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【JGAP導入支援】JGAPを契機に「農家が経営的視点を持った農業経営者になる」ために

【JGAP導入支援】JGAPを契機に「農家が経営的視点を持った農業経営者になる」ために
出典 : NPO法人農業支援センター(JGAP認証取得農場出荷場の様子)

農家の高齢化、農業の担い手不足を背景に、農家の法人化・大規模化が進み、農家が企業に、農業が産業になっていく流れの中で、GAP導入は重要な取り組みになっています。GAP導入支援事業を推進するアイアグリ株式会社木村社長に、生産者にとってのGAP導入の意義とメリットを詳しくお聞きしました。

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東京オリンピックの食材調達にGAP認証が必須条件になり、また、大手流通チェーンが調達基準にGAPを採用していることが報道され、GAPが注目されるようになりました。これらのニュースをみて生産者の多くの方がGAP導入を意識されたのではないでしょうか。

今回は、アイアグリ株式会社 代表取締役社長 木村泰行さんに、JGAPを中心に、生産者にとっての意義とメリット、JGAP認証農産品を求めている大手流通チェーンに対応していく方法などを詳しくお聞きました。

GAPとJGAP

木村社長へのインタビューを紹介する前に、GAPについて解説します。

「GAP」とは「Good Agricultural Practice」の略で、直訳すると「よい農業の実践」を意味します。具体的には農業における食品安全・環境保全・労働安全・人権保護(労務管理)・農場経営管理などへの取り組みを通して農業活動を改善し、持続可能な農業生産を実現することを目指すものです。

そして、取り組みが実施されていることを第三者機関の審査により確認され証明すること、またはその認証制度を「GAP認証」といいます。

GAPにはいくつかの種類が存在し、認証の基準や申請方法なども少しずつ異なります。現在、日本において認証が行われている主なGAPは4種類あります。そのうち、一般財団法人日本GAP協会が認証を行う「JGAPは、日本の標準的なGAPで、国内では最も広く普及しています。

その他には、国際的GAP認証である「GLOBALG.A.P.」、JGAPをベースにつくられGFSI(世界食品安全イニシアティブ)の承認を受けたことでアジア共通のGAPとして期待される「ASIAGAP」、都道府県独自のGAPである「都道府県GAP」などがあります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください「農業従事者なら知っておきたいGAP認証について」

農家の法人化・大規模化の流れの中で、GAP認証取得は「業界のスタンダード」に

JGAP ロゴ

日本農業の応援団であるJGAP
出典:NPO法人農業支援センター

農家の急速な高齢化、将来の農業を担う人材の不足という現実を背景に、農家の法人化・大規模化、が進みつつあります。

アイアグリ株式会社代表取締役社長 木村泰行さん(以下役職・敬称略) 高齢化や後継者不在、離農という農家を取り巻く現実は、想像を超えるスピードで動いています。その中で、農業法人化の波がきていることも確かです。

今後、農業の法人化や大規模化が進んでいく流れの中で、GAPの認証取得は当たり前になっていくと思います。業界のスタンダードとして認知されていくようになると考えています。

職場環境も遅ればせながら改善が始まっています。農業現場でも働き方改革という言葉を耳にするようになりました。メインプレーヤーが交代するであろう5~10年後には産業としての農業の姿が見えてくると想定していますし、そのころの農業にはGAPは標準装備になると考えています。

実際にデータをみると、現在、約168万人(農林水産省・平成31年時点)の就農者がいるといわれており、GAP認証取得農場数は6,694農場(農林水産省・令和2年3月末時点)となっています。GAP認証取得は今後も外的要因により普及が進むという傾向は変わらないでしょう。


出典:農林水産省「農業労働力に関する統計」 「都道府県におけるGAPの取組状況」

法人化する農家にとってJGAP認証の取得は、経営戦略の1つ

マーケティングの4P イメージ図

JGAP認証取得は経営戦略の1つ
出典:tiquitaca / PIXTA(ピクスタ)

農家のこれまでの視点は、主にサプライチェーンの川上である生産ステップにありました。JGAP認証を取得することによって、サプライチェーンの川下である流通との関係構築に、生産者として新たに取り組んでいくことになります。

木村 法人となる農家にとってJGAP認証の取得は、いわば、法人としてのISOの整備ともいえます。出荷取引先との関係構築の第一歩であり、将来的に産業として伸びていくために必要な新たな価値なのです。

JGAP認証を取得したからといって商品である作物が高く売れるというわけではありません。

しかし、法人経営の視点に立てば販路拡大が最重要課題です。例えば、イオンやイトーヨーカドー、コストコといった大手販売先との契約を結んでいくためには、JGAP認証を取得していることが必須条件なのです。

JGAP認証の取得は、まさに経営戦略の一つなのです。

JGAP実施の大きな意義は「農家が経営的視点を持った農業経営者になること」

JGAP認証の取得には、基準書の数多くの項目をクリアしなければなりません。そのための改善や準備が必要で、時間もかかります。こうした大変な準備を経てもJGAP認証を取得するのは、JGAPの求める経営管理を実施することで、一般企業と同様のマネジメントを導入できることにあります。

木村 JGAP認証取得前の農場の状況によりメリットは異なりますが、例を挙げると次のような内容となります。
・社員のモチベーションアップ、責任感アップ
・ムリ・ムダ・ムラが軽減され、管理体制が改善される
・ムダな資材購入が減る
・予実管理(予算の実績の管理)の思考が醸成される
・データが蓄積されることでデータ活用の環境が整う
・対外的に評価される、希少性がある
・商談がやりやすくなる(基本のやり取りを省略してすぐに価格の話ができる)

農家の法人化・大規模化の流れの中で、JGAPを導入することは、その取り組みを通じて、農家が農業経営者に、農業が産業に変わっていく大きな流れでもあります。

木村 農家が法人になるということは、法人としてのルール、つまり就業規則や労務管理の規範、そして人材育成から雇用、無駄な資材購入の見直しなど、「農家が経営的視点を持った農業経営者になる」ということです。

他産業と同様の思考パターンを持つ生産者も徐々にではありますが増えてきています。データ活用、標準化、ロジカルシンキング、PDCAサイクルによる業務改善といった事象はGAPに正しく取り組む農場に共通する部分です。

一方、JGAP導入には、費用面・運用面での難しさもあると、木村社長は指摘します。「JGAP認証は取得するもの、JGAPは実施するもの」というところにポイントがあるようです。

木村 また、リスクという面もさまざまですが、集約すると以下のようになるでしょう。

費用がかかる

・個人認証取得費用としては13万円~、団体認証は個別に見積
・維持審査・更新審査があり、初回審査時とほぼ同額の費用が毎年かかる

構築したしくみを運用・維持することに難しさがある

・作った規定を硬直的にとらえてしまい、柔軟に改善する運用になりにくい
・目的と手段をはき違えてしまいがちとなる(認証はあくまで手段)

このように、取得後にも費用面や運用・維持の面でも難しさはありますね。

難しさはあるものの、やはり生産者にとってのメリットは大きいといえるようです。
農研機構がJGAPを導入した農場に経営改善効果を聞いたアンケート調査結果(2012年)をみると、木村社長が指摘されたメリットが、生産者自身から実際に認識されていることがわかります。
・「従業員の責任感」や「自主性」が向上したとする農場は約70%
・「資材の不良在庫」削減されたとする農場は 54%
・「計画の⽴てやすさ」が改善されたとする農場は 47%
・「販売先への信頼(営業のしやすさ)」が改善されたとする農場は56%
出典:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構「GAP 導入による経営改善効果に関するアンケート調査結果」

JGAPの団体認証取得で大口需要のとりこみを

トマトときゅうりが山積みされているスーパーの野菜売り場

多品目・大量の需要に年間を通して安定的に応える
出典:人工知熊 / PIXTA(ピクスタ)

大手流通チェーンが調達基準として生産者にGAPの取り組みを求める動きが注目されています。

しかし、JGAP認証を取得したとしても、生産者にとって大きな壁となるのが大口需要に応える「多品目・大量の安定供給」です。

では、JGAP認証農産物を求める大手流通チェーンの「多品目・大量」の需要に対応するために何が必要なのでしょうか。

木村 大口需要家の「多品目・大量」の需要に対応する前提となるのが、JGAPの団体認証取得です。個人で個別にJGAP認証取得をしたとしても、出荷先のオーダーに応えていくには、やはり量がないと難しいのが現実です。当然、品質・品種・安定供給といったものを求められるわけですし、そこがクリアできないと対応できません。

たとえば「コストコ」のような大手では「週に10tを3便」というようなオーダーの例もあり、個人単位での対応量をはるかに超えているわけです。そうなると、規模拡大・販路拡大に対応するためにはJGAP認証農産物の生産から供給までの流れをサポートしていく組織の力が必須となってきます。

アイアグリ株式会社では、グループ企業「株式会社農流研」を通じて、JGAP認証農産物を求める大口需要家向けの販路拡大を支援しています。

アイアグリ株式会社 代表取締役 社長・木村泰行さん

アイアグリ株式会社 代表取締役 社長・木村泰行さん

木村 もともと生産者団体としての集まりとしてあった「いばらき農流研」「ちば農流研」「常総農流研」「ぐんま農流研」「さいたま農流研」などと連携し、株式会社農流研を通して、JGAP認証農産物を探している実需要者にJGAP認証農産物を販売することを推進していきました。

具体的には、複数の農場をまとめJGAPの団体認証を取得、多品目大量に対応する計画生産体制・供給体制を確立し、販路の拡大を推進しています。

さらに、環境保護への基準も厳しくなっているため、使用した農薬の空容器の回収など廃棄処理への対応も行なっています。

アイアグリ株式会社について

生産者の課題解決と未来像を見据えた、農業の総合支援を展開するアイアグリ株式会社。規模拡大・販路拡大を目指す生産者のためにJGAPの導入支援を推進しています。

農業情報発信基地として生産者をサポートする「しんしん」

農業情報発信基地として生産者をサポートする「しんしん」
出典:アイアグリ株式会社ホームページ

アイアグリ株式会社 会社概要

アイアグリ株式会社は、1986年11月に「新進株式会社」として設立。
以来、農業関連商品の販売店舗の拡充、フランチャイズ事業、農業技術支援事業、インターネット通信販売事業、農産物流通事業など、農業を総合的に支援するさまざまな事業を展開。
2002年7月、合併により「アイアグリ株式会社」に社名変更。
2020年2月より、土浦本社、東京本社の2本社体制となる。

アイアグリ株式会社 ホームページ

日本へのGAP導入当初からかかわり、JGAP導入支援事業を推進してこられた木村社長のコメントには、JGAP導入を契機に「農家が経営的視点を持った農業経営者になること」への示唆があふれていました。

JGAP導入を考えている生産者の方、JGAP認証を取得し、マネジメント体制の確立や販路拡大に取り組んでいる生産者の方にとって、大きな後押しとなるのではないでしょうか。

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西山俊哉

西山俊哉

株式会社リクルートにて情報誌編集長などの勤務を経て、カメラマン・ライターとして独立。雑誌インタビュー記事、企業や学校法人の広報ツールなどの制作を中心に活動。現在、株式会社トツマルボックスを設立し、代表取締役。人物インタビューやドキュメンタリーの取材・撮影に携わる。

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