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白菜の収穫時期の見極め方&高収益を狙う「夏出荷」栽培とは?
出典 : ぱぱ〜ん / PIXTA(ピクスタ)
  • 生産技術

白菜の収穫時期の見極め方&高収益を狙う「夏出荷」栽培とは?

白菜は冬を代表する野菜です。ところが、最近では冬以外でもサラダの具材や漬物・キムチの材料などとして、年間を通して一定の需要が見込めるようになりました。今回は注目を集めている夏出荷白菜と、基本的な白菜の栽培ポイントについて紹介しましょう。

白菜の一大産地である茨城県西部では、通常夏の終わり頃に播種し、秋・冬から春に出荷するのが一般的です。
近年その白菜栽培の作型に変化が見られるようになりました。この記事では白菜の基本的な栽培法と、収穫時期をずらした夏出荷白菜について解説します。

冬どり白菜の栽培暦

白菜 発芽 育苗トレイ

スター/PIXTA(ピクスタ)

白菜栽培で重要なポイントの1つが、播種のタイミングです。一般的な冬どり栽培では、播種の時期が早すぎると病害虫の被害が増え、遅すぎるとうまく結球しません。

播種時期の目安は、寒冷地では7~8月、一般地では8月いっぱい、暖地では8~9月がタイミングとしては最適です。ほ場の気候条件を確かめて、最適な時期を逃さずに播種することが重要です。

収穫時期は早生種で播種から60日前後、中生・晩生種で約100~120日と考えておくとよいでしょう。

白菜の収穫時期・タイミングの見極め方

白菜 収穫

Carbondale/PIXTA(ピクスタ)

夏に播種して冬に収穫期を迎える白菜は、栽培する地域や種類によって収穫のタイミングを見極める必要があります。その最適なタイミングと、主な生産地での収穫時期を紹介しましょう。

早生種は初霜が降りる前に収穫を

播種から60日前後で収穫できる早生種では、白菜の先端を手で押さえてみたときに、固く締まっていれば収穫時期と考えてよいでしょう。時期としては初霜が降りる前が目安です。

収穫が遅れてしまうと、霜や風の影響で外葉がカサカサになったり、腐ったりすることがあります。商品価値が大きく下がるので注意が必要です。

中生・晩生種を越冬させる場合

白菜 越冬

Carbondale/PIXTA(ピクスタ)

中生・晩生種は栽培期間が長くなるため、越冬して収穫時期を延ばす場合は、結球部分を外葉でくるみ、先端をひもで縛って寒さ対策を施します。

こうしておくと外葉は寒さで枯れますが、結球部分は新鮮なまま保存されます。この寒さ対策をしておけば、一般地でも2月いっぱいは出荷が可能です。ただし、暖かくなり始めると白菜が中から腐ってしまうので注意しましょう。

主な生産地での収穫・出荷時期目安

日本では、茨城県と長野県が白菜の2大産地です。現在は茨城県が収穫量トップの座を維持しています。

2019年の東京中央卸売市場での白菜出荷状況を見てみると、茨城県産白菜は11~12月頃に出荷のピークを迎えます。また、茨城県ではトンネル栽培(畝をビニールなどでトンネル状に被覆して栽培する方法)を利用して、春白菜の出荷にも力を入れています。

一方の長野県産白菜は、9~10月が出荷の最盛期になる夏出荷が主流です。そのほかの主な産地では、北海道も夏出荷が中心で、群馬県は冬出荷と夏出荷を組み合わせて通年で継続的に出荷する独自の栽培体系をとっています。

単価を上げて高収益を狙う「夏出荷栽培」とは?

白菜 八ヶ岳

vadoo/PIXTA(ピクスタ)

全国的に見ると、白菜の出荷は秋冬がピークになっています。しかし、春から夏にかけても一定の需要があり秋冬より取引価格は高めです。そのビジネスチャンスを狙う方法が、夏出荷白菜の栽培です。

夏出荷白菜は平均取引価格が高い

農林水産省の作況調査によると、2018年産「秋冬はくさい」の作付面積12,700haに対して、2018年産「夏はくさい」はその5分の1にあたる2,420haしかありません。

出典:農林水産省 作物統計調査・作況調査(野菜)「平成30年産野菜生産出荷統計」

一方で、需要に関してはキムチをはじめとする漬物類や、最近では白菜をサラダに使うメニューが普及したことで、夏でも一定の水準を維持しています。

東京中央卸売市場における2019年の白菜の平均価格を月別にみると、取扱量がピークを迎える冬場には価格が下がり、逆に取扱量が減少する8~9月の夏には価格が大きく上がります。

つまり夏の流通量の少なさと取引価格の高さを考慮すれば、夏出荷白菜を栽培することは経営的にもチャンスになる可能性があるのです。

minorasu(ミノラス)の画像

出典:東京都中央卸売市場「市場統計情報」よりminorasu編集部作成

夏出荷白菜の栽培暦

夏出荷白菜は品種にもよりますが、2~3月に播種を行います。まだ寒さが厳しいため、ほ場には直播きせず、一定期間育苗ハウスで生長させてから定植します。

定植時期の目安としては、寒冷地では4月、一般地では3~4月、暖地では3月いっぱいと考えてよいでしょう。ただし、品種によっても違いがあるので注意が必要です。

夏出荷白菜の主な産地と収穫時期

農林水産省の作況調査では、2019年産「夏はくさい」の全国合計収穫量は約18万tで、そのうち長野県が約15.3万tと大半を占め、北海道が約1.4万tで続きます。

minorasu(ミノラス)の画像

出典:農林水産省 作物統計調査・作況調査(野菜)「令和元年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」よりminorasu編集部作成

長野県では収穫~出荷の最盛期は6~10月で、北海道では7~10月です。どちらもほかの地域で秋冬白菜の出荷が途切れるタイミングに出荷が最盛期を迎えるわけです。

夏出荷栽培に適した品種の例

一般地での夏どりが可能な、サラダにも適した小型の品種を3種類紹介しましょう。

「サマーサラダ」(タキイ種苗株式会社)は、高温結球性の夏から初秋どり種です。定植後約35日で1kg程度に太る極早生種で密植栽培が可能です。青臭さがなく、肉質がやわらかく、外葉に毛(毛茸)がないのでサラダに適しています。

「タイニーシュシュ」(株式会社サカタのタネ)は、みずみずしい甘さが特徴で、サラダにもぴったりの白菜です。夏でも栽培できるように耐暑性と耐雨性に優れ、生理障害や病害にも強い特性があります。

「夏一番」(株式会社武蔵野種苗園)は、高温結球性の夏どり専用品種で、やはり耐暑性と耐雨性に優れています。極早生種なので播種後約40日から収穫が可能です。小型種ですがよく結球し、滑らかな食味はサラダにも適しています。

「春まき夏どり」栽培のよくある失敗例&生育のコツ

ミニ白菜

kokano/PIXTA(ピクスタ)

最後に、夏出荷白菜を栽培するうえで、特に注意するべきポイントをまとめておきます。

生育不良・結球前のとう立ち

春に播種する場合には、まず「とう立ち」に注意が必要です。白菜は3~13℃の低温下では花芽が形成されてしまい、新葉の分化がストップしてとう立ちしてしまいます。

また、とう立ちを抑えられても、結球がうまく進まないなどの生育不良を起こすことがあります。そのため、13℃以上の温度を保って育苗します。

基本的な育苗方法としては、土の量が多いポットに播種して、ハウスの中で本葉が7~8枚の大苗に育てます。温度は夜間でも13℃以上を保つことが重要です。必要があれば温床マットや温風暖房機を使いましょう。

苗が十分に生長したら、平均気温が10℃を超える桜の開花シーズンを目安に定植します。初期の生長を促進させるため、マルチング(地表面をビニールなどで覆うこと)を施すことと、場合によってはトンネルの利用をおすすめします。

病害虫防除

4月以降はアブラムシやコナガが発生するほか、5~6月に気温が上昇すると、生理障害や病害の危険性も高まります。

病害虫に対しては、白菜と防除する病害虫に適用がある農薬による化学的防除と、定植時からの防虫ネットがけなどの耕種的防除をあわせ、初期防除を心がけます。

全国的には、秋冬の需要に合わせた白菜栽培が盛んですが、いくつかの産地では取引価格が高い夏出荷白菜の栽培に取り組んでいます。地域にあった品種や作型を研究しチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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