農業で作業着といえば、上着とズボンにTシャツ、長靴の定番スタイルではないでしょうか。今回は「デニムのつなぎ」をキーワードに、農家のために特別にデザインされ、コーデもたのしめるオシャレな新しい作業着を紹介します。
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目次
つなぎとは? オーバーオール、オールインワンとの違いは?
YUMIK / PIXTA(ピクスタ)
まずは「つなぎ」の定義を確認しておきましょう。
「つなぎ」とは、上下が完全につながったタイプの服のことをいいます。上着とパンツは縫い合わされ、袖がついています。つなぎの代表的なものが、いわゆる「作業着」です。
また、似たタイプの服として「オーバーオール」や「オールインワン」があります。
「オーバーオール」は、パンツに胸当てやサスペンダーが付いたタイプの服です。袖は無く、肩部分から吊り下げて着るのが特徴です。
「オールインワン」は、上下がつながった服の総称です。つまり、「つなぎ」も「オーバーオール」も「オールインワン」の一種ということになります。
農作業でつなぎを着用するメリットは?
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
「つなぎ」の作業着というと、自動車整備などをイメージしますが、農作業で着用するメリットはどんな点にあるのでしょうか?
余裕があるつくりで動きやすい
農作業では、中腰やしゃがむ姿勢になることも多いため、作業着のベルトが気になったり、膝裏や腿の付け根への布の食い込みが気になったりしたことがあるのではないでしょうか。
つなぎは、通常の作業着と比べると、ウェストまわりやズボンのわたり(注)などがゆったりとした作りになっているため、こうした窮屈さから解放されます。
(注)ズボンの腿部分の幅
ほこりや汚れが内側に入りにくい
風がある日の農作業では、土埃が服の内側まで入り込んでしまい、入浴したときに体から土埃が流れ落ちるのを見て、驚いたことがあるのではないでしょうか。
つなぎは、上下がつながっている分、ほこりや汚れが内側に入り込みにくいので、体が汚れにくく衛生面でも優れています。
事故が起こりにくい
また、つなぎは、ほこりや汚れだけでなく、事故のもとになる異物も入りこみにくい作りです。
このため、作物の尖った部位などが入ってケガをしたり、農機のオイル漏れで火傷してしまったりという危険を減らすことができます。
また、ファスナーが上下一直線でつながっていてベルトも不要なので、衣服が作物に引っかかったり農機具に巻き込まれたりするトラブルも予防できます。
農家のための特別なつなぎ!JA全農×Lee
※この章は、2021年1月時点(記事掲載時)の情報です。現在は、JA全農の運営する「みのりみのるプロジェクト」での紹介、「JAタウン」での商品取扱は終了しております。
UNION-ALLS farmers edition JA全農×Lee
写真提供: JA全農みのりみのるプロジェクト
2010年に発足した、JA全農の「みのりみのるプロジェクト」は「価値共感の集落」をコンセプトに、日本の農業を軸とした多彩なライフスタイルのありかたを提案するプロジェクトです。
生産者の想いを消費者に伝えるインタビューコンテンツ「AGRIFUTURE」や、選りすぐりの農産物やこれを使ったメニューを都市生活者に提供する「みのりカフェ」「みのるマルシェ」「みのりみのるキッチン」などの実店舗を展開しています。
そうした「みのりみのるプロジェクト」の事業展開の1つとして始まったのが、農家のニーズが随所につまった「かっこいい」つなぎの開発です。
「思い切り働く人の服はかっこいい!!」をコンセプトに「Lee」のつなぎブランド「UNION-ALLS」(株式会社エドウィン)とコラボレーションする形で「UNION-ALLS farmers edition」が出来上がりました。
グッドデザイン賞を受賞した農家のための作業着
機能性と優れたデザインを両立した製品に贈られる「グッドデザイン賞」は皆さんご存じでしょう。
実は、グッドデザイン賞を受賞した製品の中には、農家のためにデザインされた長靴や作業着もあるのです。
その中から4点を紹介します。
農作業の負担軽減を追求した独特のデザイン!農業用長靴 「トラクターシューズロング」
2011年度グッドデザイン賞受賞 「トラクターシューズロング」
写真提供::公益財団法人日本デザイン振興会
株式会社マルカツの「トラクターシューズロング」は、田植え作業を想定した完全防水万能ゴム長靴です。2011年のグッドデザイン賞中小企業庁長官賞を受賞しました。
履き口のゴムがない一体型の独特なフォルムは、農作業の身体的負担の軽減と作業効率の向上を追求して生まれたものです。
田植え作業では、粘土質の泥水の中を歩くことで大きく体力を消耗します。そのため泥水の抵抗を小さくする形状としてデザインされたのです。
また、長靴特有のだぼつきが無くフィット感が高いので、細かい作業やとっさの動作がしやすく、作業効率の面でも優れています。
足首にまでとどく長いファスナーもデザインのポイントの1つで、脱ぎ履きが楽に行えます。ファスナーを閉じれば、砂や土が入り込みません。
夏にはファスナーを開いたまま作業できる設計で、田植え以外にも年間を通して役に立ちます。
農業の「足元」にスポットを当て、農家にとっての機能性を高度に実現したフォルムは非常に洗練されていてオシャレでもあります。
株式会社マルカツの製品ページはこちら
※農業資材販売店、農業資材販売店が出店しているECなどで購入できます。
グッドデザイン賞を複数回!「A-rue」のワークウェア
デザイナーの藤井優子さんは、自身の「A-rue」ブランドの「農&ロハスファッション部門」で農家のためのワークウェアを展開しています。
「こんなのあったらいいなぁ」という農家の奥さんの呟きを聞き「普段も使えるデザインなら楽しく作業できるんじゃないか」と思ったことが、このブランドの始まりだそうです。
農家の人の意見を直接聞いて試行錯誤しながらデザインされたワークウェアはどれも機能性とオシャレを兼ね備えています。
A-rue トップページこちら
2013年グッドデザイン賞受賞 A-rueの「ワークパンツ」
写真提供:A-rue
楽しくオシャレに働くための男女兼用の作業用パンツ。サルエル風のゆったりしたデザインが、汗じみや虫刺されを防ぎます。後ろには、フラップ付きポケットと蚊取り線香を取り付けるループがついています。
A-rue オンラインショップの商品ページはこちら
2013年グッドデザイン賞受賞 A-rueの「ズッキン」
写真提供:A-rue
農家の女性が昔から使っていた日焼けを防ぎ首筋を守る農作業帽は、とても機能的ですが残念ながらあまりオシャレとはいえないようです。
そこで首筋を守る機能はそのままにデザインされたのが「ズッキン」です。
A-rue オンラインショップの商品ページはこちら
【2019年度グッドデザイン賞】東北の伝統ある野良着「猿袴」を現代の農作業着に
現代の猿袴「SAPPAKAMA」
写真提供:株式会社京屋染物店
東北で昔から野良着として愛用されてきた猿袴(さっぱかま)を、現代の普段着「SAPPAKAMA」としてリ・デザインしたのは、デザイナーの千葉智さんです。
猿袴のシルエットを活かしながら、立体裁断などの現代の技法でフィット感を出しています。より足腰に力が入り作業がしやすくなっています。
農作業だけではなく、アウトドアにリラックスタイムにもおすすめです。
「SAPPAKAMA」のホームページはこちら
「SAPPAKAMA」を購入できるオンラインショップはこちら
もっとある!農家のための特別な作業着ブランド
これまで紹介した以外にも、農家のために特別にデザインされ、機能性とデザインを両立させた作業着ブランドがあります。
その中からいくつか紹介しましょう。
プロ農家のための、働きやすくてカッコ良い作業着「Noh Logic」
プロ農家のための、働きやすくてカッコ良い作業着「Noh Logic」
画像提供:Noh Logicのオンラインショップ
※この記事は執筆時の情報を基にしております。「Noh Logic」は、2022年5月にてブランドを終了いたしました。
「プロ農家さんを、ファッションでサポートしたい。農家さんのカッコ良さを目に見える形にしたい」という想いから生まれたブランド「Noh Logic」。
ブランド名の「Noh Logic」は、「Noと農:理屈でない着心地のよさ」「Logic:農家さんのための論理的な機能」を同時に表現しているそうです。
ミリタリーをベースに「普段着としてもカッコ良く、普通に着られること」を目的にデザインされた作業着には、プロ農家の作業を想定した機能性がつまっています
Noh Logicのホームページはこちら
Noh Logicのオンラインショップはこちら
女性のためのフィールドウェアブランド「MONKUWA」
「畑にいる時も、農作業をしている時も、どんな時も"一番いい自分"でいてほしい」という想いから、「快適で遊び心があふれる農作業着」をコンセプトにしているブランドです。
サロペットやもんぺパンツ、ヤッケ、ワークハットなどを展開しており、Instagramには、遊び心あふれるコーディネートがたくさん投稿されています。
MONKUWA ホームページはこちら
MONKUWA 公式Instagramはこちら
MOMKUWA ユーザーの投稿用Instagramはこちら
農家のリアルボイスがつまった「のらスタイル」
畑乃家オンラインショップの「おすすめコーディネート」
写真提供:オンラインショップ 畑乃家
「のらスタイル」は、みかんの名産地の和歌山県有田市で生まれました。
地元のみかん農家の「ここが日焼けしてしまう。ここに枝が引っ掛かる。」といったリアルな声を形にすることから始まった「のらスタイル」には、ほんとうに農家の役に立つアイテムが揃っています。
農家の女性にとってとても気になる日焼けを防ぐフードや帽子類、農家の声を反映した機能的なアームカバーや作業手袋など、小物アイテムが特に充実しています。
「のらスタイル」はオンラインショップ「畑乃家(はたけのいえ)」をサービス拠点にしています。オンラインショップではコーディネートも多数紹介されています。
畑乃家オンラインショップはこちら
みかん農家の声からうまれた「ウレタンコーティング背抜き袖付き手袋」
写真提供:オンラインショップ 畑乃家
オンラインショップの商品ページはこちら
ほこりや水はねが入りにくい高密度ポリエステル素材のサロペット「ヤッケサロペット」
写真提供:オンラインショップ 畑乃家
畑乃家オンラインショップの商品ページはこちら
ここまで、農家のために特別にデザインされた作業着ブランドを紹介してきました。
作業中に服が気にならない機能性、暑さ寒さから身を守る快適性、そして、オシャレ心をくすぐるデザイン。
これらを兼ね備えた作業着は、農業に取り組む日々を豊かにするエッセンスになりそうです。
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酒井恭子
テレビ番組制作会社、タウン情報誌出版社での取材・編集・ライティング業務などを経て、2018年からライターとして活動。農業、グルメ、教育、ビジネス、子育て情報など、幅広いジャンルの記事を執筆している。特に、食べることに興味があり、グルメ情報を自身のメディアでも発信中。美味しい料理の素材となる野菜や果物についても関心を持ち、農家とつながる飲食店で取材するなど、日々知識を深めている。「自分の文章で感動を多くの人と共有したい」が信条。