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白菜栽培で発生する生理障害&病害虫被害一覧!症状・原因と対策は?

白菜栽培で発生する生理障害&病害虫被害一覧!症状・原因と対策は?
出典 : Yoshi / PIXTA(ピクスタ)

白菜に多く見られるゴマ症やチップバーンといった生理障害、モザイク病、べと病、白さび病、根こぶ病、軟腐病などといった白菜の代表的な病害について、原因と起こりやすい環境、症状、対策について詳しく説明します。さらに虫害についても対策を紹介します。

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見た目から敬遠されがちな白菜のゴマ症やチップバーンといった生理障害の予防法や原因、具体的な対処法を紹介します。さらに、モザイク病やべと病など代表的な病害や、害虫からの被害について詳しく解説します。白菜栽培に適切な土壌や施肥の方法を知り、良品率のアップをめざしましょう。

白菜の生理障害が起きる主な原因

白菜 結球

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

病害や虫害ではなく、土壌成分や温度、光、水分などほ場を取り巻く環境の科学的・物理的な要素によって正常な生育ができずに発生する障害を「生理障害」といいます。白菜では、主に次のような原因で生理障害が発生します。

肥料の過不足

肥料分が不足、もしくは過剰であると土壌養分のバランスが崩れ、生理障害が起こりやすくなります。白菜では特に窒素や土壌のpHバランスが重要で、適切な施肥が大切です。

白菜栽培では一般的に定植後1ヵ月以内に2回の追肥を行いますが、正しく施肥を行っても、天候不良などで肥料が雨で流出してしまい、肥料不足を招くことがあります。

外葉が十分に育たない場合や生育が悪い場合などは、結球するまでの間にさらに追肥を検討してもよいでしょう。その際は肥料が過剰にならないよう注意が必要です。

連作障害

連作は、土壌中の特定の養分に過不足が生じるため生理障害が発生しやすくなります。また、「根こぶ病」などの病害を引き起こすこともあります。

連作障害を防ぐには、「栽培間隔を2~3年あける」「別の科の作物と輪作する」のが理想です。やむを得ず連作する場合は土壌消毒が必要です。

白菜栽培における主な生理障害の症状と対策

白菜 内部

YNS / PIXTA(ピクスタ)

白菜に発生する代表的な生理障害の症状・原因と対策を解説します。

ゴマ症

・症状
結球した葉の主脈に黒いゴマ状の斑点が多数生じ、生長するにつれ増加します。黒点の成分はポリフェノールで生育上の障害はなく食べても問題ありませんが、商品価値が著しく低下します。

・原因と対策
代謝異常が主な原因で、土壌の無機態窒素濃度(注)が上昇すると発生が増加すると言われています。また銅の含有量が多くても多発するとの指摘もあります。

(注)無機態窒素:大気中の窒素は、微生物などで無機化されて土壌に取り込まれます。これを土壌中の無機態窒素といい、さらに形を変えて、硝酸態窒素となります。植物は主にこの硝酸態窒素を養分として根から取り込みます。


土壌の窒素や銅の濃度上昇を防ぐため、窒素や有機物の適量施肥を心がけましょう。緩効性肥料の利用も効果的です。

チップバーン(心腐れ症・縁腐れ症)

・症状
葉の縁や葉脈、芯などの生長部位の一部が壊死し、茶色く変色します。球の心部に壊死が起こると「心腐れ(芯腐れ)」、葉の縁に壊死が起こると「縁腐れ」と呼ばれます。

・原因と対策
カルシウム、もしくはホウ素の不足により発生します。土壌中のカルシウムやホウ素は灌水や降雨で流れ出てしまうので、適切に補いましょう。ただし、ホウ素は過剰症の出やすい要素なので要注意です。施用量はホウ砂で10a当たり0.5~1kgほどが適量です。

土壌中の窒素やカリウムの過剰のほか、土壌の乾燥によってもこれらの養分の吸収や作物体内での移動がしにくくなり、部分的な欠乏症が発生します。

また、カルシウムやホウ素は、土壌中のpHのバランスが崩れると流出しやすくなったり、不溶性となって白菜に吸収されにくくなったりするため、土壌の適正管理が重要です。

あわせて注意すべき、白菜の病害虫被害の特徴&対策一覧

白菜 害虫

sotopiko / PIXTA(ピクスタ)

生理障害のほかにも、白菜には注意すべき病害虫が多くあります。主な病害が発症する原因や発生しやすい環境、それぞれの症状と対策について解説します。

モザイク病、えそモザイク病

・原因と発生しやすい環境
どちらもウイルスの感染により発症します。「モザイク病」はキュウリモザイクウイルス、「えそモザイク病」はカブモザイクウイルスが主な原因です。

これらのウイルスは感染した野菜や雑草からアブラムシを介して伝染します。そのため、アブラムシが多く発生する夏から秋にかけて多く見られる病害です。

・症状と対策
モザイク病は主に外葉の葉脈が透けたり葉の縁にモザイク状の濃淡が現れたりします。また生育が遅れて結球不良となることもあります。えそモザイク病は外葉や結球葉の葉脈上や葉脈間に紫褐色のえそ条斑や輪点などが発生し、奇形が生じます。

いちばんの対策法は、仲介となるアブラムシの発生を防ぐことです。育苗時から寒冷紗やシルバーマルチを用い、アブラムシの飛来を防ぎます。周辺の雑草からアブラムシが侵入することも多いので、ほ場周辺の除草を定期的に行い、アブラムシが発生した場合は速やかに防除しましょう。

白菜 モザイク病

白菜 モザイク病(モザイク状の濃淡)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

白菜 えそモザイク病

白菜 えそモザイク病(葉脈にえそ斑点)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

べと病

・原因と発生しやすい環境
原因菌は白菜やカブなどのアブラナ科の葉菜類に寄生する純寄生菌です。菌の放出する分生子によって伝搬され、3~25度の比較的低温かつ高湿度の条件下で分生子(注)が発芽し寄生します。


(注)分生子:アオカビ・コウジカビなどの菌類で、分生子柄という特定の菌糸から出た柄の先にできる無性的な胞子の一種です。カビの色はこの色によります。

・症状と対策
初期には輪郭が不明瞭な淡褐色や黄緑色の斑点ができ、次第に広がって葉脈に区切られた大きな病斑となります。葉の裏には白っぽいカビが発生し、このカビが、初期症状がよく似た「白斑病」と見分けるポイントになります。

発生を防ぐには、株間を適度にあけて採光をとり、風通しをよくして湿度の上昇を抑えます。

また、発病前にシグナムWDG、ランマンフロアブル、レーバスフロアブルなどの殺菌剤散布による予防的防除を行います。

発病した場合には、病葉や株を除去してほ場外で処分します。

白菜 べと病 病斑

白菜べと病(葉脈に区切られた病斑)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

白さび病

・原因と発生しやすい環境
べと病と同じくアブラナ科の葉菜類に寄生する純寄生菌が原因菌です。胞子が空気によって伝搬されて感染します。冬から春にかけて多く発生します。

・症状と対策
初期には葉裏や茎などに乳白色の小斑点が発生し、やがて表皮が割けて粉状の胞子のうが飛散します。病斑は輪郭が不明瞭な黄色い斑で、茎にできると肥大などの奇形が生じます。

発病前にライメイフロアブル、ダコニール1000などの殺菌剤散布による予防的防除を行ないます。

発病した場合には、病葉や株を除去してほ場外で処分します。

根こぶ病

・原因と発生しやすい環境
ほとんどのアブラナ科の植物に寄生する絶対寄生菌による病害です。数年ものあいだ土の中で休眠できる胞子は適当な温度と水で活性化し、宿主作物の根に到達して寄生します。

多発する環境は水田や転換畑、排水の悪いほ場です。また、湿性黒ボク土、埴土・埴壌土など保水性の高い土壌やpH4.5~6.5の酸性土で多発することや、春から秋の日長の時期に増殖することが確認されています。

・症状と対策
根に多数のこぶが形成されて根の機能が低下し、発育不良、葉色の退色や黄化、しおれるなどの症状があらわれます。悪化すると枯死に至ります。

酸性土を好むので、土壌pHを7.2以上を目安に調整することで被害を防ぎましょう。石灰窒素を10a当たり80~100kgほど施用するのも有効です。

白菜 根こぶ病

白菜 根こぶ病
写真提供:HP埼玉病害虫写真集

軟腐病

・原因と発生しやすい環境
土壌伝染性病原菌の一種で、灌水や降雨で土が跳ね上がることで広範囲の作物や雑草に感染します。土壌水分や空気中の湿度が高い場合にも多発します。また、強風や除草、害虫の食害などで傷ついた葉や多肥栽培により軟弱に育った株などに発生しやすいといわれています。

・症状と対策
初期には、葉と葉柄の地面に近い部分に水浸状の斑点ができ、淡褐色や灰褐色に変色します。斑は急速に株全体に広がりながら軟化・腐敗し、放置すると数日のうちに株ごと消失することもあります。収穫後、流通過程で発病して積み荷内に蔓延する被害も発生しています。

同様に葉が腐敗する症状に「菌核病」や「尻腐病」などがありますが、「軟腐病」には腐敗した際に独特の悪臭があることから、これらと区別できます。

発病前にスターナ水和剤などの殺菌剤を散布します。罹病株を処分した後のほ場では、次の作付けの際に予防的防除を行います。オリゼメート粒剤(播種時または定植時)・オリゼメート顆粒水和剤(定植時)などが有効です。

白菜 軟腐病

白菜 軟腐病(結球後)
写真提供:HP埼玉病害虫写真集

アオムシ・コナガ・ヨトウムシ等による食害

白菜の虫害対策の基本は、害虫のつきにくい土壌を作ることです。そして育苗中から葉の裏や地面に近い葉の付け根までこまめにチェックして早期に卵や幼虫を発見し、葉ごと除去します。
大量発生した場合は、害虫の種類を特定し、有効な農薬を散布しましょう。

アブラムシ類による吸汁害

モザイク病でも触れたように、アブラムシは多くのウイルス病を媒介します。繁殖すると見た目も悪くなり商品価値を著しく損なうため、播種のときから綿密な防除策を講じましょう。


※この項で紹介した農薬は2020年10月現在の農薬登録情報によります。農薬を使用する際はラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

白菜 苗

Yoshi / PIXTA(ピクスタ)

白菜はアブラナ科の中でも特にデリケートな野菜で、環境によってさまざまな生理障害が起こりえます。育苗時からほ場の環境を整え、生理障害対策だけでなく、病害虫の防除対策を適切に行い、良品率を高めていきましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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