【白菜のべと病対策】発生しやすいほ場環境や防除策・農薬を解説
ベと病は、白菜などのアブラナ科野菜に発生する病害の代表格です。ベと病被害を抑えるために、症状や発生原因を詳しく理解しておきましょう。この記事では、耕種的防除と農薬による防除を組み合わせた白菜のベと病対策と併せて、ベと病に強い白菜の品種も紹介します。
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ベと病とは、ペロノスポラ・パラシチカ(Peronospora parasitica)という糸状菌(カビの一種)が引き起こす、伝染性の病害です。ベと病の発生原因や症状について、詳しく確認してみましょう。
べと病とは?
べと病の症状
ベと病の症状は最初、葉や葉柄に現れますが、病状が進むと茎に伝染し、やがて枯死してしまいます。結球葉の内部にも症状が現れることがあり、子葉期から収穫まであらゆる時期に症状が発生する可能性があるのが特徴です。
ベと病の発病葉は晴天時には乾燥する一方、湿度が高ければベトベトになってしまいます。
白菜 べと病 葉脈に区切られた多角形の病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
症状の発生初期には、葉の表面に形がはっきりしない黄緑色の斑点が現れます。病斑が大きくなると、葉柄に囲まれて多角形に見えるようになるケースもあります。発病した葉の裏側に灰白色で霜状のカビが生えていれば、ベと病だと判断が可能です。
白菜 べと病 発病葉 病斑(葉裏)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ベと病が葉柄部に発生する場合は、初期症状として筋状に黒い点が現れます。病状が進むと葉柄に墨が入ったような状態になり、やがて陥没し灰白色で霜状のカビが生えてきます。
なお、霜状のカビの正体は病原菌を含んだ胞子のうです。ベと病にかかった作物を土壌にすき込むとほ場に病原菌が残り、翌年以降もべと病が発生する恐れが高まるので注意が必要です。
べと病の発生原因
ベと病は、葉の気孔や細胞の境目から病原菌が侵入することで発病します。病原菌はアブラナ科の植物に1年中寄生しており、低温多湿の状態になると分生子が形成されて別の株に侵入して感染が進むのが特徴です。
分生子は7~13℃が発育最適温度で、春や晩秋といった冷涼な時期にベと病の感染が進みます。特に8~10℃前後の頃が、ベと病菌が最もまん延しやすい時期です。
また、曇天や雨天が続いて湿度が高くなると葉が乾燥しにくく、べと病が多発しやすくなります。密植されているなど風通しが悪い場合も葉の湿度が高くなり、ベと病発生の温床となりがちです。
アブラナ科の植物に寄生している分生子は、感染に適した温度・湿度になると風や雨水などで葉に運ばれます。分生子が発芽した後、葉の気孔や細胞の境目から葉や葉柄に侵入してベと病が発生するわけです。
ベと病菌には複数のタイプがあり、白菜のベと病菌は小松菜やカブにも感染します。そのため、白菜だけなくほかの作物の収量低下につながる可能性もあります。一方、白菜のベと病菌は大根やキャベツは感染しません。
白菜のべと病の防除対策|耕種的防除と代表的な農薬を紹介
akiyoko / PIXTA(ピクスタ)
白菜のベと病を適切に防除しないと、ほ場に病原菌が残ったままになり翌年の収量にも影響します。耕種的防除と農薬を使用した防除について詳しく解説します。
耕種的防除の徹底を
施肥量の管理や雑草の除草といった耕種的防除を実践することで、ベと病の発生を抑制し収量への影響を軽減することが可能です。
肥料が多すぎて窒素過多になると徒長が発生し、病害虫や環境の変化に弱くなってしまいます。葉や茎が生長しすぎて風通しや日当たりが悪くなり、べと病の病原菌が好む低温多湿条件になってしまいます。反対に肥料不足だと作物が小ぶりになり、収量や食味の低下にもつながりかねません。
定植前に十分に施肥するだけでなく、生育中期以降は必要に応じて追肥するようにしましょう。
ほ場や周辺の雑草も作物の風通しや日当たりを妨げ、べと病以外の害虫が発生する原因になるので防除を徹底します。発病株を見つけた場合はすぐに取り除き、ほ場以外の場所で焼却したり地中深くに埋めたりして処分しましょう。
病原菌が土壌に付着している場合もあるため、長靴や農機具などを清潔に保つことも耕種的防除を徹底する上では大切です。
雨水が跳ね返って葉などに病原菌が付着しないよう、土壌にマルチングするのも効果的です。雨よけ栽培を行うためにビニールハウスを活用する場合は、温度が上昇して生育が鈍らないよう十分な換気を行いましょう。
農薬による防除
べと病が発生した後の防除は難しく、感染状況によっては収量が大幅に低下する恐れがあります。そのため、定植後から収穫前にかけて系統の異なる農薬(殺菌剤)をローテーションで散布し、発生を予防するのが一般的です。
農薬を散布する際は、薬液が葉の表裏や株元に行き渡るよう、念入りに実施します。仮にべと病が見つかった場合は、発病初期に農薬を散布しましょう。
白菜のべと病防除に有効な農薬を紹介します。農薬を使用する場合はラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。
ストロビーフロアブル(クレソキシムメチル水和剤)
胞子形成を阻害する効果があり2次感染を防ぐのが特徴です。白斑病・黒斑病も同時に予防できます。
・希釈倍数…3000倍
・使用時期…収穫の3日前まで
・使用回数…3回以内
・散布液量…10a当たり100〜300L・本剤を含む農薬の総使用回数…3回以内
ランマンフロアブル(シアゾファミド水和剤)
胞子のうの形成阻害効果が高く、未感染の葉への病害拡大を防ぎます。作物に対する薬害が少ないのが特徴です。
・希釈倍数…2000倍
・使用時期…収穫の3日前まで
・使用回数…4回以内
・散布液量…10a当たり100〜300L
・本剤を含む農薬の総使用回数…6回以内(育苗期の灌注1回、ほ場での株元灌注1回、散布4回以内)
ホライズンドライフロアブル(シモキサニル・ファモキサドン水和剤)
感染直後の散布でも有効で、 降雨の影響を受けにくく 安定した防除効果を期待できます。
・希釈倍数…2500〜5000倍
・使用時期…収穫の21日前まで
・使用回数…3回以内
・散布液量…10a当たり100〜300L
・本剤を含む農薬の総使用回数…3回以内
ピシロックフロアブル(ピカルブトラゾクス水和剤)
予防効果が主体の殺菌剤です。白さび病も同時に防除でき、浸透性にも優れているため降雨に左右されず使用できます。
・希釈倍数…1000倍
・使用時期…収穫の3日前まで
・使用回数…3回以内
・散布液量…10a当たり100〜300L
・本剤を含む農薬の総使用回数…3回以内
ベジセイバー(ペンチオピラド・TPN水和剤)
1回の散布で菌核病や白斑病・黒斑病・白さび病の防除も可能です。耐雨性にも優れており、作物の汚れも少ないです。
・希釈倍数…3000倍
・使用時期…収穫の7日前まで
・使用回数…2回以内
・散布液量…10a当たり100〜300L
・本剤を含む農薬の総使用回数…3回以内(TPNを含む農薬の場合は、土壌混和1回、散布2回以内)
べと病に強い品種とは
sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)
白菜は品種によって薬剤の感受性が異なるため、ベと病の被害状況にも差が生じます。一方、近年ではベと病に強い品種も登場しています。べと病に強い代表的な品種の特徴を紹介します。
晴黄85
「晴黄85」はベと病に強い品種で、葉はもちろん葉柄部にもほとんど病変が発生しません。葉質が柔らかく、食味も良好なのが特徴です。
石灰欠乏症などの生理障害にも強く、低温結球性にも優れているため冷涼地や暖地の秋播きにも対応しています。ただし、根こぶ病が発生している地域では通常の防除が必要です。また、播種時期が早すぎると軟腐病やウイルス病の発生リスクが生じるため、播種適期を守る必要があります。
富風
「富風」は、ベと病だけでなく軟腐病・白斑病などの病害に強いのが特徴です。播種した約65日後には収穫が可能で、1玉が4~5kgほどになるまで生長するため大玉出荷も狙えます。包被円筒形なので、冬の雨によって作物が腐敗する心配もありません。
12~2月に収穫する場合は収穫直前に肥料不足となりやすいため、追肥は結球始めに加えてさらに1~2回必要です。耐寒性が弱めなので、冷涼地で栽培する場合は9月下旬~12月上旬の収穫をめざして栽培するとよいでしょう。
黄将
「黄将」は、ベと病や根こぶ病・軟腐病に強く、カルシウム欠乏症(芯腐れ)などの生理障害の発生も少ない品種です。黄芯系中晩生品種で、播種後85日ほどかけてじっくり結球させた後に12~2月に収穫します。
耐寒性にも優れており、頭部を結束しての越冬栽培も可能です。球形のバランスも取れているため、効率よく結束作業を進められます。また、葉色・球色がよく漬物加工にも適しています。
白菜のベと病は低温・高湿の環境で発生しやすく、生育状況にかかわらず罹病する可能性があります。しかし、耕種的防除を徹底したうえで農薬による予防的防除を行うことで、被害を軽減することが可能です。
ベと病に強い品種に切り替えるのも、ベと病のリスクを軽減する1つの方法といえるでしょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。