青森県黒石市でAT farm・木村りんご園を経営する木村篤志さんは、地元の大学を卒業後に親元就農し、ご家族と共に約30年間りんご栽培に携わっています。

就農以来、園地の規模拡大を進め、現在は10か所、計5haの面積を管理。また、インターネット販売をいち早く導入し、農業とデジタル技術を組み合わせた先進的な取り組みを行ってきました。

栽培品種はふじを中心に30種類以上にも及ぶ木村りんご園。多彩な品種を扱う背景について、木村さんは「自動販売機でも、有名どこのジュースしか入ってないものより、見たこともないジュースがいっぱい入ってるほうが楽しいじゃないですか。ときには買ってみて、ちょっと残念だなっていうのもあったりもしますけど（笑）。でも、そこから一番お気に入りが見つかるかもしれない。『りんごって奥深いんだな』とお客さんに楽しんでもらいたいですね」と語ります。

ふじを中心に30種以上の品種を栽培するとともに、新しい品種の栽培にも積極的に取り組む。

作業の効率化にも重きを置く木村さんは、昔から収穫や作業がしやすい樹形作りについて研究を重ねてきました。県内で高密植栽培が普及する前から、密植に近い形で収量を増やす方法を考えていたものの、「空間が狭すぎると逆に作業効率が落ちてしまうことに気付き、今は適度に空間を確保しつつ、効率よく収穫できる方法を模索しています」と話します。

さらに、省力化と食味向上を目的に、10年ほど前からあえて葉を摘まずに栽培する「葉とらず栽培」を実施。葉を残しても果実に十分な日光が当たるような管理を行い、味がしっかり乗ったタイミングで収穫をしています。

剪定枝や刈草を有機物として積極的に土壌に還元し、地力の向上に繋げている。

病害虫防除について、木村さんは県の防除暦を参考にしつつ、「できるだけ化学農薬に頼らない栽培を目指している」と話します。特に害虫防除ではフェロモン剤の導入にいち早く取り組み、殺虫剤の散布回数を減らす努力を続けてきました。

また、園地ごとに環境条件や発生する害虫が異なることがあるため、状況に応じて農薬を使い分けているそうです。一方で、病害に関しては場所を選ばずに発生することから、全園地で統一した防除体系を導入しています。

近年、県内でも発生が増えているという褐斑病について、木村さんは「私の園地でも昨年は場所によって発生しました。近隣の県の研究員さんの話でも『褐斑病は発生時期が早まっていて、初期防除が大事になる』と出ていましたし、青森県でも年々温暖化が進んでいる感じがするので、初期防除の重要性は県内でも議論されていくんじゃないですかね」と見解を述べます。

りんごの褐斑病
©全国農村教育協会

木村さんの園地では、青森県りんご協会の委託事業として、新剤の展示圃試験を請け負っています。今年は黒星病と褐斑病を対象に、殺菌剤ロンセラーフロアブルを開花期に散布しています。

「今のところ病気の発生は確認されていません。褐斑病の防除としては例年より早いタイミングでしたが、効果を実感しています」と手応えを感じているそうです。また、同系統の農薬でも複数あることで生産者の選択肢が広がる点も評価し、「保管や取り扱いの面でも容易になると思います」と付け加えます。

現在、木村さんが直面する課題の1つが人手不足です。特に、葉摘み作業の繁忙期にあたる時期はスタッフの確保に苦労するそうですが、反面新たな応募者との出会いも楽しみにしていると話します。

「応募者の中には、本業を持ちながら農業に興味を持って来られる方や、さまざまな経験を積むために応募する人もいて、非常に刺激になります。いずれは正規雇用として長く働く仲間に出会えればうれしいですね」と、期待を語ります。最近ではWEBでりんごの多様な魅力を伝えることにも力を入れている木村さん。これからも様々な取り組みにチャレンジし、産地を力強く牽引します。

▼黒星病や褐斑病の防除事例については、以下の記事もご覧ください

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