【2024年最新】みかんの収穫時期と種類、酸味と甘みのバランスの変化を解説
みかんは収穫時期によってさまざまな種類があり、味わいも変化します。シーズン最初のものは酸味が強くさわやかな味わいで、時期が進むほどに、だんだんと甘みが強くなっていきます。それぞれの味の特徴や、国内で作られる柑橘類(かんきつ類)の主な種類、2024年の柑橘栽培をめぐる現状を解説します。
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初秋から春先まで。収穫時期とみかんの種類の関係
ペイレスイメージズ1(モデル)/ PIXTA(ピクスタ)
「みかん」は小型の柑橘類(かんきつ類)の総称ですが、一般的には圧倒的に生産量の多い「温州みかん」を指します。この記事では「温州みかん」を「みかん」と呼びます。
「温州」は柑橘類の産地として有名な中国浙江省(せっこうしょう)の地名です。原産地は中国ではなく、鹿児島県の長島とされています。
みかんは暖かい気候を好み、和歌山、愛媛、静岡の代表的な産地に加え、熊本や長崎など九州地方でも1960年代に生産量を大きく伸ばしました。
みかんは冬が旬の果樹ですが、早いものは9月頃から出荷され、3月頃までの長い期間市場に出回ります。
みかんの収穫時期と品種区分
みかんは品種によって収穫時期に差があり、その収穫時期によって呼び方が違います。
農林水産省の統計では、「早生(わせ)温州」と「普通温州」に大別されます。「早生温州」の内数として、収穫時期の早い「ハウスみかん」「極早生(ごくわせ)みかん」の統計数値を置いています。
みかん業界では、「普通温州」をさらに、収穫時期の早い順に「中生(なかて)温州」、狭義の「普通温州」、「晩生(おくて)温州」に細分しています。
極早生(ごくわせ)みかん
9月頃~10月末まで出回る、シーズン最初のみかんが「極早生(ごくわせ)みかん」です。
外皮は鮮やかな濃い緑や淡い黄色が交ざった色で、酸味が強く、さわやかな味わいが楽しめます。
早生(わせ)温州
11月初旬~11月末頃まで出荷されるのが「早生(わせ)温州」です。外皮は全体に黄色みを帯びています。
日照時間が少し長い分、極早生よりも糖度が増し、甘みと酸味のバランスがよいのが特徴です。
中生(なかて)温州・普通温州
12月初旬~12月下旬頃に出回るのが「中生(なかて)温州」と狭義の「普通温州」です。
一般的にみかんと聞いて消費者がイメージするのがこちらで、贈答用にも人気の種類です。
外皮の色は全体的にオレンジで、収穫時期が遅い分日照時間が長く、糖度がより高くなっていて、まろやかで食べやすいみかんです。
晩生(おくて)温州
12月下旬頃~3月頃まで、シーズンの最後に出荷されるのが「晩生(おくて)温州」です。
収穫後1ヵ月ほど貯蔵して、甘みを強めてから出荷されます。糖度が高く酸味も強い、昔ながらのみかんの味わいです。
外皮・瓤嚢(じょうのう、柑橘類の果実内部の小袋)とも、やや固く厚いのが特徴で、厚みがある分、長期保存に向いています。
早生品種への生産シフト
2023年のみかんの栽培面積(結果果樹面積)は約3万5,000haで、その割合をみると、早生温州が普通温州を上回っています。
出典:農林水産省「果樹生産出荷統計」よりminorasu編集部作成
1972年のみかんの生産過剰による価格暴落、1991~1992年のオレンジ及びオレンジジュースの輸入自由化を受け、政府による継続的な生産調整が行われ、みかんの栽培面積は減少していきました。
その状況のもとで、残ったみかん農家では、1980年代から次第に市場取引価格の高い早生品種への転換が行われました。
出典:農林水産省「果樹生産出荷統計」よりminorasu編集部作成
大きさによっても異なるみかんの味わい
pu- / PIXTA(ピクスタ)
みかんは、収穫時期だけではなく、大きさによっても味わいが異なります。みかんのサイズの規格は、横径によって2S~3Lまで6種類あります。
参考:日本園芸農業協同組合連合会による統一規格
みかんの横径
3Lサイズ 8.0cm以上 ~ 8.8cm未満
2Lサイズ 7.3cm以上 ~ 8.0cm未満
Lサイズ 6.7cm以上 ~ 7.3cm未満
Mサイズ 6.1cm以上 ~ 6.7cm未満
Sサイズ 5.5cm以上 ~ 6.1cm未満
2Sサイズ 5.0cm以上 ~ 5.5cm未満
一般的に、大きいサイズよりも小さいサイズのみかんのほうが、味が凝縮され甘みが強いといわれています。
2Sサイズは、甘味・酸味ともに凝縮されていて味が濃いといわれますが、酸味が強い場合もあります。甘味と酸味のバランスがよいといわれるのが、SサイズとMサイズです。
優良品種への転換が進む柑橘栽培
tojiko / PIXTA(ピクスタ)
柑橘類は、糖度が高く、むきやすくて食べやすいものに消費者の支持が集まる傾向にあり、その消費者ニーズに応じて次々と新品種が育成されています。
新品種育成の背景には、FTAなどの貿易自由化の潮流を受けた外国産の低価格の果樹の国内流入や、日本のみかん農家の高齢化や後継者不足があります。
今後も安定的に国産みかんの栽培を維持し、みかん農家の収益を確保するために、主なみかん産地では新品種などの優良品目・品種への転換が進められてきました。
国の政策(注)に基づく「果樹対策事業」の1つに「優良品目・品種への改植・新植」があり、補助事業による優良品種・品目への改植・高接を実施した面積は、2018年度~2022年度の5年間の累計で、約960haに及んでいます。
出典:農林水産省「果樹のページ」所収「果樹をめぐる情勢(令和5年(2023年)12月)」
(注)国の果樹農業についての政策は、果樹農業振興特別措置法(果振法)および関係政省令に基づいて「果樹農業振興基本方針(基本方針)」としておおむね5年度ごとに策定されます。各事業はこれに沿って予算化されます。
後継者不足や高齢化の解決に省力化が急務
Fast&Slow/ PIXTA(ピクスタ)
温州みかんの収量は年々減少しています。1980年に約290万トンあった収量は2023年には約68万トンと、1/4以下に減っているのが現状です。その原因として後継者不足や農家の高齢化も挙げられています。
傾斜地での収集・運搬や手を上げ続けて行う作業は体への負担も大きいことから、果樹用機械や補助器具による作業の省力化・快適化が早急に必要と考えられます。
主なものに、背筋の活動量を半減する農業用パワーアシストスーツや肥料・農薬散布用のスピードスプレイヤーなどがあります。
みかんの他にも多種多様!「中晩柑」の種類と産地
近年は、みかんの他にも多彩な味わいと特徴を持つ「中晩柑」が数多く栽培されるようになりました。
「中晩柑」とは、年明けから5月頃にかけて出荷されるみかん以外の柑橘類の総称で、よく知られている「夏蜜柑(なつみかん)」や「伊予柑 (いよかん)」のほかにも、様々な品種があります。
中晩柑の栽培面積は、約2.0万ha(2021年産)で全体では減少傾向にありますが、「デコポン」(注)の名前でも知られる「不知火」や「はるみ」など高糖度で食味のよい品種の栽培面積は増加しています。
(注)「デコポン」は、熊本県果実農業協同組合連合会(熊本果実連)が保有する登録商標です。
出典:農林水産省「特産果樹生産動態等調査」
国内で栽培されている、主な中晩柑の特徴と産地をまとめました。
夏蜜柑(なつみかん)
Ystudio / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:熊本県、鹿児島県など
出回り時期:2月~6月
果実は、やや扁平な形で大きく、外皮の表面がデコボコした感じになっています。
瓤嚢(じょうのう、柑橘類の果実内部の小袋)は苦味があるので、果肉だけを食べるのが一般的です。
粒がしっかりとしてぷりぷりとした食感が楽しめ、さわやかで甘酸っぱい味わいです。
八朔(はっさく)
suntaka / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:和歌山県、広島県など
出回り時期:2月~4月
外皮は厚く、瓤嚢もしっかりとしていて、むいて果肉のみを食べます。果汁は少なくプリプリした食感で上品な甘さと酸味、そして少し苦みもあります。
「八朔」は、旧暦の8月1日のこと。昔は毎年その時期から食べられるようになったため、名付けられました。
伊予柑 (いよかん)
マーボー / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:愛媛県など
出回り時期:1月~3月
愛媛県の特産品として有名で、愛媛県の古代の国名「伊予国」から「伊代柑」と名付けられました。
外皮はツヤのある濃いオレンジ。やや厚いですが、やわらかく手で簡単にむけ、瓤嚢ごと食べられます。果肉はジューシーで甘みと酸味のバランスがよく、濃厚な味わいです。
ポンカン
tojiko / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:愛媛県、鹿児島県など
出回り時期:1月~3月
むきやすく、瓤嚢も柔らかいのでそのまま食べられます。独特の香りが特徴。果肉は甘くて柔らかで、果汁は少なめですが味が凝縮されています。
その品質の良さと特徴から、様々な新品種の親にもなっています。
日向夏 (ひゅうがなつ)
しまじろう / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:宮崎県、高知県など
出回り時期:12月下旬~5月
宮崎市で発見されたユズの突然変異種で、高知県では「土佐小夏」、「小夏みかん」として生産されているほか、愛媛県や静岡県では 「ニューサマーオレンジ」という名称でも栽培されています。
果肉、果汁は酸味が強く、さっぱりとした清々しい味わい。外皮の裏の白いワタにも甘みがあり、果肉と一緒に食べると独特の風味を楽しめます。
文旦(ぶんたん)
Tiny Nature / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:高知県
出回り時期:1月~4月
高知県の特産品として知られています。皮が厚くて種も多いのですが、プリプリで弾力のある果肉が甘く、ホロ苦さと豊かな香りも特徴です。
不知火 (しらぬい)
ナオ / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:熊本県
出回り時期:12月下旬~5月
頭部がコブのように出た独特の形をしています。
長崎県で清見と中野3号ポンカンの交配種として誕生しました。
「デコポン」は、熊本県果実農業協同組合連合会(熊本果実連)が保有する登録商標で、不知火の中でも糖度13度以上などの基準を満たすものに限られます。
外皮はやや厚いですがむきやすく、果肉がやわらかく、瓤嚢も薄く、ほとんど種がないので食べやすいのが特徴です。
清見 (きよみ)
tojiko / PIXTA(ピクスタ)
主な産地:愛媛県、和歌山県など
出回り時期:12月下旬~5月
「清見オレンジ」とも呼ばれます。アメリカ産オレンジと温州みかんの交雑種で、育成地近くの海岸、静岡県の清見潟にちなんで名付けられました。
外皮はオレンジとよく似ていて、むくよりもクシ切りにして食べるほうがおすすめ。果肉は種が少なくやわらかで、とても甘みがあります。
収穫時期によりさまざまな味わいが楽しめるみかん。みかん以外にも、消費傾向に合わせた多種多様な柑橘類の栽培が行われています。
多くの種類・品種の中から、自身の農地での栽培に適したもの、人気の食感や味わいのものを見極めて選択することが重要だといえるでしょう。積極的に省力化を進めていくのも、今後、柑橘類の栽培を継続していくための重要なポイントです。
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酒井恭子
テレビ番組制作会社、タウン情報誌出版社での取材・編集・ライティング業務などを経て、2018年からライターとして活動。農業、グルメ、教育、ビジネス、子育て情報など、幅広いジャンルの記事を執筆している。特に、食べることに興味があり、グルメ情報を自身のメディアでも発信中。美味しい料理の素材となる野菜や果物についても関心を持ち、農家とつながる飲食店で取材するなど、日々知識を深めている。「自分の文章で感動を多くの人と共有したい」が信条。