【白菜の害虫対策】虫の種類一覧とおすすめの農薬・駆除方法(写真付き)

白菜栽培で最も頭を悩ませられるのが、害虫による作物への影響です。白菜は葉が幾重にも重なるため、害虫の発生を完全に防ぐことが難しい野菜のひとつです。本記事では、白菜の害虫の種類と害虫駆除におすすめの農薬、対策方法を解説します。
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白菜の栽培は害虫対策が必須
白菜は葉が幾重にも重なるため、虫が潜みやすい構造をしており、害虫対策が不可欠です。害虫対策をしておかないと、害虫を経由してウイルスが蔓延したり、葉を食い荒らされたりといった被害が避けられません。
害虫被害にあうと、売り物にならない作物が増え、収量が減少してしまいます。策を講じないまま翌年も栽培を続けると更に被害が拡大する場合もあるので、害虫対策は必ず行いましょう。
白菜に付く害虫の種類一覧(写真付き)
白菜に発生しやすい害虫として、アオムシ、コナガ、アブラムシ類、ヨトウムシ、ダイコンハムシ、キスジノミハムシ、ハイマダラノメイガ、カブラハバチ、ハクサイダニの9種類を紹介します。
いずれも気候の穏やかな春から初夏、晩夏から秋に発生するため、そうした季節には特に注意が必要です。それぞれの特徴や引き起こされる病気についてご紹介します。
アオムシ(モンシロチョウの幼虫)

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
アオムシはチョウ類の幼虫で体毛のないものを指し特定の幼虫をさすものではありませんが、ここでは、モンシロチョウの幼虫について解説します。
体調は3cmほどで、葉の裏などに隠れながら葉を食害します。対策をしないと葉だけでなく、葉脈以外の株全体が被害に遭ってしまいます。
そのためアオムシが発生してしまった場合には早期の防除が大切です。薬剤散布の際は葉裏に十分付着するよう留意して作業します。
コナガ

sansho / PIXTA(ピクスタ)
コナガはアオムシとよく似ていますが、蛾の幼虫です。体長は1cmほどと少し小さめです。
コナガは葉の表皮を薄く食べるため、コナガの潜む作物は葉が白く見えるのが特徴です。幼苗期などに大量発生してしまうと、内部まで被害が拡大するため生理障害が起こり、収量が減ります。できる限り早期の防除が必要です。
アブラムシ類
アブラムシ類はカメムシの仲間で、体長は1〜2mmほどととても小さいです。しかし、小さくても1つの作物の葉にたくさん群がるため、発見するのは難しくありません。
アブラムシ類は作物の葉を食べるのではなく、葉の汁を吸い、同時にウイルスを媒介します。ウイルス自体に効く農薬はないため、有翅のアブラムシ類の飛来自体を防ぐことが大切です。苗の時期・定植後は、寒冷紗のトンネルをかけるなどしてウイルス感染を防ぎます。
ヨトウムシ

バッシー / PIXTA(ピクスタ)
ヨトウムシとは、漢字で「夜盗虫」と書き、その名の通り夜行性の害虫です。体長4cmほどで、若齢期には緑色をしていますが、成長とともに灰黄~灰黒色などに色が変わるのが特徴です。
ヨトウムシによる被害はとても大きく、短期間で葉脈だけを残してすべてを食いつくされてしまうことも多々あります。葉裏に密集していることが多いため、薬剤散布の際は葉裏に十分かかるよう留意して散布します。
ダイコンハムシ

よっちゃん / PIXTA(ピクスタ)
ダイコンハムシはテントウムシやコガネムシの仲間で、体長4mmほどととても小さく、山際のほ場で発生することが多く、成虫幼虫ともに葉を食害します。
夏場はあまり発生しませんが、本来害虫が発生しにくい冬でも暖かい日は食害をするため、注意が必要です。ダイコンハムシの食害では、葉に2〜5mmほどの穴がポツポツと空くことが特徴です。ダイコンハムシも、葉脈だけ残してすべてを食べつくしてしまうため、被害の拡大を防ぐためには早期の防除が必要です。
キスジノミハムシ
キスジノミハムシは体長約2mmの小型甲虫で、背に黄色い筋があるのが特徴です。成虫は跳ねるように移動し、白菜や大根などアブラナ科作物の葉を食害して多数の小さな穴を開けます。
特に若い苗の時期に被害が大きく、生育初期に葉がボロボロになることで、生育不良や枯死につながることもあります。また、卵からふ化した幼虫は土中で根を食害することもあり、被害が目立ちにくいため見逃されがちです。発生は春と秋に多く、近年は温暖化の影響で発生時期の拡大が指摘されています。
ハイマダラノメイガ
白菜をはじめ、アブラナ科野菜の重要害虫で、幼虫は心葉を織り合わせて中に潜み、葉を食害し、株が枯死することもあります。体長は成虫約14 mm、幼虫約7mmです。6~10月に複数世代発生し、特に夏から秋にかけての被害が顕著です。
カブラハバチ
白菜の他、小松菜などを食害するハバチ類で、幼虫はおよそ15 mm、成虫は7~8mm程度です。卵を葉に産み付け、幼虫は葉をかじった後、土中に潜り蛹化します。5~10月に5~6世代発生し、発生ほ場では農薬や防虫ネット、防除タイミングの調整が重要です。
ハクサイダニ
体長約0.7 mmのダニで赤褐色、足は暗赤紫色が特徴です。主に晩秋から春にかけて活動し、葉緑素を吸って葉を銀白色に変色させ、芯止まりや枯死を引き起こすことがあります。暖冬年や小雨時の多発が報告されます。
白菜の害虫に効果的な農薬・防除対策

千和 / PIXTA(ピクスタ)
白菜の害虫対策は害虫の飛来と繁殖を防ぐ予防策と、発生後の早期の防除策に大きく分けられます。
※ここで紹介する農薬は、2025年7月7日現在、白菜の病害虫に登録のあるものです。実際の使用に当たっては、使用時点での作物に対する農薬登録情報を確認し、ラベルをよく読み、使用方法や使用量を守ってください。
害虫の飛来を防ぐ
多くの害虫は、防虫ネットや寒冷紗で作物にトンネル掛けをすることで、侵入を未然に防除することが可能です。
侵入を防ぐことができれば害虫の産卵を防止できます。産卵により害虫が大量発生してしまうと、そのあとの防除は大変困難になります。未然の防除は最も重要な害虫対策と言えるでしょう。
雑草の繁殖をおさえる
害虫は雑草にも寄生し繁殖するため、雑草を防除し、害虫の生育場所をなくすことが、害虫防除につながります。ほ場周縁での雑草防除には、除草剤の散布、または、ベッド(床)自体にマルチングを行って雑草の繁殖をおさえましょう。畝間雑草の防除も重要な害虫対策の1つです。
農薬を早期散布する
育苗中や定植時の初期に農薬散布をすることも大切です。育苗期後半に、「ダントツ粒剤」を株元に散布することはアブラムシ類、ハイマダラノメイガ、コナガ、アオムシなどに有効です。
また、「プレバソンフロアブル5」は、収穫前日までに散布することで、ハイマダラノメイガ、ヨトウムシ、コナガなどに有効です。
出典:JA町田市「ハクサイの品種選びと病害虫対策」

天空のジュピター / PIXTA(ピクスタ)
商品価値の高い白菜を栽培するには、害虫対策が欠かせません。本記事で解説した白菜につきやすい害虫の種類や、害虫対策を参考に、質のよい白菜の収量が増やせるように努めていきましょう。
発生してからの薬剤散布が主な対策にはなりますが、害虫の飛来を防ぐ対策、ほ場の除草・整備によって、害虫が発生しにくい環境をつくることも重要なポイントです。
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鎌上織愛(かまがみおりえ)
北海道出身。両親は北海道で農業を営む現役の農業者で、自身も幼少期より農作業を行う。農作物はもち米・人参・アスパラガス・とうもろこしを中心に、ハウス一棟を自家菜園として様々な種類の野菜を育成する。現在は食生活アドバイザーとして、ライターなどの執筆活動の傍ら、こどもの食育などに力を入れている。