農業男子×総選挙から学ぶ地域密着型PR術
若手農家を応援する取り組みが全国で活発化しています。JA東京グループの「農業男子×総選挙」は、オンライン投票で13万票を超え、都市農業の魅力を広く発信する成功事例となりました。農業の魅力を再発見し、地域を巻き込んだ取り組みが注目されています。
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目次
若い世代に農業をアピールするため、さまざまなイベントや取り組みが実施されています。例えば2020年にはJA東京が中心となり、「農業男子×総選挙」を実施して話題を集めました。地域農業を盛り上げるさまざまな取り組みについて見ていきましょう。
じわじわと人気上昇中! いま注目の“農業男子”とは
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
草食系男子や犬系男子といったさまざまな「〇〇男子」がいる中、じわじわと人気を集めているのが「農業男子」です。農業男子とは若手の農家男性のことで、近年では農業男子に関連するさまざまなイベントや取り組みが実施され、地域農業を盛り上げています。
農業へ取り組む若者を指した、大注目のキーワード
農家の高齢化が農業全体の問題となる中、いま日本では若い世代の「農業」を盛り上げる取り組みがいろいろな団体や企業で積極的に行われています。
特に若手農家については、それぞれ「農業男子」や「農業女子」と銘打ち、さまざまなコンテンツが作られてきました。注目度の高まりを受け、近年では農業男子との婚活イベントなども多く開催されています。
“農業男子”人気で地域農業を盛り上げる活動も
埼玉県の取り組み
たとえば埼玉県のホームページでは、「埼玉農業男子特集」として県内で農業に取り組む青年を紹介しています。農業男子の魅力を伝える写真も掲載され、思わずクリックして詳細な情報をチェックしたくなるように工夫されている点が特徴です。
また、新規に就農を希望する人に向けた問い合わせフォームも掲載し、農業に興味を持った方がすぐにアクションを起こせるようになっています。
※「埼玉農業男子特集」には、minorasuでインタビューさせていただいた廣谷智史さんも選ばれています。
埼玉農業男子(第99回廣谷智史さん(新座市))
インタビュー記事も是非ご覧ください。
JA東京むさしの取り組み
JA東京むさしでは、2014年から情報誌「むさし」の中で農業男子を複数回にわたって紹介しています。
「ミント系 農業×男子」や「ビター系 農業×男子」、「細マッチョ系 農業×男子」と農業男子の魅力をカテゴリーに分けて紹介するなど、遊び心も満載です。
また、農業男子を紹介する以外にも、地域の人々が農業と触れ合ったり、農家とコミュニケーションを取ったりできる機会を増やす取り組みも積極的に行っています。
「農業男子×総選挙」で課題に挑む。 JA東京グループの取り組み事例
マハロ / PIXTA(ピクスタ)
農業男子のイベントの中でも、特にメディアでも取り上げられて注目を浴びたのは、2020年にJA東京グループが行った「農業男子×総選挙」のイベントです。実際にどのようなイベントだったのか、またどのような反響を呼んだのかを詳しく見ていきましょう。
“農業離れ”が課題となりやすい都市農業
東京都内では、人々の農業に対する関心が低下したことによる農家数・農地面積の減少が課題となっています。また、農家への理解不足から土埃や堆肥のにおいが近隣住民とのトラブルになるなど、農業を続けるうえで障壁となるようなさまざまな課題も生じています。
JA東京グループでは、都市住民にさまざまな恩恵をもたらす都市農業についてもっと理解を深めてもらうために、まずは農業を知る機会を作り、そして農家と触れ合う機会の創出を行いたいと考えました。これがJA東京グループの農業男子イベントの原点でもあります。
また、JA東京むさしが農業男子を紹介してきたことも、農業への関心と理解を深めるための取り組みの一環です。
農業を身近に感じてもらう取り組み「農業男子×総選挙」企画が発足
もっと農業を身近に感じてもらうために、東京都内のJAから選出された14名の農業男子の中から、東京農業をPRする広報大使を決める「農業男子×総選挙 東京の農業は、オレに任せろ!」の企画が発足しました。
JA東京グループの特設ページでは、農作業をしているONの姿だけでなく、私服やスーツ姿などのOFFの写真も公開し、誰でもアクセスできるようにしています。また、投票はオンラインで行い、全国から応募できるようにしたことで、より広い層に農業男子や農業をアピールできるように工夫しました。
総投票数は13万票以上! メディアへの露出も急増
JA東京グループ「農業男子×総選挙」
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(東京都農業協同組合中央会 ニュースリリース 2020年12月24日)
イベントは多くの注目を集め、総投票数は13万8,052票にもなりました。そのうち2万270票を獲得したJA東京むさし代表の岡田啓太さんが1位を受賞、また1位の岡田さんを含めた上位3名が、東京農業をPRする農業大使に就任しています。
「農業男子×総選挙 東京の農業は、オレに任せろ!」のイベントは、全国ネットのテレビ番組や大手新聞で数多く取り上げられました。2021年2月末の時点で広告換算額は2億円を超え、農業を知ってもらうための広報活動として大成功を収めています。
また、オンラインで投票した方からは、この企画がきっかけで「ほ場の役割を知った」、「これからも応援したい」などの好意的な声が多く寄せられました。
2021年5月には、大手出版社のKADOKAWAが発行する漫画、「農業男子とマドモアゼル」第2巻に広報大使3人がイラストで登場するなど、さまざまなジャンルで幅広いPR活動を続けています。
総選挙はなぜ成功した? 地域農業を盛り上げる企画のポイント
Bunyarit Klinsukhon / PIXTA(ピクスタ)
「農業男子×総選挙」の企画が成功したポイントとして、近年注目が集まっている農業男子を「総選挙」という思い切った企画で取り上げた面白さが挙げられるでしょう。また、その魅せ方への本気のこだわりや徹底的な作り込み、そして地域のイベントではあるものの投票は全国から募ったことや、各メディアへ広くPRを行った点なども挙げられます。
これまでにないユニークなアイデアを徹底的に作り込んで形にすること、そしてその取り組みを広く知ってもらうために多方面にしっかりPRすることが、地域農業を盛り上げる企画づくりのヒントになるでしょう。また、地域のイベントでも大規模に開催することで、より楽しさや魅力が増すことも企画作りに役立てられます。
農業男子や農業女子の魅力は、まだ十分に伝わっているとはいえません。また、農業自体の魅力ももっとアピールできるはずです。農業男子、農業女子ならではの魅力、そして農業の魅力をさらに掘り下げ、広くアピールしていきましょう。
企画力×作り込み×PRで地域農業を盛り上げていこう
ペイレスイメージズ1(モデル) / PIXTA(ピクスタ)
都市部だけではなく、日本全体で農業に対する関心や理解は低いといわざるを得ません。農業に対する関心を高め、農家への理解を深めることは、日本の農業をより良くするために不可欠なことといえます。また、農家の高齢化問題を解決に導くためにも、農業や農家の魅力を再発見できる取り組みを実施していくことが必要です。
13万票を超える投票を全国から集めたJA東京グループの「農業男子×総選挙」は、企画力と徹底的な作り込みが成功のポイントと考えられます。新聞やテレビなどのメディアも巻き込んだ大々的なPRも功を奏したといえるでしょう。
農業男子や農業女子のコンテンツは、今日本中から熱い注目を浴びています。この波に乗れるように、緻密な企画力をもとに丁寧に作り込んだ上で大規模なPRを実施し、農業男子と農業女子、そして農業を広くアピールしていきましょう。
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林泉
医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。