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ローソンファームとは? 農業の産業化や地域創生に向けた大手コンビニチェーンの取り組み

ローソンファームとは? 農業の産業化や地域創生に向けた大手コンビニチェーンの取り組み
出典 : yaophotograph / PIXTA(ピクスタ)

大手コンビニチェーンのローソンは、全国の農家と提携して自社農園「ローソンファーム」を運営しています。消費者に農産物を安定供給できるルートを確立し、ローソンと農家の共存共栄を実現するのが主な運営目的です。この記事では、ローソンファームがめざす農業経営や地域創生への取り組みについて解説します。

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ローソンファームとは?

ローソンファームは農地所有適格法人として展開されており、若手の農家が経営者となって持続可能な農業をめざしているのが特徴です。中嶋農法と呼ばれる土壌改良技術を取り入れており、理想的な土づくりを通じて収量・品質の向上と環境への配慮を両立しています。まずは、ローソンファームと中嶋農法の概要を紹介します。

ローソンファーム

ローソンファーム
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ローソンストア100 ニュースリリース 2018年8月10日)

ローソンファームは、大手コンビニチェーンの株式会社ローソンと全国の農家・卸売業者との共同出資で運営している自社農園です。ローソングループの店舗に農産物を安定供給する目的で、2010年に農業生産法人(現在の農地所有適格法人)を設立。2021年5月時点では全国17ヵ所に農園を展開しています。

農家の生産技術とローソンのマーケティングのノウハウを融合させて、生産者の顔が見える安心・安全な農産物を供給することを経営戦略として位置付けているのが特徴です。

農業従事者の減少問題に先手を打つために、若手の農業経営者を主体として生産技術を高め、持続可能な農業経営もめざしています。

栽培品目は大根・キャベツなどの野菜類をはじめ桃・ブドウといった果樹、水稲など多岐にわたり、周年調達ができる体制を確立しています。規格外野菜を惣菜などの加工品として活用するなど、フードロスを抑えながら6次産業化の推進にも力を入れています。

株式会社ローソン「サステナビリティ > 特集|ローソンファーム」

中嶋農法への取り組み

土壌のミネラルバランス

Pixel-Shot - stock.adobe.com

ローソンファームでは、農産物の付加価値と収量の向上をめざすために中嶋農法を取り入れています。中嶋農法とは、土壌のミネラルバランスに着目して生育コントロールを実施し、安全で食味のよい作物を栽培する技術です。

中嶋農法では作物の栽培を始める前に、栄養状態や塩基バランスなどを細かく分析したうえで必要な土壌養分を把握します。分析結果をもとに、作物に欠かせないミネラルを加えて土づくりを行うことで栄養吸収が最適化されます。

作物の生育状況を把握し、必要に応じてメリットなどの葉面散布剤を用いるなど栄養バランスのコントロールも、作物の収量確保と品質保持には重要です。健康な農産物を継続して生産することで付加価値が高まり、市場での差別化にもつながります。

なお、中嶋農法という名称を使うには、土壌分析と適切な生育コントロールを3年以上実践し、産地・作物ごとに株式会社生科研の認証を受ける必要があります。

※詳細は、株式会社生科研の下記ページをご覧ください。
  「中嶋農法について」
  「定義と認証」

ローソンファームがめざすこれからの農業

ローソンファームでは農業の産業化を念頭に置いて、農産物の安定供給をはじめとする持続的な農業経営をめざしています。農場の管理体制を見える化し、消費者や取引先の信頼を高めるためにJGAP認証・ASIAGAP認証の取得にも積極的です。

ローソンファームがめざす、農業の未来像について解説します。

持続可能な農業

「ローソンファーム千葉」の契約農家で栽培されたサツマイモ(甘藷)が、加工され、ローソンストア100の「焼きいも」になる

「ローソンファーム千葉」の契約農家で栽培されたサツマイモ(甘藷)が、加工され、ローソンストア100の「焼きいも」になる
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ローソンストア100 ニュースリリース 2018年11月5日)

ローソンファームの野菜類が使用されるソーソンストア100のカット野菜

ローソンファームの野菜類が使用されるソーソンストア100のカット野菜
出典:株式会社PR TIMES(株式会社ローソンストア100 ニュースリリース 2018年8月10日)

ローソンファームでは、農家の高齢化や農業従事者の減少に伴う生産力低下を防ぐため、20代後半~40代前半の若い農業経営者を核として持続的な農業経営をめざしています。

ローソンのマーケティング戦略は共有されるものの、栽培計画や品種・品目の選定は各ファームの裁量に委ねられているのも特徴です。法人化によって、家族に依存する農業経営からの脱却も実現しています。

その結果、従業員に対する農業の技術承継も活発化し、農業の産業化も後押しされるのです。

規格外野菜を惣菜・サラダやペットフードなどに加工してローソングループ各店で販売することで、フードロスの減少と6次産業化の推進を両立しています。

収益の確保に効果を発揮するだけでなく、SDGsの目標の一つである「持続可能な消費と生産のパターンを確保する(12. つくる責任 つかう責任)」取り組みにも合致しています。

食品の安全性や自然環境への配慮・適切な労働環境の構築といった農場管理も実践しています。さらに、JGAP認証・ASIAGAP認証を取得・更新する取り組みを通じて消費者や取引先の信頼を高めて、長期的な取引につなげているのです。

持続可能な開発目標(SDGs)「12. つくる責任 つかう責任」

持続可能な開発目標(SDGs)「12. つくる責任 つかう責任」
出典:国際連合広報センター

安心で安全な野菜づくり

消費者や取引先に安心・安全な農産物を提供するために、ローソンファームでは農場管理の中に「5S活動」を取り入れています。5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・習慣づけの実践で、製造業をはじめとする一般企業の職場改善に取り入れられている活動です。

例えば、ローソンファーム茨城では、ほ場・施設内の不要物の除去や清掃の徹底を実践して、作業の効率を高めるだけでなく農産物への異物混入リスクを排除しています。

ローソンファーム千葉では収穫した農産物の鮮度低下を防ぐため、水質検査済の地下水を使って洗浄した後に冷蔵庫で保管しています。農薬倉庫の整理整頓や農機具の洗浄方法などの掲示などを通じて、農薬に関する知識向上や人体・環境への配慮につなげる取り組みも特徴的です。

JGAP・ASIAGAPの実践にも通じており、農産物の安全面で他の農家との差別化にも効果を発揮しています。

5S活動 整理・整頓・清掃・清潔・習慣づけ(躾)

yommy / PIXTA(ピクスタ)

従業員が安心できる労働環境

農業の産業化を進めるため、ローソンファームでは仕事内容や待遇などの労働環境を明確化して、従業員が安心して農作業に取り組める環境を構築しています。就業規則はもちろん、休暇制度・福利厚生や人事評価制度を整備するなど、人事・労務管理のレベルは一般企業と同様の水準です。

農業情報サイトや新聞・雑誌を活用して自己研鑽に取り組めるほか、経営状況や栽培関連の情報共有の場として朝会や月例会議を活用するなど、従業員育成にも力を入れています。

農作業の手順や出荷規格をマニュアル化して農家の勘や経験を見える化し、誰でも同じ水準で農作業を進められる環境の構築も行っています。

これらの工夫は、従業員のモチベーション向上や農作業の技術習得にも効果的です。季節によって勤務時間や休憩時間を変えるなど、従業員の安全面にも配慮されています。

安心して働ける環境を整えることで新規就農者を獲得でき、持続的な農業経営にもつながっていくのです。

地域環境に配慮した農業

前述した中嶋農法は、土壌分析の結果を踏まえて作物に必要なミネラルを適正に施肥するしくみです。過剰な施肥に起因する環境汚染を防げるだけでなく、営農コストの低減にも効果を発揮します。

ローソンファームでは、毎年実施する土壌分析で得られたデータに基づいて施肥するため、農産物の品質安定にも効果的です。ローソン店舗から排出された食品廃棄物を堆肥としてリサイクルし、ほ場の土づくりに活用する取り組みも実践されています。

ローソンファームでは耕作放棄地を借り受けて、農産物の生産規模を拡大しているのも特徴です。

耕作放棄地をそのまま放置しておくと雑草や病害虫の発生源となり、周辺のほ場への被害を及ぼす恐れがあります。しかし、耕作放棄地を再生・活用することで農産物の生産効率を高めることができるほか、連作障害による収量低下リスクの軽減にもつなげられます。

自然災害や廃棄物の不法投棄などに伴う環境悪化も防げるのです。

収益性の高い次世代型の農業経営

ローソンファームではJGAPの取り組みの一環として、農業生産の工程管理にクラウドシステムを導入しています。

農作業の実績はもちろん、農薬・肥料・資材の使用状況や生産原価など農業経営に関するあらゆる情報が明確化されるため、従業員のコスト意識の向上に効果を発揮します。従業員1人当たりのほ場管理面積を拡大して、高い収益を実現可能です。

蓄積されたデータをもとに、高い精度で作付計画や資材調達といった経営戦略を立てることもできます。作業記録は短時間で作成できるため、従業員の負担が少なくなります。

また、ローソンファーム千葉では地域の契約農家に技術指導を行い、JGAP認証の取得を推進しています。地域ぐるみで持続的な農業経営をめざすことができ、農産物の安心・安全という付加価値によって高い収益性を期待できるでしょう。

ローソンファーム千葉では地域の契約農家に技術指導を行い、JGAP認証の取得を推進している

Yoshitaka / PIXTA(ピクスタ)

ローソンファームでは持続的な農業経営を実現するために、若手の農業経営者と協働で農地所有適格法人を立ち上げ、安心・安全な野菜づくりを実践しています。

土作りの段階から施肥量を調整する中嶋農法を取り入れており、品質の安定化を図っているのも特徴です。家族経営の農業から産業としての農業に変革を遂げるため、データによる生産管理や新規就農者の獲得に向けた労働環境の整備にも力を入れています。

人手不足・後継者不足を克服しながら農業の高収益化を実現するためには、小売業・加工業との提携も効果的です。

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minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

よろしければ追加のアンケートにもご協力ください。(全6問)

農地の所有地はどこですか?

栽培作物はどれに該当しますか? ※販売収入がもっとも多い作物を選択ください。

作付面積をお選びください。

今後、農業経営をどのようにしたいとお考えですか?

いま、課題と感じていることは何ですか?

日本農業の持続可能性についてどう思いますか?(環境への配慮、担い手不足、収益性など)

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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