みかんの摘果で隔年結果を是正! 摘果の時期と摘果量の目安とは?
みかん栽培では、摘果は重要な作業です。摘果を行うことで果実の品質と収量が安定するだけでなく、果樹への負担が軽減され、隔年結果の是正も期待できます。この記事では、みかんの摘果の重要性と、摘果のタイミングや、摘果量などを見極める方法について解説します。
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みかん栽培では、摘果は重要な作業です。摘果を行うことで果実の品質と収量が安定するだけでなく、果樹への負担が軽減され、隔年結果の是正も期待できます。この記事では、みかんの摘果の重要性と、摘果のタイミングや、摘果量などを見極める方法について解説します。
通常見出し みかんの摘果をする理由。しないとダメなの?
スミレ / PIXTA(ピクスタ)・
みかんの摘果をする理由の1つは、果樹にかかる負担を軽減し、隔年結果を是正することにあります。近年では気候変動などの影響もあり、豊作の年と不作の年を繰り返す傾向が見られます。この「隔年結果」が是正されれば年ごとの収量の変動を抑えられ、農家の経営も安定するでしょう。
また、みかんの摘果を行うことで果樹に蓄積される糖分が適正化され、食味の良い果実を収穫できるようになります。果実の大きさがばらつくことも少なくなり、品質が安定します。
藤 / PIXTA(ピクスタ)
一方で、みかんの摘果を行わないと、「ジベレリン」というホルモンが枝に蓄積され、翌年の開花が妨げられます。その結果、次の年に果実が実らない枝が発生し、収量の減少につながるのです。
多くのみかん農家でも同様の現象が発生すると、みかんの市場価格が変動する原因にもなるしょう。
また、果樹1本当たりの果実が多すぎると十分に糖分を蓄えられず、果実が小さくなったり食味が悪くなったりする場合もあります。樹勢の回復が遅れると、長期にわたって収量が減少したままになることも考えられます。
▼みかんの隔年結果を防ぐ方法についてはこちらの記事をご覧ください。
みかんの摘果のやり方。 サイズ・タイミングは?
みかんの収量と品質を最大化するためには、気候や着果状況を見極めながら間引く果実を選ぶことが大切です。みかんを摘果する方法・タイミングや、摘果するタイミングについて説明します。
摘果の時期(タイミング)
みかんを摘果するタイミングは栽培する地域はもちろん、品種や生育度合い、果樹への着果量に応じて変える必要があります。適正な時期に適切な量の摘果を行うことで果実に養分が行き渡り、食味がよくなります。
静岡県で早生種の温州みかんを栽培する場合は7〜9月末、普通の温州みかんより一回り大きい青島温州の場合は8〜10月末が摘果時期の目安です。
品種、園地の気候条件、隔年結果の状況、樹勢や出荷時期などによって摘果の時期と程度は変わってきます。地域の農政部署やJAなどに相談して適切なタイミングを見極めてください。
以下に、隔年結果の状況や着果量を考慮した摘果と隔年結果の是正をめざす「後期重点摘果」の例を挙げます。
隔年結果の状況と着果量を考慮した摘果
有田みかん(和歌山県)の場合は摘果サイズを基準にしつつ、隔年結果の状況や着果量を加味して8〜9月半ばに摘果を行なっています。
隔年結果の状況と着果量を考慮した摘果 摘果の程度と実施時期の目安
摘果の時期 | 隔年結果傾向の 着果過多樹 | 高品質作り型(1) 水田転換園の 着果過多樹 | 高品質作り型(2) 着果が少ない | 着果がきわめて 少ない | |
---|---|---|---|---|---|
粗摘果 | 6月下旬~7月下旬 | 80% | 50% | 20%~30% | 0~20% |
仕上げ摘果 1回目 | 8月 | 20%~ 見直し | 50% | 60% | 80%~100% |
仕上げ摘果 2回目 | 8月下旬~9月 | 見直し | 見直し | 10%~20% 見直し | 見直し |
出典:ブランドありだ果樹産地協議会 有田みかんデータベース「温州みかんの摘果タイプ」よりminorasu編集部作成
隔年結果を是正し品質を上げる、弱選定と後期重点摘果
隔年結果を是正していくための樹体改善の方法として、間伐して独立樹にしたうえで剪定を軽くすることが挙げられます。この弱剪定と後期重点結果を組み合わせることで、安定した収量と品質の向上が期待できます。
後期重点結果 摘果の程度と実施時期の目安
摘果の程度 | 早生 | 中晩生 | 高糖系 | |
---|---|---|---|---|
粗摘果 | 20%~30% | 8月上旬~8月下旬 | 8月下旬~9月上旬 | 8月下旬~9月上旬 |
仕上げ摘果 | 70%~80% | 9月上旬~9月下旬 | 9月中旬~10月上旬 | 9月中旬~10月中旬 |
出典:農研機構 近畿中国四国農業研究センター「カンキツ連年安定生産ための技術マニュアル」
摘果する果実の見極め方
takagix / PIXTA(ピクスタ)
果実の大きさが3〜5cmになったら、果樹の表面や内側を十分に観察したうえで摘果するようにしましょう。果皮がなめらかで緑色が濃い果実を残すようにします。
以下の順序で摘果を行うと効果的です。
1. 果樹のふところ・すそ部分
2. 横枝の外側・枝が下向きに垂れ下がった部分
3. 果樹の上部
表皮に傷がついた果実や電球のような形に変形した果実は、時期にかかわらず早めに摘果します。日焼けして黄色に変色した果実や上向き果も同様です。
また、果樹の内側で果実が重なっている場合は、表皮の色づきや成長度合いを確認したうえで出荷できうる果実を残し、ほかの果実は摘果します。葉の裏側にある小さな果実や薄い緑色の果実も徹底的に摘果しましょう。
takagix / PIXTA(ピクスタ)
摘果量の目安
みかんの摘果量の目安は、果実1個当たりの葉が25枚前後になるよう調整します。樹齢が高く樹勢がそれほど強くない場合は、葉の枚数が30枚程度になっても問題ありません。一方、樹勢が強い場合は葉の枚数を20枚程度に減らせば生育を調整できます。
なお、伊予柑やデコポン、甘夏や八朔のように、果実1個当たりの葉の適正量が80〜120枚程度の品種もあるので、栽培している品種によって見極めが必要です。
藤 / PIXTA(ピクスタ)
摘果すべき果実の量が多い場合は、摘果剤を活用するのも効果的です。着色や品質が劣りやすい部分に重点的に散布するようにします。
2022年6月23日現在、代表的な摘果剤として「ターム水溶剤」は温州みかんを除く柑橘類に、「フィガロン乳剤」は温州みかんに登録があります。
摘果剤を使用する場合はラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明点はメーカーや農業普及指導センターに問い合わせたうえで適切に使用してください。
また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください。農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。
農薬登録情報提供システム
初心者太郎 / PIXTA(ピクスタ)
適切なタイミングで摘果を行うことで、光合成によって作られた糖分が生育の良い果実に集中するようになります。その結果、果実の大きさが揃うだけでなく、食味の向上も期待できます。隔年結果も是正できるため、農家の経営を安定させるためにも効果的です。
摘果の時期と量は、品種や栽培地域、目標とする果実のサイズ、樹勢などによって異なります。地域の営農団体などに相談しながら、適切なタイミングで摘果を行うようにしましょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。