【大豆の播種方法】適切な時期や播種量、深度や初期生育のポイントを解説
世界的に大豆の価格が高止まりしており、農家は品質のよい大豆を生産することで高収益化が期待できます。収量を確保するためには、ほ場の準備や播種などの初期生育の管理が重要です。この記事では大豆を播種する時期や量など、適切な播種方法とともに、初期生育の管理方法について解説します。
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大豆栽培は、水田からの転作作物としても注目されています。品質のよい大豆を収穫して高収益をめざすには、栽培暦に合わせた栽培管理が大切です。まずは、大豆の一般的な作型や栽培暦を確認しておきましょう。
大豆の代表的な作型・栽培暦
HAPPY SMILE / PIXTA(ピクスタ)
大豆の作型は地域や品種によって異なりますが、5月上旬~6月下旬頃に播種して、10月下旬~12月中旬頃に収穫する流れが一般的です。栽培暦は、主に生育期・開花期・子実肥大期に分かれます。
播種に先立ち、心土破砕などの排水対策や土壌pHの調整・有機物の施用といった土作りを行います。前年の収穫後に、ヘアリーベッチを作付けして播種までにすき込むと、地力窒素を高めるのに効果的です。
6月上旬~7月中旬の生育期には、土壌の通気性向上と除草を目的とした培土(中耕)を行います。倒伏防止の効果も発揮し、台風などによる収量低下を防げるでしょう。ほ場の状態に応じて、除草剤や病害虫の種類に応じた農薬も散布します。
7月中旬~8月上旬の開花期から8月中旬~9月中旬の子実肥大期にかけて、土壌が乾燥しないよう適時灌水を行います。10月上旬から成熟期を迎えます。莢色が褐色になれば成熟を示し、株全体の9割以上が褐色になれば収穫が可能です。
▼大豆の栽培歴の詳細はこちらの記事をご覧ください。
ほ場の準備から播種後の除草管理まで大豆の初期生育のポイント
湿害や雑草による収量・品質の低下を未然に防ぐには、栽培初期の管理を徹底することが重要です。ここからは、土作りから播種後の除草・灌水まで、大豆の初期生育のポイントについて解説します。
ほ場準備のポイント(排水対策・耕起・整地・施肥)
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
大豆は湿害の影響を受けやすいため、播種前にほ場の排水対策を講じておくことが大切です。播種期が梅雨に当たる場合は、品種ごとの適した時期に播種をしましょう。そのためには、排水対策が重要になります。
地下水位が40~50cmとなるよう心土破砕などで透水性を高めたあと、ほ場の周囲だけでなく、ほ場内に5~10m間隔で排水溝を設置します。
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
地中30~40cmに2~3m間隔で暗きょ排水を設置すると、湿害を回避する効果が高まり、収量の向上に有効です。土壌の水分が確実に排水されるよう、排水路につながる排水口は深く掘り下げるようにします。
土作りでは根粒菌が活動しやすい環境を整えるため、土壌pHが6.0~6.5になるように、苦土石灰などの石灰質資材を10a当たり100kg以上施用します。併せて、地力と透水性・通気性を高めるために牛糞堆肥などの有機物を10a当たり400kgほど施用します。
大豆を連作するほ場では、有機物の施用量を増やすと地力の維持・向上につながります。土作りのあと、深さ15cmを目安に耕起します。播種の深さを均一にして発芽時期を揃えるために、耕起後は土壌を平らに整えましょう。
耕起前または播種の直前に、基肥として窒素を10a当たり2kg、リン酸とカリウムをそれぞれ10a当たり8~10kg程度施肥します。
前年の秋にマメ科植物のヘアリーベッチを栽培した場合は、土壌の窒素肥沃度が高まるため、窒素肥料を省略しても問題ありません。また、基肥一発肥料を施用する場合、10a当たりの窒素成分は6~7.5kgが目安です。
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播種のポイント(品種の選定・播種時期・播種量・深度)
播種前には、ほ場の規模や大豆の前後に栽培する作物を考慮して、適切な大豆の品種を選ぶのが、収益性を高めるためのポイントです。
播種時期が遅れると、収穫までに裂莢しやすくなる品種もあるので、収穫期から逆算して、播種時期を決めるようにしましょう。連作や気候変動によって大豆が小粒化することも考えられるため、大粒品種を選ぶとよいでしょう。
播種前には種子を検査して、色あせたり着色したりした種子をあらかじめ取り除いておきます。「クルーザーMAXX」や「キヒゲンR-2フロアブル」による種子消毒を実施しておくと、紫斑病や鳥害の防止に有効です。
シンジェンタジャパン Youtube公式チャンネル「「クルーザーMAXXの種子処理手順(大豆)紹介動画」
播種は、品種や地域に応じて適した時期に行います。例えば、静岡県で「フクユタカ」を栽培する場合の播種時期は、平坦地で6月下旬~7月上旬、高地では6月中旬が目安です。
種子が急激に吸水して出芽率が下がらないよう、播種前に種子に含まれる水分が15%程度になるよう調湿処理を行います。
播種の深度は2~3cm程度、栽培密度は畦幅が65~70cm、株間が10~15cmになるように調整して直まきします。
播種機を活用すると、株間と深さが統一できて便利です。播種機に関する詳しい情報は、こちらの記事も参考にしてください。
早めに播種しても収穫時期はさほど変わらない一方、蔓化や病害虫の発生リスクが高まるので、適切な時期に播種するためにもスケジュール管理は重要です。天候などの事情で播種時期が遅れた場合は、収量低下を避けるために栽植密度を高めにして播種するとよいでしょう。
丹波黒大豆などの移植栽培が可能な品種では、栽培した苗をほ場に定植します。水稲育苗箱を使用する場合は10a当たり20~26箱ほど用意し、1箱当たり100gの種子を3cm間隔で播種します。欠株に備えて、補植用の苗を確保しておくと収量低下を防げるでしょう。
播種から10~15日程度経過して、初生葉(しょせいよう)が展開した頃が移植に適した時期です。直播栽培と同様に、株間が10~15cmになるように移植します。
トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)
播種後の栽培管理のポイント(除草防除・中耕・土寄せ)
播種または苗の移植後、大豆の生育が妨げられないように雑草防除を徹底しましょう。雑草が発生すると土壌の養分が奪われて大豆の生育不良を招いたり、残った雑草が収穫を妨げて汚粒が発生する原因になるからです。
土壌処理型除草剤による雑草防除が主流ですが、生育期処理型除草剤や中耕を組み合わせると効果的です。オオブタクサなどの外来種がほ場に侵入すると防除が困難になるため、大豆の草丈が畝幅と同じになるまでに防除対策を講じましょう。
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
中耕は除草を目的として、株近くの土壌が10cm程度の高さになるように土を寄せる作業です。土壌の通気性を改善する効果もみられ、近年では土寄せを第一目的とする培土と、ひとくくりにされることもあります。
倒伏防止にも効果を発揮しますが、収穫時にコンバインに土壌が入り込む可能性があるため、機械の仕様を確認したうえで、適切な高さに土を寄せるようにしましょう。
▼収穫に関する詳しい情報は、こちらの記事を参考にしてください。
大豆の収量と品質を高めて収益化を実現するためには、土作りや播種後の除草防除などの栽培管理を徹底することが重要です。
播種直後に湿害を受けると生育不良が発生して収益が下がるため、土作りの前に排水溝や暗きょを設けるなど、排水対策を万全に整えておきましょう。地力を引き出すために、有機物の施用や基肥も大切です。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。