も、いろいろな農家さんの状況を見て「これいいな」と思えたので取り入れました。

━━━ 白鳥さんの取り組みは、白鳥農場の運営にどのような効果をもたらしていますか?

従業員の多様なキャリア背景が、新しい農業を模索するための鍵だと考えるようになりました。白鳥農場には、農業以外の他の仕事も経験してきた人たちが従業員として集まっていて、それこそが農場の強みになっています。

いろいろな業種で培った知識や経験が農業に活かされて、自分にはないおもしろい発想が出てくるんです。例えば、IT関係の経験がある従業員はデータ管理や機械の扱いに強いですし、営業をしてきた人は販売戦略に強い。多様なスキルが集まると、いろんな方向から農業が見えてさらに面白くなると感じます。

━━━農業ではさまざまな経験が活かせるのですね。

若い頃よりも、人生経験を積んだほうが農業を楽しいって思えるのかもしれません。農業って本当は総合的なスキルが必要な仕事だと思います。ザルビオのようなスマート農業技術を取り入れることはもちろん、これまで培ってきた他業種の技術を使って、楽しく農業をする人が増えてほしいですね。

━━━最後に、これから農業を始めようとしている人たちにメッセージをお願いします。

農業に100点はないですし、天候に左右される難しい職業です。でもその分、おいしい生産物を収穫できたときはやりがいを感じます。死ぬまでチャレンジできる仕事だと思っています。僕自身も、最後まで胸を張って農業を楽しめると思っています。ぜひ、新しい一歩を踏み出して農業の世界に飛び込んでみてください。きっと充実した一生を過ごせると思いますよ。


未来への情熱と革新的なアプローチで、130haという広大な農地管理の効率化を進める白鳥さん。スマート農業技術の積極的な導入、環境に配慮した取り組み、そして新しい情報への開かれた姿勢は、現代の農業が直面する課題への1つの道筋を示しているようです。

スマート農業技術の推進に当たっては、栽培管理支援システムのザルビオなどを活用しています。地力マップを見ることで、人による判断のブレが解消したことに手応えを感じています。またスマート農機との連携に取り掛かっており、さらなる作業効率の最大化を目指しています。

白鳥農場の挑戦は、日本の農業の未来を拓く、新たな可能性と希望を示唆してくれているのかもしれません。

地力の見える化で適格な判断をいますぐザルビオ無料会員に登録

記事をお気に入り登録する

minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

minorasu編集部

minorasu編集部

minorasuは、「農業経営をより効果的に実践したい」「これまでなかなか踏み込めなかった農業経営にまつわるノウハウを学びたい」といった、農家の皆さまのお悩みに応えるためのメディアです。それぞれの課題を乗り越えるのに役立つよう、生産効率、資金計画、加工・流通など様々な角度から情報をお届けします。

おすすめ