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農家民泊とは? 農家へのメリットから注意点、申請方法までを一挙解説!

農家民泊とは? 農家へのメリットから注意点、申請方法までを一挙解説!
出典 : Ushico / PIXTA(ピクスタ)

最近、注目を集めている農家民泊。行政も積極的に推し進めているこの取り組みは農家の副収入にもつながります。そんな農家民泊の始め方やメリット・デメリットをご紹介します。

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昨今、体験型の旅行である「農泊」の需要が高まりつつあり、農家が「農家民泊」を提供するケースも増えてきました。本記事では、国を挙げた「農泊」への取り組み、「農家民泊」と「農家民宿」との違いなどを説明しつつ、「農家民泊」について詳しく解説します。

地域の活性化にもつながる? いま注目の「農家民泊」とは

農泊:都市部の消費者に農山漁村に滞在してもらい、地域が連携して、その土地ならではの多様な体験プログラム提供する

農泊:都市部の消費者に農山漁村に滞在してもらい、地域が連携して、その土地ならではの多様な体験プログラムを提供する
出典:株式会社PR TIMES(株式会社百戦錬磨 ニュースリリース 2019年9月12日)

リモートワークが普及した現在では、移住をも視野にいれて地方に興味を持つ人が増えつつあります。そんな中、地方への接点の1つとして農家が提供する「農家民泊」に対する注目が高まる可能性があります。

改めて「農家民泊」の意味や国を挙げた「農泊(農山漁村滞在型旅行)」への取り組み、「農家民宿」との違いについて見ていきましょう。

「農泊」の意味と、取り組みによってめざすもの

「農泊(農山漁村滞在型旅行)」とは、農家や古民家への宿泊を通じて日本古来の伝統的な生活を体験してもらうものです。「農山漁村地域の実際の農家や廃校となった校舎を活用した施設に宿泊」し、「滞在中に農業漁業体験やトレッキングなどその土地でしか行えないことを実際に体験」しながら、「郷土料理やジビエなど地のものを味わう」という宿泊・体験・食事の3つの要素が、地域の関係者の協力のもとに提供されるのがその特徴です。

これにより、「直売所での特産品の購入」のような限定的利益にとどまっていた従来の観光に、「宿泊」という要素を加えることで、滞在時間が伸び、地域全体に利益をもたらすことができます。

これは、フランスやイギリス、ドイツなどの欧州で始まった農村で休暇を満喫する「グリーンツーリズム」をモデルとしています。グリーンツーリズムとは、農村や漁村地域などで自然や文化に触れ、人々との交流を楽しむことを目的とした余暇の楽しみ方です。

農林水産省は、この「農泊」を積極的に支援しており、人口拡大やインバウンド誘致、地域の活性化、雇用の増大につながると期待しています。また、2020年度までに農泊可能な地域を500地域まで創出し、都市と農山漁村との交流人口を1,450万人まで増加させることを目標に取り組んでいます。

地域活性化のため、今後もこうした取り組みに国が予算を投入することが予想され、農家が「農泊」をより営業しやすい環境が構築されようとしているのです。

出典:
農林水産省ホームページ 農村振興 >農泊」の推進について所収の「農泊の推進について(令和3年4月)」
農林水産省ホームページ 農村振興 > 農泊を中心とした都市と農山漁村の共生・対流所収の「農泊推進のあり方検討会 中間とりまとめ(令和元年6月)」

棚田の景観をたのしむ散策プログラム

ヒナタ / PIXTA(ピクスタ)

混同に注意!「農家民泊」と「農家民宿」の違い

住宅宿泊事業法(民泊新法)

reeangle / PIXTA(ピクスタ)

農家が宿泊を伴う「農泊」サービスを提供する場合、「農家民」か「農家民宿」かのいずれかの営業形態を選択することになります。

混同しがちですが、「農家民泊」と「農家民宿」はそれぞれ異なる法律に基づいています。

「農家民泊」「住宅宿泊事業法(民泊新法)」に定める届出を行うことで営業できるのに対し、「農家民宿」では「旅館業法」に基づく許可を取得しなければ営業できないといった違いがあるのです。

2018年に民泊新法が制定されるまでは民泊に対する明確な法律が存在せず、曖昧な部分を残していました。しかし、現在では農泊を始める際に「民泊新法」か「旅館業法」かのいずれかの法律に基づく届出や許可が必要です。

これから「農泊」を始める方は「農家民泊」と「農家民宿」の違いを正しく理解し、混同することによって違法と扱われないよう注意しましょう。

2018年に民泊新法が制定されるまでは民泊に対する明確な法律が存在せず、曖昧な部分を残していました。しかし、現在では農泊を始める際に「民泊新法」か「旅館業法」かのいずれかの法律に基づく届出や許可が必要です。

これから「農泊」を始める方は「農家民泊」と「農家民宿」の違いを正しく理解し、混同することによって違法と扱われないよう注意しましょう。

知っておきたい「農家民泊」のメリット・デメリット

長野県飯綱町農家民泊での野菜作り体験

長野県飯綱町農家民泊での野菜作り体験
出典:株式会社 PR TIMES (飯綱町 ニュースリリース 2021年5月26日)

では、農家がこれから「農家民泊」を始めるにあたっては、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。それぞれについて見ていきましょう。

農家にとってのメリットは「副業として少ない投資で気軽に始められる」点

農家が「農家民泊」を始める最大のメリットは、「新たな収入源を確保できること」です。収入は宿泊料としてではなく、「体験料」「指導料」という名目で得ます。

副業として少ない投資でも気軽に始められるため、メインの収入を農業から得たままスタート可能です。普段どおりの生活を体験してもらうことがサービスの価値であり、旅館業法に基づく住宅の改修なども基本的には不要になります。低コストで農業の閑散期に限定したとしても始められることから、農家にとっては大きなビジネスチャンスの1つといえるでしょう。

旅行者は高級ホテルのような接客を求めておらず、むしろ人間同士の飾らないコミュニケーションを求めています。普段のままの生活感がにじみ出た暮らしにこそ魅力を感じてもらえるのが、この「農家民泊」の特長です。

旅行者との交流による喜びや、観光客の呼び込みによる地域全体の所得増加にもつながるなど、「農家民泊」は多くのメリットをもたらします。

農家民泊の客室

農家民泊の客室
株式会社 PR TIMES (株式会社百戦錬磨 ニュースリリース 2018年6月18日)

一方で、「民泊」ならではのデメリットも

農家にとって多くのメリットがある「農家民泊」ですが、デメリットも存在します。

「農家民泊」は「農家民宿」と異なり、民泊新法によってその営業を認められているものなので旅館業法に定める宿泊料を受け取ることができません。

サービスの対価として受け取る体験料も、地域の民泊を一元的に管理する「受入地域協議会」によってその額が定められているケースが多いのです。よって新たな収入源として期待していたものの、想定していたほどの収入が得られないと感じる場合が考えられます。

また、民泊の運営形態にも注意が必要です。自身では旅館業法が適用される範囲外と認識していたものの、何らかの原因によって適用の範囲内であると判断された場合、「無許可で旅館を経営したもの」として処罰の対象となります。

「農家民泊」を始める際は、法律上の問題とならない仕組みで運営するためにも、法律や制度への深い理解が必要となる点もデメリットといえるでしょう。

農家がこれから「農家民泊」を始めるにはどうすればいい?申請・準備の方法

農家がこれから「農家民泊」を始めるには、前もって申請や準備の方法などを正しく理解する必要があります。ここでは、2つのポイントについて確認しておきましょう。

1:まずは自治体の民泊開設規定や指針をチェック

まずは、開設する地域の自治体が設ける民泊の開設規定や指針をチェックしましょう。「農家民泊」の開設については自治体ごとの許可制であるため、地域によって規定が異なります。

規定を確認し、問題が見つかれば改善しなければなりません。また、現状では農家単体での申請を許可する自治体が存在せず、申請に当たっては「受入協議会」や「観光協会」などの管理団体への登録が必要です。

受入協議会は、「農家民泊」の受入窓口となって農家の受け入れ心得や安全管理、研修会を通じたトレーニングなどを行っています。「農家民泊」は旅館業の許可を必要としませんが、自治体における民泊の開設規定や指針を守る必要があることを理解しておきましょう。

特に、新型コロナウイルスの感染予防には十分配慮し、受入協議会などが設けるルールは遵守しなければなりません。

2:料金に合う体験プログラムを準備する

味噌作り教室

味噌作り教室
NOBUTA / PIXTA(ピクスタ)

料金に見合う体験プログラムの設定も、農家が行うべき準備の1つです。旅行者に家業を体験してもらうためには、1つのプログラムだけではその魅力が伝わりません。

「食」や「自然」、「農林漁業」などのさまざまな体験をすることで、旅行者にその土地の魅力や特徴が伝わるのです。体験プログラムには次のような例が挙げられます。

●里山の散策
●川遊びや釣り
●星空の観察
●田植えや稲作体験
●野菜の収穫
●餅つきや味噌作り

季節に合わせた体験内容を用意し、悪天候だった場合のプランなども考えて、料金にふさわしい内容かどうか、よく検討しておく必要があります。

ちなみに、「農家民泊」は食品衛生法における「飲食店の営業許可」を取得していないため、料理を提供することができません。

あくまでもお客様との「共同調理」となるような体験プログラムを作成してください。「農家民泊」では普段どおりの生活を体験してもらうことこそがサービスの価値そのものになります。

体験料を受け取る分、旅行者が「ここに来てよかった」と思ってもらえるだけの工夫や改善が必要であることも理解しておきましょう。

「農家民泊」はビジネスチャンスの1つ

農家民泊 宿泊者との交流

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

ここまで「農泊」に対する取り組みや農家民泊と農家民宿の違い、農家が始めるうえでのメリットとデメリット、開業するための条件や申請方法などを解説しました。農家民泊を始めることで、新たな収入源を確保したり旅行者との交流による喜びを得られたりなど、多くのメリットがあることがわかりました。

ただし、開業に関する法律やルールなどを正しく理解しておく必要があり、最悪の場合には刑罰の対象となることは覚えておかなければなりません。これらのデメリットを踏まえたとしても、「農家民泊」が農家にとってビジネスチャンスであることは変わりありません。

開業した農家のみならず、地域全体の活性化や発展にもつながり、日本の農業が抱える問題を解消するための1つの方法にもなりえます。今後の農業においてビジネス拡大を考えている方には、ぜひ挑戦していただきたい取り組みです。

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光田直史

光田直史

高校時代は化学を専攻し、農業に関する内容についても学んでいたことから、かねてより農業や地球環境に強い関心を持っていた。 卒業後は地元の運送業界や不動産業界に従事し、以後8年をIT企業の製造部門で勤務。事業部長と内部監査室長も兼任した。その経験を活かし、2020年よりライターとして活動開始。 ビジネス、金融、IT、マーケティング、不動産、農業など複数ジャンルでの記事執筆を手がけている。

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