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「農の雇用事業」を活用して就農者の定着や技術向上を推進! 助成金を受けるポイントや活用事例を解説

「農の雇用事業」を活用して就農者の定着や技術向上を推進! 助成金を受けるポイントや活用事例を解説
出典 : Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

「農の雇用事業」は、雇用した新規就農者や次世代の経営者候補に農業技術・経営ノウハウを習得させる費用を助成する農林水産省の補助制度です。経営規模の拡大だけでなく、後継者確保のチャンスにもつなげられます。この記事では農の雇用事業の概要をはじめ、申請条件や助成金額、活用に成功した事例についても解説します。

農の雇用事業を活用することで、新規就農者や後継者に農業技術・経営ノウハウを受け継ぐコストが軽減されます。雇い入れた人が農業法人に定着すれば、農業経営の持続化にも効果を発揮するでしょう。農の雇用事業の概要や令和2年度(2020年度)の実績を紹介します。

「農の雇用事業」とは?

農業研修 トラクターの操作

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

「農の雇用事業」とは、就農を継続する強い意欲がある新規就農者や次世代の農業経営者候補を育成するための費用を助成する公的な制度です。

農畜産物の生産や加工・販売などの実務を通じて指導者が実習生に農業技術や経営ノウハウを直接習得させるOJTに必要な経費や、就農に必要な資格を取得する費用が助成されます。次世代の経営者を育成する場合には、ほかの農業法人や異業種の法人などに派遣中の代替職員の人件費も助成対象です。

また、指導者(研修担当者)が人材育成や労務管理などの知識を習得する費用も助成されるため、農業経営体そのもののレベルアップにも効果を発揮します。

令和2年度(2020年度)に農の雇用事業を活用した農業法人等は3,468経営体、うち883事業体が個人経営の農家でした。個人経営でも営農規模の拡大をめざして、新規就農者を雇用している実態がうかがえます。

研修を受けた就農者は5,177名、20代・30代の就農者が約8割でした。また、営農類型別で見ると野菜と稲作で約6割を占めています。

「農の雇用事業」の応募方法。3つのタイプと助成金や要件、応募方法

農業会議への応募について

補助金の応募検討

buritora / PIXTA(ピクスタ)

農の雇用事業を活用したい場合は、農業を経営している都道府県の農業会議(農業委員会ネットワーク機構)に研修実施計画書を提出して審査を受ける必要があります。研修計画を立てる前に、募集スケジュールなどの詳細を農林水産省の公式サイトでご確認ください。

研修開始後は半年に1回、農業会議による現地確認や研修生・指導者へのアドバイスが行われます。助成金の申請には研修実施状況の記録が必須なので、忘れずに作成しましょう。締切日までに助成金交付申請書を農業会議に提出し、問題がなければ助成金が支給されます。

▼農の雇用事業の応募要綱や、各都道府県の農業会議の電話番号は下記サイトをご覧ください。
全国新規就農相談センター「農業をはじめる.JP」(運営:一般社団法人 全国農業会議所)「農の雇用事業募集」のページ

引き続き、農の雇用事業のタイプ別に、助成金の金額や受給要件を解説します。

雇用就農者育成・独立支援タイプ

助成内容
助成額研修生1人あたり年間最大120万円
(多様な人材の場合は150万円)

・研修費用…月額最大9万7,000円
 (多様な人材の場合は12万2,000円)
・指導者研修費…年間最大12万円
 (多様な人材の場合は42万円)
助成期間最長24ヵ月
対象となる研修内容・農業生産・加工に関連する技術
・出荷・販売に関する知識
・農業経営のノウハウなど

雇用就農者育成・独立支援タイプは、職場内で就農に必要な技術や農業経営に関する知識を研修生に習得させる農業法人等が申請できます。

申請に当たっては、休憩・休日・有給休暇の確保への取り組みに加えて、労働時間の管理体制または人材育成・評価制度の整備などの働きやすい職場環境づくりへの取り組みが必須です。

また、申請前に研修指導者や経営者などが、雇用就農者の育成強化に関連するセミナーを受講する必要があります。

助成対象となる従業員(研修生)は、原則として49歳以下で就農経験が5年以内の人です。研修修了後も継続して就農する強い意志も求められます。

研修終了後1年以内に法人として独立する意欲がある人も研修生として指名可能です。正社員として採用されてから4ヵ月以上12ヵ月未満の段階で研修をスタートする必要があるので、申請前に雇用期間と募集スケジュールを十分確認するようにしましょう。

なお、障害者・生活困窮者・刑務所等からの出所者といった多様な人材を研修生にする場合は、助成金の上限が増額されます。

出典:農林水産省「農の雇用事業」所収「農の雇用事業【雇用就農者育成・独立支援タイプ】の概要」

新法人設立支援タイプ

助成内容
助成額1年目・2年目は年間最大120万円
(多様な人材の場合は150万円)
3年目以降は年間最大60万円
(多様な人材の場合も同様)
助成期間最長4年間
対象となる研修内容就農希望者が独立して法人化するために必要な、農業技術や経営ノウハウ

新法人設立支援タイプは、法人化したうえで農業の担い手となるために必要な農業技術や経営ノウハウを研修生に習得させる農業法人等が申請できます。

助成対象となる従業員(研修生)の要件は雇用就農者育成・独立支援タイプと同じですが、研修修了後1年以内に農業法人を設立する強い意欲が必要です。

後継者がいない個人の農業経営者が、特定の従業員を後継者として指名したうえで研修を受けさせることもできます。この場合は、資産・負債の状況を含めて経営の実態を積極的に開示したうえで、研修2年目を目安に経営継承の合意書を締結する必要があります。

出典:農林水産省「農の雇用事業」所収「農の雇用事業【新法人設立支援タイプ】の概要」

次世代経営者育成タイプ

助成内容
助成額月額最大10万円
(研修負担金などの経費や代替職員の人件費などが対象)
助成期間最短3ヵ月~最長2年間
(新規に農業法人を設立する場合は最長4年間)
対象となる研修内容次世代の経営者になるために求められる経営力

次世代経営者育成タイプは、外部の農業法人や異業種の法人企業などに研修生を派遣する際に生じた研修負担金や代替職員の人件費が助成対象です。

申請に当たっては、研修修了後1年以内に、派遣元の農業事業体で役員または経営幹部への登用の確約が必須です。

個人経営の場合は、法人化したうえでの役員登用または経営移譲の確約があれば、家族も研修生として指名できます。国内の法人だけでなく、海外の農業法人への派遣も可能です。

研修生は原則として55歳未満で、派遣元の農業事業体で役員または正社員として就農し、かつ経営にも参画している必要があります。研修修了後に、経営の中核を担う意欲も必要です。

出典:農林水産省「農の雇用事業」所収「農の雇用事業【次世代経営者育成タイプ】の概要」

「農の雇用事業」を活用した成功事例

農業法人などの従業員

mits / PIXTA(ピクスタ)

農の雇用事業を通じて従業員のモチベーションを高め、人材定着や経営の安定につなげる農業経営体が増えています。農の雇用事業の活用に成功した事例を紹介します。

離職者が大幅に減少。研修生から役職者も誕生

野菜苗の生産・販売を手がける「株式会社エバーグリーン富士見」(群馬県前橋市)では、若手社員の離職が経営上の課題でした。経営規模を拡大するために農の雇用事業を活用し、その課題を解消することができました。

組織体系を明確化したうえで役職制度を設け、社員がステップアップできるチャンスを設けるとともに、職務手当の新設や年間休日数の増加などの待遇改善にも取り組みました。

社員を増員して農繁期の負担軽減にも取り組んだ結果、働く環境の改善が従業員に支持され、離職者も大幅に減少しました。研修生から役職者に抜擢される事例も出るなど、組織改革の効果も表れています。頑張った社員が報われる環境をめざし、組織体制のブラッシュアップを続けています。

株式会社エバーグリーン富士見

群馬県 Youtube公式チャンネル tsulunos.jp WEB合説INぐんま「株式会社エバーグリーン富士見」

売り上げに応じた賞与を支給し従業員のモチベーションが向上

水稲を中心に小麦・果樹を栽培する「株式会社あづみのうか浅川」(長野県安曇野市)では、農の雇用事業を通じて2名の従業員が独立・就農しました。

農の雇用事業が農業の魅力を再確認するきっかけとなる一方で、自社に定着する従業員の必要性も実感したため、経営情報を全社員に共有したうえで作物ごとの売上目標を設定する取り組みを行いました。

農業生産の中で売上に対する意識が高まると同時に、高い意欲を持って仕事に取り組む風土も生まれました。売上に連動して賞与を支給する制度も構築し、社員の満足度も高めています。

将来的には人事評価制度の導入や給与体系の整備など、社員の成長度合いが可視化できる仕組みの導入も検討しています。

株式会社あづみのうか浅川

長野県農村振興課 Youtube公式チャンネル「(株)あづみのうか浅川~安曇野の田園風景を守り社員と一緒に夢を追う~」

他の経営体との交流を通じ研修生の疑問や不安感を払拭

ホウレンソウなどの葉物野菜の有機栽培に取り組む「有限会社佐々木農場」(島根県浜田市)では、2年間の研修カリキュラムを組んで人材育成に取り組んでいます。

農場内でのOJTに加えて、県立農業大学校の講座受講や市内の農家視察を盛り込むなど、農業技術のスキルアップの機会を充実させているのが特徴です。

近郊の農家や農産品の販売会社といったほかの経営体と交流する機会も設けており、研修生が疑問・不安を払拭できる機会も設けています。

社内ミーティングでは先輩従業員と施肥量設定など作業方針の策定にも関わり、実務能力を高めながら農場の一員であるという自覚も植え付けています。

有限会社佐々木農場

島根県 Youtube公式チャンネル「しまねっこ CH」「島根の有機農業 ~(有)佐々木農場~」

農の雇用事業を活用することで農業の担い手を確保・育成でき、経営規模の拡大や法人化など持続的な農業経営にもつなげられます。

申請に当たっては条件がありますが、経営課題を洗い出すチャンスと位置付けることも可能です。助成金を有効活用して、農業生産性の向上をめざしましょう。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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