DJI農業用ドローンの自動航行技術で実現する高精度散布!導入のポイントと注意点
農業用ドローンの活用により、農薬散布の効率化が進んでいます。特にDJI製ドローンは高精度な自動航行機能を備え、広範囲の散布が短時間で可能です。自動航行により、農薬散布のムラが減り、負担が軽減されることが魅力です。スマート農業の実現に向けてDJIのドローンについて紹介します。
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技術が進化しているドローンを、農業でも活用する動きが広がっています。特に注目されているのが、これまで重労働だった農薬散布をドローンで自動化することでしょう。この記事ではドローンを使うための基礎知識や、DJI製農業用ドローンの特徴について解説します。
進む、農業用ドローンの自動航行化
写真提供:DJI JAPAN株式会社
これまでの農薬の機械散布では、噴霧器をトラクターなどに搭載してほ場内を移動するか、無人のヘリコプターを使うことが一般的でしたが、2016年頃からドローンを活用した農薬散布が始まりました。水稲を中心に少しずつ利用が拡大し、今では野菜の病害防除でもドローンが活用されるようになってきました。
「スマート農業」の実現に欠かせないドローンですが、近年はさらに進化して自動航行が可能になり、農薬散布も一層効率的になりました。特にDJI製の最新モデルは、誤差わずか数cmという精度で農薬散布できるまでに進化しています。
自動航行で農薬散布を行うメリット
自動航行ドローンは、GPSとRTK(リアルタイム・キネマティック)という測位システムを使って、極めて正確に位置情報を管理することができます。もちろん専門的なパイロット技術は必要なく、誰が使っても均一でムラのない農薬散布が可能です。
また、事前に最も効率的な散布ルートを算出することで、今までのマニュアル操作のドローンと比較して作業時間を半分以下にできる製品も登場しています。
ドローンを自動航行させるために必要な資格・手続き
農業用ドローンを自動航行させるための免許や資格はありませんが、空中からの農薬散布は航空法で規制されるため、国土交通省に申請して飛行承認を受ける必要があります。
実際に自動航行を行う場合には、使用者は一定時間以上の飛行実績と、運転技能を有することを証明できなければなりません。こうした実績や技能は、ドローンスクールの講習で身につけることができます。
ドローンの飛行禁止区域と規制について
航空法上では「地上または水面から150m以上の空域」と「空港周辺の空域」、「人口集中地区」をドローンの飛行禁止区域と定めています。また、地方自治体が条例で史跡や公園などを飛行禁止区域に指定している場合もあります。
飛行禁止区域の確認は、メーカーやドローンのシステム開発起業が提供するドローンマップで確認できます。
DJI JAPAN 株式会社「フライトマップ」
ブルーイノベーション株式会社「ドローン専用飛行支援地図サービスSORAPASS」
農業用ドローンは、ほ場の上空で限定的に使用することになりますが、航空法で規制されている「人口集中地区」や、地方自治体の指定する飛行禁止区域に近い場合は注意が必要です。
農業用ドローンについてはこちらの記事もご覧ください
「農業用ドローンとは? メリット・デメリットや価格についても解説」
行政による規制の詳細についてはこちらを参照してください。
農林水産省「無人航空機(無人ヘリコプター等)による農薬等の空中散布に関する情報」
国土交通省「航空法における無人航空機の一般的な飛行ルールについて」
国土交通省「無人航空機の飛行に関する許可・承認の申請手続きについて」
自動航行可能な農業用ドローンの最大手「DJI」
写真提供:DJI JAPAN株式会社
現在、民生用ドローンにおけるトップブランドは、中国に本拠を構えるDJIです。ここからはDJIについての概要と、その製品について紹介します。
DJIってどんな会社?
DJIは2006年に中国で設立された企業で、本社は中国のシリコンバレーと呼ばれる広東省深圳(しんせん)市にあります。世界の主要都市に拠点を置き、民生用ドローン市場では、全世界で約7割のシェアを誇っています。
2013年には「DJI JAPAN株式会社」を設立し、日本国内でも各種産業用のドローンを販売するようになり、ドローン市場ではトップ企業の1つです。
DJI製農業用ドローンの特長
DJI製ドローンは、ドローンマップ「DJIフライトマップ」と連携して、自動的に飛行禁止区域への侵入を防止します。また、非常に高精度のレーダーを搭載しており、ほ場の地形に合わせた正確な農薬散布が可能です。
優れた飛行機能にプラスして、極めて精度の高い農薬散布の噴霧システムを搭載しており、噴霧速度や噴霧量を正確にコントロールしながら、ほ場全体で効率的に農薬散布をすることができます。
おすすめDJI製農業用ドローン2機の価格・機能比較
ここでは、DJIが販売している2機種の農業用ドローンについて機能や価格を紹介します。
DJI初の農業用ドローン「AGRAS(アグラス)MG-1」
DJIの農業用ドローンとして最初に登場したのが、「AGRAS(アグラス)MG-1」です。
高性能のセンサーを備えたフライトコントローラーにより、常に安定した自動航行が可能で、1回の飛行で10kgの液体農薬を散布できます。
参考価格は、標準タイプMG-1Sが本体のみで約100万円、上位機種のMG-1Pが約130万円です。
農薬噴射効率約2倍の最新モデル「AGRAS(アグラス)T20」
写真提供:DJI JAPAN株式会社
DJIの最新型農業用ドローンが「AGRAS(アグラス)T20」です。MG-1と比較すると、さらに日本の農業現場に合わせた仕様に改良が進んでいます。
飛行性能を高めたうえで、薬剤タンクの容量を16Lにアップして、最大7mの散布幅に対応できる8つのノズルを搭載しています。その結果、最大毎分6Lの農薬散布が可能となりました。
またT20では粒剤の散布ができるようになり、農薬だけでなく粒状肥料の散布や、上空からの播種作業まで可能になりました。参考価格は本体のみで、約160万円です。
DJI製ドローンによる農薬散布の活用事例
2019年7月、茨城県龍ヶ崎市の水田において、DJI製農業用ドローン2機による農薬散布の実証実験が行われました。使用したのはAGRAS MG-1で、事前にDJI製空撮用ドローンPhantom 4 RTKを使って撮影した、現場の詳細な地図をもとに自動航行を行いました。
今回の実験で除草剤を散布した面積は、2機合わせて84a(約8,400平方m)に及びましたが、散布自体はわずか5分で完了しました。データによれば1機当たり約10分の飛行で、およそ1ha(約10,000平方m)の散布が可能であるということです。
これらの実証実験は、今後のスマート農業拡大に向けて、農業用ドローンが果たす役割が、非常に大きいということを証明しました。
最先端の農業用ドローンを使えば、農薬散布にかかる時間と作業負担が大幅に軽減できます。
初期費用はかかりますが、長期的に見れば導入後のメリットのほうが上回る場合が多いのではないでしょうか。
農業経営の効率化とスマート農業を考える皆さんには、ぜひ農業用ドローンの積極的な活用をおすすめします。
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大澤秀城
福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。