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アプリ1つで農家の野菜を直接購入できる「クックパッドマート」利用農家の本音をリサーチ
出典 : 森田農園 ホームページ
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アプリ1つで農家の野菜を直接購入できる「クックパッドマート」利用農家の本音をリサーチ

料理レシピ投稿・検索サービス 「クックパッド」を運営するクックパッド株式会社が手掛ける生鮮食品ECプラットフォーム 「クックパッドマート 」。リリース以来、徐々にサービスの規模を広げています。今回はクックパッドマートを使って実際に商品を出荷している森田農園さんに「出店農家 の本音」を伺いました。

農家と消費者を結ぶECプラットフォームの登場

森田農園の新鮮なコカブ

森田農園の新鮮なコカブ

伺ったお話 を紹介する前に、クックパッドマートをはじめとする農家と消費者を結ぶECプラットフォームが生まれた背景について解説します。

農家のこだわりの野菜・果物に対する 消費者ニーズは多い

農産物直売所の市場規模をご存じでしょうか。

農林水産省の「6次産業化総合調査」によると、2011年度7,927億円だった年間販売額は2018年度には1兆789億円まで増加しています。

新鮮で農家の顔が見えるこだわりの野菜を買いたいという消費者のニーズは 多いといえるのではないのでしょうか。

農産物直売所の市場規模

出典:農林水産省「6次産業化総合調査」平成23年度~平成30年度よりminorasu編集部作成

食品類のEC化率が低い理由

では、直売所ではなくECでの野菜や果物など食品類の購入の状況はどうでしょうか。

経済産業省が2020年7月に発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、物販系分野全体でのEC化率(注)は6.76%ですが「食品・飲料・酒類」のEC化率は2.89%で、全体と比べると低い水準になっています。

(注)EC化率:全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する電子商取引市場規模の割合を指し、BtoC ECにおいては物販系分野が算出対象。

物販BtoC EC化率

出典:経済産業省「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」よりminorasu編集部作成

食品類のEC化率が低い要因として、消費者側には「生鮮品は目で見て、できたら手に取って確認してから購入したい」「配送料が高いから近所のスーパーのほうが便利」「受け取り方法や受け取り場所に制約がある」といったことがあるようです。

また、出店する農家にとっては「物流拠点までの納入が大変」「配送料の負担が大きい」ということがECに参加するハードルとなっているといわれています。

農家と消費者を結ぶECプラットフォームが登場

食品・飲料・酒類のEC市場規模は、1兆8,233億円(2019年)と大きく、EC化率もほかの分野と比べ低いとはいえ、継続して上昇しています。

購買時間の節約や家事の簡素化などの理由から、インターネットで食品類を調達しようという消費者ニーズは徐々に高まっているといえそうです。

消費者の「生産者のこだわりの商品を購入したい」ニーズと、農家の「運送費や出荷作業の負担を減らしたい」「生産者としての思いを消費者に伝えたい」ニーズを満たそうとするECプラットフォームが近年次々と立ち上がっています。

クックパッドマートは、生産者と消費者をつなぐECプラットフォームの代表例の1つです 。

クックパッドマートとはどんなサービス?

消費者はアプリで食材を注文、クックパッドマートが生産者から集めたこだわりの食材を、指定の場所で受け取れる

消費者はアプリで食材を注文、クックパッドマートが生産者から集めたこだわりの食材を、指定の場所で受け取れる
出典:クックパッドマート ホームページ

「クックパッド」がはじめた生鮮食品ECプラットフォーム

料理レシピ投稿・検索サービス として月間約5,700万人 が利用する「クックパッド」を運営しているクックパッド株式会社。同社が2018年9月 にサービス開始した生鮮食品ECプラットフォーム が「クックパッドマート 」です。

ユーザーは、アプリを使って1品から注文でき、出荷当日の新鮮な食材 を好きな受け取り場所で、好きな時間に受け取り可能なサービスです。

食材の受け取りができる「マートステーション」の数は徐々に増え、現在は450箇所に なりました(2021年3月22日時点)。 東京都・神奈川県のコンビニ、ドラッグストア、東京メトロ駅構内、マンション共用部など に「マートステーション」が設置されています。
 
新型コロナウイルス流行による外出自粛の流れもあり、サービスを利用する消費者は増加傾向にあります。

では、商品を出品 する販売店の実情はどうなっているのでしょうか?

クックパッドマートがサービスをリリースしてから約2年と数ヶ月 。今回は出店者 としてサービスを利用する森田農園代表 森田さんに、実際にクックパッドマートを利用して商品を販売してみた所感を伺いました。

森田農園 森田昌(もりた あきら)さんプロフィール

森田農園 代表 森田昌さん

森田農園 代表 森田昌さん

大学卒業後、飲食店勤務を経験したのちに祖父母の後を継ぎ、農業経営を始める。
農作業とJAのアルバイトというダブルワークをこなしながら農業を学び、現在は
年間80品目を栽培・販売している。

地元のスーパーマーケットや卸業者、農園の直売所やマルシェなどの対面販売、オンラインショップなど複数の販売チャネルを活用し、2017年の就農以来年々売り上げを大幅に伸ばしている。

品質への自信があるからこそ選んだ直売チャネル

森田農園があるのは千葉県流山市の住宅街。東京駅から 1時間ほどで農園に到着します。

「できるだけ自分の野菜に対する思いが伝わる方法で販売したい」と言う森田さん。売り上げの8割は地元のスーパーや八百屋への卸売と、マルシェなどでの対面販売が占めているそうです。

森田農園代表 森田昌(以下 役職・敬称略):森田農園では365日、いつでも旬でおいしい野菜を提供できるよう、年間を通して80品目以上の野菜を栽培・販売しています。

野菜の品質に自信を持って販売しているので、その価値を価格に反映できるよう、価格決定権を握れる販路での販売にこだわっています。

リアルとデジタルを組み合わせユニークなサービスを展開

森田農園 柏の葉キャンパス駅のマルシェ

柏の葉キャンパス駅のマルシェ
出典:森田農園 facebook

マルシェでは、通常の野菜販売だけでなく、焼き芋を販売したり、夏にはとうもろこし収穫体験を実施するなどほかにはないサービスを提供しています。

森田農園マルシェ とうもろこし収穫体験の様子

とうもろこし収穫体験の様子
出典:森田農園 Facebook

農園セレクトの旬の野菜を届けるオンラインショップ

森田農園は卸売・対面での直売のほかに、森田農園が運営するオンラインショップで野菜のセット販売も行っています。

価格帯ごとに野菜の大きさやボリュームを変え、1週間で使い切れる量の野菜セットとして農園セレクトの旬の野菜を販売しています。

森田農園で販売している野菜セット

森田農園で販売している野菜セット
出典:森田農園 ホームページ

森田農園のオンラインショップ

森田農園のオンラインショップ
出典:森田農園 オンラインショップ

森田 オンラインショップから注文ができるようにはしていますが、ネット経由の注文の多くがInstagramのコメントやホームページのお問合せフォームからの注文です。マルシェで森田農園を知ってくださったお客様から直接お電話で注文を受けることもあります。

森田農園 ホームページはこちら
森田農園 オンラインショップはこちら
森田農園 Instagramはこちら
森田農園 Facebookはこちら

販売チャネルを複数持つメリット

森田 販売チャネルを複数確保することはそれぞれのメリットを享受でき、不測の事態 が起きた際のリスクヘッジになります。

卸売でBtoBの、対面販売やオンライン販売でBtoCの販路を確立した森田さんは、今後も販路を増やしたいと考えているそうです。

新たな販売チャネルとしてクックパッドマートを選んだ理由

森田農園とクックパッドマートの出会いは、クックパッドマート営業担当による導入説明会でした。

営業担当の話を聞きサービス理念に共感するとともに、多くのメリットのあるサービスだと感じたといいます。

農家に価格決定権がある。農家が出荷量を決められる。

森田 やはり価格決定権が農家側に委ねられるのは大きなメリットです。

「農業が儲からない」というイメージは、多くの人が「販売単価が低く大きな利益にならない」 と思っている ことが原因の1つではないでしょうか。

しかし、これは販路を確立する出口戦略と、価格決定の主導権を握ることで解決可能です。クックパッドマートでは出品する商品の価格を自分で決めることができるため、販売価格を自分が納得する価格に設定することができます。

また、クックパッドマートでは商品の販売価格のほかにも出品する量を農家主導で決定することができます。小ロット販売もできるのは、森田農園のような小規模農家には大変ありがたいことです。

そこで、森田農園ではクックパッドマートを活用し、主にその時期に多く採れた中でも野菜セットに入りきらない野菜の単品販売を行っています。

配送にかかる時間とコストを削減できる

クックパッドマートの配送システムは、まず注文を 受けた出品者が納品日の朝10時までにクックパッドマートの共同出荷所 に商品を出荷。 集まった商品をクックパッドマート側で集荷 し、ユーザーの受け取り場所である「マートステーション」に 配達するというもの。

共同出荷所 は、出品者の希望の場所に順次設置されていきます。

森田 作物の通販において、ネックとなるのが配送にかかる時間です。自家通販やレストランなどへの卸売では自分たちで梱包・配送を行いますが、配送にかかる時間の分だけ、ほかの作業に遅れがでるなど影響が生じます。

配送の時間は、農業のスキルを磨くこともできないので、必要な作業であるとはいえ時間をロスしてしまっているように感じていました。かといって、配送専門のスタッフを雇うとその分人件費がかかってしまいます。

クックパッドマートを始めるに当たって、近隣の農家さんと共同で利用できる出荷所を設置することになりました。どこに設置するかは自分たちで決めることができるので、ほ場から車で5分ほどのところに共同出荷所 を設けることにしました。

納品する場所が近い分、当然、配送時間が短縮できます。共同出荷所の設置に必要な費用や手続きはすべてクックパッドマート側が負担してくれるので、新規出店のハードルも低いものでした。

クックパッドマート 共同出荷所に設置してある冷蔵庫で商品の鮮度をキープ

共同出荷所に設置してある冷蔵庫で商品の鮮度をキープ

食にこだわりを持つユーザーに知ってもらうことでリピートユーザー獲得を期待できる

現在、 クックパッドマートのサービスの対象となるのは東京・神奈川の一部地域 。そのユーザーの中にはこだわりのおいしい食材を使って料理をしてみたいけれど、遠方まで買いにいく時間がないという方も多くいます。

クックパッドマートを活用することで、ユーザーは今まで知り得なかった食品や、生産者を知ることができます。

ユーザーは、気に入った生産者を「お気に入り」に登録することができるため、生産者にとってはファンを獲得し、リピートユーザーを開拓できるメリットもあるのです。

農家の本音「対応エリアを拡大してほしい」

農家にも消費者にもメリットがある、生鮮食品ECプラットフォームであるクックパッドマートの今後の課題に関してもお話を伺いました。

前述の通り、マートステーションの数は増えていますが、クックパッドマートのサービス対象エリアは東京・神奈川の一部地域です。

森田 東京ではあちこちで受け取れるようになっているようですが、森田農園がある千葉県流山市はまだサービス対象外。

そのため、僕自身がユーザーとしてサービスを利用したことはないんです。すごくいいサービスだと思うので、関東だけではなく全国にも広がってほしいですね。

現在、クックパッドマートのサービスでは都市圏ユーザーを想定しています。普段、直売所やマルシェ、朝市などになかなかいけない都会のユーザーでも生産者こだわりの食材を購入できるのがアピールポイントの1つになっています。

今後、大阪や名古屋など大都市圏をはじめ、需要が見込める規模の都市への展開を考えているそうです。

農家の本音「この農家のこの野菜! 魅力をもっと消費者に伝えたい」

クックパッドマートでは、どの出品者がどの商品を販売しているのかを見ることができます。生産者の顔を見ることができるのは、ユーザーにとって大きなメリットになりますが、課題 もあります。

森田 現状の出品者ページにある自己紹介欄では入力できる文字数が少なく、生産者ごとのこだわりや思い、おすすめしたい商品の魅力を伝えることができません。

ほかと差別化できる特徴を持っている商品なのに、それを伝える術がないとなると、お客様であるユーザーに伝えられる主な情報は価格と写真のみになってしまいます。そのため、商品の魅力をお客様に伝える仕組みを期待しています 。

「クックパッドマート」アプリ内の森田農園のページ

出典:「クックパッドマート」アプリ内の森田農園のページ

商品自体はさまざまな生産者が出品していても、比較材料が乏しい中で買い物をすることになれば、ユーザーが選びやすいのは「著名な生産者」や「より安い価格の商品」になってしまいかねません。

同じ作物でも、栽培する農家が変われば味も変わります。土壌や栽培方法など、味わいが変わる要因はさまざまです。

農家ごとに特徴やおいしさが変わる作物の魅力をユーザーにアプローチする方法ができれば、それはクックパッドマートで販売を始める、新たな、そして大きなメリットの1つになり得ます。

クックパッドマートの今後の進化

クックパッドマートは日々サービスの改善を重ねながら、徐々に規模を拡大しています。

クックパッドマートでは、規模拡大とともに、「食材それぞれにある特徴、それぞれのおいしさ、生産者の思いがユーザーに届く」サービスになれるよう全力を尽くしたいとのことです。

クックパッドマートの出店申込はこちらから 「出店に関するお問い合わせ」

※ 東京都、神奈川県以外からも出店ができるよう準備中ですが、2021年3月現在、集荷エリアは東京都・神奈川県・千葉県の一部を対象としています。

新型コロナウイルス収束の目処が立っていない現在、必要最低限の外出で買い物ができるクックパッドマートは新しい生活様式に合った買い物方法として需要を高めています。

時流に沿ってさらに発展していくクックパッドマートから今後も目が離せません。

福馬ネキ

福馬ネキ

株式会社ジオコス所属。「人の心を動かす情報発信」という理念のもと、採用広告を中心にさまざまな媒体で情報発信を手がける株式会社ジオコスにてライターを務める。

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