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白菜農家の年収は? 労働の実態と、成功へ向け「今」やるべきこと

白菜農家の年収は? 労働の実態と、成功へ向け「今」やるべきこと
出典 : tamayura / PIXTA(ピクスタ)

白菜は、気候や輸入によって価格の変動が大きい一方、消費者の購入量は安定して推移しており、一定の売上を見込める野菜です。重量野菜であり、国の指定野菜でもある白菜の特徴に触れつつ、コロナ禍以降、これからの白菜農家が成功するためのポイントについて紹介します。

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白菜は秋冬から春にかけて長期間にわたり収穫・出荷・販売でき、気候の変化に柔軟に対応する生産計画を立てることで、安定収入を実現できます。

本記事では、白菜栽培の経営収支や労働時間のほか、白菜を取り巻く新技術と、白菜農家を支えるサービスや制度について解説します。

実際いくら稼げる? 白菜農家の年収目安

白菜 ほ場

TATSU/ PIXTA(ピクスタ)

2018年まで「営農別経営統計」で提供されていた部門別収支で「露地さくさい作」をみると、白菜農家の白菜の作付述べ面積は107a、農用粗収益が470万円、年収目安となる農業所得は191万円です。

2007年まで実施されていた「品目別経営統計」では、作付述べ面積は103a、農業粗収益が334万円、農業所得が129万円となっており、2018年の方が粗収益・所得とも高くなっていることがわかります

白菜の部門収支

2007年
品目別経営統計
2018年
農業経営統計
作付面積103.0a107.9a
収穫量77,191kg74,250kg
10a当たり収量7,495kg6,881kg
粗収益330.6万円469.5万円
経営費201.9万円278.7万円
所得128.7万円190.8万円
所得率38.9%40.6%
1kg当たり粗収益42.8円63.2円

出典:農林水産省「品目別経営統計|露地野菜作経営(はくさい)」(2007年)、「営農類型別経営統計|露地野菜作経営の部門収支(露地はくさい作)」よりminorasu編集部作成

2007年も2018年も規模はあまり変わらず、10a当たり収量は2007年の方が高いのですが、1kg当たりの粗収益が2018年は2007年の約1.4倍となっているためこの差が生じています。

所得率は1%弱しか違わないので、価格変動が収益に大きく影響することがわかります。

また、2007年までの品目別経営統計では、出荷時期別の経営収支が提供されていました。出荷時期別の所得率でみると、市場への出回り量が多い、露地の秋冬白菜が40.5%と最も高く、ハウスでの育苗やトンネルでの保温が必要な春白菜の所得率は32.7%と低くなっています。

2007年 品目別経営統計 白菜の経営収支

出典:農林水産省「農業経営統計調査|品目別経営統計|露地野菜作経営(はくさい)|農業経営の概況(1戸当たり) 、同「 農業経営収支」よりminorasu編集部作成

ここまでのデータは、あくまで白菜に限った部門別の収支です。

同じく品目別経営統計の「農業経営の概況(1戸当たり) 」を参照すると、白菜を栽培している農家1戸当たりの経営耕地合計は約6haで、白菜だけでなく、水稲、ほかの露地野菜との複合経営が主であることがうかがえます。

白菜農家の主要農産物 作付面積の概況(2007年)

面積
経営耕地合計596a
┗水稲108a
┗露地野菜440a
┗うち白菜103a
┗施設野菜3a

出典:農林水産省「農業経営統計調査|品目別経営統計|露地野菜作経営(はくさい)」農業経営の概況(1戸当たり) 」よりminorasu編集部作成

【農家の一年】白菜栽培の労働時間と作業スケジュールは?

白菜栽培で高収入をめざすには、広い作付面積で1シーズンに何周か播種と収穫を繰り返し、長期間の収穫と出荷を行うことが重要です。

生産と収穫、出荷を計画的に効率よく運営するためには、年間スケジュールと労働時間の目安の確認が不可欠です。ここでは、白菜栽培のスケジュールや年間労働時間について解説します

白菜栽培における年間労働時間の目安

白菜の収穫作業

chikokokko / PIXTA(ピクスタ)

農林水産省が2007年まで実施していた品目別経営統計によると、白菜農家1戸当たりの自営労働時間は、年間およそ945時間です。そのうち、収獲・調整・出荷の割合が大きく、508時間、全体の54%の労働時間が計上されています。

白菜1戸当たり 103aの自営労働移管 作業別内訳

出典:農林水産省「農業経営統計調査 品目別経営統計 確報 品目別経営統計 分析指標・労働時間(1戸当たり) 」(2007年)よりminorasu編集部作成

白菜の1時間当たり農業所得は1,500円前後となり、収入の効率は悪くありません。加えて、収穫・調整・出荷に全体の労働時間の約半分が集中していることから、白菜は複合経営にも適しています。

日本一の産地に学ぶ、栽培スケジュールの具体例

城県は白菜の生産量日本一を誇る大産地です。白菜は県西部を中心に栽培されており、主に冬から春にかけて生産されています。特に、冬場の白菜の生産量は圧倒的に多く、11月から1月にかけての東京都中央卸売市場への出荷量シェアは9割近くにもなります。

ここでは、この茨城県においても県内一の生産地である八千代町の農家、小竹淳(こたけじゅん)さんの事例をもとに、年間の栽培スケジュールを紹介します。

茨城県 県西部の八千代町

茨城県 県西部の八千代町
suzumeclub / PIXTA(ピクスタ)

小竹さんは、白菜を10haの規模で栽培しており、後継者のご子息と、海外からの実習生とで営農しています。

秋冬白菜は8月上旬から下旬にかけて播種を行い、春白菜は1月から2月にかけて播種を行っています。そして、秋冬白菜の収穫は10月下旬から3月上旬までの約5ヵ月、その後の春白菜の収穫は4月上旬から6月までの約2ヵ月と、1年の半分以上が収穫期に当たります。

白菜は育苗から収穫まで、60日から90日ほどで収穫できる品種を用い、春白菜から秋冬白菜まで作型を少しずつずらすことで、9ヵ月間にわたって出荷しています。(春白菜4月上旬から6月まで、秋冬白菜が10月下旬から3月上旬まで)

収穫期のピークには、1個3kgほどの白菜を1日に4,000個、合計で約13tを出荷することとなり、このピーク時の出荷量が1ヵ月にわたって続くとのことです。

出典:
JCPA農薬工業会「白菜畑の向こうに、未来の農業が見える。|旬素材の産地から」
茨城県営業戦略部販売流通課「茨城をたべよう いばらき食と農のポータルサイト」内「いばらきの食に挑戦する人たち|生産量日本一!八千代町の白菜部会長 小竹淳さん(八千代町)」
農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|確報 令和2年産野菜生産出荷統計」

コロナ禍で需要減も? 白菜農家の将来性

スーパーに並ぶカット白菜

Graphs / PIXTA(ピクスタ)

白菜は気候や需要の変動の影響を受けやすく、野菜の中では値動きが激しい作物でもあります。

東京都中央卸売市場の白菜の平均価格 長期推移

出典:東京都中央卸売市場「市場統計情報(月報・年報)」よりminorasu編集部作成

近年では2017年秋の台風および長雨、11月の低温などの影響により、翌2018年を迎えて以降も白菜の価格が約2倍にまで高騰しました。

その一方で、2019年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人が集まる飲食店や鍋料理などの需要が減ったことから、白菜をはじめとする野菜の価格が大幅に下落しました。2019年が記録的な暖冬だったこともあり、供給過多になってしまったことも一因と考えられます。

白菜 1世帯当たりの購入数量の推移(kg)

出典:総務省 家計調査年報(家計収支編)1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格 食料「野菜・海藻(生鮮野菜)」よりminorasu編集部作成

毎年の生産計画をその年の気候によって調整し、柔軟に対応できるように準備するなどの経営工夫をすることで、白菜は、今後も十分に安定した収入を期待できる作物だといえるでしょう。

“儲かる白菜農家”になるために。安定収入をめざす3つのコツ

白菜は国内の消費における主要な野菜の1つであり、新しい品種の開発のほか、白菜農家を支えるための新技術の発展も見られます。白菜を取り巻く新しい潮流やトレンドと、農家を支えるサービスや制度を押さえることは、安定収入のために大事な要素です。

以下、安定収入を目指す3つのコツを紹介します。

1. 需要に合わせた「売れる品種」の選定

スーパーマーケットに並ぶミニ白菜

sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)

品種選びの主なポイントは、病害虫に強く栽培しやすいか、食味がよく多収が見込めるか、などが挙げられます。それらに加えて消費者のニーズに合う品種を選定することも、これからの“儲かる白菜農家”には重要です。

例えば、核家族化が進む現代では白菜のカット販売が主流になっているものの、カット販売には日持ちや衛生面といった点で課題があります。そういったニーズに応える形で、既存の白菜の小型化ではなく、食べきりサイズの「ミニハクサイ」が生まれるなど、種苗会社でも開発が進められています。

2. スマート農業の技術を活かした「大規模化」

重量野菜には農業用アシストスーツ

こしあん / PIXTA(ピクスタ)

先述した品目別経営統計の「農業経営の概況(1戸当たり)」および「農業経営収支(1戸当たり) 」を参照すると、日本一の白菜の生産量を誇る茨城県は全国平均と比較しても栽培面積が大きく、その分だけ農業所得が高くなっています。生産量が国内第2位の長野県と比べても、茨城県は秋冬・春のいずれも1.5倍以上の広さの作付面積で白菜を生産しています。

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|確報 令和2年産野菜生産出荷統計」

白菜栽培で儲けるためには、農作業の効率化にもつながる大規模化が重要ですが、作付けする規模を広げすぎると重量のある白菜などは特に、労働時間の多くを占める「収穫・出荷」作業の負担が大きくなってしまいます。

先述の茨城県八千代町でも高齢化に伴う作業の負担が問題となっていましたが、若手の留学生の受け入れを行うことで、この課題を解決していました。しかし同時に、人員を増やすことは人件費の増大を招きます。

白菜のような重量野菜を扱う上では、腰の動きを補助する「アシストスーツ」を着用することで、この課題を解決した事例がヒントになるかもしれません。

株式会社イノフィス「Muscle Mag|きれいな野菜を届けるために。慢性的な腰痛に悩む農家がたどり着いた「着る筋肉」【白菜農家 油井様】」

ここで紹介されている株式会社イノフィスの「マッスルスーツEvery」は、空気圧を利用した人工筋肉により、足や腰、背中の動きを補助する器具です。

この事例では、夜中の2時~3時から始まり、午前10時くらいまでかかっていた白菜の収穫作業や箱詰め、運搬の作業負担が軽減されたことや、作業効率が上がったことが語られています。

このように、“儲かる白菜農家”をめざすためにスマート農業の最新技術を活用することも、選択肢の1つとして考えてみるのもよいでしょう。

▼「マッスルスーツ Every」の農業での活用については、以下のインタビュー記事もご覧ください。

▼農業用アシストスーツ全般については、以下の記事をご覧ください。

3. 補助金の対象となる「指定産地」で栽培

農業は外国との輸出入や需給バランス、さらには自然災害や気候変動などによって、商品となる作物の供給や価格が変動するという、特有の構造に基づいて営まれる産業です。

このため、農業に従事する農家を守る「野菜価格安定制度」をうまく活用することもまた、“儲かる白菜農家”をめざすうえで重要なポイントです。

野菜価格安定制度とは、日々の生活で消費される主要な野菜の価格が著しく値下がりした場合に、主たる野菜の産地における生産と、消費地域に対する出荷の安定を図るため、生産者に交付金(補助金)の支給などを行うことを取り決めた制度です。

現在は野菜生産出荷安定法(昭和41年法律第103号)に基づき、独立行政法人 農畜産業振興機構(alic)により実施されています。

本制度にて補助金の受給を受けるためには、機構が行う登録を受けたJA(農業協同組合)などの登録出荷団体の委託を受けている、または機構と契約している必要があります。

白菜は本制度で挙げられている14品目ある指定野菜の1つです。茨城県などの指定産地で栽培することによって、価格の下落時に補助金の対象となるため、収入減などのリスクに備えることが可能です。

なお、制度の詳細や指定産地一覧については、以下の農林水産省のサイトから確認できます。

出典:農林水産省「野菜生産出荷安定法」

▼指定野菜については下記の記事もご覧ください。

白菜は価格変動が大きい一方、需要は安定しています。

重量野菜であることや、制度によって生産者が保護される指定野菜であるなどの特徴を押さえたうえで、適切な経営工夫をすることで生産の安定化も図れます。

白菜を主要品目として規模拡大を図るか、水稲やほかの露地野菜類との複合経営で高収益化を図るか、地域の流通事情も加味して営農計画をたててください。

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大森雄貴

大森雄貴

三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、人と自然が共に豊かになる未来を願いながら、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援などに取り組んでいる。

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