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【令和3年度最新】農泊事業に活用できる補助金の内容

【令和3年度最新】農泊事業に活用できる補助金の内容
出典 : マハロ / PIXTA(ピクスタ)

コロナ禍で外国人を対象にした観光業は大きな痛手を被っていますが、ワーケーションやマイクロツーリズムの普及によって農泊事業は今後も伸びしろがあると考えられています。しかし、農泊事業の展開にあたってはそれなりの初期投資が必要です。そこで、今回は農泊事業に活用できる補助金の内容について紹介します。

農家の所得向上の手段の1つとして農泊事業が挙げられます。2021年はコロナ禍によって訪日外国人数が激減し、観光業全体では苦戦が続きました。しかし、ワーケーションやマイクロツーリズムといった新しい価値観の登場によって、観光業における人口密度の低い地方への関心はむしろ高まっています。

政府も地方創世の大きな柱として農泊に注目をしており、さまざまな補助金を交付しているのをみなさんはご存じでしょうか。この記事では農泊事業に関心を持っている方のために、国や地方自治体が用意している補助金制度の概要を紹介します。

農泊事業に活用できる「農山漁村振興交付金(農泊推進対策)」とは?

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まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

農泊事業は農家や農業法人といった民間事業者が主体となって行うのが一般的ですが、地域経済の活性化に貢献するという観点から政府がさまざまな支援を行っています。

その姿勢が明確になったのは、2016(平成28)年3月に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」です。

国土交通省観光庁「「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました!」

同施策には「滞在型農山漁村の確立・形成」が盛り込まれ、2017(平成29)年度からは農山漁村振興交付金の中に「農泊」を持続的な観光ビジネスとして推進するための「農泊推進対策」が創設されました。

農泊の推進には、その地域で体験することで得られる付加価値(ソフト)と、宿泊や滞在するための施設(ハード)の両方が不可欠です。

しかし、初めて農泊事業に取り組む事業者の中には、十分なノウハウを持っていないケースも珍しくありません。そこで、農林水産省が中心となって、農泊事業に取り組む事業者や地域を資金と知識の双方でサポートしています。

農泊の定義

農泊推進対策採択地域は2020(令和2)年12月時点で全国554地域まで拡大しています。2017年時点での目標であった500地域を超えており、順調に拡大していることがわかるでしょう。

とはいえ、農泊にはいろいろな事業形態があり、中には政府が推進する農泊の施策的位置づけとは異なる場合がある点には注意してください。

例えば、農家が個人で宿泊施設を提供し滞在してもらうケースも農泊の一種ですが、これは政府の農泊施策にはあたりません。

政府が推奨している農泊の定義とは農山漁村地域に宿泊し、滞在中に地域資源を活用した食事や体験等を楽しむ「農山漁村滞在型旅行」になります。

支援の対象となる農泊の要件は、地域の利益を最大化することを目的とし、農泊推進に取り組む地域協議会または構成員に農林水産業のいずれかに関わる者を含む中核法人であることです。

個人の利益のために行う農泊は政府による支援の対象外となる可能性があります。

※農家民泊の始め方や申請方法についてはこちらの記事をご覧ください。

農泊は近年ニーズが高まっている

コロナ禍の時代に観光を含む農泊を推進するのに不安な人もいるかもしれません。しかし、こうした時代であるからこそ、農泊のニーズが高まっているという見方もあることは頭に入れておきましょう。

コロナ禍によってリモートワークが普及し、先進的な取り組みを行う企業の中には休暇先でも仕事ができるワーケーションを取り入れる動きも出てきています。

また、海外旅行が難しくなったことによって、日本国内の身近な地域の魅力の再発見を目的にしたマイクロツーリズムという観光形態が注目されるようになっています。

三大都市在住の20代-70代男女 1,000名を対象としたインターネットアンケート調査の結果「マイクロツーリズム」「わーケーション」といった新たな農泊ニーズが確認された

三大都市在住の20代-70代男女 1,000名を対象としたインターネットアンケート調査の結果「マイクロツーリズム」「わーケーション」といった新たな農泊ニーズが確認された

出典:株式会社百戦錬磨 ニュースリリース「『Withコロナ時代における農山漁村地域への旅行に関する消費者意識調査』結果を発表、
『マイクロツーリズム』と『ワーケーション』という新たな農泊ニーズを確認」
よりminorasu編集部作成

人口密度が低い地域が多く、都会ではできないような体験ができる農泊は、コロナ禍におけるワーケーションや日本国内の観光客のニーズとマッチしているのです。

また、農泊やグリーンツーリズムはヨーロッパ発祥だといわれており、外国人観光客にとっては身近な観光形態の1つです。

コロナ禍が収まってインバウンド需要が戻ってくれば、農村地域の所得向上の手段としてさらに貢献すると考えられています。

農泊推進対策が支援する4つの事業

田植え 体験

マハロ / PIXTA(ピクスタ)

農泊は、過疎化により苦しむ地方活性化の切り札としてコロナ禍でも期待されています。そこで、ここからは2021(令和3)年度に実施された4つの事業の具体的な中身について解説します。

※農泊推進事業の情報については、農林水産省の「『農泊』の推進について」のページ「支援制度について」の項から、詳細を確認してください。

農泊推進事業・人材活用事業

農泊推進事業・人材活用事業は、農泊の肝である「付加価値の高い体験ができる環境」を構築するためにかかる費用を支援する制度です。

農泊推進事業では地域協議会の設立や運営、地域資源を活かした体験プログラム・食事メニュー開発などに対して、2年間にわたって500万円まで交付を受けられます。

一方、人材活用事業は農泊推進事業と併せて実施することを条件に、その取り組みの実現に必要な人材の雇用等にかかる費用を2年間、250万円まで支援してくれる制度です。

いずれも農泊のスタートアップをサポートしてくれる事業で、ソフト面の充実に使うことを目的としています。

農泊地域高度化促進事業

農泊地域高度化促進事業は農泊推進事業・人材活用事業を実施して完了し、観光客を受け入れる体制が整った地域のみを対象にした制度です。

ソフト面がある程度機能し始めた地域に対して、さらに魅力を高める工夫をした場合に支給されます。

具体的には、Wi-Fiの設置や多言語対応といった「インバウンド対応」のほか、地域の伝統行事を活かした体験プログラムなどが含まれる「高付加価値対応(食・景観)」、コロナ対策を含むオフィス環境整備などの「ワーケーション対応」が挙げられます。

事業実施期間はいずれも2年間ですが、交付率や上限額が異なります。

「インバウンド対応」は定額で上限200万円です。

「高付加価値対応(食・景観)」や「ワーケーション対応」は、交付率が2分の1で、実施する事業数によって上限額(100万円または150万円)が変わります。

施設整備事業

施設整備事業は宿泊施設や農家レストラン、交流施設といった整備にかかる経費など、農泊のハード面を支える制度です。

具体的には、古民家等を活用した滞在施設の整備にかかる費用を支援する市町村・中核法人実施型と、既存の宿泊施設の改修にかかる経費を支援する農家民泊経営者等実施型の2つの制度から成り立っています。

前者は事業実施期間が原則2年以内、交付率2分の1で上限は原則2,500万円、後者は事業実施期間が原則1年以内、交付率2分の1で上限は1地域あたり5,000万円です。

施設整備事業は新設だけでなく、空き家や廃校舎といった遊休施設の改修(一定条件を満たせば、上限1億円)に適用される点も魅力です。

農泊推進対策は令和4年度も継続実施される見込み

畑 お金 2022年

ilixe48 / PIXTA(ピクスタ)

上記で紹介した制度の2021(令和3)年度分の募集は残念ながらすでに終了しています。しかし、農泊推進対策は2022(令和4)年度も前年度と同様の内容で実施される見込みです。

しかも農山漁村振興交付金全体の予算概算要求額は、2021(令和3)年度の98億円を上回る102億円となっています。国として農泊の推進に力を入れていることがうかがわれます。

また、政策目標として2025(令和7)年度までに、「都市と農山漁村の交流人口の増加(1,540万人)」を掲げており、農泊を中心とした地域の活性化・自立化の支援はしばらく続く可能性が高いと予想されます。

農山漁村交付金の利用については所管する地方農政局で個別相談できるので、興味がある方は問い合わせてみてください。

地方自治体が独自に農泊関連の補助金制度を用意しているケースも

農泊は地域経済の活性化につながるケースもあることから、農林水産省以外に県や市といった地方自治体が支援しているケースもあります。

例えば、宮城県の「みやぎ農山漁村交流体制づくり事業」、鳥取県の「農山漁村滞在促進事業」、福岡県嘉麻市の「農泊施設活性化推進補助金」などです。

いずれも補助を受けるにあたってはクリアしなければいけない要件がある上、補助金の額が農林水産省の事業より少ない傾向にあります。

その反面、各地域の実情に応じた補助が受けられるほか、個人で利用できるケースがあるのはメリットだといえます。

地方自治体が実施する補助金の内容は年度によって変わることがあり、また、新設される場合もあります。自治体のホームページなどを定期的にチェックしておきましょう。

稲刈り体験

V-MAX / PIXTA(ピクスタ)

農泊はコロナ禍の新しい生活様式にもマッチしていることから、さらなるニーズの高まりが期待されています。農業と観光業が上手く融合すれば地域の活性化につながり、農家の所得向上も見込めるでしょう。

農泊をスタートするにはそれなりの資金が必要ですが、農水省や地方自治体が支援してくれる場合があります。農泊事業の開始・拡大を検討している方は補助金制度の情報をチェックしながら取り組んでみてください。

中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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