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【ドローン?ヘリ?】農薬散布の単価を比較!最も低コストな方法は?
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  • 農業経営

【ドローン?ヘリ?】農薬散布の単価を比較!最も低コストな方法は?

これまで無人ヘリコプターの独壇場だった農薬散布に、ドローンを活用する動きが広がっています。双方ともに農作業の効率アップに貢献しますが、コスト面ではどちらに軍配が上がるのでしょうか。面積当たりの費用単価など、農薬散布の現状を解説します。

ドローンの性能が飛躍的に高まり、農業分野でも完全に自動航行での農薬散布が可能になりました。では散布費用を考えた場合、業者に依頼するほうがよいのか、それともドローンを購入したほうがよいのか。それぞれの単価とメリットを比較してみましょう。

大規模な農薬散布を容易にする「無人ヘリ」と「ドローン」

これまでの農薬散布では、地上から無線で操作する無人ヘリコプターが活躍していました。しかし近年、3つ以上の回転翼(ローター)を搭載するマルチコプター、またはマルチローターと呼ばれる無人航空機を使った方法が普及してきました。

一般には、自律飛行ができるマルチコプターをドローンと呼んでいます。

ヘリコプターとドローンのどちらも低空からほ場全体に、正確に農薬を散布することが可能で、人力とは比較にならないほど効率的に作業を行うことができます。まずはそれぞれの特徴をまとめてみましょう。

無人ヘリコプターによる農薬散布の特徴

農業用無人ヘリコプターでの農薬散布

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現在ドローンが急速に普及しているものの、農薬散布は依然として無人ヘリコプターが主流です。農業で一般的に使用される無人ヘリコプターは、機体重量が100kg程度で、飛行速度は時速10~20km、認定オペレーターが地上からラジコンで操作します。

無人ヘリコプターによる農薬散布は、機体が大きいため積載できる農薬の量が多く、1度の飛行で広い面積に散布できます。ドローンに比べると、作業効率はかなりよいでしょう。

無人ヘリコプターによる農薬散布は業者に委託するのが一般的で、散布時期になったら目印の旗をたてておきます。農家が実際に作業しなくてもよいのが大きなメリットです。

委託料金は単位面積当たりで決まっており、面積によっては総コストがドローンより低くなるケースもあります。

ただし、機体が大きいことから作業には最低でも3人以上のオペレーターが必要で、小さなほ場では作業が難しいなどのデメリットもあります。

農業用ドローンによる農薬散布の特徴

ドローンでの農薬散布

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一方のドローンには、自動航行という大きなメリットがあります。最新の農業用ドローンは、GPSとRTK(注)という測位システムを搭載していて、プログラミングされたコースで自律的に農薬散布を行います。

(注)RTK:「リアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)」の省略形。GPSなど衛星を用いた測位システムでは、受信機が4つ以上の衛星から信号を受信することで測位を計算します。対して、RTKは、4つ以上の衛星からの信号を、地上の固定局と移動している受信機の2つで受け、双方で通信しながらズレを補正します。そのため、高い精度での測位が可能です。

複雑な地形や狭いほ場でも効率的な作業ができ、機体が小さいのでオペレーター1人でも作業が可能です。(ほか監視員1人が必要)

ヘリコプターに比べると作業音が小さいというメリットもあります。

デメリットとしては、1回の飛行で可能な作業時間が限られることが挙げられます。農薬の積載量が少ないことと、バッテリー駆動の場合は一定時間で交換が必要なことから、長時間連続して作業ができないためです。

値段が安いのは「無人ヘリ」「ドローン」?農薬散布の単価比較

コスト比較

タカス / PIXTA(ピクスタ)

ここではドローンと無人ヘリコプターと、どちらがコスト面でメリットがあるのか単価比較をしてみます。代行業者に作業を依頼する値段と、機体を購入する場合の価格も比べてみましょう。

平均外注単価に大きな差はない

農薬散布を代行業者に依頼するときには、基本的に面積当たりの単価が決まっています。各業者の作業単価を見てみると、最もコストが安いケースで1反(10a)当たり2,000円からとなっています。使用する農薬代は別料金です。

ドローンでも無人ヘリコプターでも、単価の相場は1反(10a)当たり2,000~3,000円程度で、明確な違いは見られません。単純計算では、10haの水田に1回農薬散布を行うと、作業にかかる費用だけで200,000~300,000円になります。

出典:
skyD兵庫「ドローン農薬散布の料金案内」
株式会社FLIGHTS 「無人ヘリとドローン農薬散布を徹底比較。価格・費用でどちらが得?」

機体を購入する場合はドローンが安くて便利

1回にかかる代行作業の費用を考えると、機体を購入したほうがコストを抑えられる かもしれません。その場合ほとんどの農家は、ドローンを選ぶことになるでしょう。

最新の産業用無人ヘリコプターは、新品では1機当たり1,000万円を超えます。中古品を検討するとしても、500万円程度からが相場のようです。

出典:日本経済新聞「ヤマハ発動機、産業用無人ヘリ「FAZER R」2018年モデルを発売」

それに対して、十分な機能を備えた小型のドローンであれば、機体価格のみなら100万円を切る製品から選べます。大規模なほ場向けでも、200~300万円程度で新品のドローンが購入できます。

出典:PR TIMES「株式会社マゼックス【大幅進化した新型の農業用ドローン】飛助DX・飛助mini」(2021年3月23日)

機体を購入するなら、ほ場の規模に合わせたサイズのドローンを選択することになるはずです。取り扱いやメンテナンスの面から見ても、無人ヘリコプターの購入は現実的ではありません。

株式会社マゼックス「飛助mini 21年モデル」

株式会社マゼックス「飛助mini 21年モデル」
出典:株式会社 PR TIMES(株式会社マゼックス ニュースリリース 2021年3月23日)

ドローンの購入時に考慮したい、機体価格以外の費用負担

ドローンは購入してすぐに飛ばせるものではありません。実際に農薬散布を行うためには、一定時間以上の飛行実績をもとに、使用許可の申請をする必要があります。

操縦技能を学び、飛行実績を上げる


操縦技能を学び一定時間の飛行実績を上げるためには、ドローンスクールで資格を取得する方法が一般的です。受講期間は5日間程度で、受講料は20~30万円が相場のようです。

保険に加入して万一に備える

万が一の事故などを考慮すると、ドローンにも保険が必要です。大きく分けると、ドローンの航行中に事故などで賠償責任が生じた場合を想定した賠償責任を保障する保険と、機体の破損や水没事故、盗難などを想定した保険の2種類があります。

例えば、損害保険大手の東京海上日動火災のドローン保険では、賠償責任保険の年間保険料は、最高ランクの基本補償支払限度額10億円の場合、10,500円からとなっています。機体保険は機種によって異なり、4,000円前後から6万円前後まで幅があります。

参考サイト:東京海上日動火災保険株式会社「東京海上日動のドローン保険」

また、ドローンメーカーが損害保険会社と連携して専用の保険商品を用意している場合もあります。

もっと低コストにできる?農薬散布用ドローンをできるだけ安く導入する方法

農業用ドローンの展示会

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

農業用ドローンの購入を決めた場合、もっと低コストで導入する方法はないのでしょうか。最後にコストを下げるポイントを2つ紹介します。

ポイントは「必要な機能を見極める」こと

実際に農薬散布をドローンで行うと、高性能、多機能なことがかえって邪魔になる場合もあります。

ドローンを選ぶときには、必要な機能だけに絞って機種選択を行うことをおすすめします。またドローン保険でも、保障内容を絞り込んだタイプがあり、保険料をかなり抑えることができます。

対象となる補助金はぜひ活用しよう

ドローン購入に補助金を申請するのも1つの方法です。以下では3つの補助金を例に挙げて紹介します。詳細は該当する窓口に問い合わせてください。

1. 強い農業・担い手づくり総合支援交付金

「地域担い手育成支援タイプ」の補助金額は事業費の10分の3以内で、上限が300万円です。「先進的農業経営確率支援タイプ」も事業費の10分の3以内で、法人の上限は1,500万円、個人の場合は1,000万円です。

出典:農林水産省「経営体育成支援」の「強い農業・担い手づくり総合支援交付金」の項

2. ものづくり補助金

補助金は設備導入費が対象で、小規模事業者は3分の2以内、中小企業扱いになると2分の1以内が補助されます。上限はともに1,000万円です。

出典:全国中小企業団体中央会「ものづくり補助金総合サイト」

3. 経営継続補助金

補助金は導入費用の4分の3以内で、上限は100万円です。農薬散布ドローンの購入も対象になっています。

出典:一般社団法人全国農業会議所「経営継続補助金」

ほかにも農業経営支援の補助金制度の中で、ドローンの購入に活用できる制度があるかもしれません。1度市町村やJAなどに相談してみるとよいでしょう。

※補助金についてはこちらの記事もご覧ください。

スマート農業は国を挙げて推進されており、今後、ドローンを導入する農家は年々増加するでしょう。農薬散布は継続的に必要な作業なので、作業を外注するかドローンを購入するか、メリットを比較しながら検討しましょう。

購入する場合には、各種補助金制度を上手に活用することも忘れないでください。

大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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