【みかんの摘果】時期や方法は? 隔年結果を是正する作業のコツ

みかん栽培では、摘果は重要な作業です。摘果により品質・収量が安定し、樹体の負担軽減や隔年結果の予防も期待できます。本記事では、みかん摘果の適切なタイミングやコツ、摘果量などの解説に加え、摘果したみかんを無駄にしない活用法を紹介します。
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しないとどうなる? みかんに摘果が必要な理由

スミレ / PIXTA(ピクスタ)・
みかん栽培でなぜ摘果が必要なのか、主に次の2つの理由が挙げられます。
1. 隔年結果の是正・収量の安定化
みかんなどのかんきつ類は、実が多く付く「表年」とあまり付かない「裏年」を一年おきに繰り返す、隔年結果という生理現象が起こりやすい作物です。近年は特に、気候変動などの影響から、隔年結果の発生が増える傾向があります。
摘果を行わないと過剰な着果となり、ジベレリンというホルモン成分が枝に蓄積されて、翌年の開花が抑制されます。すると、翌年には結果しない枝が多くなって収量が減り、それをきっかけとして隔年結果が生じるケースが少なくありません。
隔年結果が著しいと、表年は収量こそ多いものの実が小さくなり、糖度が低く品質も低下し、反対に裏年は収量が激減します。その状態が一年おきに繰り返されるため、どちらの年も十分な収益が得られず、経営が不安定になります。
摘果作業は、この隔年結果を防ぐために、ひいてはみかん農家の経営安定に欠かせない作業です。
2. 果実の品質向上
みかんの摘果によって、果樹に蓄積される糖分が適正化され、食味のよい果実になります。また、大きさのばらつきも少なくなり、サイズや品質が安定します。
一方、着果数が多すぎると果樹が十分に糖分を蓄えられず、果実が肥大しなかったり、食味が悪くなったりします。樹勢の回復が遅れると、長期にわたって収量が減少したままになることも考えられます。
▼みかんの隔年結果を防ぐ方法については、こちらの記事をご覧ください。
みかん栽培における摘果の実施時期
みかんを摘果するタイミングは、一般的に、自然落果が終わる頃からが適しています。
適期に摘果を行うことがみかんの収量や品質の安定につながるため、各産地では適切なタイミングの見極め方を提示しています。
例えば、静岡県で早生種の温州みかんを栽培する場合は7〜9月末、普通の温州みかんより一回り大きい青島温州の場合は、8〜10月末が摘果時期の目安です。
和歌山県の有田みかんの場合、隔年結果の状況や着果量を考慮しながら目的別に4タイプに分け、粗摘果を6月下旬~7月下旬に、仕上げ摘果は8〜9月半ばの間に2回に分けて行うことを推奨しています。
摘果の時期 | 隔年結果傾向の着果過多樹 | 高品質作り型 (1)水田転換園の着果過多樹 | 高品質作り型 (2)着果が少ない | 着果がきわめて少ない | |
---|---|---|---|---|---|
粗摘果 | 6月下旬~7月下旬 | 80% | 50% | 20%~30% | 0%~20% |
仕上げ摘果1回目 | 8月 | 20%~見直し | 50% | 60% | 80%~100% |
仕上げ摘果2回目 | 8月下旬~9月 | 見直し | 見直し | 10%~20%見直し | 見直し |
出典:ブランド有田産地協議会 有田みかんデータベース「温州みかんの摘果タイプ(例)」よりminorasu編集部作成
このほか、愛媛県の農林水産研究所では、隔年結果を防ぎ、毎年安定した品質のみかんを生産する方法として、「弱剪定・後期重点結果」の技術を開発し、独自の剪定・摘果時期を推奨しています。
この技術では、果樹は独立樹に仕立て、5~7月上旬にごく軽く剪定を行います。摘果のタイミングは遅く、8月までに粗摘果を軽めにして、9月にかけて仕上げ摘果に重点を置いて行います。
この弱剪定と後期重点結果を組み合わせることで、収量と品質を安定的に向上させることを目的としています。
出典:農研機構 近畿中国四国農業研究センター「カンキツ連年安定生産のための技術マニュアル」
後期重点結果 摘果の程度と実施時期の目安
摘果の程度 | 早生 | 中晩生 | 高糖系 | |
---|---|---|---|---|
粗摘果 | 20%~30% | 8月上旬~8月下旬 | 8月下旬~9月上旬 | 8月下旬~9月上旬 |
仕上げ摘果 | 70%~80% | 9月上旬~9月下旬 | 9月中旬~10月上旬 | 9月中旬~10月中旬 |
出典:農研機構 近畿中国四国農業研究センター「カンキツ連年安定生産のための技術マニュアル」よりminorasu編集部作成
摘果の適期と適切な摘果量は、品種、園地の気候条件、隔年結果の状況、樹勢などによって変わります。また、産地に合わせた独自の技術が開発されている場合もあるので、地域の農政部署やJAなどに相談して適切なタイミングを見極めましょう。
【状況別】みかんの摘果方法と作業のポイント
摘果には、大きく分けて「粗摘果」と「仕上げ摘果」の2段階があります。特に着果量が多い樹を早期に摘果するのが「粗摘果」で、最終的に数や大きさを調整するのが「仕上げ摘果」です。
着果量が多すぎなければ、仕上げ摘果を行うだけで構いません。仕上げ摘果は、果実の大きさが3〜5cmになったら、果樹の表面や内側を十分に観察したうえで摘果します。果皮がなめらかで、緑色が濃い果実を残すのがポイントです。
効率的な摘果の手順は以下の通りです。
- 果樹のふところ・すそ部分
- 横枝の外側・枝が下向きに垂れ下がった部分
- 果樹の上部
表皮に傷が付いた果実や、電球のような形に変形した果実は、時期にかかわらず早めに摘果します。日焼けして黄色に変色した果実や上向き果も同様です。
また、果樹の内側で果実が重なっている場合は、表皮の色づきや生長度合いを確認したうえで、出荷できる優良な果実を残し、ほかの果実は摘果します。葉の裏側にある小さな果実や薄い緑色の果実も見逃さないよう注意し、徹底的に摘果してください。
摘果量の目安は「果実1個当たりの葉の数」で確認
適切な摘果量は品種や樹勢、着果量によって変わりますが、果実1個当たりの葉の数で摘果量を調整するのが一般的です。温州みかんの目安は、果実1個当たりの葉が25枚前後になるように調整します。
樹齢が高く、樹勢がそれほど強くない場合は、葉の枚数が30枚程度になっても問題ありません。一方、樹勢が強い場合は、葉の枚数を20枚程度に減らせば生育を調整できます。
着果が少なく上記の葉の枚数を満たさない場合、摘果は必要最低限に抑え、明らかな傷のある果実のみを摘果するに留めてください。
なお、伊予柑やデコポン、甘夏や八朔のように、果実1個当たりの葉の適正量が80〜120枚程度の品種もあるので、栽培しているかんきつの種類によって見極めが必要です。
隔年結果が激しい場合は「上部全摘果」を実施
すでに著しく隔年結果が生じており、着果量が多い樹の場合は「上部全摘果」(または樹冠上部摘果)をします。上部全摘果を適切に行うことで、翌年の着果数を確保できるとともに、その年の果実の品質も向上します。
やり方は、文字通り樹冠(樹の上部)にある実をすべて落とし、低い位置についた実を残します。実を選んだり、葉の数を気にしたりする必要がないため作業は簡単で、また収穫時には低い位置の実だけを取ればよいので省力化にもつながります。
とはいえ、手作業で高所のすべての実を落とすのは労力も時間もかかるため、近年は省力・効率的に作業ができる「風呂敷摘果」を取り入れる農家が増えています。
風呂敷摘果の方法は、風呂敷をかけるように樹の上部に黒いシートを被せて、飛ばないようにしっかりと樹幹に固定するだけです。
黒いシートに包まれた上部が太陽光によって高温となり、生理落果が促進されるため、多くの実が自然に落果します。それにより、手作業による摘果作業が大幅に軽減されます。
出典:株式会社和歌山新報社 わかやま新報「風呂敷で摘果作業を軽減 下津で取り組み」
着果量が多い樹は「摘果剤」で省力化
摘果すべき果実の量が多い場合は、摘果剤を活用するのも効果的です。特に着色や品質が劣りやすいすそ枝や、ふところ枝部分に重点的に使用するとよいでしょう。
2024年12月現在、代表的な摘果剤としては「ターム水溶剤」「フィガロン乳剤」が挙げられます。前者は温州みかんとそのほかのかんきつ類の摘果に、後者は温州みかんの全摘果ときんかんの一部摘果に登録があります。
※摘果剤を使用する場合は、ラベルに記載された使用方法を十分に確認し、不明点はメーカーや農業普及指導センターに問い合わせたうえで適切に使用してください。また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認してください。
農薬の登録は、以下のサイトで検索できます。
▼農薬登録情報提供システム
こんな使い道も!摘果みかんの活用アイデア
摘果みかんは通常、廃棄している農家が多いと思われますが、アイデア次第で有効活用もできます。
まろやかな酸味を活かし、そのまま果汁を絞って瓶詰にしたり、ジュースに加工したりして販売するのが定番です。ホームページを利用して、果汁の使い方や果汁を使ったレシピを紹介すれば、購入行動につながりやすくなります。
さわやかな香りを活かしてエッセンシャルオイル・アロマオイルを作り、販売している例も見られます。さらに、その香りを使った柔軟剤などの商品化を進めている産地もあります。
また、長崎では長崎県立大学や長崎県農林技術開発センターが中心となり、長崎産の摘果みかんと三番茶葉を使って、「ミカン混合発酵茶」を開発・販売しています。
このお茶は、廃棄していた摘果みかんを活用できるだけでなく、健康の維持・増進に貢献する機能性が期待されています。
出典:農研機構 生物系特定産業技術研究支援センター所収「機能性表示食品商品化に向けたミカン混合発酵茶の技術体系」
みかん栽培では摘果を行うことで、着果量を調整して適切な樹勢を維持したり、食味を向上させたりする効果が期待できます。着果量を均すことで隔年結果も防げるため、農家の経営安定にも効果的です。
地域の営農団体などに相談しながら、自身の園地で栽培するみかんに適切なタイミングで摘果を行いましょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。