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農業大学・大学の農学部と農業大学校の違いは? 農業を学びたい人の学校の選び方
出典 : Carbondale / PIXTA(ピクスタ)
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農業大学・大学の農学部と農業大学校の違いは? 農業を学びたい人の学校の選び方

就農前の勉強の場として、「農業大学」(大学の農学部を含む)と「農業大学校」があります。農業の担い手を育てるという意味では同じですが、学ぶ範囲や進路などについては大きな違いがあります。それぞれの特徴を解説しながら、希望に沿った学校選びにお役立てください。

素人がいきなり農業を始めることは難しく、将来的に就農を考えている人はどこかで学ぶことも視野に入れておきましょう。もともと農家の出身であれば実家で学ぶという方法もありますが、そうでない場合には、農業系の大学で学ぶことも選択肢の1つです。

農業の高等教育には農業大学と農業大学校があり、それら2つの違いについてよく理解していない人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、農業を学びたい人に向けて農業大学と農業大学校の違いにフォーカスしながらそれぞれの特徴を紹介します。

農業大学と農業大学校の違い

ビニールハウスで実習中の学生

November27 / PIXTA(ピクスタ)

農業大学と農業大学校はそもそも学校としての種別が違います。農業大学には東京農業大学や新潟食糧農業大学のように「農業大学」と名の付くところ以外にも、私立や公立大学における農学部群も含まれます。

そのため、栽培や加工方法について学べる生産農学だけでなく、農業に関係する生命科学や環境、地域経済などを体系的に学べる大学・学部も存在します。

一方、農業大学校はどちらかというと専門学校の色合いが強く、1~2年で農業技術や経営について学ぶことを目的にしているのが特徴です。実際にほとんどが専修学校専門課程の専門学校として認定されており、全国のエリアごとに42校存在しています。

出典:農林水産省「農業大学校等のご案内」

農業大学(大学の農学部)は学術的研究がメイン

北海道大学農学部の案内板

pretty world / PIXTA(ピクスタ)

農業大学(以下、農学部含む)では農業に関係するさまざまな知識を吸収できることがメリットです。例えば、東京農業大学には栽培技術や流通について学べる農学科のほかに、農学的な観点から社会問題の解決や新しい価値を生み出すことを目的にしているデザイン農学科などがあります。

栽培技術を学ぶだけでは身に付けられない知識や考え方を習得できるのは農業大学で学ぶ大きな魅力でしょう。

ただし、農業大学では基本的に農学的な研究が中心になる点には注意しなければいけません。農学科では農業実習を行っているケースもありますが、現場での農業の実体験という点では農業大学校で学ぶのに比べるとその機会は少ないのが一般的です。

農業大学(農学部)に入学する方法と学費

東京農業大学正門

東京農業大学正門
ワンセブン / PIXTA(ピクスタ)

農業大学の学費は一般的な4年制大学へ通う時とあまり変わりません。標準的な学費は国公立で年間70~100万円程度、私立が150~200万円程度が相場です。

偏差値についても一般的な大学入試同様、受験する大学によって35~65程度とかなりの幅があります。そのため、特定の大学や学部に興味を持っている人以外は、自分の学力に合ったところを選択する必要も出てくるでしょう。

入試についてはセンター試験や一般試験のほかに、推薦入試に対応している大学もあります。また、社会人特別入試枠や特定の農業高校だけに推薦枠を設けている大学もあるので、事前にチェックしておきましょう。

農業大学(農学部)卒業後の進路

実は農業大学の卒業生でそのまま就農する人はほとんどいません。農林水産省が平成24(2012)年度に調査した「農業関係の学校等からの就農状況」によると、農業大学を卒業してすぐに就農した人はわずか3%となっており、ほとんどの人は一般企業へ就職するケースが多いのです。

就職先としては食品関連企業など、大学で学んだ知識を活かせるところを選んでいる人が多い傾向にあります。中には、大学院に進学して研究を続けるケースもあるものの、こちらも直接的に就農へ結びついているわけではありません。

出典:農林水産省「農業関係の学校等からの就農状況」P11

岩手大学 農学部 農業教育資料館(旧・盛岡高等農林学校)

岩手大学 農学部 農業教育資料館(旧・盛岡高等農林学校)
route134 / PIXTA(ピクスタ)

農業大学校は地域に根差した実践的な営農技術を学べる専門学校

島根県立農林大学校 ICT対応ハウスを備えている

島根県立農林大学校 ICT対応ハウスを備えている
出典:株式会社PR TIMES(島根県 政策企画局 広聴広報課 ニュースリリース 2020年12月9日)

農業に関する幅広い知識を得られる農業大学に対して、作物の栽培方法などのより実践的な技術を学べるのが農業大学校です。

農業大学校では高校卒業程度の学力を有する人が対象になる養成課程、養成課程卒業者や短大卒業者がより高度な技術を身に付けるための研究課程があります。一般的にはそれぞれ2年間(2,400時間)の履修時間のうち、半分程度を実地研修に費やすことから、実際に農業を営むための力を身に付けやすいのがメリットです。

養成課程、研究課程ともに水稲や野菜、酪農や養豚といった分野に応じた専門課程があるため、卒業すれば就農したときに即戦力として働きやすい点は魅力でしょう。

また、そのほかにも就農希望者のための農業体験や農業機械の操作など、特定のスキルを高めたい人向けに1日~数週間程度の短期的な研修課程を実施しているところもあります。

地域ごとに特色がある

茨城県立農業大学校 ブドウ栽培ハウス

茨城県立農業大学校 ブドウ栽培ハウス
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(株式会社ルートレック・ネットワークス ニュースリリース 2019年9月10日)

農業大学校の特徴として、地域で栽培されている特定の作物や家畜に注力しているケースが挙げられます。

例えば、フルーツ王国の山梨県の県立農業大学校には果樹学科があり、果樹のスペシャリストの育成に力を入れている一方で、水稲や酪農の学科はありません。茶の最大産地である静岡県の県立農林環境専門職大学(前・静岡県立農林大学校)の短期大学部には茶の専門コースがあります。

基本的には地域の農業事情に適したコースが設定されているため、入学を検討する際は自分の志望する分野があるかどうかを事前に確認しておきましょう。

道府県の農業大学校は42道府県に設置されています。

農林水産省の「農業大学校等のご案内」のページに、農業大学校のあらましと、各府県の農業学校ホームページへのリンクがありますのでご覧ください。

長野県農業大学校

長野県農業大学校
どん兵衛 / PIXTA(ピクスタ)

農業大学校に入学する方法と学費

農業大学校の入学試験は農業大学と異なり、基本的に書類選考と面接で合否を判定するため、合格の目安となる偏差値のようなものは存在しません。ただし、国語や英語といった学科試験を実施しているところもあるので、受験する予定の学校の試験内容をよく確認しておきましょう。

学費については農業大学に比べて安く、年間で授業料がおよそ12万円、実習費等が20万円程度です。ただし、農業大学校では早朝や夜遅くの実地研修も頻繁にあることから、ほとんどの学校で寮が用意されており、その寮費として別途年間で40万円程度かかることが多くなっています。

農業大学校卒業後の進路

前述した農林水産省の平成24(2012)年度「農業関係の学校等からの就農状況」によると、農業大学校を卒業してすぐに農業に従事した人は、卒業生のおよそ半数に及びます。農業大学校では実地研修が多いことから、もともと卒業後に農業へ従事することを意識して入学している人が多いことがうかがえます。

残りの半数の中には一般企業へ就職する人もいますが、研究課程へ進みさらに専門性を高める人や4年制の農業大学へ編入する生徒も珍しくなく、卒業後の進路も多岐に渡ります。

出典:農林水産省「農業関係の学校等からの就農状況」P11

通学以外に農業の知識や技術を身に付ける方法

花き栽培農家での技術習得

cba / PIXTA(ピクスタ)

農業を学ぶ機会は学校へ通うだけではありません。実際に農業大学や農業大学校を卒業後に就農する人は新規就農者全体の2割程度しかおらず、そのほかの人たちは実家または農業法人などで働きながら営農技術や経営ノウハウを身に付けているのが現実です。

現場で働くことで、実際に自分が就農したときの具体的なスケジュールや栽培方法などがイメージできるのは大きなメリットでしょう。

また、農業を教える立場になるための国家資格である普及指導員や、農業に関する知識の保有を認定する民間資格の日本農業検定の取得をめざすことでスキルアップを図る方法もあります。農業を学べる機会は意外と身近にあるものなので、まずは自分に合った方法を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。

トラクターの操作を教わる

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

農業は国として大切な産業の1つです。農家の高齢化などもあり後継者不足が叫ばれていますが、行政も農地の集積化や法人化などを進めていて、これまでにない新しい日本農業の在り方を示しつつあります。

栽培技術やノウハウを学ぶなら基本的に実地研修の多い農業大学校で学ぶことをおすすめしますが、ビジネス的な要素や新しい価値観を学びたいなら農業大学へ通うこともよいでしょう。

就農後の長期的なビジョンに基づいて、自分に合った進学先を選んでください。

中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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