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県立農業大学校では何が学べる? 教育内容や就職先について紹介

県立農業大学校では何が学べる? 教育内容や就職先について紹介
出典 : Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

農業を学ぶにはいろいろな選択肢があります。県立農業大学校もそのうちの1つです。農業大学校は全国の42道府県に設けられています。どの地域からでも比較的通いやすく、高校生だけでなくスキルアップをめざす社会人にも学びの機会を提供しています。

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県立農業大学校は、高校生だけでなく、就農希望者から経営の拡大をめざす現役農家まで、年代や経験を問わず幅広い層に農業に関する学びの門戸を開いています。本記事では、農業大学校で学べることや卒業生の進路について解説します。

県立農業大学校とは?

トラクターの演習

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

農業大学校とは、農業への就職をめざす人や、経営発展のためにスキルアップを図りたい農業従事者を対象とした研修教育機関のことです。農業経営の担い手を育成する中枢機関として、全国の42道府県に設置されています。

農業大学校のあらまし

農業大学校は1~2年で農業の技術や経営を学ぶことができる、いわば農業の専門学校で、文部科学省が所管する農業大学とは異なります。2年制の農業大学校を卒業したあとで4年制の大学に編入することも可能です。
農業大学校では家畜の世話など早朝から活動を始めることも多いため、通学の負担を減らすために学生寮を完備している農業大学校が少なくありません。

在学中に資格を取得することも可能です。農耕車限定の大型特殊免許やけん引免許、フォークリフト運転技能、家畜人工授精師免許、狩猟免許、危険物取扱者資格など、取得できる資格の種類はコースによってさまざまです。

学費は公立学校の場合、年間約12万円の授業料のほか、食費・光熱費など寮での生活費が必要です。初年度は入学料や教材費がかかり、2年間の合計で約80万〜120万円が目安です。

民間団体が運営している学校は高額になる傾向があります。例えば日本農業経営大学校では、2年間寮生活を送った場合の学費は320万円です。

農業大学校の教育課程

長野県農業大学校

長野県農業大学校の春の遠景
実践経営者コース、農業経営コース(作物・野菜・花き・果樹の専攻)、実家・研究科、研修部がある

画像出典:どん兵衛 / PIXTA(ピクスタ)

農業大学校には、「養成課程」、「研究課程」、「研修課程」という3つの学習過程があります。教科は稲や畑作物、野菜、果樹、花き、酪農、肉牛、養豚、養鶏などで、それぞれの分野で専門的な知識や技術を学びます。

学校によっては特定の分野に特化したカリキュラムを組んでいる場合もあるため、自分の学びたい分野の学科があるかどうか確かめる必要があります。

養成課程

養成課程は、高校卒業程度の学力を有する人を対象にした入門的な学習課程です。標準的な履修時間は2年間2,400時間で、80単位以上を取得する必要があります。学習方法は、「講義・演習・実験」と「実習」が概ね半分ずつです。

研究課程

研究課程は、養成課程の卒業生や短大卒業者などを対象としています。標準的な履修時間は養成課程と同じく2年間2,400時間で、80単位以上の取得が必要です。中には1年間としている学校もあります。

研究課程では、養成課程で学んだ内容をさらに深め、高度な農業の技術や経営能力を養成することを目指します。学習方法は「講義・演習・実験」と「実習」が概ね半分ずつです。

研修課程

研修課程は、すでに農業に関わる仕事をしていてさらに技術や知識を高めたい方や、これから新たに就農を希望する人を対象としています。

履修時間は数週間程度で、学校によっては1日から学べるコースを設けているため、社会人でも気軽に通えるのが特徴です。教科は分野ごとにコース設置されています。農業技術や農業機械の操作方法、経営管理を学べるほか、農業体験なども実施しています。

学習方法は受講者のニーズなどを踏まえて決定されます。

農林水産省の「農業大学校等のご案内」のページに、道府県の農業大学校の教育内容と、各道府県の農業学校ホームページへのリンク集がありますのでご覧ください。

肉用牛・野菜・有機農業・花き・果樹の専攻、林業科、研修部門がある島根県立農林大学校

肉用牛・野菜・有機農業・花き・果樹の専攻、林業科、研修部門がある島根県立農林大学校
画像出典:株式会社PR TIMES(島根県 政策企画局 広聴広報課 ニュースリリース 2020年12月9日)

県立農業大学校の主な就職先

農業大学校に入学してくる学生のうち半数程度は「実家が農家」、それ以外は「非農家」です。

実家が農家の学生は、卒業後家業を継ぐケースがよくあります。非農家の場合は学校を卒業後、農業法人や農業研究機関などに就職するのが一般的です。その後、現場で経験を積み重ねてから独立をめざす人も多くいます。

自営農業

実家が農家の場合、学校を卒業したあとは家族と一緒に仕事を手伝いながらノウハウを覚えていく人がほとんどです。

自営農業は一般的に小規模経営が多いため、ほとんどの農家が家族で作業を行い、人手が必要になる収穫時期のみ働き手を雇用して労働力をカバーするというスタイルを取っています。

少数派ではあるものの、卒業後すぐに農業機械や農地を確保して自ら農業経営を始める人もいます。

参考:
愛媛県立農業大学校「就職状況」
長野県農業大学校「就職・就農」
大分県農業大学校「農業大学校農学部の進路状況(過去2年間)」

Iターンで移住。県立農業大学校で学び、自営就農する卒業生も

Iターンで移住。県立農業大学校で学び、自営就農する卒業生も
出典:株式会社PR TIMES(島根県 政策企画局 広聴広報課 ニュースリリース 2020年12月9日)

農協・農業団体

JA(農業協同組合)をはじめ、地方農政局なども有力な就職先の1つです。実際に愛媛県立農業大学校や長野県農業大学校では、令和元年度(2019年度)の卒業生のうち25%程度が農業団体への就職を選んでいます。具体的な就職先としては、県内のJAや農業共済組合などがあります。

出典:
愛媛県立農業大学校「就職状況」
長野県農業大学校「就職・就農」

農業法人

農業大学校卒業生の就職先として最も多いのが、大規模経営を行っている農業法人です。定期的に新卒採用している企業も多く、自営よりも安定性が高いというメリットがあります。

働いて収入を得ながら農業技術を身に付けられるため、将来的な独立に向けて資金とノウハウを蓄積することも可能です。

県立農業大学校関連の支援制度を紹介

農業を学ぶ費用

ko-yan / PIXTA(ピクスタ)

農業大学校に進学する際は、一般の専門学校や大学に進学するのと同様、修学支援制度を利用できます。今回は、県立農業大学校に関連する支援制度をご紹介します。

高等教育の修学支援新制度

国の「高等教育の修学支援新制度」では、授業料や入学金の免除・減額、給付型奨学金の支給という2つの支援により、家庭の経済状況にかかわらず誰もが高等教育を受けられる体制を整えています。

この制度は一部の農業大学校でも利用できます。全国の32校が対象になっているので、気になる場合は農林水産省が公表している対象機関リストを確認してみてください。

農林水産省「高等教育の修学支援新制度の対象機関リスト」

農業に関する研修教育機関

農業の技術や知識は、農業大学校以外でも学ぶことができ、全国には民間の研修教育機関も多く存在しています。

北海道農業専門学校の校舎と八紘学園農産物直売所

北海道農業専門学校の校舎と八紘学園農産物直売所

画像出典:mataro / PIXTA(ピクスタ)

例えば、北海道農業専門学校は学校法人八紘学園が運営している民間の専門学校です。

野菜や果樹、花き、乳牛、和牛、農業機械といった分野の知識を学ぶことができます。実習で生産した農産物は、学生自らが一般消費者に販売しています。農産物をどう有利に販売するかを学べる貴重な機会が与えられています。

学校法人八紘学園 北海道農業専門学校 ホームぺージ

また秋田県庁が運営する秋田県農業研修センターでは、農業に関する技術や知識が学べる2年間の研修を実施しているほか、農業関係者が交流する機会も提供するなど、地域の農業の発展に力を入れています。

研修では県の農業試験場や果樹試験場、畜産試験場などに所属し、営農に欠かせない実践的な経験を積めます。

秋田県公式サイト「美の国あきたネット」内「秋田県農業研修センター」の案内ページ

こうした農業に関する研修機関の詳細は、農林水産省のホームページでも確認できます。興味のある方はこちらも参考にしてください。

農林水産省「農業を学ぶための研修教育機関のご案内」

参考記事:農業大学校についてはこちらの記事もご覧ください。

県立農業大学校では、野菜や果樹、花き、酪農など、幅広い分野における農業の知識と技術を身に付けられます。

これから就農を考えている方はもちろん、農業経営のさらなる発展をめざす自営業の方でも通いやすいよう、社会人向けに土日や夜間のコースを設けている学校もあります。

民間の学校と比べると学費もリーズナブルです。農業関連のキャリアを考えている方は入学を検討してみてはいかがでしょうか。

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日野澤きこ

日野澤きこ

大学卒業後3年間、小売系専門誌で新聞・雑誌の編集記者を経験。紙媒体における一連の編集業務を学ぶ。その後Webに転身し、フリーでライティング、校正、リライトなどを手掛ける。趣味は観葉植物の栽培。

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